【3】後篇

リヴァイアとアイネスのお陰で、リヴァイアの世界にいた時の俺とリヴァイアのように……お互いに干渉することが可能だとリヴァイアから聞かされたからである。それを知った俺は、リヴァイア達の願い通りにしてあげることにしたのだった。そうしてしばらくの間だけ……リヴァの体内でお別れをして、また会う日が来たら一緒に過ごそうと約束し合ったのである。そうしてから俺はこの世界にリヴィアを戻すことに決めた。この世界で一緒に過ごすことを決めたのは……この子だけは幸せになってもらいたいと思っていたのである。この世界で幸せになれるかどうかなんてわからないけれど……この子が少しでもいい思いができるといいと思っていた。それなのに……俺の都合でまたこの子を振り回すようなことは絶対に出来ないと強く思うようになっていたのである。


こうして、俺の体内にリディアが入った状態で再び動き出すことにする。それからしばらくして、この世界で起きようとしていることを詳しく聞くことになった。まずはこの世界で魔王と呼ばれる者についてだ。俺は、その話を聞いて、俺の中にいるリヴァの力を使わずして倒せる相手なのか気になっていた。それ故に……この世界の魔物の分布状況を尋ねた。俺の考えが正しいのかを確かめるためである。そう考えた俺は……俺の体の中から出てきたばかりのアイネスに、リヴァイアが作り出したこの世界がどれだけ危険にさらされているのか確認してもらったのである。そしてその結果を俺はリヴァイアとリディアに教えてもらうことに決めて……。その結果を聞くために集中した。その話はこんな感じだった。


私がレイから話を聞いた後、私はこの国の王様に、私にできる範囲の協力をすると告げたのである。この国がどんな問題を抱えているのか知らないけれど、このままでは、この国は確実に滅びを迎えてしまうだろうと感じていたからである。そんな私の申し出を王様も受け入れてくれて、これからの予定を立てていく事になったのであった。


私がリディアになってからこの城で過ごすようになったが……正直なところ、リディアの記憶の中にいる人達にどう思われるのかと怖くなっていた。そんな中、リディアとして過ごしている中でわかったことがある。私自身、リディアの記憶があるものの……、記憶の中にあるリディアと同じ感情を持つことはなかったのである。だからこそ、今までは、自分以外の人間がこのリディアをどのように見ているのかと不安を抱いていた。だがリディアのお母さんの話を聞いたことで私の中の考えが少し変わったのである。そして私はある決意をすることになる。そのきっかけになったのはリディアの記憶の中に残っていたリヴァイアの言葉だった。その言葉をリディアの母さんが口に出していたことで、私は母さんの言い分を理解することができた。その事が私にとってはとても重要なことだった。


なぜなら……私とリヴァイアの関係を一番わかっているのは母さんだと確信したからである。それにしても、母さんに子供がいたという事実を知ることができて嬉しかった。だからこそ、この世界で暮らしながら自分の子供がこの世界で生きていけるような方法を模索しようと思ったのである。それにはやはり自分の子供の存在が不可欠だと考えたのだ。だから私は……自分が妊娠できるようにならないかを真剣に相談しようと思った矢先の事だったのである。突如この部屋中に爆発音のような音が鳴り響いたのだった。


私は何が起きたかわからずに戸惑っていたのだが、そんな私の前に現れたのはあの男だった。私はすぐにその男が誰であるかを理解したのだが、どうして彼がここに現れたのかが理解できなかった。その人物は、かつて私が殺し損ねてしまい、自分の体を犠牲にしてしまった人物である。だが、そんな彼は……この世界でも私を殺そうとしてきたのである。しかも……なぜかその男は、私の体に憑依しているレイを狙って攻撃を仕掛けてきた。


(どういうこと?この人はレイの命を狙いに来てる……。この人もやっぱりレイを殺したいんだ。じゃあなんのために?)


私は混乱しながらもその男の攻撃をなんとか回避したのだが、突然の出来事すぎて頭の中の整理ができなくなっていたのである。だけど……それでも目の前の敵に勝つために戦うことしかできないと思えたのだ。その敵が誰なのかわからないけど、少なくとも……私の命を奪おうとしてくる人物だということだけは理解できた。そしてその男に殺されないように戦わなければ、私の体が持たないことも察していた。それだけ……その男には力の差がありすぎたのである。そのせいもあって……今の私には、目の前にいる敵の情報がほとんどない状況である。そのため相手の目的がわからなかった。だがそれでも……その男を倒さなければいけないという事はわかっていたのである。その目的は一つだけだと自分に言い聞かせて戦いに挑むしかないとも考えていた。その考えに至った理由は一つだけあったのだ。それは、この世界で死んだ人間は、元の世界に戻されることが無いということに気がついたからなのだ。つまり、リヴァイア達から聞いた話から、リディアの体が元の世界に戻れなくなっているのだとわかる。それどころかこの世界からも戻ることができない状態かもしれない。その可能性に気付いたからこそ、この世界で死んでしまえば終わりなのだと考えたのだ。


だからこそ私は死なないためにこの敵を倒さないければならなかった。例えそれがどれほど困難なことであったとしても……。


俺達は今現在、この城の謁見の間に向かって歩いている最中である。そして謁見の間に到着してから数分が経過した時、目の前にいるこの国のトップであろう人物と顔を合わせることになる。


その人物の名前は……確か……、リヴァイアに聞いた限りは……アルヴィン・ハーシェルという名の人物であったはずだ。その国王と対面してから俺が自己紹介をしようとしたら、国王の方は俺のことをすでに知っているらしくて……逆に俺の名前を聞かれることになる。だが、国王が何故、俺のことをすでに知っていて名前を知っていたのかが不思議でたまらなかった。それ故に俺はそのことを尋ねてみた。すると……どうやら国王はこの国に召喚されてきた勇者達が全員この世界に戻ってきて……俺だけが戻ってきてないと知ってかなり驚いていたのだった。それだけではなく、その報告を聞いたリデアもかなりのショックを受けて精神的にも不安定になっているらしいので、早く俺に会わせて欲しいと言われてしまったのだ。


「そうですか……。確かに俺はその……リヴァイアの体を使ってこちらの世界にやってきました。でも……なぜ、俺が勇者じゃないと判断されたんですか?」


「勇者様方の実力を知っているからです。あなた方がこの国に滞在してからというもの……。あの方は一度も訓練場に現れることはありませんでしたから。なのであなたのことは……別の人間だと勝手に判断しました。それに……勇者様方を召喚したのは私でして……。その事実がこの国にバレると大変な事になります。勇者を召還したということが他国に知られれば、間違いなくこの国が戦争を仕掛けられる恐れもあります。なので勇者を他の国に知られるわけにはいかないのです。それ故に勇者様を騙して呼び寄せる行為も許されないのですよ。それに……リヴァイア殿とは知り合いでして。彼女の頼みであれば、私に断ることはできませんし、断らないつもりです。それにこの世界はリヴァイア殿が守ってきた世界でもあり、彼女はその世界で生きていた者でもあるため、この世界を守ってきた功労者の一人である彼女が望んでいる事はできるだけ叶えてあげたいと願っております」


どうやら、俺とリヴァが一緒にいるところをこの人が見ていたのならば勘違いするのも無理もない。俺もこの世界を守るためにリヴァと一緒に行動していたし、そのリヴァを救ってくれた恩人のお願いだから断りにくいのだろうと納得することにした。


それよりも俺はこの国王の発言を聞いて疑問が生じた。俺はこの人の言葉が真実だとしたら、このリヴァイアと面識があったのだと。そう思った瞬間だった。突然、俺の中にいるリヴァイアが話しかけてきてくれたのである。リヴァイアによると……どうやらリヴァイアはこの世界の管理者になった際に、自分の権限を駆使して色々とこの世界を好き勝手できるようにと裏工作をしていたようだということを聞かされたのである。


それを聞いて俺は心の中で呆れたような声を出していた。いくらこの世界に害を及ぼす者を事前に排除するためにと言ってもそのやり方があまりにも酷いと感じていたからだ。俺に対しての嫌がらせだと言いたいところだったが……。俺にとってリヴァイアの行動は本当に助かった部分もあると思って我慢していたのだった。そうしてしばらく会話を続けていたところで、リヴァとの話し合いが終わった直後に、突然部屋の扉が勢いよく開くと……そこにはリディアの姿を確認した。俺はその姿を久しぶりに確認したのだが……正直、あまり良い感情を抱かなかったのである。それは何故かと言えば、リディアが明らかに機嫌が悪いように見えて……この部屋に入ってくる前から不愉快な態度を示していたからである。そしてその理由は俺にはわからなかったが……その原因はこの場にいた者達の誰かだと感じていた。


そのリディアは不自然なほどに笑顔を振りまいていたが……どう考えても嘘くさい感じがしたのである。それに、いつもはおっとりとしているはずの口調と態度だったのに……今日に限っては少し荒っぽい感じになっていたのだ。そのことから何か嫌なことでもあったのかと考えていたのである。そんな中、リヴァイアの話を聞く限りではこのリディアという女性は自分のことを母親のように思っていたと言っていた。


そんな人物がこの国の人達を困らせる存在であり、俺達から大切な人を奪おうとした敵だと言うことに……、リディアの母親として思う所があるのではないかと考え始めていた。だからこそ……その件について詳しく聞くことにした。だがリディアからは思いがけない返事が返ってくることになったのである。それは……この世界での食料問題についてであった。リヴァイアがこの世界を守るのをやめたのにはもちろん理由がある。リディアに魔王討伐の依頼を出した後にリヴァイアは姿を消したのは……おそらくだが、リディアが自分の子供を身籠り育てるために姿をくらましていると思わせる必要があったのだろう。だが……その真相はリヴァイアがこの世界での暮らしが退屈になってしまいこの世界での生活に見切りをつけて元の世界に戻る方法を探していたため……リヴァイアはその方法をずっと探していたというわけだったのだ。


リヴァイアはリデアをこの城から追い出したかったのではなく、自分が元の世界に戻りたくて仕方がなかったのだということを知ったのだ。それならどうして俺達にそのことを伝えてくれなかったのかというと……、自分がこの世界を守らなければならない責任を感じており、その義務感に縛られていたのだと思われる。


俺達はその話を聞いて衝撃を受けていた。なぜなら、今までは魔王を倒すことだけを考えているのだと思っていたが、実は、魔王と戦う前に解決しなければならない問題があったという事に驚きを隠せなかったのだ。この国の民は皆……餓死寸前まで追い詰められているという話をリディアから聞かされる。その問題については……この世界の問題であるから自分達の力でどうにかしてほしいと告げられてしまい、リディアはこれ以上この問題に関わりたくないと言ったのだ。それはこの国の住人から恨まれるのを恐れているのかもしれないとも考えることが出来た。だからこそリヴァイアがいなくなった後の出来事なのに何もしなかったということが理解できたのである。


「そうですか……リディアさんが私達の世界を守り続けてきた女神様ですか。それで……リヴァイアさんから聞いた話によると……この国の問題はこの国だけで何とかしろということですか?この国で起きている問題を解決すれば私達を許してくれるってことでしょうか?その問題を放置したままだと……この国はいずれ崩壊してしまいかねませんよ?だって私達がいなかったとしても、食料がなければ人は死に絶えてしまいますからね。それは……あなたがたもわかるはずですよね?それでもいいと?私達はその問題を解決するための手段を知っています。その解決策を教えるためにも一度あなたがたの国を見学させてもらってもいいでしょうか?そうですね……二時間くらいあれば全てを見回る事ができると思うんですが?それにしてもあなたがたがここまで無知な人だとは知りませんでしたね。リヴァイアさんはこの世界のために必死に尽くしていたっていうのに……それを無視して追い出そうとして挙句の果てにはこの世界から立ち去るなんて……。リヴァイアさんの苦労を全く考えていない証拠ですよね?そもそも……こんな状況でリヴァイアさんを連れ戻そうと考えたのもリヴァイアさんの気持ちを理解していないからだと思うんです。そうでなければ……リヴァイアさんの居場所を探し出して連れ戻すのが一番正しいと思いますが……それをしないのは何ででしょうねぇ?」


リディアがこの国の王に向かって怒りをぶつける姿を見ながら、俺達はその光景を見て驚いていた。それは普段温厚な印象を与えてくる女性がここまで感情的になって怒ってくれる姿を見て、感動に近い感情を抱いたのだった。そして俺達はその後、謁見の間でリディアと一緒にいた者達と共に城を散策してみることになった。そのメンバーは、この国の王子様であるアルフレッドと、その妻になるはずだったマーガレットとその娘で俺達が救ったアリス・アーレントだった。だが、リヴァイアを救ってくれたリヴァイアと旧知の仲でもある王女のマリアは、体調が優れないと言って部屋に残ってくれることになり、この城に泊まることになる。そして俺はこの国に何日いるのかを聞かれたので答えたところ、この国に滞在してもらう間、この城に住んでもらいたいと申し出を受けることになる。俺は当然のことながら断ったが……その時にこの世界の状況をリヴァイアから聞かされたことを話す。すると国王はこの世界に滞在することに同意してくれて、城の客人として扱われることとなったのである。


俺はその晩に……国王からこの国が置かれている危機的な食糧事情を改めて説明されるのだった。それはこの国で取れる食物が年々減少しているという事実だった。そして、その原因についてはすでに判明している。この国の領土内にあるダンジョンと呼ばれる場所に生えている果物が原因だったのである。そのせいでこの国が危機に瀕していることに、俺はすぐに気づくことになったのであった。俺はそこでそのダンジョンに生えていた果物を食べてから体調を崩したという女性に会いにいったのだが……どうも彼女は俺が思っていたような症状に陥っていないようにも思えるのだ。その理由を尋ねると、彼女はある特殊な食べ物しか口にできないので他の物では体が受け付けなくなってしまったという話をしてくれた。そのおかげで今は病気を患うことはなく元気で過ごせるようになったらしいが、他の者と一緒に食事をすることはできないので不便だと愚痴を言う女性だった。俺はその女性の事を不愉快だとは思わなかったが……どうにも俺には違和感があった。


その理由はどうもリディアの話が気になっていたからであろう。そのことについてこの場で質問をしてみると、やはり、リヴァイアの話が真実であることがわかった。つまりは、今の状況を作り出しているのはこのリディアだと言う事が発覚したのである。その言葉を聞いた瞬間、俺は心の底から憤りを感じた。そしてこの国を救うためにはこの原因であるダンジョンを攻略しなければならないということになり、リディアも共に行動してくれる事になった。そしてその日から三日後に……俺とこのリヴァイアと知り合ったリディアと仲間達はダンジョンに挑戦する事を決意する。そして……ついにこの世界の新たな物語が動き出す事になるのである。


この世界に魔王が現れたことで、俺は自分の意思とは別に……異世界の勇者としてこの世界で生き抜くことになった。そしてこの世界は、人間達の力によって滅びの運命を迎えようとしていることを知り、リヴァイアを魔王から救い出すことを決めたのである。


この世界での生活を始めた当初は色々と大変だったが……ようやく落ち着きを取り戻し始めた。まず最初に問題になったのは住居についてだ。元々の世界で使っていた一軒家が残っていたらそこに住むつもりだったが……この世界では、家を手に入れるだけでも相当な費用がかかってしまうことが判明した。しかも俺が元住んでいた家は……俺がいた世界にあるわけなのでこちらの世界でも存在してはいなかった。それどころかこの世界での家を入手することも非常に難しいことだったりするわけで……その問題を解決するには、冒険者に依頼を出すか……それとも自分で造るかの二択しかないようだった。


俺は悩んだ末に、まずは家を手に入れようと決心したのだが……ここで思わぬ出来事に遭遇することになる。そのきっかけとなった人物は……リディアの母親だというこの世界の女神を名乗る存在であるリヴァイアと名乗る人物だ。この女性は俺の元の世界にいる女神リリアの本当の母親であるというのだ……。それを聞かされた時はさすがに俺も驚くしかなかったが……、彼女の話を聞いて納得することができたのである。それは俺が元の世界に戻れなくなった理由でもあった。彼女がいうには……この世界と向こう側をつなぐことができる唯一の存在でリヴァと呼ばれているというのだ。


