追放されたハーフエルフの少女は専属メイド共に国を出る
「うぅ……大変だった……」
私は額の汗を拭いながらそう呟いた。
この言葉は別に出て行く準備が大変だったとかそんな話ではない。むしろ、こんな日がいつか来るのでは簡単な荷造りはしていたので、いつでも出て行く準備は出来ていた。ただ、問題は……
「何ですって!?リアナ様が追放処分ですって!?そんなのあり得ませんわ!!?」
「私!父を通じて国王に直訴してやりますわ!!」
「いえ!むしろあの国王の後があのバカ王太子なんてエルフ国に未来はありません!それぐらいならいっそリアナ様と共に行くべきよ!!」
「それだわ!!なら!私達も早速国を出る準備を……」
私がお世話になった人達皆に挨拶や事情説明をしたら、国王を糾弾するとか私と一緒に行くとか言い出す人達ばかりで……彼女達(8割以上女性だったので)を説得して思いとどまらせるのにもの凄く時間を有してしまったのである。
「……こんなハーフエルフの私を慕ってくれるのは嬉しいんだけどね……」
私は苦笑を浮かべ言葉を漏らす。説得に時間を有したけれど、国の門に着くのはあっという間だ。この門を出たら、私はもう2度とこの国にいられないのだろう。
まだ、挨拶してないお義母様や義姉様にカルア。それから、何故か見つけられなかった私なんかの専属をしてくれたメイドのネリネ。彼女達に声をかけられなかったのは心残りだけど、いつまでもここにいるとあの2人がうるさく言うだろう。私は門へと足を進めると……
「お嬢様ぁ〜ーーーー!?お待ちくださぁ〜いッ!!」
突如、後ろの方からそんな叫び声が聞こえて驚いて振り向くと、蒼い髪を靡かせたメイド服を着た美少女が、背にパンパン荷物を詰め込んだ大きなリュックサックを負って私の所まで走り寄って来た。
「はぁ……!?はぁ……!?間に合いましたぁ〜……遅くなってすみません!リアナお嬢様!」
「ネリネ!?何でここに!?」
私を追ってきた彼女こそが、ハーフエルフである私を文句一つ言わずに仕えてくれた専属のメイドのネリネだ。
「もちろん!私はリアナお嬢様の専属メイドですから!リアナお嬢様が追放されると言うのなら!私も一緒に追放され、リアナお嬢様について行くのみですよ!」
「いやいやいやいや!!?ダメでしょうが!?私について行ったらもう二度とエルフ国にいられなくなるのよ!?ネリネにだって家族がいるし!ネリネにだって生活とかそういのがあるでしょう!?」
私は先程説得した人達と似たような説得の言葉をネリネに告げるが、ネリネはグッと拳を軽く振り上げ
「問題ありません!我が家の家訓は主君と決めた人には一生付き従え!がモットーですから!父も母も快く送り出してくれましたよ!」
いや!?どんな家訓よ!?それ!?私は思わず頭痛を覚え額を抑える。そんな私をネリネは更に真剣な瞳で見つめ
「リアナお嬢様と初めてお会いした時!私が仕える方はこの方だ!って感じたんです!私にとってリアナお嬢様に仕え支える事こそが!私の生きる意味なんです!だから!お願いします!私も一緒に連れて行ってください!!」
ネリネはそう言って私に頭を下げる。……あぁ、そう言えば、ネリネが私の専属メイドになった時もこんな感じだったな……。
私の専属メイドになりたいと、いきなり私の所に来てそう宣言して、私は自分の立場を分かっていたから断ろうとしたんだけど……
『お願いします!!私の仕える主は貴方だけなんです!!だから!私を貴方の専属メイドにしてください!!』
と、それはもう土下座せんばかりの勢いで頼むこんできたのである。そんな騒ぎを聞きつけたお義母様が、ネリネの固い決意を理解して、最終的にお義母様の鶴の一声でネリネが私の専属メイドとなったのである。
「……ダメって言ってもついてくるつもりなんでしょ」
「はい!もちろんです!」
いや、そんな元気よく返事しないでよ……私は思わず溜息をつく。
「はぁ……分かったわ……もう好きにしなさい……」
「はい!好きにします!これからもよろしくお願いします!リアナお嬢様!!」
こうして、私とリアナお嬢様は2人生まれ育ったエルフ国を出て、新たな旅路へと歩み出したのです。
しかし、この旅路がエルフ国を世界を揺るがす事になるなんて……この時の私達はまだ知る由もなかったのでした……
「って!?ちょっ!?ネリネ!勝手にナレーションのポジション奪って変な事言うのやめなさいッ!!!」
「えぇ〜!?いいじゃないですか!この方がワクワクしますし!どうせなら!あのバカ国王やアホ王太子を見返す旅路にしましょうね!リアナお嬢様!!」
いや、そんな予定は全くないんだけど……私は額を抑えて溜息をつきながらも、ネリネと共にエルフ国を出たのだった。
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