第3話 吸血鬼の王
ルゥーンを拾った男性は、ルゥーンを吸血鬼の王がいるという城へと連れて行った。そして、ルゥーンに城の一室を与えてくれた。
その部屋はとても広々としていて、平民のルゥーンは一生お目にはかかれないような豪華な家具などが置いてあった。
ベットは大きく、ルゥーン一人では場所が余ってしまうほどで、シャワールームや、ドレスルームなどがあった。ドレスルームにはドレスがたくさんあり、ルゥーンはこれを本当に使っていいのだろうか?と不安になってしまった。
そして何より、こんないい部屋を使わせてもらうなんて、もったいないと言おうとしたが、男性はそれを遮るようにこういった。
「この部屋をつかえ。この部屋はお前のために用意したものだからな」
そのため、ルゥーンは反論することを諦めた。
そして、今はルゥーンの部屋で食事をとっている最中だ。
ルゥーンを運んできてくれた男性も一緒で、彼は何も食べていない。
いや、赤いワインのようなものしか飲んでいない。
ルゥーンは、そこは何も聞いてはいけないのだろうと思い、触れていないが。
そういえば彼に名前を聞くのを忘れていた。
そう思ったので、聞いてみることにした。
「貴方の名前はなんですか?」
そう聞いたら、彼は少し驚いた顔をして微笑んだ。
そして口を開き、こう答えた。
「私の名前はレーヴェン・ノスフェラトゥだ。レーヴェンでいい」
「レー、ヴェン」
「そうだ」
彼はレーヴェンというらしい。
レーヴェンが名乗ったので、自分も名乗るべきだと思い、ルゥーンも名乗る。
「私は、ルゥーン・フィニア。ルゥーンと呼んで…ください」
「ルゥーンと呼べばいいのか」
「は、い」
ルゥーンはここ最近あまり人と喋らなかっため、誰かと会話する時に口籠ってしまう。
だが、レーヴェンはそんなことも気にせずルゥーンと話してくれる。
(優しい人なんだなぁ……)
だが、次のレーヴェンの言葉によりルゥーンはその考えを少し改めようかと考えた。
「私はこの城の主人だ。まあ、人間からは吸血鬼の王と呼ばれているな。吸血鬼の真祖とも言う」
やはり、彼は吸血鬼だったのだ。しかも王。
ルゥーンは、そのことに気付いていながらも彼があまりにも優しいので考えないようにしていた。
嫌な予感などは大抵当たるものだ。
(でも、私を唯一助けてくれた人……)
ルゥーンにとって、自らを助けてくれた人などいなかった。
両親は早いうちに亡くなり、親戚もルゥーンに冷たかった。
孤児院で育ち、魔法が使えた時に魔法学校に行けて、やっと窮屈な生活から抜け出せると思った。
でも、たった数日でそれは夢物語だったのだと知った。
魔導師は平民が少なく、貴族が多いため、魔法学校も自然に貴族が多くなる。
そのためか、ルゥーンは目をつけられてしまい、いじめに遭っていた。
そうして、ルゥーンは人を信じることができなくなり、心を閉ざしてしまった。
そんなルゥーンにとって、自分を助けてくれる人は誰一人いなかった。
そのせいだろうか、吸血鬼の王だと知っても、やはり怖くはなかった。
「なん、で、私を助けたん、です、か?」
「ああ、簡単に言うとルゥーンのその髪が目についたからだな」
「髪?」
「そうだ。ルゥーンの髪は綺麗な金色だろう?だから目についた」
今まで誰にも言われたことのなかったことを言われて、ルゥーンは戸惑ってしまう。髪色が綺麗だなんて、初めて言われたのだ。
嬉しくて、顔がにやけている気がする。
「あ、ありがとう、ございます」
「敬語でなくていい。自然な態度で話してくれないか?落ち着かない」
「分かっ、た」
「それでいい」
そういうと、レーヴェンは笑う。
その笑顔が綺麗で、美しくて、ルゥーンは顔が赤くなっている感じがした。
そして、胸もドキドキしていた。
ルゥーンはなぜだかわからないが、レーヴェンのその笑顔をもっと見たいと思ったのだった。
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