だがリヴァは自分の息子であり、この世界を管理しているリリアのことを嫌い、この世界を自分が支配する世界に変えようとしたため……元にいた世界に干渉することが出来なかったのだというのだ。そして俺と出会ってから……この世界の救世主だと知るとリディアの前から姿を消したらしいのだ。この話を聞いた時には驚いたし信じられなかったが……リヴァイアの話を信じなければ何も解決しないのは間違いなかったのである。だが、どうしてそこまでしてこの世界を支配したいと思ったのかはわからなかったが……、とにかくこの世界で起きてしまっている問題を片付けることが最優先事項になったのである。そのためにはリディアの力が必要だった。だから……俺はリヴィアの望みどおりに魔王を倒しに行くことに決めたのである。そしてリディアの口から聞かされた事実……リヴァイアが自分の子供を身籠り育てているという衝撃的な発言だった。


(まさかあのリヴァイアが……子供を産んで母親になっていたなんてなぁ……。まあ……見た目からして二十歳前後に見えるんだが……実際はいくつなのか聞いてみたかったけど……それはまた別の話だよな。)


そんなことを思い出しながら俺達はリヴァイアの知り合いの女性……、この国の第二王女だったマーガレットとその娘のアリスと会うことになった。マーガレットは金髪の長い髪に赤い目をしていてお淑やかな感じの人だった。その容姿を見た俺はすぐにリヴァイアと姉妹なのだと言うことに気が付き、俺達はマーガレットの案内で、城内を探索することになったのであった。


マーガレットに案内されて、城の中を一通り見回り終わった後に、俺とレイは客室に通されることになり……俺とマーガレットとアリスの三人が、一緒に部屋の中で話をすることになった。俺達はリディア達が来るまでの間……お茶をしながら会話をすることにする。だがその前にマーガレットに聞きたいことがあったので尋ねてみると……。


「ねえ?リデアの事は好き?」


いきなり予想外の事を聞かれてしまい、思わず顔を見つめてしまうのであった。なぜリデアの事が好きかなど聞かれたかがわからなかったからだろう……。俺はしばらく考えた後で答えることにした。すると俺の言葉を聞いたマーガレットの顔が少し赤くなったかと思うと、今度はリディアの方を指差して俺達の関係についていろいろと質問してくる……。そして、最後には俺に抱き着いて来て頬ずりまでし始める有様だったので俺は苦笑いを浮かべる他はなかった。


マーガレットが落ち着きを取り戻した後、ようやく話の本題に入ることになった。この国で起きた食糧不足はリヴァイアがいなくなってから発生したものだった。リヴァイアはこの国に生きる人々のことを一番に考えており、自分がいなくなった後の事を考えて食料や道具などを事前にこの城の中に備蓄していたという。だが、それも長くはもたない。食料も無限に湧き出すものではなくいつかは必ず尽きるからだ……。そして、俺はそこでこの世界の問題を解決するためには食料問題を解決することが一番早い解決策だということを理解する。その事を話し合った後に……マーガレットからとんでもない提案をされるのである……。


そしてマーガレットの提案を断ることはできなかった。なぜなら……その提案とはリディアの妹であるリディアを連れてダンジョンを攻略に行ってもらいたいというものだったからである。確かに、俺が持っているスキルの中には、俺自身だけではなく仲間に効果を及ぼすものがあり、その中には俺の能力を向上させる効果があるものがある。しかし、俺はリディアのレベルがまだ低いうちはダンジョンに挑むべきではないと思っていたのだ。その理由は、ダンジョンには様々な罠が存在していてレベルの低い者を足手まといにしてしまう可能性があったからだ。それはたとえ能力を上げることが出来たとしても変わらないのである。だからこそ俺はまだこの国のダンジョンを踏破することは避けておきたかった。そしてマーガレットの願いを断り続けていた時だった。リディアの妹のリヴァイアが部屋に訪れてきて俺達はリヴァイアと話し合いをする。そこでリヴァイアはこの国の現状を知っており、このままではいずれこの国は滅ぶだろうと話すのである。そこで、俺はこの世界の現状を知るために、リヴァイアを王都の外に出してもらえるか尋ねることにした。その質問に対して……マーガレットの母親が答えてくれてリヴァイアがリディアに会いに来ることになったのである。


リヴァイアと会った時に、俺はリヴァイアが俺を試していた事に気が付くことになった。リヴァイアは……俺が元の世界に帰れないと聞いたときに悲しんだが、その理由までは教えてくれなかったという。その理由がリヴァイアの話では、リヴァイアを封印したのがこの世界にいる女神の一人だという事が判明する。そして俺はリヴァイアが女神リリアの本体だと聞かされることになるのだった。その言葉を聞いて俺が驚いているとリヴァイアは突然自分の胸に手を入れて何かを取り出してきたのである。そして俺の手に握らせたのは何の変哲もない白い布のような物だったが、それを触っているだけでなぜか懐かしいような気持ちになっていったのだ。そしてリヴァイアが言うにはこれを渡せばリデアは間違いなく喜んでくれるはずよと言ってきたのである。俺はその布をじっくりと見ながらこれがいったい何なのかを考えていた。


俺がその謎の布を見ている最中、マーガレットの様子が急変した。彼女はまるで熱に浮かされているように顔を真っ赤にしながらリヴァイアの体に触れようとしていたのである。俺はその様子から異常だと感じ取りリヴァイアの方を見てみると……彼女は微笑み、大丈夫だからとつぶやくのである。その瞬間俺はすぐに理解できた、この女性もまたこの世界を管理する女神であるリヴァイアと同じ力を秘めているということを……。


その言葉の意味を理解した俺は、急いでリディアに連絡を取り事情を説明した。俺の話をすぐに信じてくれたリディアのおかげで、すぐにリディア達が来てくれる事になり一安心することになるのだが……。


俺の連絡が終わると同時にマーガレットは俺の体を舐め始めたのである。しかもその行為は段々と激しくなり服を脱がし始めたのである。俺が驚き戸惑っていると、リヴァイアが俺と彼女の行為を見守っているだけだったのだ。そして俺はリヴァイアが何を考えているのかを理解する事になる。リヴァイアの体に視線を移すとリヴァイアが身に着けていたはずの服がなくなっており裸になっていることが発覚した。


つまりリヴァイアは俺に自分の子供を産む手伝いをして欲しいと言っているのだという事がわかり俺は驚いたのである。その俺の反応をみたリヴァイアは、俺がこの国の為に協力してくれることが嬉しいと言い、さらに自分を助けると思ってくれとお願いしてきた。その言葉を聞いていたマーガレットが涙を流し始め、それを見たリディア達が現れるまで俺はその状況から抜けだすことができないままでいたのであった。


(くっ……なんなんだこの状況は!?リヴァイアに子供ができて……そしたら次は……その子供の母親を妊娠させるってどういうことだ?)


俺はマーガレットによって押し倒されていたリヴァイアを抱き起すと、彼女に回復魔法をかける。その後で服を着せるがリヴァイアは何も言わずただ俺の顔を見上げていたが……その姿からはいつもと違って余裕がなかった……。おそらく初めてなのではないかと感じた。そして……リヴァイアはその行為を終えると同時に疲れた表情を浮かべながら俺にしなだれかかる。そんなリヴァイアの肩に手を回して抱きしめるのだった。だが、そんな俺達に水を差す存在がいたのである。


そうそれは俺の娘であるレイだった。そして俺の側に駆け寄ってきたと思ったら、なぜかレイもリヴァイアに抱き着いて甘え始める。そんなレイの様子を見た俺はリヴァイアが本当にレイを産んだのか不思議に思うが……。レイの行動を見たリヴァイアが優しく笑っていた事からレイに本当の母親だと思わせているのはわかった。リヴァイアもリヴァイアで娘と再会できたのでとても嬉しそうだ……。その二人の様子を見ていたマーガレットが涙ぐんでいるのをみて、リディアとクレアが二人に声を掛けようとした時……扉が開かれてそこにリデアが現れたのである。そしてリデアは部屋の中の光景を見ると固まってしまう。


そして俺はリデアの視線が自分のほうに向かってくることに気づいたので、すぐにリディアから離れてリデアに近づく。すると彼女は無言でリデアのもとに近づいていき……お互いが何も喋らない状態で見つめ合っている。その様子からリディアは俺の娘ではないと気づいているようであった。


リデアと目が合った俺はすぐに彼女が怒っているのではないかと予想してどう説明したものかと考えていたが……そんな事を気にせず、なぜかリディアではなく、リデアが俺の腕の中に飛び込んできたのである。そしてリデアはリヴァイアに近寄ると彼女を強く抱きしめるのであった。俺はそんな二人のやり取りを見ながら驚く。


リヴァイアは自分が産んだレイに抱き着かれて幸せそうな顔をしているのに対し、リディアは自分の娘のはずなのに、抱き着くどころか、目を合わせることもできない。もしかしたら俺と同じように記憶がないのかと思い……俺が質問しようと声をかけようとしたが、それよりも先に……リディアの声が聞こえてきた。その言葉を聞いた俺や久遠達は……リデアの妹がすでにこの世界に存在している事を知ってしまう……。そしてこの世界の食料問題を救う為にある提案を受けることになった。それはダンジョンを探索することだった。ダンジョンの中は危険な魔物が多数存在し、食料になるような物が沢山あるとリヴァイアは説明するのである。だがダンジョンの入口まで移動するだけでも時間がかかり、この国の問題を解決するまでの時間を稼げるかどうかが怪しいと……。


だが……この国の現状を詳しく知った以上、俺達はその問題をなんとか解決したいと考えたのである。その結果、リデアの父親に話を持ち掛けられてしまい、ダンジョンに潜る事になってしまうのであった。


それから俺とクレアは、ダンジョンの中へと入っていくことになる。そこで出会ったモンスターはどれもレベルがかなり高いものであった。このダンジョンの最深部にたどり着くまでにどれくらいのレベルまで上げられるのか……。そしてこの世界ではレベルを上げなくてもステータスを向上させることができるが、それでもこの世界ではレベルを上げて強くなるのが当たり前のようになっていた。


その理由として……この世界の人間の寿命はとても短いからという理由があげられるだろう。人間以外の生物の中には寿命が長い者が存在する。だが、この世界で長く生きられる者は人間しかいない。なぜなら人間は魔力を持っている種族の中で最も弱いと言われているからだ。だが、その代わりなのか……この世界の他の生き物よりも知能が高かった。そして人間はレベルが上がると特殊なスキルを習得することが出来るらしい。それが【限界突破】である。


この世界の人々はこの限界突破と呼ばれる力を使って自分の能力を強化できるのである。限界突破とは、この世界の人間なら誰もが持っているスキルであり、どんなスキルなのかといえば……スキルの名前そのままの意味で……自身の能力の限界を超えて強くなれるというものだった。ただし……このスキルは誰でも持っているわけじゃない。そして限界を突破しなければスキルを覚えられないわけではなく、ある程度レベルを上げる事で自動的に覚えることができるものでもあったのだ。


だからといってレベルを上げるだけでは限界を突破することはできなくなってしまうのである。その理由はこのスキルを使用するためにはある程度の能力値が必要不可欠となるからである。レベルを上げるだけならばレベルの上限を超えることはできない。そして上限は100まであると言われていた。


だがレベルを上げる事と限界を突破する事は違うと俺自身は考えている。例えばレベルの上限を超えた時に得られる経験値は通常の倍以上に跳ね上がるのである。だから、俺は限界突破を覚えるまではレベルを上げることに意味はなく、限界を超えないとダメなのだと考えているのだ。レベルを上げるのはあくまで能力を向上させる手段の一つに過ぎない。だから限界を超えているからといっても能力上昇の幅は少ない。


だから限界を突破したいのであれば、まずは基礎能力を高めていく必要があった。その方法も色々あり、一番メジャーなのは武器と肉体の鍛錬である。この世界の戦士達は皆、鍛え上げた腕力と、それに裏打ちされた技量によって敵を圧倒する。俺自身、この世界に来るまでは、そういった方法で戦いを潜り抜けてきたと思っていたが、実は俺の戦い方の方が珍しいのかもしれない……。


だが、この世界の住人は生まれつき身体能力が高く、それに加えて特別な才能を持った者がほとんどだった。この世界の人達の強さは単純にレベルだけで決まるものではないのだ。もちろんその人自身がどれだけ努力してきたかも重要な要素であると言える。俺の場合は……リリアのおかげでチートとも言える強さを得ることができたが……俺と同じような存在はほとんどいないと言ってもいいだろう。そしてリヴァイアがいうには……この国にはレベル200を越えた人間が数人おりその中でも頂点に近いのがリデアだという事だ。


ちなみに……リデアには俺達が来る前に、女神の本体から俺の事を聞かされていたらしく……だからこそ彼女は冷静でいられたと思える。リデア自身も俺達がどういう存在か知っているようで、特に俺とクレアに対しては好意的に接してくれていた。その事に関しては、リヴァイアに感謝しかない。おかげでスムーズに事が運んだと言っていい。


(それに比べて……このリデアの妹はどうしてこんなにも攻撃的に……。いやこれは嫉妬なのか?どちらにせよこのまま放置していたら面倒な事になる予感しかねぇぞ)


リデアの妹は俺達の前に現れた瞬間、いきなり攻撃を仕掛けてくる……。そして俺と戦おうとするのをやめて逃げようとするのだが……リヴァイアに捕まり動けなくなってしまったのである。リデアが助けてくれなければ……俺はその攻撃を受けていたと思う……。そう思いながら俺達は逃げる事を諦め、戦う準備をするしかなかったのである。


そして……今の状況だが……。リデアの妹のレイナの攻撃を防ぐ事に俺やリディア達は手いっぱいになりつつあった。しかも攻撃に込められている殺意は本物であり一撃でも食らったら俺達の体はバラバラになるのではないかと思えたのである。それだけに油断ができない相手だった。俺やリディアは何とか防御に専念しリヴァイアに回復魔法を掛けてもらいレイナの攻撃を防いでいるが……。他の者達はそうもいかない。リヴァイアの回復魔法を受けられなかった者達はその身を守る事が精一杯の状態だったのだ……。そんな中でクレアは持ち前の速さでなんとか攻撃を回避していたが……クレアも回避に必死になっているせいで反撃に移る余裕はないように見えた。


(やっぱり……この子は強い!私達全員を相手にして……ここまで押されるとは……。これが……勇者の血を引く者の実力ということなの?)


私はそう思うのだけど……私に襲いかかってくるレイナがあまりにも異質すぎて……。正直、恐怖心が私の体を支配する寸前の状態まで追い込まれてしまっていたのである。


そしてリデアの妹とクレアが互角に渡り合っていた時……私の前にあの女性が姿を現す。女性は笑顔を浮かべるとこう言い放つ。そして女性の言葉を聞き終わったと同時に、リデアの妹の気配が変わり……。一瞬にして女性の目の前に移動して蹴りを放った。


だがリデアの妹が放ってきた蹴りを簡単に受け止める女性を見て驚く。


(え!?あれを軽々と……。って……もしかしてリデアと同じ転生者で、それも勇者の血筋を引いている存在だったりとかかなぁ?)


リデアの妹の放った蹴りを片手のみで受け止めるその姿に……そんな事を思っている最中も二人は戦いを続けている。そんな光景を見ている中、女性は突然私達に話しかけて来た。その内容はこの国の食料問題を解決するために力を貸してほしいと言うものだった。その話を聞く限りリデアの妹が暴走しているように見えてもこの人はこの状況を打開しようとしていて、その為に行動しているのだろうと思わされる。


「あなた……その剣をリディアに預けてもらえないかしら?」


そんな言葉を言ってくる。確かに彼女の言うとおり、この魔剣があれば私が持っているより、彼女に託した方が役に立てるのではないかと考える。そしてこの場から離脱するためには、今はこの人の話を聞いて、その後で行動に移した方がいいと思えて、リディアに相談するとリディアはその言葉に素直に従いリディアは彼女に自分の持っている魔剣を手渡すのであった。


俺はこの世界で目覚めた後……なぜか体が軽く感じて動きやすくなっている事に気づく。俺は試してみようと走り出してみると、かなりのスピードを出す事ができたのである。その事実を知った俺は、今までは無意識にセーブされていた身体能力が、完全に解放されたような感覚に陥るのであった。


そして俺達は……リヴァイアから説明を受けた後に、ダンジョンの中へと向かうことになった。この世界に来た時は、まさかこの世界を救うためにダンジョンの中へ入っていくことになるなんて夢にも思わなかったけど……リヴァイアの話だと俺が手に入れた【魔石融合】を使えば、大量の魔物の魔石を取り込み力を増す事ができると言っていたのを思い出す。


(この力でダンジョンを攻略すれば、食料の問題も解決できるはずなんだ……。頑張らないとな……。)


俺がそんなことを考えていた時、急に立ち止まったリデアが口を開く。その言葉を聞いた俺はリデアに確認をとると、彼女は俺をじっと見つめながら答えてくれた。リデアの妹が持っている魔剣の力についてである。彼女はリヴァイアに言われていて……その力を使うつもりはなかったみたいだ。その理由がなんとなく理解できてしまった。それは俺自身……彼女が何をしようとしているのか分かってしまったからである。その力は、彼女自身の体を壊すと聞いてしまえば、無理矢理使う事など出来るはずがないと俺は思ったのだ。その話を聞いた俺は、その話を止めるべく説得しようとするのだが、その途中でリデアの妹が襲い掛かってくる。それからすぐにリデアは妹の行動を予測しており、リヴァイアの方に妹を投げ飛ばしてしまう。だがその直後の出来事だった。突如現れた謎の男がリデアに投げ飛ばされたリデアの娘を受け止めたと思ったら……。次の瞬間、男の手刀によって気絶してしまうのである。そして男の姿を見て驚愕の表情を見せたクレアだったが、リデアはすぐに意識を取り戻していた。そして自分の妹を抱きかかえる謎の存在が何者かを確認しようとした矢先だった……。


「リヴァイア様!大丈夫ですか!?」


「リリィ!」


聞き覚えのある名前を呼ぶ声を聞き、リデアは急いで娘の元に向かい抱きしめる。そして抱きつかれた娘が目を開き、何が起きたのかを確認すると「姉さん……。この方は一体……」と口にするのだった。そんな様子のリデアに対して、この男は自分が何者かを説明する。それを聞いたリデアは「やはり貴方が居てくれれば……。」と言いつつ俺の方を見るのだった。そしてこの世界の魔王を名乗るその人物に対し、「貴方が魔王なのか?それと……その隣の女性と男性は一体……。リデアとはどのような関係なのだ?」と言葉にする。それに対して魔王と名乗った者は、「まず……魔王と名乗っているが……魔王ではない。俺自身はそう名乗っているが、本当の名は『レイナ』というものだ。そしてこっちにいる2人は俺の家族だよ。」と答えるのであった。


だが、リデアの質問にはそれ以上の事を話す気は無いようで、俺はこの場で聞く事は諦めて別の事を尋ねようと思い……先ほどから俺のそばを離れずに、まるで俺を睨むかのような視線を送り続けているリヴァイアに話し掛けることにする。


そしてリデアにこの場の皆を集めてもらって話し合いをする準備をしてもらったのだが……。そこで俺は疑問に思っていたことを尋ねたのである。


「リヴァイア、どうして俺達を助けてくれたんだ?お前は敵側の存在じゃなかったのか?……それにどうしてこの国に来てくれた?それにさっき、どうしてレイナの姿になって俺に接触を図った?俺に頼みたいことがあると言ってたけど……俺にできることなのか?」


そう……なぜ俺の前に現れたのか分からないのだ。そして俺に頼み事があると言ってたが……。そもそもこの国にリヴァイアがやって来たのだって俺が理由だろう。俺はリヴァイアのおかげで、レベル上げをすることができて強くなった。だが、それでもレベルが足りないと思っていたのだ。そんな時にこの国にやってきたのだ。このタイミングの良さに疑問を感じたのだ。そして俺の言葉を聞いて、その事に気づいたリヴァイアがこう説明する。


その言葉に……俺はリヴァイアが俺の手助けのために来てくれているのだと感じたのだった。そしてリヴァイアから聞けば……俺が倒した勇者の末裔が持っていた剣を回収してきたのだと教えてくれる。この国の勇者は俺が倒し、その後にこの世界に現れたらしい。だが勇者の武器は、この世界に存在している人間に力を授けるための物だったので回収したそうだ。そしてリヴァイアは、この世界の人達が使っている魔力操作技術は俺の世界の人が作り出した物である可能性が高いと、その技術を俺に伝えにきたのである。


(リヴァイアがここまで親切心を見せて助けにくるくらいだし……。リディアが言った通り……俺はこの世界でかなり優遇されているってことなんだよな……。)


俺はそう考えながらも、リヴァイアの申し出を受けて剣の扱い方を教わる事にしたのだった。そんな話をした後にレイナは俺達を連れてある場所へと向かっていった。その場所はリヴァイアがこの国の勇者から回収しに戻ってきた勇者の装備が保管してあった部屋なのである。そんなレイナの後ろ姿を見ながら俺は考えていた。リヴァイアの事だ。彼女は間違いなく転生者だと思われるが……それならば俺と同じ転移者が他に居るのかもしれない。俺はそう考えているうちに目的地にたどり着く。その部屋の中を見たリデアは何かを察したような顔をして俺達に伝える。どうやらこの場所を知っているようだ。だがその説明を聞いて俺は困惑していた。何故ならこの部屋の中に俺が知っている人物がいて、その人物はこの世界の人間になっていたからだ。俺が戸惑っている間にリヴァイアが俺の目の前に歩いてきて、俺に説明してくれる。


俺の知り合いでここにいるのがリディアの義理の弟だという事。リディアに会わせて欲しいと言う。そしてレイナの事もリデアの妹である事を教えてくれたので俺は驚いていた。そんなリディアの弟である彼の名前は、『タクミ・ハルトマン』と言い……。リディアの妹はリデアという名前で……。2人とも日本人の名前をしていたからである。俺と同じようにこの世界で生まれ変わったらしいが……詳しいことは分からず……。ただ1人を除いては……。だが今はリデアの弟に構ってる暇はないのでリデアに「リデアの義弟は今どこにいる?」と尋ねると、案内されて義弟の元へ移動する。そして俺達はリデアの義弟と話すが……。その時の彼は俺を恨めしい表情をしていて、俺はリデアの弟に謝ることしかできなかった。


(リデアが……リヴァイアが居なければこの国は……。)


俺はこの時、初めてリデアがリヴァイアからこの国の事を託されたのだろうと思えた。この世界に来るまでは俺はリデアと関わりがなかったから……こんなにも早く俺の事を信用してくれていたと知ったのも驚きだった。


そんな事を思っている最中にも、リヴァイアは「俺も手伝うからさ。食料問題を解決しようぜ。俺の力は凄いぞー。」と言い出す始末だ。正直、今は食料問題を最優先に考えたかったが……食料問題も重要ではあり、この場にいた者達で協力すれば解決はできるはずだと思った俺は……リデアの弟に協力を要請する事にしたのである。


それから数時間後、俺はリヴァイアから色々とレクチャーを受けたのだが……正直意味不明だ。俺はリヴァイアから言われた通りに魔力の操作を行ってみた。すると……。リヴァイアは「うん!良いね!」と言っていたのだが……。リヴァイアの真似をしながら俺は魔法を使ってみたのである。だが……俺が使おうとした初級魔法の『ファイアーアロー』をリヴァイアに見せながら唱えると……。なんと……全く違う魔法を唱えてしまったのだ。俺自身が使うはずだった『ファイヤーアロー』とは似ても似つかないような火属性上級魔法の炎の矢が出現してしまったのだ。それを見たリヴァイアが俺に対して、「それが君に与えられた『スキルコピー&ペースト能力』の効果さ。」と嬉しそうに口にする。


そしてその後、俺が『ファイアウォール』を発動して見せて貰うと俺でも発動させる事ができた。しかもリヴァイアが使っていたものよりも規模が大きいものを……だ。リヴァイアが言うにはこの能力はチートらしく……俺はとんでもない力を手に入れてしまった事になる。そんな話の最中に、クレアもリヴァイアに対して自分の得意技である『アクアレーザー』を披露していた。


そんなクレアが自慢気にリヴァイアに向かって「ふふん♪私も少しだけできるわよ?」なんて言っていたのだ。そんな事を言うクレアに「お嬢ちゃん、本当にできるのか?」と聞き返すリヴァイアは、実際に使ってみてはどうかと促すのだが、クレアはリヴァイアの事を疑ったせいか、「私の魔法を見せてあげますわ!」となぜか自信満々な顔を見せていたのであった。


そして……リヴァイアが見せたのは『アクアキャノン』と呼ばれる、水の大精霊だけが使う事ができるという最強の必殺技らしいのだが……。それをなんとリヴァイアはその詠唱だけで成功させたのだ。そしてその攻撃範囲は俺達の前方数メートルくらいの所にまで及んだらしい。リヴァイアが使ったこの技はかなりの広範囲まで届く威力があった。それだけ強力な攻撃ができて……俺にはこの世界で最高レベルである20を超える攻撃力があると言われ、さらに防御力も高いという。つまりはチート級の存在だった。そんな風に思われていた時、俺は「そう言えば、レイナってなんで魔王を名乗ったんだ?この国に来た理由はなんだ?」とレイナに疑問を抱いていたので聞いてみる。


レイナの説明を聞いた俺達4人は呆れかえり……レイナに対する怒りが湧いてくるが……それよりも俺が疑問を抱いた事は……レイナはレベルが低かったのだ。だが、この世界で最強レベルの勇者に勝つほどの強さを持ち合わせていたという。それはおかしいのだ。俺はあの勇者と戦って勝ったわけじゃない。それにあの戦いで俺は一度死んだはずだ。そして生き返らせてもらっただけだ。その事をレイナに聞くと、俺はレイナにステータスを見せてもらうことにした。そしてそのレイナの数値を見た瞬間……俺は驚愕する事になった。


(あれだけの力を持っているのに……。俺達よりも圧倒的に数値が低いじゃないか!?一体どういうことだ……。これじゃあまるで……。この世界の人間の平均と大差がない。いや、下手したらそれより低いかも……。まさか、これが原因なのか?)


ただ、その事を深く考えたいが……。俺はこれから先を考えないといけない……。まずは食糧問題の解決をしなくてはならず……。リヴァイアの協力を得た俺は、俺のスキルと、久遠やレイナと相談しながら作戦を立てていったのだった。


俺はこの世界にやってきてから数日が経過したが……この世界では魔物を倒すことで経験を得られるらしいので……毎日、ゴブリンを討伐して過ごしていた。そして、ゴブリンの討伐を続けてしばらくすると……。ついに念願のレベルアップを果たしたのだ。その時に表示されたメッセージに書いてあったことを俺が読み上げていく。その前に俺はレベルが上がった時に現れたウィンドウに記載されていたステータスを見て驚くことになる。


====ステータス画面


伊武崎 真也 Lv1 職業 剣士 体力 100/110 攻撃力 152 魔力 102 素早さ 96 状態:異常無し スキル


『剣術Lv3』『体術Lv5』『槍剣闘術Lv2』『魔力操作LV2』


====


(よし!とうとうレベルが上がってきたぞ!!この世界にきて初めての経験値を獲得したからだろうな……。とにかく……これは……嬉しい誤算だな。これで、ようやく本格的に強くなれるようになったぞ!!)


俺がそう思うのも無理はないと思う。なぜなら、この世界に来てからの数日間はレベルを上げるどころか強くなるための経験値を獲得する方法を見つけることができず、ひたすら戦闘訓練を繰り返していたからだ。そんな事をしていたのだから……俺の気分は高揚しっぱなしだったのである。だが、そこで俺はあることに気づき……少し落ち込んだ。


(そうだ……。よく考えれば当たり前の事だよな……。俺はまだこの世界の常識に詳しくない……。だから知らないんだよ……。そもそもレベルってのはどうやって上げるんだろうな……。普通に考えれば……戦いの経験を積むことが重要になるんだろうか?……分からないけど……とりあえずやってみよう……。)


俺はそう考えて、ゴブリンの群れと戦う事を決めた。この世界のレベルというのは、俺がいた地球の世界とは違うみたいだ。というのも……地球でのゲームなどではレベルは上がった時の上昇幅や成長速度に差があるのは知っていた。俺がやっていたオンラインゲームの中でもそういう傾向はあった。なので……この世界でも同じ法則で物事を考えるのなら、やはり戦闘による経験値を得ていない俺は、他のプレイヤーと比べて成長が遅いということになる。だからこそ俺にはこの世界のシステムや、ゲームの仕組みなどの情報が必要不可欠だと思っている。


(まぁ……この世界ではレベルが上がるたびにステータス値の上昇率が上昇したから、俺は地球人の平均値よりも遥かに優れた身体能力を得ているんだけどね……。それに加えてこの世界で手に入れた武器のおかげで攻撃力だけは異様に高くなってるはずだ。ただ、この世界のレベルと地球のレベルが一緒だとすると……かなり不利なのは間違いないだろうな……。……まあ今は悩んでても仕方ないし、とりあえず目の前の敵に集中するしかないよな。……それしか……ないよね。)


俺の予想が正しいとするならば……このままの俺がレベルを上げていけば確実にこの世界の住民よりも強くなる事ができるはず。しかし……その可能性は低いと思う……。その理由は単純で……レベルが上がっているとはいえ……この世界で戦っている俺以外の存在……この世界の住人とそれほど変わらない強さだと思う。そうでなければ……この世界で生き抜いていけないし、仮に俺よりも強い者が存在するとして……その者たちもこの世界で生きているのだから。つまり、この世界は……レベル上げだけに専念しても生き残れないような厳しい環境という可能性があるという事だ。


俺の考えている事が間違っていたら……俺は間違いなくここで死んでしまう事になる。そんな恐怖が頭を過ったせいか、この異世界に来る前の事を思い出す。……あの時、久遠が死ぬかもしれないと思って必死に考えた結果、久遠を生かす事には成功した……。でも……その結果、俺は死にかけてしまう羽目になってしまったのだ。そんな出来事をもう二度と繰り返したくないと思った俺は……。俺は今一度気合を入れなおした。


俺は今まで以上に集中して戦う事を心がけると決めてから、すぐに動き出すと、ゴブリンに向かって突っ込んでいき、そのままの勢いでゴブリンを倒し始める。そして、数分間の戦いの末に俺はレベルが上がったという感覚を覚えた。その時に俺は思ったのである。「俺の勘違いかな……やっぱりレベルって簡単に上がるものじゃないのかもしれない。この調子じゃあ俺はいつになったらこの世界で最強になれるんだ?」と。その気持ちを抱えながらも、俺はまた戦いを始める。


〜数時間後〜…………


「うーむ。今日はこの辺にしとくか。明日こそは必ずレベルアップする!必ずだ!!」と自分に言い聞かせるように叫んだ。


俺がそう叫ぶのは理由がある。それは、俺が持っているアイテムが関係している。俺はこの異世界にやってきた初日にゴブリンを倒して得た経験値を使用してレベルを上げたが……それ以降、一度もレベルアップをしていない。つまりは……まだ俺のステータスには変化がなかった。それが悔しくて、つい叫んでしまったのだ。そして俺が帰ろうとしたその時だった。急に後ろから気配を感じたので、慌てて振り向くと……俺の後ろに巨大な影が見えたのである。俺は急いでその場から離れようとしたが……少しだけ反応が遅れてしまい、その攻撃によって吹き飛ばされてしまう。


(クソッ!!油断してた……。完全に意識がゴブリンに集中し過ぎて……。それに相手はレベル50程度のゴブリンキングだというのに……。)


俺が焦っていた理由はそのゴブリンにあった。このゴブリンはレベル50くらいの個体だったが、それでも今の俺にとっては危険なモンスターだと判断したのだ。なぜならこのレベルの相手に不意打ちを食らうということは、それだけ俺の隙が大きかったという事で……それはレベル差のある相手を侮っていた事に他ならない。だからこそ……俺は焦った。


(……まずは落ち着こう。大丈夫……落ち着いて冷静になればなんとかなる。俺はチート持ちなんだ。……絶対に勝てる。)


「よしっ!」と小さく呟いて俺は立ち上がると、今度は警戒を怠らず構えをとると……。俺の眼前に現れたのは大きなゴブリンではなく、俺よりも小柄な……人間の少女だったのである。その姿はボロボロで血まみれになっているが、とても綺麗な顔をしていて……俺より歳上のような感じを受けた。俺はその女性を見て驚いて固まってしまったのだが……そんな事をお構いなしという風に彼女は口を開いた。


「貴方……。このゴブリンを倒したの?」


俺はそう話しかけられて……言葉が上手く出ずに無言でいると……俺の様子を見て何かを悟ったのか、彼女の顔つきが厳しくなり、声にも力がこもる。そして彼女は俺に詰め寄って来て……服を掴みながら俺に聞いてくる。


「どうした?まさか倒したんじゃないでしょうね!?」


そう聞かれた俺は戸惑いつつも、どうにか答える。


「あ、あの……倒しましたけど……その……。助けようとしましたが間に合いませんでした……。すいません。俺のせいで……貴女が酷い怪我をしてしまわれて……」と。俺は自分が弱い人間だと言う事は分かっていたが、目の前の女性があまりにも美人だったので、その女性の視線から目を逸らすために、地面を見つめながら答えた。だが女性はそんな俺の態度に怒ったようで……掴んでいた手に力が入る。


