第6話 告白
軽く抱き合ったまま立ち尽くす私と水谷さん。
水谷さんは私に優しく接した。
「涙…私の服で拭いてもいいよ。」
私はコクリと頷き水谷さんの胸に顔を埋める。涙で胸元が染み出す。
彼女の胸が柔らかく私の顔を包み込む。この安心感たるや。やはり水谷さんは大人だ。
私の感情から哀感はなくなった。落ち着きを取り戻す。
それでも私は抱くのを辞めない。
水谷さんは私が落ち着いたのを確認すると話し出した。
「今から言うことちょっと衝撃的かもしれない。」
「はい。」
「私ね、女の子が好きなの。」
「…!」
私の頭の中ではとある考えが浮かんだ。
その考えは私の口ではなく、水谷さんの口から発せられた。
「私こそ、あなたに一目ぼれしたの。でもほら、あなたは普通の女の子みたいだし、何より高校生。大人が高校生に手を出すということがどういうことかわかるでしょ、世間的に見てそれはよくないことだと思ったの。だから…なんていうのかな。距離を取りたかったの。二回目に会って私、思ったの。このままだとあなたのこと、好きになっちゃうって。」
「い、いいです。光栄です。水谷さんに私は好かれたい。」
私はバッと顔を水谷さんの胸から離し見上げる。目の前には照れた水谷さんの顔。
「う、うれしいけど、ほら…高校生だし。」
「大丈夫です。私もあと少しで高校卒業しますし!」
(一年くらいで)
「ちょっと…前提が気になるんだけど…もしかして立花さんも…女の子のこと好きな感じなの?」
「…いや、分かりません。たぶん違うと思う。…でも私、水谷さんとならそういう…恋人関係になってもうれしいっていうか。」
そうか。そうだ。私の感情は…私のこの水谷さんに対する感情は憧れではない。
恋なのだ。
「えぇえゅえぇつっ?」
声にならない声を上げる水谷さん。
赤くなる彼女の顔を見て私は思わず唇にキスをした。
「うにゅ。」
なんだろう。水谷さんの印象が変わった。
かっこよくて色気があって余裕を見せる大人だと思っていたけど、すごくかわいい女の子って感じだ。
「ねぇ水谷さん。私たち付き合ってみない。」
「それはだめ。せめて高校を卒業しないと。」
「わかった。卒業したら、恋人になってね。」
「……う、うん。」
×××
あの時の水谷さんの謝罪。
突き放す行動をとる水谷さんは心を痛めていた。だから謝罪をした。本当はもっと一緒にいたかったのかもしれない。
現代社会における恋愛観は変わりつつあるがそれでも同性愛というのは理解されないこともある。惚れた人間に理解されないというのはそれだけで苦しいだろう。もしかしたら理解されないかも…そんな恐怖から自身の気持ちを押し殺したのかもしれない。それで二回目に会ったときに私を突き放したのだろう。
私は水谷さんと約束をしたのち水谷さん家を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます