第7話 熟睡

春がきた。

そう呑気に考えていたら桜も散り散りに葉桜になりつつあった。


私は国立大学に見事入学した。

家の近くという訳でもなかったので実家から出ていく形になるが、親はうんともすんとも言わなかった。否定も肯定もしない親など、なんの助けにもならない。せいぜい健康でいてねとだけ伝えて巣立ちと言うよりは夜逃げのごとき出発だった。

そのせいか、私のお金事情は厳しいものであり、国立であることがどれだけ助かったか計り知れない。貯金には既に約百万ほど貯まっている。大学四年間(国立)であれば半分まであるということになる。それだけあればこの四年間の学費はなんとかなる。まぁその分、生活費等々が窮屈にならざるを得ない。


「心配する必要はないわ。だって私が養うもの。」


そうやって私を励ますのは水谷葵。私は今、彼女の家にいる。

葵さんとはもう一年も付き合いがある。私が高校を卒業してすぐ恋人になった。

葵さんって第一印象はすごく余裕のある大人のイメージだったけどまだ二十五歳と思うほど私と歳が離れてなかった。それを行った時には何歳だと思っていたのかと怒られたっけ。


「それは…なんていうか、申しわけないっていうか。」

「そんなことはないわ。今私すごい幸せなのよ。一年前仕事を辞めた時が嘘みたい。」

「そういわれてもなぁ。」

「私の起業した事業が結構売れているし、もうウハウハ。いつも私を愛してくれているあーちゃんに出費するくらいわけないわ。」

「これ以上は私のプライドが…だって既にこの家で住んでもいいってそれだけで十分なのに。家賃もその他もろもろの費用払わなくてもいいってほんとそれだけで十分ですって。」

「もう。聞き分け悪いなぁ。そういう人にはこうだ!」


と私にキスを迫ってそのままソファに押し倒す。

そのままあれやこれやと服を脱がされ裸の交わりが始まる。それがここ最近の葵さんのブームらしい。私も拒む理由もないので楽しんでしまうのが悪い癖。

ついつい時間がすぎていく。



×××


「今日の責め…なんかいつもより強くなかったですか?」

ピロートーク。

互いに裸になって布団に移動した。

「なんでだろうね。」

「…はぁ。分かりました。観念します。ありがたくお言葉に甘えさせていただけます。」

「うむ。よろしいのだ。」

「そのかわり、私真面目に勉強するんで、こういう風になし崩し的にエッチなことしては困ります。」

「それはどうかな。」

「…ほんと、葵さんって性格変わりましたよね。」

「あーちゃんのおかげだよ。」


私の腕に抱き着く葵さん。

このまま眠ろうとする姿は一年前の私には想像できない。

彼女の頭摩りながら、私は呟く。


「かわいい」


私と水谷さんはいつものように寄り添って眠りについた。






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水と花 絵之旗 @enohata

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