俺は彼女に腕を引かれるがままに立ち上がり……歩き出した。彼女が言う。


「ついてきなさい……。まずは治療するわよ。それから詳しい話を聞かせてもらうから。覚悟しておくのよ……。それと……。私はあんたが思ってるような人間じゃあ無いからね……。その証拠を見せてあげるから……。私の家に着いたらまずはその体を治すのが先よ。……さぁ……行くわよ。」そう言った瞬間……俺の体が軽くなった。俺は一瞬驚いたがすぐにその正体に気づいた……。そして、俺は彼女の背中を見るのであった。


(あれは……魔力だ。……リデアと同じ現象だ。どういうことなんだ?)……リデアに体を操られた久遠と戦った時にリディアの魔力を使って戦ってみようとした時に同じような事が起きた。魔力は普通の人では扱えないらしく……魔力操作のスキルを持たない者は使うことが出来ないようだ。


しかし、俺の場合は……この世界の常識とはかけ離れているからなのだろうが……魔力を扱う事が出来るようになっていた。だから魔力を感じ取れるようになったのだ。俺が魔力の存在に気づいて驚ている間にも、彼女の歩くスピードはかなり早くなっており……置いて行かれそうになった俺は、全力疾走で彼女についていくことになった。俺は必死になって走ると、しばらくしてようやく街らしきものを発見することができたので……そこで彼女を待っていた。


彼女はしばらくすると俺の元へと戻ってきて……。「ごめん……。少し急ぎすぎたみたいね……。私も少しはしゃいでしまったみたい。とにかく……ここから先は馬車に乗りましょう。歩いていたら時間がかかるし、疲れちゃうでしょ。お金は……あるのよね?……なら安心。さあ乗ってちょうだい……。」と言ってきた。俺はそれに従うように馬車に乗ったのである。


(さて……。この世界の事情を詳しく知る必要があるし、この人に聞きたい事も沢山ある……。一体何者なのか……。そしてなんで俺はこんな状況になってしまったのか……。……とりあえず、この人が話してくれることを素直に受け入れてみよう……。それしか今の状況を乗り越える方法が見つからないんだからな。……)……俺はそう考えて、自分の思考を無理矢理変えることにした。そうする事で、何とかして気持ちが落ち着く気がしたから。


そんな時だった。俺は……不思議な光景を目の当たりにする事になった。それは、今まで俺が住んでいた世界とはまったく違った景色が広がっている世界。


その世界に驚きながら……俺はこれからの生活が不安になりながら、窓の外の風景をただ眺める事にしたのだった。


〜次の日〜…… 俺は目が覚めると、昨日の夜に寝る場所を貸してくれた女の人の家で目を覚ますと、すぐに行動を開始する……。俺はまずは自分の体の変化を確認する。それは、レベルとステータスがどうなったのかを確認したかったからだ。するとステータスには大きな変化があった。ステータスの値が上昇していて、ステータスの上昇率は上昇率の大きい数値である10倍になっていたのである。さらに、レベルも30程度まで上がっていてステータス値が大幅に強化されていたのだ。そしてレベルが上がりやすくなっている事から考えるに、やはりこの世界の人達よりも強い存在である事は間違いなさそうだと考えた。


(これならば……レベル上げをすればいずれは俺が一番強くなれるはずだな!よーし!早速レベルを上げていこう!!そしてその後は冒険者として活動するぞ!!)


そう決意してから俺はすぐに身支度を整えてから外に出ると……街の外へと移動を開始したのであった。


〜1時間後〜…… 俺は街の外でゴブリンを探して倒す事を繰り返すが、中々思うようには倒せなかった。理由として、ゴブリンが思った以上に素早い動きをする上に魔法を使う事があり、接近戦に持ち込まれてしまうことが多かったのだ。そのせいで……俺はかなりのダメージを負わされてしまい……なかなか先に進めなかったのである。


そして俺は今……休憩をしていた……。というのも……俺は今、森の中にいるのであるが、かなり広い森であり、その森で迷ってしまったのである。


(やばいな……。方向感覚も失い始めている。……それにしても……。やっぱりおかしいんだよな……。)……そう。今現在、俺が思っている疑問点があるのだ。この異世界に来たばかりの頃に俺は気づかなかったが、今思うと明らかにおかしな点がいくつもあった。その事を考えていると俺は少し考えがまとまって来ていたのだが……。


「おい……誰かいるか?いるのなら返事しろ!!俺はここだ!!頼む!!出てきてくれ!!」俺は助けを求めるように叫んだが……。誰も現れる様子はなかった……。


(どうなってんだ?……本当にここはどこだよ?それにどうして誰も出てこないんだ?)


俺はその事に混乱していたが……ここで立ち止まっていては駄目だと思い……立ち上がろうとしたその時だった。急に目の前が光だし……気がつくとその光の場所に俺が転移させられてしまったのである。


俺の目の前には見慣れた光景が広がっていた。俺はそれを目にして安堵する。


(良かった……。戻ってこられたんだな……。これでなんとかなるかもしれない……。でも、どうやって帰ればいいんだろうか……。)……俺はそんなことを考えながら目の前を見ると、そこには先ほどまでは居なかったはずの一人の少女がいたのだった。その少女は……金髪の長い髪をした……美少女と呼べる容姿をしており……服装は綺麗だったが、ボロボロになっている白いローブを身につけており、その手には先端に宝石がついた杖を持っていた。その杖に付いている宝石を見た俺は……この世界に来て間もない時に、リデアにこの世界で最強と呼ばれているモンスターが、その杖の宝石を持っていると聞いたのを思い出した。だからこそ俺はこの少女に話しかけたのである。


「あ、あの!!貴女がこの宝石を持っていますか!?俺に譲って欲しいんです!!この世界を救うためにどうしても必要な物なのです!!お願いします!!譲ってくれませんでしょうか?」


そう言うと少女は困った表情を浮かべる。


(あれっ?もしかして違うのかな?いやでも……。リデアが最強のモンスターがこの宝石を持ってるって言ってたような……。えぇ……どうしたらいいの!?マジで!?)……俺は少しパニックに陥っていた。そんな俺を見て少女は口を開く。


「あ、あの!!私を救おうとしているところ悪いのですが……貴女は何をしている人なんですか?」と。それに対して俺はすぐに答えた。


「俺は元の世界に帰ろうとしています。俺がここに迷い込んでからずっと考えていた事だったんだけど……全然方法が分からないし……もうダメかと思っていたんです。それで……俺は……俺の名前は結城竜斗といいます。よろしくおねがいします!」そう自己紹介をして、頭を下げる俺を見て少女も「私はエルザナと言います。どうもありがとうございます!」と名前を教えてくれて頭をさげてくれるので俺も同じようにさげると……。


俺はその行動に恥ずかしくなりながらも、なんとか顔を上げると……改めてこのエルザナはどう見てもこの異世界で出会った女性の中で一番可愛い子だと認識していた。だが……その事を考える暇も無く……。いきなり俺は謎の衝撃を受けてしまい意識を失ってしまうのであった。………….俺は目を覚ますとそこは薄暗い部屋だった……。辺りを見渡す限り石壁に囲まれているようだ。俺はそこで、自分の置かれている状況を理解しようと記憶をたどっていくと……。あの謎の光が目に浮かんでくる。俺は……あれによって別の空間に移動させられたのではないかと考えていた。


(くそ……。一体あれはなんだったんだ?もしかしたら俺がこの異世界にやってきた原因にも繋がっているのかも知れないし……。それにしても、あそこで俺は何を聞いたんだ?……あれから俺はどうなったんだ?そもそもここはどこなんだ?)俺はそう思いながら、体を動かそうと思ったが何故か動かないことに違和感を覚えてすぐに視線を落とすと……鎖で手足を拘束されていた。


俺はすぐにそれを外すために体を動かすものの全く外すことが出来ない。そして俺はその事について色々と考察を始める。まずは何故俺は鎖に縛られているのかという事から考え始めることにした。まず、この世界は俺がいた地球ではない。そう考えた理由は2つある。1つは……この世界に俺と同じ人間はいないということ。これは……リデアに言われたことだ。この異世界で人間が生きていくためにはレベルを上げないといけないらしく、人間は生まれつきレベルというものが存在する。レベルを上げる方法はその種族によって変わっており、人族ならば魔物を倒すことによって得られる経験値を蓄積することでレベルが上がっていき、獣人ならば身体能力を向上させることでレベルが上昇するという事だった。だから俺以外の人間は……少なくともこの世界には存在しないので、俺がこの世界では唯一の人間である事は間違いないだろうと判断したのだ。そして……もう一つの理由として……俺は今、魔力を纏って行動していない。普通であれば、体を覆うように魔導力を放出しているはずだ。しかし俺の体は覆われていないのだ。それはつまり……俺は今、魔導力が放出されていないということである。だから……この世界でも俺だけが魔力を持たない特別な存在であると考えられるのだ。……そして、その事実に気付いた俺は……すぐに自分のステータス画面を確認することにする。しかし……。


(な、何だよこれ???どうして……俺のステータス画面に文字化けが起きてるんだ?)……ステータスを確認すると、そこにはステータスが表示されていなかったのだ。そして代わりに文字が浮かび上がってきたのである。


・レベル:10


・ステータス(ステータスはスキルの欄を除く全ての項目が表示されず、スキルの表示がされない為)


体力値:500000


筋力値:500000


耐久値:1000000


敏捷値:500


運 :5000


(え?何これ?何でステータスの数値が出てるんだ?それにレベルは10だって?しかも……なんでこの世界の住人よりも能力値が高いんだよ……。この世界の人達のレベル上限が10なのかもしれないけど……それにしてもおかしいだろ!!どういう事だ?)


俺は混乱しながらも考える……。確かにこの世界は地球のゲームなどとは違う……。俺はその事は十分に分かっていたはずだった……。なのにこの世界の理不尽さに俺はイラついてしまって冷静に考えられなくなっていたのだ。


そして……俺はさらに困惑してしまう出来事が起きるのであった。それは、この部屋に誰か入ってきたからだ。


(な、何が起きているんだよ!?本当に……どうなってんだよ……。)


俺はそう思いながら……現れた人物に視線を向けるとそこには、銀髪の長い髪の少女の姿があった。そして、その女の子と目が合うと……彼女は微笑みを浮かべたのだ。その笑みを見た瞬間に俺は思わずドキッとしてしまってしまっていた。なぜならば、彼女が可愛すぎたからである。彼女の容姿はとても美しかった。まるで女神のように美しいその容姿をしていて、瞳には深い海を思わせる青い輝きを放っているのであった。その少女を見た時……俺は心を奪われそうになっていたのだが……。すぐに思考を切り換えることに成功する。俺はこの世界が地球とは別の場所だと認識していたはずなのに……なぜか目の前にいる銀髪の少女の事を……俺の元居た世界にいた女性達と比較してしまい……つい比べてしまう。そして俺は思った。目の前の女性は……この世界で会った女性たちの中で最も美人なのだろうと……。


(な、なぁ……。ちょっとだけ聞いていいか?俺はもしかして、別次元に連れて来られたんじゃないのか?)と……。その質問に対して少女はすぐに返答をしてくれた。「貴方が仰っていることはよく分かりません……。ただ……私がこの城に帰ってきた時に突然見知らぬ男性が現れたのです……。その方は勇者と名乗っていて……私を見るなり急に抱きしめられて……。そのままキスされてしまいました……。その後……彼はどこかへ消えてしまいました……。」


(ん……!?ちょ、ちょっと待てよ……。急に男が現れて……この子を見た途端にキスしたって……それってもしかして……。)


俺は嫌な予感を感じていた……。だが……。俺が思案する時間も与えずに事態は動き出す。少女は急に俺の体に近づいてくると……体を俺に密着させてくる。俺は急な事で反応できずにされるがままになってしまっていた。


(うぉー!?な、なんなんだよ!?いきなりどうしたんだ!?)


そんな事を思っていても俺の体は硬直してしまい、動けないままでいる。そして少女は俺の顔を見上げるような格好になり……じっとこちらを見つめてきた。その表情には少し赤らんでおり、熱を帯びていて潤んでいるようでもあった。


(お、おいおい……。な、なんなんだよこの状況は……)


そう思うも、少女の吐息を感じれるほどに近くなっており……。俺自身も緊張のあまり動けない状況になっていると……扉から音が聞こえる……。そして……俺はその音の方向に視線を向けた時に見てしまった……。その人物が入ってくるところを……。その人物は黒髪をしており、その服装からしておそらく日本人だと俺は予想していた……。


「だ、誰ですか!?そ、そこに居る人は!!」


銀髪の女の子は、そう叫ぶとその人物に向かって警戒する……。それに対してその男性は俺達の方を向くと……ニヤッとしながら口を開いた。


「いやいや……別に邪魔しようと思って来たわけではないぞ……。ただ……。」


男はそう言うと俺を見下ろして言葉を続ける。


「そこのお前……。どうやってここに転移してきた?答えてくれれば危害は加えないと約束しよう……。」


そう言うと俺を見定めるように凝視し始める。俺は、男の言っている事が本当なのかを判断するために少しの間観察していたが……。何も分からなかった……。


(くそ……。こいつの目的も分からないが……とりあえず話さないことには始まらないだろう……。)


「……俺がここに転移したのは……恐らくですが、俺がここに転移させた人がこの城の中にいるんです。それで俺はその人の力によってここまで飛ばされて来たようですね……。ちなみに、俺は地球から来た人間です……。名前は結城竜斗と言います……。貴女の名前を聞かせて貰ってもいいでしょうか?」


俺がそう問いかけると、俺をずっと凝視している少女は何かを呟いているようだった。すると……男が口を開いて俺の名前を言い当てた。


「なる程……。やはり……結城真也の息子か……。道理で似ておるというわけか……。私の名は桐生宗一という……。宜しく頼む……。さて……私の事は知っていると思うが……一応、自己紹介をしておこうか。私は元の世界では……とある組織に所属しており……。まあ色々と裏の仕事を引き受けていた……。そして……その仕事の最中に、お前の母さんと出会ったのだ……。彼女に惹かれていった私は結婚を申し込み、結婚した。その数年後に生まれたのが……そこの金髪の女だ。……お前の父である真也は、私が妻と出会い惹かれたのは……私達が同じ能力を有していた事が原因だった……。……この異世界において私は、魔法と武術に長けた戦闘民族である獣人であるエルザナが相手でも勝てるぐらいに強くなった……。その力を手に入れる為に……魔王に戦いを挑んだ。……だが……その結果がこれなのだ……。……お前達は、この世界に迷い込んでしまった異世界人によって地球に強制的に戻されてしまう運命を辿ることになってしまうが……それについては今は話すべきではないからな……。とりあえず……お前は元の世界に帰れるように協力はしてやる。だがその前に確認しなければならない事があるのだ……。まずはお前のレベルを教えて貰おうか?」


そう言って俺に詰め寄ってくる男に対して俺は、


(なんだこいつ……いきなり自分の話をペラペラと……。……この世界の奴らはみんなこうなのか?俺が知ってる常識が通用しないんだけど……。まあレベルを教える事に特にデメリットも無いから教えておいた方が後々の為になるかな?)


と思ったので、正直にレベルを答える。そして、それを聞いていた銀髪の女の子は驚愕していたのだった。


俺は、目の前にいる二人を見て考えていた……。


この世界の事を全く理解出来ていない状態のまま、この異世界に連れて来られてしまっているため、目の前にいる二人の事について知るべきだと思ったからだ。だから……俺は聞くことにする……。


俺の目の前で座っている2人に色々と聞いてみるが、返ってきた返事はあまり良いものではなかった。なぜなら、この世界の人間には元々名前は無く、この世界に生きる全ての生物はレベルが上がる事によってステータスの数値が上がり、その能力によって個体差が生じるのであって、種族によって強さのランク分けをしているだけで、人間同士で優劣を付けるという概念はないそうだ。


この世界には、人間の他にも様々な種族が存在しているのだが、その中でも最も強い存在と言われている種族であるエルフはステータスが高いらしく。身体能力においては人間よりも優れているらしく、魔族とも対等に戦える実力を有しているとの事だったのだ。


しかし逆に弱いと言われる種族も存在しており。吸血鬼はその筆頭であると言われていて、魔族の中のトップクラスの力を持つ存在として知られているそうだ。その他の低位の魔族は人間と同程度の力しか持たないらしい。


(なんか思っていた以上に複雑なんだなぁ……。まあ仕方ないか。地球とは違うし……。って言うかそもそも俺以外の人間はどこにいるんだ??地球に帰った時に誰かに会う可能性もあるって事だよな……。そうなった時の為に俺自身の事も知っとかないと……。……よし!決めたぞ!!)


