第6話 魔物たちの住む街へ(3)
ルゥーンはキョロキョロと周りを見渡しながら人混みを歩いていく。
少しレーヴェンの歩幅が大きく、小走りでついていかなければならないが、手を繋いでいるので逸れる心配はない。
だが、ルゥーンが小走りでついてきていることに気がついたレーヴェンは歩幅をルゥーンと同じくらいに落とした。
ルゥーンはその気遣いに、やっぱり優しい人だと思った。
「ルゥーン。ここだ」
「あ、ありがとう。レーヴェン」
「…ああ」
そう言ってレーヴェンはルゥーンに向けていた視線を逸らしてしまう。
なぜだかそれに胸がつきんと痛んだ。
やっぱり病気なのだろうかと思ったが、今はルゥーンの服を作ることが最優先だ。
「ルゥーン、行こうか」
「う、うん」
そうして、ルゥーンは緊張しながら店の中に入った。何せ、ルゥーンには縁のなかった店である。それなりに緊張もするだろう。
が、しかし、そんなに緊張しなくても良いと気づいた頃にはもうルゥーンのサイズは測り終わっていた。
不思議なことに、店に入ってサイズを測られたところまでしか覚えていない。
ちなみに今は作られた服をルゥーンに合わせて治しているところだ。
「あ、あの…」
「はい。なんでございましょうか」
「レーヴェンは……?」
「まあ!!あの方のお名前を!……失礼しました。少し興奮してしまいまして。なにせ、あの方は今まで一度も特別をつくられたことがなかったので」
ルゥーンはそういうことを聞きたかったわけではない。
ただ、レーヴェンの姿が見えないのでどこに行ったのかが気になるだけである。
ルゥーンはどうも、レーヴェンの姿が見えないと落ち着かなくなるらしい。
「あの方なら、この部屋の隣の部屋にいますよ。ご安心ください」
「な、ならよかった、です」
隣の部屋にレーヴェンがいるとわかり、安心したルゥーンだった。
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「終わりました」
「あ、ありがとう、ございます……」
ルゥーンは店員たちの終わりの合図を聞き、やっと肩の力を抜き、控室のソファに座った。
服を作ることがあんなに大変なことだと知らなかったルゥーンは、とても苦しい時間だった。
それでもまだ、レーヴェンは戻ってこない。
ルゥーンは不安になり、店員に話を聞こうとした。すると、控室の扉が開いた。
「ルゥーン!!ここにいたのか!よかった。ついさっきまでは隣の部屋にいたのに急にいなくなってしまったから」
「どうして、私が隣の、部屋から、いなく、なったって、分かったの?」
「ルゥーンだったら、どこにいても絶対に把握できる」
さらっとストーカー発言をしたレーヴェンに店員は引きかけたが、それでも顔に出さないのがプロの仕事であるため、顔には出さなかった。
ただ、他の皆が引いている中、ルゥーンだけは全く違った反応をした。
「私がどこにいても探し出してくれるってこと?……やっぱり私、レーヴェンのこと大好き!」
「あっ、ああ。……ちなみに、どう意味の好きだ?」
「親愛、だよ?」
「そう、だよな…」
ルゥーンが言い切ると、なぜかレーヴェンは安心したような、がっかりしたような、そんな顔をしていた。
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