第15話 二つの世界

 堰を切ったようにアシェリアは話す。

「ごめんね、ヒカル。ずっと黙ってて。違えばいいと思ってた。君が別の世界から来たんじゃなく、イシュタルの人だったらいいとずっと思ってた。でも、やっぱりそうだった。君は別の世界の人間。二つの世界は繋がってしまった。もう、お終いなんだ……」

 ヒカルは考える。

 そんなに簡単に世界は終わるのだろうか。

 創造神とはなにか。アシェリアとは違う種類の神だろうか。

 神のしたことなら、アシェリアの力でなんとか出来ないのだろうか。

 二つの世界が一つになるとはどういうことなのか。二つの惑星が衝突するのか。

 交わるとはどういう状態なのか。ヒカルのように、互いの世界の物質が行き来することか。

 二つの世界が交わった状態から、一つになるのに必要な条件はなにか。時間の経過か、エネルギーの蓄積か、あるいは行き来した物質の量か。

 そしてここが、未来ではなく平行世界だったとしたら……。

 考えなければいけないことが多すぎた。

 だが、不可解な現象を体験したとき、科学者の取る態度は一つしかない。

 再現性の確認だ。

「アシェリア。僕は戻る。僕はなんとしても地球に戻る。その方法を見つける」

 アシェリアが顔を上げる。驚いたような顔をしている。

「どうして、そう思うの?」

「もし世界が繋がって、僕が現れたのなら、僕を戻せば繋がりは絶たれるかもしれない。試してみる価値はあると思う」

 アシェリアが顔を輝かせる。

「ヒカルはそういうふうに考えるんだね。見つけよう、ヒカル。その方法を!」

「うん。まだ終わっていない。まだ、なんとかなる」

 ヒカルは自分に言い聞かせる。まだ終わっていない。帰る方法は、きっとある。

 アシェリアは再びヒカルの手を取る。

 スカイダイビングのように大きく手を広げる。二人の身体が舞うように空に大きく弧を描く。

「わたしも探す。必ず見つける。ヒカルを地球に戻す方法を。わたしが君を必ず地球に還してあげる。イシュタルも地球も終わらせない」

「見つけよう、一緒に」

 アシェリアの全身が光に包まれている。

 光は粒子となって、彗星が尾を引くように二人の落下するあとに続いている。

 ふと、この瞬間が永遠に続けばいいのにと思う。地球に帰れなくていい。ずっとアシェリアとこのままいられるなら、地球になんて帰らなくていい。

 もう地上が近い。雲を抜け、高度は山より低い。鳥が見える。あれは鳥か? 黒い何か。近づいてくる?

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