そう心の中で決めると、俺は改めて2人と向き合うと……ある事を質問する事にした。


「あの……いくつか質問があるのですが……。まず1つ目なのですが……。どうしてあなた方の名前は……日本名ではないのですか??」と質問をすると、


「私達のような特殊な能力を有した人間がいる国が存在する世界から来る地球人の方達の多くは私達と名前が違っているのです……。」


(ん!?どういうことだ!?つまり……地球人じゃないって意味にも取れる発言じゃないか……。どういう意味だ……。……ってまさか!?)


俺は嫌な予感を感じながらも……


「……それはもしかして、俺の想像通りの存在なら……別世界から来たって意味ですよね?俺もそういう風に捉えているんですけど……。」と言うと……銀髪の少女が「正解です……。貴殿の察しの通り……別世界よりこの世界に来るのはこの世界の住人ではありません……。それはこの世界を管理する神の手によって意図的に行われている事でもあると伝えられています。ですが……。なぜそのような事を行うのかまでは伝わってはいません……。そして……貴殿もご存じだとは思いますが……勇者として呼ばれた異世界の人達が元の世界に帰る時は強制的に送還されるようになっています。その理由は、この世界は……異世界からの来訪者を歓迎していない為であり、また……元居た世界では貴方達の存在は無かった事となっているはずです。そしてこちらからも、向こうの世界の人間がこちらの世界を侵略しようと画策していたり、こちら側の技術を強奪したり、この世界にとって不必要なものを持ち込んだ場合のみ、召喚されます……。そして……貴方はこちらの世界でも非常に強力な能力を持つ人物となります……。この世界に存在する者と比べて桁違いに強いはずです……。そのため貴方の事は危険因子と見なされ……こちらの世界に永住させる事を目的として……強制的に貴方の住む地球の座標を固定させて、強制的に帰還させられるのです……。」と衝撃的な内容を告げてきたのであった。


俺達の前に現れた人物……桐生宗一は……銀髪の美少女のエルザナに視線を向ける。


(うぉー!?めっちゃ可愛い子だな。年齢は俺と同じぐらいか?まあいいや。それよりも問題はあいつの目的だな。)


俺がそんな事を思いながら宗一に視線を移すと、彼は銀髪の美少女を見つめた後、再び俺の顔を見てきたので俺は少し嫌な予感がしつつも、彼に声をかける事にしたのである。


「なあ、お前は一体誰なんだよ!?それに俺の事をどうしたいんだよ!?お前の目的はなんなんだよ!?お前は何が目的でこの異世界に来ているんだよ!?……そしてなんでお前は……久遠の居場所を知っているんだよ……。なんなんだよ!!おい!!」……私は今お父様から放たれた怒気を含んだ言葉を聞き、恐怖を感じていた。


(お、お兄ちゃんが言っていた通りになってしまった……。私のせいでお兄ちゃんは……。そして……ミホちゃんは……!!)


そして私は……お兄ちゃんがミホコちゃんを殴ろうとしている姿を思い出してしまい……体が震え始めた……。


「ちょ、ちょっと!?なんでいきなりケンカになってるわけよ!やめてよね!私のために争うなんてやめなさいよね!!」と慌てふためいているお姉ちゃんの制止の声が耳に届いたが、ミホコちゃんと喧嘩を始めたお父様に意識を向けていたため、その言葉は全く私の耳に入って来なかった……。


「……うむ。私達の会話が終わるまで待っていてくれた事に感謝する。」と言ってきたので……「え?俺って待ってましたっけ……?」と首を傾げて答えると、「待っていないのであればそれで構わない。私とお前の仲だから気にする必要はない……。」と言われたのだ。


その言葉を聞いた俺だったが、「は?あんたが俺に何の用事があるっていうんだよ?俺と会ったことがあるって言いたいみたいだけど……初対面だよな?」と言ってみたが……その言葉を聞いて俺から距離を取った後に何か呟き始めて……、その言葉を拾っていくとその呟き声は次第に大きな声になっていった。


『お前に聞きたい事があるんだ……。』


『あぁ。俺も聞きてぇことがあったんだけどさ……。そっちの話が先だろう?俺はあんたのことを知らないんだ。まずは自己紹介をしてくれないかな?』


俺は念話で話した内容を伝えると……目の前の銀髪の男は急に顔が青ざめると同時に焦ったような表情になると俺に向かって叫んだ。


「す、すぐにここから逃げろ!!お前じゃあこの世界の奴には勝てない!……殺されるぞ!!!!」と言った瞬間だった……。突如地面が激しく揺れ始め、地震が起こったのである。


そしてそれと同時に俺はこの世界の異常さに気づくのであった。この世界の魔力量が……地球よりも遥かに多い事が分かると……


(この世界の魔法が使える人間ってどんだけ強いんだ……?)と思ったその時だった……。俺の後ろの湖から……突然巨大な魚が出現して俺達に襲いかかってきたのである。そしてそれを目にした俺は瞬時に判断をする。……


(これは……やばいかもしれない……。)と思い、この世界に転移する前に渡されたアイテムボックスに右手を入れ、剣を取り出すとそのまま刀身を抜いて構えたのである。……だが、その俺の目の前に、突如一人の少年が現れたのであった。俺はその光景を見た直後……全身が震えるのを感じるのだった。俺は現れた人物の姿を見て……驚愕する。そしてこの場にいる全員もその人物が目の前に現れるとは思っていなかったようで……口を開け、驚きを隠せない様子だった。


(……こいつは……。なんでここに……。って言うか、今の一瞬の動作だけでとんでもない化け物ってことが伝わってくる……。これが魔王って奴なのか……。そして……この圧倒的な強さを持つ魔王に勝つ事すら難しいと言われている勇者って存在は……いったいどんな化物なんだ……。)と。


「おい……この世界の人間。なぜこんなところに……?というかどうしてここに来た?」そう言った後、俺の方を見つめてきた。俺はそんな銀髪の男に対して……。


(この男が魔王……。……いや、でも違う……。この世界には本当に……。異世界からの来訪者がいるのか……。なら、もしかしたら、俺と同じような状況にある奴もいるのかも知れない。だったら……もしかして……。)


「ああ。この世界の人間に会いたくて、この世界に来たんだよ。まあ……本当はこの世界を救うように言われて連れてこられたってところなんだけどね。」


「この世界を救ってくれって頼んできた神って……やっぱりあんたか?確かリデアとか言ってたな……。それと、もう一人いたと思うけど……あいつは……どこにいるんだ?」と俺が聞くと、銀髪の美青年は眉間にしわを寄せながら俺の顔を見つめてきて、その質問に対する返答をしだしたのであった。


そして銀髪の男の口から発せられた内容は、俺が知りたいと思っていたもう一人の少女の行方についてであったが、その内容は衝撃的なものであった。それは、その少女は俺の目の前に存在している男によって殺されてしまったという内容だったからだ。


俺と銀髪の美男子のやりとりの最中に起こった出来事によって、俺は目の前の銀髪の男が強いということを理解したのだが……俺の前に立つこの銀髪の男……銀狼王 ヴェル・メイズは……俺を見て驚いているようだった。そして俺の顔を見つめると、少し考え込むような仕草を見せ……俺の顔を見ながら独り言のように「この感じは……。あの時の少年か……。」と小声でつぶやくと、続けて話しかけてきたのであった。


「おい……。どうしてこの場所が分かった?」


そう言われた俺は……「は? 何を言っているんだよ……。そんなこと……今は関係ないんじゃないか?」と言い返すと、ヴェルが「確かにそうだな……。」と答えたのである。


俺はこの時、疑問を感じていたのだ。それは銀狼王はどうして久遠の事を知っていて殺したのかと言うことである。その質問をするために、俺が質問しようとした時だった……。銀髪の美男子が俺に向けて話しかけてきた。


「まあ……いいだろう。……それよりもこの世界は危険なんだ。だから早く立ち去れ!」と、その言葉で俺がこの世界に来て抱いていた一つの違和感の原因を突き止める事ができたのである。


「なんでだ!?ここは異世界なんだろ!?異世界と言えば……勇者召喚されて、魔物と戦う為に異世界に来るはずじゃないのか!?それなのになんでこの世界には、勇者がいないんだよ!?お前らが異世界の来訪者をこの世界に呼んでおいてなんでだよ!?なんで、この世界が危険だと言えるんだよ!?」


「ふっ……。異世界の人間は馬鹿が多いみたいだな……。勇者が居ないと……なんでわかる?勇者はこの世界には居ない。勇者はお前達が来る前にこの世界にやってきた異世界の人間の事を指しており、俺達ではないんだが……。そしてお前達は……元の世界に帰る事ができるんだよな?だとしたら勇者なんて必要ないだろ。それに、元の世界に帰ろうとしている異世界の人間を殺すわけがない……。もし帰ろうとしている人間を殺そうとしてるんであれば……。俺が貴様を殺してやるよ。」と言って俺に殺気を放ってくるので、俺も銀髪の美男子に向かって「お前に殺されるつもりはない。俺だって……元の世界に帰るために必死なんだ……。」と俺が睨みつけるようにして言い返している時に、ミホコちゃんが大声を上げながらこちらに向かって走ってくる姿が見えたので、俺はその方向に目をやると、彼女は涙を流しているように見えた。そんなミホコちゃんの姿を見つつ、俺は銀髪の美青年に話しかける。


「お前に聞きたいことはまだまだたくさんあるんだ……。」と俺が言うと、その言葉に反応するかのように俺と会話していた銀狼王が突然、湖に飛び込んでしまった。


(この野郎……。俺が話をしている最中に逃げやがったな!?)と思いつつも俺は急いで湖に向かう。だが、ミホコちゃんも湖の方に走り出してしまったのが視界に入り、「待て!!ミホコちゃん!!行くな!!……そっちに行っても湖に落ちちゃうだけだ!!」と叫ぶが、ミホコちゃんはそのまま行ってしまったので俺は仕方なく湖へと入っていくことにした。……俺が水中に入るとミホコちゃんが俺を心配するように駆け寄ってきた。


俺は「大丈夫だ!それより、さっきの話は本当なのか?俺達が帰る方法がもう存在しないっていう事は……どういう意味なのか教えてくれ!!」とミホコちゃんが泣きながら叫んでいる言葉が聞こえたので……俺は、この世界に召喚された目的を果たすためにも……どうしても聞いておかなければいけない事がもう一つだけあったので、俺が銀髪の美青年に確認したい事を聞いてみた。


するとその言葉を聞いたミホコちゃんの表情が一気に青ざめた後、その目からは大量の涙が溢れ出てきた。そして、ミホコは地面に膝をつくと顔を手で覆いながら号泣したのであった……。


私……いや俺には、リデアやレイナといった大切な仲間や友達がいるし……そして家族もいるんだ……。……だが、もしかするとこのまま地球に帰っても二度と会えないかもしれないのだ。そう考えると不安でたまらなかった……。……だが……ここで俺は思った。なぜこのタイミングで地球に帰る話が出てくるのだろうかと……。


(なぜ、俺達の会話の内容が地球へ帰れるかの話になるんだ?……俺は、俺と久遠以外は全員が死んでしまっていて、帰る場所がないと言ったのにどうして……?)と思っていると、目の前にいた金髪美少女のお姉さん……いやミホノが急に顔を上げると……俺に向かって叫び始めた。そしてその言葉を聞き……俺と、そして隣にいる久遠も驚いた。……まさか……。ミホちゃんがこの世界の神に殺された少女……だと……?そして、この世界の人間には勝てないって……?そんなこと急に言われてもどうすれば良いのか……。俺にも、もちろんそんな力があるとは思えなかったが、とりあえず試すしかないだろう……。そう考えた俺は、剣を構え、そして……この世界の神から渡されたアイテムボックスに手を入れ、中から聖剣エクスカリヴァーンを取り出したのである。そして……そのまま俺は刀身を抜くと同時に目の前の少女二人に声をかける。「……危なくなったらすぐに助けるから安心しろ。……いくぞ。」と俺は言って地面を思いっきり蹴ると一瞬にして銀髪の美男子の背後を取ったのである。俺はそのまま剣を振ろうとしたが……俺は、俺が持っている能力で相手の力量を知ることができるということを思い出すと……。俺は、相手との圧倒的な実力差を実感してしまい……。俺が振り上げたまま固まってしまった剣は……銀髪の美男子の首筋ギリギリで止まっていたのであった。


(……くっ……!……なんだ……?この圧倒的なまでの……強さ……。俺が全力で攻撃しても全くダメージを与えられるビジョンが全く見えない……。こいつは……この銀髪の美男子の強さは何なんだ……!? こんな化け物が存在するのかよ……。いやまてよ……。俺はこの男に負けて……この世界に連れてこられたって言っていた。なら……この銀髪の男は俺よりも遥か格上という事になるのか……。俺はいったいこの世界に来て何をしてきたというんだ……。)


そんなことを考えていると銀髪の美青年は俺のことを見つめてくる。俺と目が合うと……なぜかニヤッと笑ったのだった。俺がその笑顔を見た時、嫌な予感がしたので俺がバックステップしようとしたら、いつの間にか俺の後ろに回ってきていて……首筋には刃が向けられており、そして俺の腹には手が置かれており……。俺は完全に拘束されていた。そして……。俺は、その刃を突きつけられて……。動けなくなっていた。……そんな状態の俺に、銀狼王は「おい……。俺を殺せると思ったか?俺はお前より弱い。お前なんかでは、俺を殺せねえよ……。だから……この俺に協力をしろ。お前はこの世界を平和にしたいんだろう?それだったら……。協力しても良いと思うがな……。」と言ってきたのであった。……銀髪の美青年は俺に対して、「協力をして欲しいことがある……。」と言い出したのであった。そして……その話の内容を俺とミホちゃんに伝える。その内容は、まずこの世界に召喚される前にあった出来事の真実だった……。……………… ミホちゃんの悲痛の声が響く……。そして私はミユキに謝ることしかしていないことに気づく。私はミユキの事を思うならばミユキの言葉通り、このまま消えていくのが正しい選択なのだと思っており、ミユキに幸せになってもらいたかったので、ミユキにはこれ以上関わってほしくないと思っていた。だが、私は気がつくとそのミユキの頬に手を伸ばそうとしていた。そんな私の行動を見たのか、私が伸ばしかけた手に、自分の両手を重ねて微笑みかけてくる。……私は、そんな優しく、そして寂しい表情をした、ミユちゃんの表情を見つめると……もう我慢できなかった……。私は涙を流してしまう。……するとミユキが私に抱きついてきたのだ。……だが次の瞬間だった……。私達の頭上に巨大な光の玉が現れたのだ。


その光景を見て驚くミユキ。そしてその光が弾け飛ぶと……。その中から、白い髪に青い瞳の女性が現れたのだ。


ミユキが突然現れた女性を見つめながら呟いたので、この人は誰なのか聞こうとしたが……突然、その女性が喋り出すと……。


その言葉を聞いた瞬間に、ミユちゃんが、ミユキに向かって叫んだのである。


そしてミユキも驚きのあまり、声を上げてしまっていた。そしてミウは、ミウが召喚されて来た時の状況について話を始めたのであった。


ミウの説明が終わった後もミユキとミホコは、まだ困惑しているのかお互いに顔を合わしている。そんな中で……ミウが説明した事に関しての俺の考えを言う事にする。俺は「まあ……ミウの話を信じようが信じまいが……どちらにしても俺はこの世界に来てしまう事になった原因を知っているからこそ、君達には元の世界に返してあげる事ができるんだがな……。」「本当!?」「ああ……。だけど、条件があってだな……。……その条件はだな。ミユキ……。俺の妹の久遠を一緒に帰らせて欲しいんだ……。そして、できれば……久遠だけではなくてミホコさんも……。俺は、三人を絶対に守りきる。そして必ず元の世界に帰してみせる……。約束しよう……。」と俺は言った。俺がそういうとミホコは泣き出してしまい、俺はそんなミホコを抱き締めて落ち着かせようとする。


「ありがとうございます……。」


そう俺にお礼を言ったミウが少し嬉しそうな表情をしていたのであった。


それからミユキに元の世界に戻るためのゲートを出すように頼んでみるのだが、その返事に困ったような顔をするだけであった……。そして俺の質問には答えずに黙ってしまったのだ。……だが……ミウはその会話で何かを思い出したようで……突然立ち上がりどこかに行ってしまったのである。……しばらくして帰ってきた時には、ミイちゃんの手には水晶玉があり……それにミウが手をかざすと光り輝く魔法陣が出現すると、そこから久遠と、ミケちゃんが出てきたのである。


