追放されたハーフエルフの少女が拳の女神と呼ばれるまで
風間 シンヤ
一章:追放と拳の女神
ハーフエルフである私は追放処分を受けました
この世界では、15歳で成人と扱われ教会で成人の儀の鑑定を受ける義務が課せられる。その儀によって自身の様々な能力を知る事が出来るのである。
この成人の儀は万国共通で、様々な種族の者が15歳になると受ける決まりとなっている。
私の名前はリアナ。そんな私も今生まれ育ったエルフ国で成人の儀で鑑定を受けているのだが……
「何だとおぉ!!?リアナは魔力が0で魔法が使えないだとおぉ!!?」
エルフ国の王で、私の義父である人が、私の鑑定をしてくれた神官さんに唾を飛ばす勢いでそう叫んだ。
「はいぃ!?そうです!?ですがお嬢様にはその代わりに強力なユニークスキルが……」
義父の形相に怯えながらも、神官さんはまだ伝えていない鑑定結果を伝えようとしたのですが……
「ふん。ユニークだがユニットだか知らないが、スキルなどエルフには関係ない。エルフは魔力と魔法こそ全て。そうですよね。父上」
そう言って神官さんの言葉を前髪をかき上げて遮ったのは私の義兄であるクレスト義兄様。エルフ国の王太子でもある。エルフ族特有の美しい顔で私を見下すように睨みつけるクレスト義兄様。
「その通りだ!!エルフ族は魔力が高く様々な魔法が使えるからこそのエルフ!魔力が無く!魔法が使えない者などエルフにあらず!!」
「まぁ、実際にエルフ族でもない混血の紛いものですがね」
義父がそう叫び、クレスト義兄様がバカにした様な顔で私を見て前髪をかき上げそう告げる。
クレスト義兄様の言う通り、私はエルフ国に住んでいるが、エルフ族ではない。エルフと人間との間に産まれたいわゆるハーフエルフと呼ばれる種族だ。
では、そんな私が何故エルフ族のみが住まうこのエルフ国で、国王たる人を義父と呼んでるのかと言うと、私の義母でありエルフ国の女王陛下が私を養女にしてくれたのである。
元々、私を産んでくれた母親がエルフ族で、その母親が女王陛下の親族だったらしく、そういう経緯もあって養女として迎え入れてくたのである。
とは言え、私は人間とエルフの間に生まれたハーフエルフ。純粋なエルフ族ではない。故に、女王陛下である義母様の養女ではあるが、王位継承権などは存在しない。まぁ、私自身もそこまで王位にこだわってるとかはないので問題はないのだが……
「所詮はエルフ族と人間の間に生まれた紛いものの子よ!お前など私の娘にあらず!まして!魔力が0で魔法が使えないとあっては最早貴様に価値なし!リアナよ!貴様を追放処分とする!即刻この国から出て行くがいいッ!!」
義父である……いや、義父であった人が私に向かってそう宣言する。義兄クレストも私を見下した目で見て鼻を鳴らし前髪をかき上げる。
で、告げられた私はというと……あぁ、とうとうこの日が来たか……というのが正直な気持ちだった。
義母様や義姉様に、義妹のカルアは私を家族の一員として扱ってくれたが、義父であった人とこの義兄様は、エルフ族こそ志向という主義の考えが強く、ハーフエルフである私を前々から馬鹿にしてる所があった。故に、いつかは私を追い出す算段はするだろうなぁとは思っていたけど、まさか丁度義母様達が国家交流で出かけた頃合いが私の成人の儀の日と重なって、こういう処分を受ける形になるなんて……都合良すぎる展開に私は溜息しか出ないが、とりあえず今1番聞かないといけないのは……
「あの……義父上……」
「貴様などもう娘ではないわッ!!」
「……国王様。女王陛下の許可無く勝手に決めてしまってよろしいのですか?そういう刑を決めるのも女王陛下の仕事ですよね?」
ぶっちゃけ、この国王様は名前だけのお飾り。実際エルフ国の全てを動かしているのは義母様である女王陛下だ。故に、義母様の許可なく勝手に罰を決める権限は国王にはないはずだが……
「い!?今は女王陛下はいないんだ!つまり!私がこの国を任されている!故に何も問題ないッ!!」
「それに、僕は王太子だ。母様の後は僕がこの国の舵取りをするんだ。その僕が許可した事ならば誰からも文句は出ないさ」
国王様は、目を泳がせしどろもどろになりながら答え、義兄クレストはいつものように前髪をかき上げながらそう告げる。いや、別に王太子にもそんな権限はないんだけど……
とは言え、私はいつかこの国を離れる覚悟はしていた。義母様は私を厳しくも一人前に育ててくれようとして、義姉様やカルアは私を本当の家族のように愛してくれたし、それ以外の何人かも私を慕ってくれる人はいたけど、この国王や義兄のような考えの人がエルフ国には多くいる。私の存在が、私を慕ってくれた人達を傷つける結果になってしまうかもしれないのを前々から危惧していた。
「……分かりました。その処分を受け入れます」
これも良い機会と思い、私は追放処分を受け入れ、私は15年育ててもらったエルフ国を出る決断をした。
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