第8話 絶望の魔女とは

ルゥーンは城に帰ってきて、早速レーヴェンから魔法を教わることにした。

それに、気になることもあったのだ。

初めて出会った時、レーヴェンは確かこう言っていた。


『絶望の魔女とは、また珍しい。まだ絶滅していなかったのか。……ん?死のうとしていたのか、お前。そんなことをするくらいならば私についてくればいい』


と言っていた。

ルゥーンはその時意識がなくなりそうで全く気にしていなかったが、今考えてみると不思議だ。

なぜ、ルゥーンをと呼んだのか。

まず、とは何者なのか。


「レーヴェン、なんで初めて会った時、私のことをと呼んだの?」

「……気になったか。まあ、別に隠すことでもないか」

「教えてくれる?」

「反則だろ…その上目遣いは……なんでもない」


レーヴェンは視線を逸らしてしまったが、すぐにルゥーンに視線を合わせ、少し真面目な顔をして話した。


というのは昔にいたの一つだ。奴らは人とは全く違う魔法を使い、その中でもは自身の絶望や他人の絶望を糧として魔法を使う。そして、その魔法は魔女の中でも随一で強い。それこそ、人を絶望につき落とすことが出来るほどに強力な魔法を、だ。ルゥーンはそれの生き残りだろう。だから人間の世界では馴染めなかったんだろうな」


ルゥーンはその話を聞いて、色々と胸がいっぱいになった。

なぜ、自分はその滅んだはずの魔女なのかはよくわからないが、宮廷魔導師になっても魔法が使えなかったのはそのせいだろう。

だが、一番安心したのは、そのことではなかった。


ルゥーンは使えない人間じゃない。


そのことが、ルゥーンにとっては大事なことだった。

生きていていい人間でよかったと、ルゥーンは心の中で思った。


「ルゥーン。絶望の魔女の使う魔法は私も一応使える。だから、ルゥーンに魔法を教えることができる。…まだルゥーンは魔法の基礎もわからないままだろう。だからゆっくりだが、いいか?」

「う、うん!!ありがとう、レーヴェン!!」


こうして、ルゥーンは魔法を教わることになった。

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