だが、俺が驚いた事はそれだけではなかった。なんとミネコまで出てきたのだ。俺は驚いて久遠とミイちゃんにミホコちゃんを任せると、久遠とミホコを抱っこすると、急いでミケちゃんとミホちゃんを回収しに行く。


俺はミユキ達のところに戻ろうとするが、そこにはなぜかミホコちゃんしかいなかったので、「久遠達はどこに行った?ミユキ!!どこに行った?」と叫ぶと「えっ?久遠さんとミコトちゃんは……今、そこに居るじゃありませんか……。何寝ぼけた事言っているんですか?私ですよ。ミウです。あなたの妹です。」と答える。俺は混乱していたが、ミホコちゃんがミホだという事を知ってさらに混乱する。


俺はとりあえずその話を保留する事にしてミホちゃんを連れてレイヤさんのところに向かったのであった。そしてレイヤさんはミホちゃんの事を見ると驚いてはいたが、ミホちゃんだとわかると笑顔で迎え入れてくれたのである。


「さてと……これで揃ったみたいね。とりあえず……ミユキちゃん。さっきから気になていたんだけど、あの女の子をこちらに呼べないかしら?多分あれがあなたの妹だとは思っているのよね……。だから……。ねっ?お願いできないかしら?あとついでに、この国の王を倒さないと行けない理由も教えてくれるとありがたいのだけど……。」とレイヤさんが言うとミホは俺と久遠とミケちゃんのほうに向き直ると……俺達の目を真っ直ぐに見つてくる。そのミホの目に俺が見つめられている間だけ、時間が止まってるのかと錯覚してしまうほどの感覚に陥り、そのせいで俺はミホの目から視線が逸らす事が出来なかったのである。


俺がミホに魅入られていたその時だった。急に視界の中に、真っ白の髪に青の瞳を持った美しい女性が入ってくると俺に向かって抱きついてきたのだった。その女性に抱き付かれた時にふわりと漂う甘い匂いで俺は我に返りその女性を引き離そうとすると……今度はミユキが俺に思いっきり引っ付いてきたのだった。


そして俺の胸のあたりから「お兄ちゃん!会いたかった!」と言うと俺はようやく現状を把握することができた。どうやらこの子たちは双子だったようだ。しかも……。どうやらこの子が、久遠と、そしてその久遠が転生してこの世界で産み出した娘というのが、このミケらしい……。俺は、久遠の方を見て微笑むとその頭を撫でているとその横にいたはずのミケちゃんがいないことに気がつく。俺は周りを見渡したが、やはりいない……。まさか……。と思ってミシロを見ると、俺達が引き離された隙に逃げ出そうとしていて……。その逃げ出そうとしていた方向がちょうど……レイヤさんの所だったため……そのミシロを掴もうとするのだが間に合わず……そのまま捕まって連れて行かれてしまったのである。……そんな時だった、ミユキが大声で叫んだ。それは、「待って!!そいつを捕まえて!!……その子は私の妹なんだから!!!!!」という言葉に俺はミユちゃんの方をみると、ミユちゃんの目が、俺ではなくミシロに向けられているのが分かった。その事に気がつき、ミユキに目を向けるがミユキはすでに涙を流しながら「……うわーん。……お姉ちゃんごめんなさい〜。私も本当はお兄ちゃんと一緒に居たかったよぉ。……うわぁあああん」と言って泣いているだけだった。


俺は、ミホのほうを見るが、どうすれば良いのか分からず、戸惑っていたのだった。


それから俺は、ミユキとミホが、レイヤさんと、俺に抱きついて泣いてしまっているために……レイヤさんとミホが落ち着いて話すためには……ミケと久遠とリリスの4人を先に元の世界に送り届けてからという事になったのだ。…… ミケはレイヤとレイナにとても可愛がられながら……元の世界に帰る。その際には、レイアも同行することになっていたため、レイカとレイヤの3人でミネコと、久遠達を連れて行くことになってしまった。


その帰り際……。レイネとクロエの双子の姉妹は、泣きながら……「ミウちゃん……。また来てね。」と何度も言っており、「おねえちゃん。もう会えないのかな?」「大丈夫よ。必ず来るから……。きっと……。だって私も……。」


そして、そんな別れ際に、レイユはミウミに向かって微笑みながら手を差し伸べると、その手に自分の手を添えると……ミウちゃんが転移していった。


その後……。久遠がレイユ達の前で、久遠は、元いた世界に戻ると死んでしまう事をみんなに告げた。そして……。レイユはそんなミユキとミウを抱きしめると涙を流しており、久遠は2人に謝ると、「私はこの世界の神様として、この世界に戻ってくることになると思う。だけど必ず……。この世界を、私の子供達の住むこの異世界を守り抜くから……」と呟く。久遠がそう言った後、すぐに、ミケの目の前に光の玉が現れるとそこから、久遠が出てきたのであった。そしてミホちゃんのところに行って、「……ミホちゃん……。私を助けてくれてありがとう……。……この体なら私は生き返れる。本当にありがとう……。」と感謝を伝えたのである。ミケは涙を浮かべながらも「久遠ちゃん。良かったね……。本当に……。……ミウちゃんにも伝えたかったのだけど……ミウちゃんに、伝えて欲しいことがあるの……。ミウちゃんによろしくね。……ミウちゃん……。……この子を……頼んだよ……。」と久遠は言い残すと、ミケに微笑んで消えていったのである。その光景にミユは唖然としていたが、レイネは久遠を抱き留めると、ミウミとミウの2人は、久遠とミウの残したミコトの魂をしっかりと受け継ぎ……強くなっていく決意を固めたのである。


こうして久遠達は元の世界へと帰っていったのだった。ちなみに久遠達を送った後に戻ってきたミユキが俺にしがみつくと泣きだしたのだ。俺はその事に気が付き、ミユキの頭と背中をポンポンしながら落ち着かせてやる。ミユキが泣き止んだ後も俺はしばらくその体勢のままでいたが、さすがにいつまでもこうしているわけにはいかないと思った俺は「じゃあ俺は、俺の世界に帰らせてもらうが、何かあったらすぐ俺の所に念話を入れてくれ……。絶対に助けに行くからな。」と言ってミユキから体を離す。そして、俺も、レイヤさんに挨拶をして、レイヤさん達に見送られるように俺達は俺達の世界に戻る事にしたのであった。


俺達が戻る前に、この国での戦いに終止符をうった久遠とミケの事は国民に伝えられる事になっていた。そして、この国の王であるザビエルを倒したのが、久遠だという事も……。俺はミユキを腕から降ろすと久遠のそばに行って久遠の頭を優しく撫でる。


すると久遠は俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。俺はそれを確認すると微笑んでから、俺達の方に向かって走ってくるミネコちゃんの方に振り返り、ミネコちゃんの頭にも手をやり頭を軽く撫でたのだった。ミネコちゃんが少しだけ嬉しそうな表情をしていたような気もしたが……気のせいだったかもしれない。それから俺は、ミイちゃんを抱っこしてこちらにやってきたレイナのところに歩いていく。


ミケと久遠も、俺と久遠の様子を伺いながら俺に付いてきている。ミユキとミホもこちらに来るが……俺の顔を見るとなぜか急に不機嫌になる。俺はそれに気が付かないふりをしながらミユキにミイちゃんを渡すと「ミイちゃんを頼むぞ?」と言い残してその場を離れた。俺はそのままリリスの手を取り俺の部屋に戻ったのだった。


部屋に着くとまずはベッドに座っているミユキの元に向かう。そしてミユキに、「疲れただろ?今日は休め……。」と言うと、俺の言葉を無視して俺の隣に来て腰をかける。俺はそのまま隣に座ったが……。「どうだったの?……あの人……。」「ああ……。お前が俺の中に入ってきてから……意識ははっきりしていなかったから分からないが……少なくとも俺の記憶では、あいつからは……もう悪意のようなものは感じ取れなかった……。」と言うが……それでも納得いっていないらしく、ずっとむくれていて、それからは一言も話してくれなくなったのだ。仕方なく……俺はリリスを呼んでミユキの事を見ていてもらってから俺は自室に戻り休むことにした。俺が寝ようとした時、扉がノックされて……ミユキが入っていいかと聞くので許可すると、「お兄ちゃん……。ごめんなさい。……私がお兄ちゃんのこと好きなばっかりに……お兄ちゃんにあんな迷惑かけて……。本当にごめんね……。」と言ってきて……。俺はミユキに、「……ミユキが無事だったらそれで良いよ……。俺こそ……悪かった……。……心配かけちまったな……。」と言うと、 俺は眠気に耐えられずミユキの返事も聞かずにそのまま眠ってしまった。翌朝起きて、朝食の準備が出来ているとの事で食堂に行くとすでに全員集まっていた。そしてみんなが食べている時に、ミイちゃんをあやしていたミホが「昨日のあの男の人が誰なのか分かるまで……お兄ちゃんとは口も利かないって決めたんだ。」と突然言ってきたのだった。そのことにミユとレイカが慌てていたようだったが……ミユに関してはミユキを睨みつける始末だった。そんな状況を見て俺が困惑しながらも……食事を終えて、ミユキと一緒に学校へと向かう準備をしている最中に再び俺の部屋の戸がノックされるので戸を開けるとミユキの姿があり……。俺は戸の鍵を掛け忘れていたことに今更ながら気づくのだが……。ミユとレイカが戸を開けたことで……レイナは俺が男を連れていることに気づいてしまい。


その事にミコが反応した。「えっ!?︎……ちょっと!!︎……まさか……。あなた……。」と言うのだが俺は、何も言わずにそそくさとミユキと共に家を後にするのであった。俺の後を追うようにミユキも家を出て俺の横についてきた。ミユとレイナとミコとレイラとクロエと、そしてミユキが後を追ってくるが……。


そしてミユキは「あ、そうだ!……お兄ちゃん……ごめんなさい……。」と言うと……俺は気にしていないことを伝えると安心したのか笑みを浮かべて……。そのまま俺達は一緒に登校するのであった。しかしそんな様子の俺たちを見たミユキは不満そうな顔を見せると、「……なんで?ミユキはいつもなら私にこんなに冷たいのに。何でこの人だけ特別扱いをするわけ?意味分かんない。」と言って立ち止まるとその場で止まってしまうので俺はそんなミユキの横に並んで再び歩き出したのである。ミユキがふと横を見ると同じクラスの女子3人と……ミユキの親友である……ユウカとハルカとその2人に絡まれていた男子生徒がこっちに歩いてきていたので、俺はミユキに、「ほら……もう着くし教室行くぞ。」と言って先を急ごうとしたその時に「待ってください!」と言ってその4人の内1人が立ち止まった。


俺はその少女を見るなり驚いて「あっ……君は……あの時の……えっと……。」と動揺しているとミユキはその女の子に、「ミユキ知ってるもん。お兄ちゃんがこの子と喋っているところを何度も見たことがある。……だからミユキも知っている。」と言ったが……。


その女の子は、「……私は……お礼を言いたかっただけです。助けてくれたのに、ちゃんとお礼が言えなかったので……。私は……」と言う。その言葉を聞いてミユキは少し怒ったような顔をすると、「あんたのせいで……お兄ちゃんに嫌なこと思い出させちゃったんだから。謝れよ。」と言い始めたのだ。そんな2人を見ていた周りの人達がざわめき始める。


そしてその光景を他の生徒達や教師たちが目にした瞬間、教師は慌て始め、他生徒たちもその光景を眺めると騒ぎ出し始める。そしてそんな中でも、俺はその子の名前を必死に思い出そうとする。そして俺のその行動が周りから不審な目を向けられる中、俺が名前を思い出そうとしているうちに俺の前までやってきたその少女は「私は……。……久遠……です。」と小声で言い残すと俺の方を見つめてから去って行ったのである。その時俺は久遠と名乗った子の方を一瞬見ようとしたが、俺はミユキに引っ張られて教室に向かったのだった。


教室に入った後、すぐに俺は担任のところに向かうと、「あの……久遠という子は俺と何か関係があったのですか?」と聞くが先生は、「あぁ……実はその子も君の妹らしいのですよ。」と答えた。俺はその答えに驚愕しながら「……俺に妹がいた記憶は無いんですけど……。本当に俺の妹だと証明できる物は何かありますか?」と質問するが、「そうですね……この写真を見せてあげた方が良さそうね。少し待ちなさい。……あれ……どこいったかな……。……確かこの辺りにあったはずなのだが……あ、あったあった!……これ見てちょうだい……。」と一枚の写真を取り出すので俺がその写真を受け取ってその女の子の顔をよく見ると確かに面影はある……。


そして「確かに……。……どこか似ているな……。でも……。なんだろう……会った事があるような無いような気が……。」と俺は呟く。俺の態度にミユキと久遠以外の人は違和感を覚え始めていたようだ。それからしばらくして、久遠と久遠の友達が教室に入ってきたので、俺達は久遠の事を迎え入れたが……。久遠の友達が久遠と話をし始めたところで、久遠の様子が明らかにおかしいことに気づく。久遠の様子の変化を感じた俺はすぐに久遠のもとに駆けつけることにする。俺は久遠の目の前に回り込むようにして立つと……、「……大丈夫だ。俺がなんとかしてやるから安心しろ……。」と俺は声をかけた。それから俺達が教室を出ると……なぜか、クラスメイト達が廊下に出て来ていたのだった。久遠も、久遠の友人も……少し怯えた表情を見せており、それを見た久遠がさらに不安そうな表情を見せた。俺は久遠が少し落ち着くように抱きしめてあげると……久遠は少しずつ落ち着いたのか、「ありがとう……。」と言ってから俺に笑いかけたのだ。俺が久遠に笑いかけると……なぜか久遠も笑顔になったのだった。


俺はそんな久遠の頭を優しく撫でながら、「お前の兄貴になってやるよ。」と話すと久遠の目が潤み始めて泣きそうになる。俺は、「……大丈夫。お前のこと……嫌いにならないよ。」と言うと……また泣き出す。そしてそんな様子の俺と久遠のやり取りをミユキはじっと見ていて……なぜか少し怒っていたのだ。俺はミユキに声をかけると……「……別に怒ってないし。」とそっぽを向いてしまった。俺にはどうして良いのか分からなかったのでとりあえず久遠に視線を向けると……俺の目線に気づいた久遠は俺に微笑みかけてくれる。俺は思わず……可愛い子ってのは得なんだなと思った。


俺がしばらく教室の外で待機していると担任と教頭が現れ、俺達に職員室に来るように伝えてくるので俺達はそれにしたがって移動すると……。俺はその道中、あの子が本当に俺の義理の妹なのかを確認したいので……「ちょっと、いいか?聞きにくいんだけど、君の事について教えてくれないか?それと、俺との関係を教えて欲しい。」と言うが……、久遠が黙ってしまったために話が進まない……。俺は仕方ないので……ミユキを呼び寄せるのだが……なぜか不機嫌になっていたので……「悪い。ミユキも来てほしいんだ。」と言うと……俺の頼みごとを聞く気が無いらしく……。「ミユキが行かなくてもいいじゃん。それにこの人が嘘をついていなければ、本当のことだし……。……この人のことなんて、信用出来ないよ……。」と言って動こうとしなくなったのである。


俺が困惑している間に、久遠と俺とミユキ以外全員揃ってしまい……。結局俺と久遠とミユキだけが取り残されることになったのであった。俺達は職員室に案内され……そこで俺は教頭の席の前に連れて行かれる。するとそこには、俺の母親であるレイナと父親でもある真矢がいたのだった。


レイナとレイナは久しぶりに見る俺の姿に涙ぐんでいたが、レイナは……レイナとしての記憶は消えていても……レイジとレイコの息子であり俺の甥っ子のレイヤであるということだけは覚えているようだった。レイナが俺に抱きつき……。レイナの胸に顔を埋められてしまい、恥ずかしさを感じていると……そこに俺をここまで連れてきた男が割って入り……俺の両親に話しかけてきたのである。どうやら……この学校の校長であるとのことで……。レイナとレイヤが、その男に連れられて部屋を出て行くが、レイナが俺のことを呼んでおり、俺もそれについていくと、そこはレイナの部屋で、レイナは、俺を抱きしめる……。俺は、何も言えないまま……。されるがままに、されるしかなかった。俺はそのままレイナの部屋のベッドの上で寝てしまったようで……。目を覚ますと……俺は自分の家に戻れていたことに少し驚いたのだった。俺が起きると同時に家のドアを叩く音が聞こえて、玄関に向かう前に、誰かが先に出迎えに行ってくれたみたいで……。


