第2話 荒れた平野で出会ったのは

ルゥーンは、すぐに荷物をまとめる。

どうせ荷物などなかったのだ。ルゥーンは荷物をまとめるのに苦労しなかった。服が二着と生活用品しかないのだから。

そして、すぐに配属先へと転移する転移魔法陣に乗り、転移する。

あんな場所に二度と居たくなかった。

すぐに景色が変わり、荒れた平野になった。

その平野の真ん中に、荒れた平野に全く似つかわしくない城が立っている。

あれは、吸血鬼の王の城らしい。


あそこに行けば、死ねるだろう。


そう思い、ルゥーンは城に向かう。だが、向かっている途中にお腹が空きすぎて死にそうになってしまった。

昼ごはんは何も食べていないので、それのせいだろうか。

ルゥーンはそんな中、一食くらい食事を取らなくとも平気だと思って歩き続けた。


しかし、それは間違いだった。


魔導師にとって食事とは、魔法を使う上で大事なものである。

魔法を使うとき十分な食事を取れていないと、生命力を魔力に還元して使ってしまい、最悪の場合死に至ってしまうのだ。

そんな危険な状態にありながら、ルゥーンは足を止めずに歩き続けた。

だが、すぐにルゥーンの体は限界を迎え、倒れてしまった。

ルゥーンは空腹で死にそうだった。

だが、それもいいかと思い、目を瞑ろうとした。


だからだろうか、誰かの声が聞こえたのは幻聴なのだと思った。



「絶望の魔女とは、また珍しい。まだ絶滅していなかったのか。……ん?死のうとしていたのか、お前。そんなことをするくらいならば私についてくればいい」



その声は、男性の声だった。それも、とても美しい声で、ルゥーンは聞き惚れてしまっていた。

だが、すぐに我に帰り、起き上がろうとするが、起き上がることができなかった。空腹で、体が動かなかった。それでもなんとか体を動かしてその男性の方へと行こうとする。


「……空腹で動けないのか、ならば仕方がない。私が抱えていこう」


そう言って、その男性はルゥーンを横抱きにした。


「…ぅわっ!?」

「なんだ、声が出せるのか。なら、早く声を出せば良かっただろうに」


そう言って、その男性はルゥーンを抱えて歩いてゆく。

その方向は、吸血鬼の王が住むと言われる城の方向だった。


「っ!あの、そっちは…!」

「大丈夫だ。あの城は私のものだからな」


そう言われて、ルゥーンは訳がわからないままその男性に運ばれていた。

その男性は腰ほどまである長い黒髪を後ろで結っており、美しい紅玉の瞳をしていた。何よりルゥーンが驚いたのはその顔が恐ろしいほど整っていることだ。

その男性はこの世のものとは思えないほど美しい顔立ちをしていて、ルゥーンは少し顔が熱くなっているのがわかる。

恋などではないのだが、顔が綺麗な人を見て顔が熱くなったりするのは女性の性なのではないだろうか。


そして、その男性が言った言葉が頭の中で何度も反芻していた。

あの城が彼のものということは、彼は吸血鬼なのだろうか。しかも王。

そして、ルゥーンはとんでもない人(?)に拾われたかもしれないと思った。

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