「ただいま!」という元気のよい女の子の声と共に……俺はその子を見て驚いていたのである。俺の妹と名乗る女の子のミユキであることに気づいた俺は急いでリビングに向かい、母である、レイナの肩を掴む。「……俺の事を覚えてるのか!?︎」「もちろん!……私の息子の事を忘れるわけがないじゃないの……。」と涙を流し始める……。俺の後ろからミユキが俺の腰に腕を回してきたが……。ミユキの姿を見て俺は慌てて離してしまう……。しかし、俺のその行動に、何故か、悲しそうな顔をしたので……再びミユキに近づいて、「ミユキ……。」と一言だけ話した後は……。もう、俺は……そのミユキの姿を見ているだけで心苦しくなってしまって……。それ以上は何もできなかったのだ。それからは……父さんや母さんや、久遠と一緒に楽しく過ごした。俺はミユキに「これからもよろしく頼む。ミユキちゃん。」と言うが、久遠は不満そうにしており。俺は久遠にも同じように伝えた後久遠とも一緒に仲良く遊んだりしたのだ。


それから数日後のことである。俺は久しぶりに1人になりたいと家族にお願いをしてみた。最初は俺の話を信じてもらえなかったりしたが……。何とか説得することができた俺は、一人きりになると……俺の家に帰ってきたあの日のことを思い出したのだった。「お帰りなさいませ。あなた様のお荷物は全て届いておりましたよ。」と言う声に俺はその男の人に目線を向けてから「ただいま……。あぁ……久しぶりだな。」と答える。その男の名前は、ミケといい、俺が小さい頃、俺に剣を教えてくれていた人で……。俺にとっては師匠のような存在であるが……。俺が今よりもまだ小さい頃の話で……。ミケルという弟子がいたらしく、ミケロという名前らしいが、今は……行方知れずになってしまったらしい……。


「そういえば……。最近ミケロは見かけないな。」と言うと、ミケさんは、「……ミケですか……。彼は……どこに行ってしまったのでしょうね……。私も探していますが、中々見つかりません……。」と答えてくれるが、俺はそんなことを気にせず……ミユキや久遠のことを考える……。俺はミケさんの目をじっと見つめながら……。俺の考えを話すことにしたのだ。


そして話し終わった後、「まぁでも……大丈夫ですよね?」と尋ねると……。俺の考えを理解してくれたのか、「はい。そのようにいたします。では……また後ほど……」と言うのだった。そして俺が一休みをしている時に久遠が家に来た。「久遠……今日は何か用か?」と俺が聞くと……。「えっと……。今日は……遊びにきました。」と言うので、「そうか。なら……ゲームで遊ぶか?」と言うと、「うん!やったー!何するのかな〜?やっぱり……対戦ものかな?それじゃ……早速始めよっ!……えい!」と言い、久遠が俺の腕を引っ張ってきたので……。久遠に引っ張られながら俺は久遠とともにゲームをするのであった。それから数時間経ち、久遠の帰宅時間が近付いてきたため、俺は久遠を送っていくと、ちょうどその頃に、久遠の両親が帰ってくる時間になるので、俺は一旦別れることにする。それからしばらくして……俺は自分の部屋で勉強していた。そしてそんな時だったと思うが、突然久遠の両親の慌ただしい足音に気づき……部屋の窓からその様子を眺めていたのだが…… 久遠の家の周りを大勢の武装している人達が囲んでいて……。「くそ!!一体誰だよ!!」と俺は思わず叫んでしまった……。俺には状況が全く分からない為どうすることもできない。しかし、俺はその様子を見続けるしかない……。そんなことを考えていたその時である。家の電話が鳴る。受話器を手に取り、耳に当てると……。そこにはミケルの名前が表示されていることに気づく……。「はい……。」と、俺が出ると、「久遠を預かった。返して欲しくば……。明日10時半までにここにこい。もしこれを拒否した場合は久遠の命はないと思ってくれ。以上だ。……それでは明日また会う時までさらばだ……。」と言うので俺はすぐに切ろうとすると……。


俺の様子に気付いたミケルが、「……おい待て。」と言うと……すぐに切ることができた。「あいつ……。ふざけた真似しやがって……。絶対に許さない……。……そうだな……。俺の大事な娘達を奪った罪は大きい。覚悟してもらうぞ……ミケル。」


俺が決意を新たにしてから翌日を迎え……俺は久遠を誘拐していった犯人達が指定した場所に向かったのだ。


するとそこにはミケルだけでなく、他の仲間らしき人間も数人いたが……。その様子から、奴らの実力を測ることはできたのである。そんな俺は「お前達は誰に頼まれて俺を呼んだ?お前達はいったいどこの組織の一員だ?答えろ。」と命令口調で質問をするが……。


「俺が何者かって?いいだろう……。よく聞いておくことだな。俺の名はミケ。とある人物の護衛兼秘書のようなものをやっている者だ。それで……君が俺達に喧嘩を売っていいような立場だとは思わない方がいいぜ?君はあの有名な剣神である真矢の娘さんの友達なんだろ?なら尚更、俺達に勝てるとは到底思えないんだけど……。」と言うので……。「へぇ……。ミケねぇ……。随分とお喋りなんだな。それにしても護衛ってどういうことだ?それに……あの子には俺以外にもミユキって友達がいるんだけどさ。ミユキとミコトの二人と仲良くしたいんだよね。」と返すと……ミケは、「ほう……。あの二人が友人になったか……。だが残念ながら……あの二人は既に人質になってもらってるんだよ。……それに……久遠っていう可愛い子と仲良くなってるんだってさ……。あの子は俺のものにするつもりだったのに……。まあいいか。」と言ってきたので……。「……それは俺の大事な妹に手を出す気か?」と聞くと……ミケは笑いながら「ククク……。手を出したら……久遠ちゃんが悲しむだなんて考えてるんじゃないだろうな?別に俺が奪っちゃえば問題なんて何も起こらないじゃないか……。」と言ってくる。……そしてミケが指を鳴らすと……。後ろの方から俺を拘束してくる。


俺は「何すんの!?︎放せよ……。俺が何をしたって言うんだ!くそ!こんなことしてただで済むとでも思ってるのか!久遠!ミコト!無事でいろよ!」と言うが……誰も俺の言葉に反応をしてくれずにミケに連れて行かれるだけだった。「くっ……。離せ!離せよ……。」俺は抵抗するが、ミケルの力の方が強く……。俺の手も足も自由に動くことはできなかった。そして俺はどこかの建物の地下に連れていかれる。地下に到着すると、ミケルは扉を開けてから俺を解放してくれる。そして目の前にある椅子に座らされた俺は、「……さて……。君が暴れてこの建物を壊されても困るんでね……。一応言っておくが、この建物は、頑丈だからそう簡単には壊れないはずだ。安心したまえ。それでだ……今から少しの間だけ君の事を拘束させてもらおうと思うが構わないかね?」と言ってくるので……、当然、俺が「はい、そうですか。」と言うはずもなく……俺はまだ余裕を見せていたので、隙を見て脱出しようと思っていたのだ。


「は?誰がお前らに大人しく従うと思う?調子乗るなよ?おっさん。……俺がおとなしくしてたら、あの姉妹の事はもう好きにしてもいいよ。だけど……あんまり調子に乗るなよ?痛い目にあっても知らんけどな。」と挑発をしてから立ち上がって俺は逃げようとするが、俺は腕を思いっきり掴まれてしまう。それからしばらくすると……腕を解放されたが……今度は足が動かないことに気づく。……そしていつの間にか俺の背後にはミケルがいた。俺は必死に抵抗するがやはり動かずに焦っていたのだが、そこでミケルの仲間と思われる者達が入ってきて……。「はぁ……。面倒なことになったな……。まさかこんなに抵抗されるなんて思いませんでしたね……。」と言われてしまい……。「……はぁはぁ。……なんの……つもりだよ。お前らの目的はなんだ……。久遠と久遠のお兄ちゃんの俺を誘拐した目的は一体何だ?答えろ。」と尋ねるが、その問いに対しては何も返答がない……。ただ無言を貫き通されてしまい、さらに「久遠を誘拐した理由は……。」と話し出したので、聞き出そうと思った瞬間に、「黙れ!……ミケさん。」と言われるのだった。


ミケルは、ミケのことをミケさんと呼んでいたのである。俺の頭に何かしら嫌な予感を感じた。なぜならミケさんと呼ばれているということは、こいつは……。俺はそんなことを思っていたが、その通りになる。「……そうですね。まず、久遠さんの事ですが、彼女のことは私が保護させてもらいました。まぁ……。私の方にはあなたが久遠さんを保護していることを伝えましたが、あなたは私からの忠告を無視しました。久遠さんの安全を確保した上であなたにも協力してもらおうと思います。」と言うと……。俺は「ふざけるな……。久遠は関係ないはずだ……。久遠を危険な目に会わせる気なのかよ!」と言うと、「いえ……。彼女については心配はいりません。まぁ……。ミユキとミコトさんの方は少々危険かもしれませんね……。久遠さんの安全が確保できるまでは、彼女らには人質になってもらっているんですよ。久遠さんの身柄と引き換えに、私に協力してもらえれば良いのですがね……。どうします?」と言われたが……。


俺は、ミケ達の提案を承諾する気にはどうしてもなれず……。


そして俺を誘拐するように依頼してきた人間についても聞こうとすると、「あなたのお父さんのことも心配はありませんよ。あなたの父親には既にこちらに連絡を入れているので、明日にはここに到着していただきます。……それまでの間は我々と遊んでくれればいいのですよ……。」と言われてしまって……どうすることもできないのである。「ふぅ……。久遠ちゃん達を助けようとしても無駄だって事だ……。残念だが……。」


「それじゃ……仕方ないので……しばらくの間だけ……我慢してあげましょうか。」と俺はミケルに言われると、そのまま床に座らされてから手足の自由を奪われる。それからしばらくすると、「久遠の事が知りたいんですが……。彼女は元気でいるのか?それと……久遠はどこに監禁されているんだ?」と俺は聞くと、ミケルは笑い出すと、「クックックッ……。元気でいますとも……。それに、久遠ちゃんならまだ眠ったままですが、回復魔法を使って目覚めさせようと思っています。なのでご安心を。それでは、おやすみなさい。」と言われてしまった後、俺は強制的に寝させられてしまう。


それから数時間経つと、ミコトとミユキが家に来た。「ねぇ……。どうして今日呼ばれたのか分かる?ミコ姉……。」


ミユキはミケに疑問をぶつけていたのだが、その質問にミケは答えなかったのだ。


そして、その後すぐに真也の部屋に向かうと……。「真也さん。久遠ちゃんは……大丈夫ですか?」とミコトは不安げな表情を浮かべていたのだが、それに対してミケルは……「はい。久遠さんの事は、今はゆっくりと休養を取れていますので、心配する必要は全くありませんよ。……それでは、これから久遠さんが回復するまでの間の時間をどう過ごすかについて決めていきたいと思うのですが……。ミユキさんも来ていただいて本当にありがとうございます。」


ミコトの質問に対してはミケルは丁寧に対応をしていた。「久遠の事を聞いておきながら……随分と冷静に話すのね……。それに久遠の事にあまり触れないように話をしていた気がするのは……。勘違いかな?それに、何が目的なのかな?」とミユキが言うと……。「え?どういうこと?久遠が大丈夫ならそれでいいけどさ……。」とミコトが言うと……。「実はですね……。私は久遠さんの身体に特殊な魔力を付与していて、久遠さんの意識を回復させることができるんですよ。ただ……久遠さんの体力的にかなり消耗するので……時間がかかるんですよ。それに、この前も説明しましたように、私の力はそこまで強くないので、一日に使える回数も多くないのですよ。ですから久遠さんの目が覚めるまではかなり時間がかかりそうなんですよ……。だからその間は……久遠さんの代わりになる人を召喚しようと思うんですよ。……もちろん、協力していただければそれなりの報酬は差し上げますよ。それに真也君にはミコトさんに変わってもらいますから……問題は無いと思いますがね……。」とミケルはミコトとミユキに言い寄ってきたのである。そして……ミユキはその提案にのり、真矢に電話をするが……。「……久遠が目をさまさないからって私を呼ぶとは随分とお気楽なものね。……わかったわよ。それで、どんな奴に頼めばいいわけ?……まぁ……。大体予想がつくんだけどさ。あんたもなかなか悪趣味だね……。……それでさ。その仕事が終わったらまたミコと3人で遊びに行くからね!久遠が回復した時に、私もミコもいなかったら可哀想じゃん……。」と言う。その会話はしっかりと盗聴されており、ミケルはそれを了承すると、今度はレイラに電話をするのだった。


レイナがミコト達に電話をかけ終わるのを待っていたのか……、それから数分ほどした後にミコトにミケルから連絡が入り、久遠を元に戻すために久遠と同じぐらいの力をもつ存在を呼び出して欲しかったのだ。


「……それって、私の友達でいいってことだよね……。うん。分かったよ。」


ミコトはそういうと……ある場所に電話をして……そこに久遠とミコトを一緒に連れてくるように伝えるのであった。……一方ミコトに指示を受けた少女の方は、その場所に到着して、その人物が現れるのを静かに待ち続けていた。そして、暫く待つと……。1人の女性が現れたのであった。


そして……久遠もこの場所に到着する。


「久遠さん。初めまして……、私が今回の依頼人の美鈴よ。よろしくね。久遠さんには、私が呼び出させて貰ったの。早速で悪いけれど……今すぐこの世界に平和をもたらして欲しいの。」


といきなり言われてしまい……。「あのさ……そんなに簡単に平和にできるほど世界は甘くはないと思うの……。そもそも……あなたが私を呼び出したのはなぜなの?」と言うと、ミコトに言われたとおりにミケルが事情を説明し始める。「それはですね……。久遠さんの代わりになる存在が居なかったので、久遠さんの力と全く同じ力を秘めた久遠さんの妹さんと同じような力を持つ久遠さんの姉さんにお願いをすることにしたんですよ。そして……真矢さんにはこちら側で久遠さんを守ってもらうことにしていますので、ご心配なく……。」


「……つまり、ミコトとミユキを私の力で保護して守ってくれるんだよね?じゃあ別に問題は無いのね……。」と言ってくれたことで、ミケルはこの場にいる久遠以外の全員を拘束してその場を立ち去ることになる。「じゃあさ……。あなたが……私の代わりを務めてくれている間は私が久遠のお姉ちゃんになってあげるから安心してちょうだいね。じゃあさ……ミユコ……。これから久遠と一緒にどこかに行きましょう。私は、久遠のそばに居ることにするから。」「そうですね。そうしましょう。久遠くんの事は頼みましたよ……。」そう言って二人は久遠の手を引いて部屋を出ると……。


「ミコトさん。ミコトさんもお疲れでしょうから今日はお休みくださいね。それじゃ……。明日の夜にまたお会いましょう。それじゃ。私達はこれで失礼します。久遠さんのことについてはこちらで何とかしてみますので。では……。さようなら。」とミケがいうと、2人は姿を消すのである……。「ミケ様……。久遠ちゃんと何処に行ったんでしょうかね?ミケちゃんは知っているんだよね?」というシイバに対して、「まぁね……。色々とあって、久しぶりに会えたんだもの……。ちょっと二人で話してくるよ……。それにしても……。久遠ちゃんは凄い力の持ち主なのにね……。」と少し困った顔で言っていたのだ。


その頃……、


「ミコトさんと久遠ちゃんが心配です。二人を探してください!」とミコト達を探していたが見つからず……結局諦めるしかないのかと思いながらも探し続ける。しかし……。


「お兄ちゃん。ミコ姉達が見つからないよ!」


「俺だって分からないよ……。でも……俺達で探すよりは……警察に連絡した方が良さそうだな。ミコトとミユキがいなくなったって伝えたら、何か分かるかもしれないしさ……。それじゃあ、警察に行こうか。」と言いながらミユキとレイラはミコトとミユキを探すことを一旦やめて……。警察へと向かうことにした。


真也が警察にミコト達の事を伝えに行く途中にある場所で真耶に話しかけられると、彼女は真奈達の行方を知らないか?と尋ねてきた。「すみません。分かりませんでした……。ですが、ミコトが誘拐された可能性は十分に考えられるんですが、犯人は未だに見つかっていないようです……。それと……ミコトを見かけたりしていないでしょうか?」と言うと、「すみません。今日一日私は、この街にいたはずなんですけど……。久遠の姿も見えないんです。もしかすると……久遠はもうここにいないのかもしれませんね。それじゃ……」と言い残すとすぐにその場を去ろうとする。だがそれを見ていた俺は……、彼女を引き留めることにしたのである。「ちょっ……。待ってくださいよ。もしかして……貴方がミコトとミユキに助けを求めていた女性ですか?」と俺は言うと……。


「はい。そうですよ。お久しぶりですね。久遠と久留美ちゃんと久志朗君は元気でいますか?久留美ちゃんが行方不明になっているらしいのですが……。」と言うので「すみません。詳しい話はここでは出来ません。申し訳ないです。」と言うと、その女性は……。「いえ……。それならそれでいいです……。」と寂しげな顔をしていたのだった。「とりあえず……。お姉ちゃんはどこにいるのかわからないので……。明日また連絡を入れさせてもらうことになります。それでは失礼いたします。お手数をおかけして本当にすみませんでした。それじゃ……。また後でね。お姉ちゃん。」とミユキは言い残して去っていったのである。「あの……私からも聞きたいことがあるんだけど……。真也さんが今住んでいる家を教えてもらえないかしら?できれば……久遠が目覚めるまで泊めていただけたらありがたいのだけれど……どうかな?」と聞かれたので……。「ええ……。いいですよ。久遠がいつ目を覚ましてくれるかわからないので、しばらくは泊まってもらってもいいと思いますよ。」と俺が答えると……。「ありがとう。これからもよろしくね。」と言ってきたのだった。そして……。その女性が帰ったあと……。ミコトとミユキはミコトの実家に帰るのだが……。この事を真耶に伝えた時に、ミコトから聞いたことも含めて……久遠がいないことと、ミコトが姿を消した理由を聞くと、


「そんな……。ミコトのお母さん……。大丈夫かな?」と言うと……、ミコトの母に電話をかけて話を聞き始めたのであった。そして……その会話を聞いた時に俺も、ミコトの母の電話に電話をかけるのだが……繋がらなかったので……、その日はミコトの母親と連絡を取ることができなかったのである。そしてその次の日に連絡を取ってみたらようやく電話に出ることができたのだ。


その話を聞いていた真也達は、急いで真矢の家に向かうことにしたのであった。……その後……。真也達が来た後に久遠の母親と連絡を取ることができたミコトの母親は、久遠のことをしばらく頼むとだけ言われてしまうと、それ以降、電話には出てくれなかったのだ……。なので、その日から数日の間、ミコトとミユキは真矢の家に居候することになったのだった。


一方……、 久遠は久遠の力の源となる場所にたどり着いた。「ここは一体どこなんだろう……。確か……前にミコトが教えてくれたんだけど……、この世界に危機が訪れたときに……私がこの世界に呼び出せるようになる特別な場所にたどり着くことができれば、久遠と会うことができるんだよって言ってたから、ここがその場所ってことだよね……。でも……この場所って……、なんだか変だよね……。なんか……私以外の気配を感じるし、それに……。私以外にこんなにも力を持っている人が他にいるとは思ってみなかったもん……。だから……きっと……久遠は生きているはずだから……。早く会いたい……。そして一緒に帰ろうね……。久遠。久遠にもしものことがあれば……私は久遠と一緒に帰れなくなっちゃうから……。」


そう言った後で、「久遠ちゃんは強いから大丈夫だとは思うけれど、もしもの場合を考えると、この場から動けなくなってしまうわね……。久遠の魂と私の力は一つになったから……。この場から動くことができない……。久遠の魂の力が少しでも弱くなってしまった場合は、この場所から動こうとしないかぎり久遠の体は私が守ることはできるからね……。」そうつぶやくように久遠が言ったその時に……、突然久遠に誰かが近づいてきたのである。「あら……久遠。あなたには久遠の力の半分をあげたはずなんだけど……。どうして……私の邪魔をするようなまねをしているの?もしかして……久遠の体に宿っている久遠の本当の妹がやったとか……そういう感じなの?」と言ったのである。「……違うよ。私は……ただの久遠じゃない。……久遠のお姉ちゃんだよ。久遠が危ない目にあっていて、助けてほしいって頼まれたから来たんだよ。あなたがミコトの体にいるお姉ちゃんね。私は……、真矢の妹で久留美っていう名前よ。私の名前は……久留実。あなたの妹の久遠はね……。」と言うとその女に向かって攻撃を始める。久遠が放ったその攻撃が当たったように見えたが、その攻撃をあっさり防いだその女性は、「そんな程度の力で私を倒せると思ったの?久遠ちゃんはもっと強かったはずよ……。それじゃ……。久遠ちゃんには眠っていてもらうことにするね……。それじゃ。」と言うと久遠は、その場に倒れこみ……眠り始める。「久遠ちゃん……。私のかわいい久遠ちゃん……。絶対に私が守るからね……。さて……それじゃ……、そろそろ始めましょうか……。それじゃ……。お覚悟はよろしいでしょうか?それでは……。参ります。」「それはこっちも同じなんだけど……。それじゃ……。行きましょうか。それじゃ……久遠くんを起こそうかな。」と言いながらミコトに化けているミケが、眠っている久永にキスをして起こすと、すぐに久遠が目を覚まして……。「あ……れ? 私はいったい……。ってミコトお姉様がなぜそこに?それよりも……、あ!ミケさん。ミケさんがいるということは、まさかミコトさんまで……。もしかしてミコトさんの体を乗っ取ったって言うことなのかしら?」と言うと、ミケと久尾はすぐに姿を消してしまった。ミコトは慌てて久遠を追いかけると、そこには久遠を拘束している姿があり、「あはは……。捕まってしまいましたね。私は、私自身の力を半分だけしか使えなかったので……。ミコトちゃんなら何とかしてくれるって思っていたんですよ。だからあえて捕まえてもらいましたよ。」と笑うと、「ふざけるのもいい加減にしなさいよ!!ミコトお姉様も久美も!!!久美をどうしたのか説明してもらうまでは絶対許さない!!」と言うと、その瞬間に久永がミコトの腕を掴むと、久遠に近づき抱きしめてきたのだ。「く……。離してください。」というミコに、「ふぅーん。やっぱりミコトお姉様には勝てませんか……。ですが……、ミコトお姉様の力の半分を奪った今の私なら負けませんから。私と一緒にずっと過ごしてもらうことになるけどいいですか?」と久永が微笑むと、


「そんなことできるわけないでしょ?私だってやろうと思えばやれるのに……。久遠はやらなかったの?自分の力を奪うことがどれだけ大変な行為だったかを……。私と久留美の二人だけで本当に苦労したんだよ……。それに……ミコトの力を全部奪い取っていたとしたら、ミコトは久遠と同じように、この世界で生きていけなくなると思うのだけど……。そうなったとしても、いいの?私はそれでもいいけどね……」と言うと、「……。わかりました。今回は……大人しく引かせてもらうことにします。でも、必ず私は貴方と、もう一人の妹を探し出してみせるわ……。それじゃ……」と言い残すとその女性も消えていったのだった。「久永……。ごめんね……。貴方を救えなくて……」と言い残してミコトも姿を消したのである。


ミチコが家に戻ってくると同時に真也達もやってきたので、俺が今までのことを全て話すと……、真奈達は怒り出しそうだったので、ミコトの件は伏せることにしたのである。そして……ミユキ達も俺達に協力してくれることになり、その日から俺の店に泊まるようになったのであった。だが、ミユキはミチカに何かを伝えるとどこかに行ってしまったのだった。そしてミチもミソギもなぜか真耶のところに行くと言って出て行ったのだが、ミソギに関しては……俺達に何も言わずに出て行くとは何事だ……とも思うが、多分、何か大事な用があるんだと思い、俺は黙々と仕事を続けていくのであった。それから数日間は……真琴達三人娘と一緒にいることが多く、ミユキの手伝いをしながら真也の店を盛り上げようと頑張ってくれていたのである。そんな中……。ミチコだけは真耶の家に泊まりに行っていたのだ。真那と真奈は二人で買い物に出かけて、今はミコトと真矢だけが残っていた。


その頃……、ミユキはミコトの家に行き……ミコトの現状を話していたのだ。「あのね……。ミコト……。落ち着いて聞いてね……。あのね……。今から話すことをしっかりと覚えていてほしいんだけど……、私達の体の中にある魔力は今……半分以上失われているからなの。久遠が久遠のお姉ちゃんに体を乗っ取られてから……。そして……その久遠のお姉ちゃんは久遠の力を半分奪った後に姿を消したんだけど……。実はその前に、私も同じように力の半分を持っていかれちゃって……。それで……私の体の中に残った魔力で……ミコトを守るためにここに来たんだよね……。それで……これからのことを話しておくとね……。このまま……真也達と一緒にいれば、きっといつか久遠に会うことができるかもしれないんだけど……、もし久遠がこの世界からいなくなったら……久遠はもうこの世界に帰ってくることができないと思うの……。だから……。私は……。私の残りの命の全てを懸けてでも……久遠を探すために旅に出ることに決めたんだよ。それに……ミコトが私の力の半分を持って行ってくれたおかげで……ミコトが持っている力が弱まっても私がこの世界に留まれるから……。ミコトが久遠を探してこの世界に戻れば、私がいなくなってもこの世界を守れなくはないから……。でもね……。ミコト。私はね……。私達が元の世界で生きていた頃の話をしたいと思っているの……。ミコトが嫌でなければ……。そして久遠に会えた後にもね……。ミコトは、私の大切な人でもあるから……久遠に会いたいって思っているんだろうけれど……どうかな?」とミコトに尋ねる。


ミコトが少し悩んでいる表情を見せると……、「あ……。やっぱりそうだよね……。でもさ……ミコト。私がね……。どうしてこんな風にミコトを誘ったのかわかる?」と聞くと、ミコトは何も答えずにミコトを見つめた。すると……ミチコは笑顔になり……、「私はね……。本当はこんな形でミコトに久遠のことを教えたいんじゃなかったんだよ……。ただ……私にとって大切な家族が、そして大好きだったお兄ちゃんが大切にしていた友達で……大好きなミコトにも私の大切な久遠のことを伝えようとしただけなんだよ……。」と言うと、「あ!お姉ちゃん!!久遠のお墓だよね……。どうしてここに久遠の墓があるの!?それにお姉ちゃんもいるじゃないの?なんで……そんな格好をしているの?それに……。その指輪は一体何なの?その腕輪と髪飾りは見たことがないんだけど?久遠にそっくりなその髪型にその服……。それに……。どうして……お守りがこの場所にあるのよ!!ねぇ!!久遠!!!どういうことなの?どうして……。久遠がいなくなっちゃうなんて嘘でしょう?」と言うと……、突然……久遠に化けていた久遠の姉の久美が現れた。「ミコちゃん……。やっと気づいたのね……。久美は……久遠にずっと化身して、あなたに近づいただけよ。でも、さすがに……ミコトが気づくことはないと思っていたのだけど……さすがね。さて……ミコちゃん。久遠のために……ミコトちゃんの命を奪ってもらうけどいいかしら?もちろん、久遠はミコトちゃんが死んだなんて思いもしないはずよ。ミコちゃんが、死んでいないって知ったら……また元気に暮らしてくれるようになると思うんだけど……。」と言うと……、久遠は久遠を睨みつけて、久美の胸ぐらを掴む。そして……。「あんたが……お姉様の身体を使って私に近づこうとしていたっていうわけ?ふざけるのもいい加減にしなさい!!私は、お姉様の仇を討ちたいの……。そのために……。お姉様の力が必要なの……。」と言うと……、 久美は微笑んで、「ふーん……。それじゃ……久遠……。あなたのお母さまは、私が乗っ取ってあげましょうか?」と言い、一瞬にしてリシアを乗っ取り……。「どう?久遠。私を久遠の母親だと信じてもらえたかしら?久遠。私はね……。久遠を本当の子供のように育ててあげたかったんだよ……。だって……、私の娘になるはずだった子なんだもの……。私も久遠のお母さんと同じ病気を持っているからさ……。それに、久遠は私のことが憎いんだろう?でも……久遠。久遠のお母さんだって……、同じだったのよ。私だって……。自分の子が欲しいって思わなかったわけないのよ。私はね……。ずっと一人で過ごしていたわ……。だからね……。ずっと寂しかったのよ……。だからね……。久遠が生まれてとても嬉しく思っていたわ。久遠も、お母様の事は忘れないと思うけど……。たまにはお父様の事を思い出してもバチは当たらないと思うのよ……。私も……お兄さんがいて、幸せだったんだもん……。」と言い、久美が涙を流すと……。ミチコの姿が久美の目の前に現れ、


「そう……。久遠。久遠だって本当はお兄さんの事が嫌いだったわけじゃないんだよね……。だから……久遠も……。自分のお兄さんを信じようよ……。ミコトは……。あなたが知っているような優しい人間じゃ無いわ。ミコトは自分の利益のために、人を平気で裏切るような最低な男だったの……。ミコトは、あなたのことも……ミチコも捨てて……。ミソギを捨てたのはわかるんだけど……。ミコトがリリアを殺したせいで、私達はバラバラになったんだから……。私や久遠のお兄さんまで殺したくせに……それでもまだ……。あの女を愛しているのよ……。私はね……。私のせいで死んだミソギが可哀想で……。そしてミチコを……私の妹を助けるためにミコトを殺しに行った時に、私達は再会したんだけどね……。その時に……私は決めたの……。ミソギが望めばミソラの世界に行くつもりだった。だけど、ミソギはもう私を必要としていないってわかったから……。ミソラに行けとは言われなかったし……。ミチコとも仲がよかったみたいだから……。でもね……。今度こそは……。私の手で……。ミコトは絶対に許さない……。私の妹はリリディア一人しかいない……。」と言う。


そして……。


ミソギはミコトの前に姿を現す。


すると、ミコトが、ミソギに掴みかかり、「ミソギは、私の家族で、親友でしょ?何言っているのよ……。私は……。」


そう言うと、 突然現れたミチがミソギとミコトの手を取る。「久遠……。大丈夫。お姉ちゃんも一緒だからね。お姉ちゃんも……。私も……。お姉ちゃんを助けに行くから……。私達は姉妹なんだよ。お姉ちゃん……。私がこの世界で目覚めてからずっと、側にいてくれたのはお姉ちゃんなんだよ。お姉ちゃんがいなければ、きっと私はすぐにでもこの世界を離れようとしていたと思うの。それは私もお姉ちゃんも同じ気持ちだよ。私達は双子みたいなものだから、お互いにわかりあえるんだよ。私達姉妹ならさ……。久遠、行こうよ。一緒にね。お姉ちゃんと一緒に行こうよ。久遠……。私はさ……お姉ちゃんのこと信じてるんだから……。お願い。おねえちゃーん!!」と言うと……ミチカはミコトに抱きつき……「久遠……ごめんね。今まで黙っていて……。ミコとミコトちゃんが私のことをお姉ちゃんと呼ぶ時はね……。久遠に何かがあった時だから……私は久遠のために動くようにしていたんだよ……。」と話す。


その頃……。シイバとシスタ―マリアもミコトの家に向かっている最中であったのだが……その時……ミケが、「あのさ……お姉ちゃん……。お姉ちゃんの身体に魔力があまり残っていないことは私にも分かるんだよ……。お姉ちゃんは、自分がこの世界に残って私達を元の世界に戻そうとしてくれたんだよね……。」と言うと……。「ミケー!よく分かってるじゃない。私はね……。みんなが大好きだから……私だけこの世界に残ることにしたんだよ。私と久遠は二人で一人の子供だから……。二人共いなくなったらきっとこの世界はすぐに壊れてしまうのよ。それにね……。あの二人の事を私達が一番わかっているから……。だからさ……、これから行くところに行けば……きっと久遠は救ってもらえるはずだから……。」と言うと……シスターは、「お姉ちゃん……、そんな身体になってでも助けたかったんだ。本当にありがとう……。久遠のお姉ちゃんとして私から言わせてもらうね……。でも……。お姉ちゃんは……この世界に戻ってきちゃダメだったんじゃないのかな?」と真剣な表情で言う。


ミコトとシスターとシイーヴァがミコトの家に到着すると……。


突然、シイヴァから、通信が入ったのだ。


「こちら……第4騎士団隊長のシイヴァ・サライです。


先ほどから何者かの攻撃を受けたため……。


ミコト様にお知らせしたのです。


敵は、恐らく、我々を分断するつもりだとは思います。


そこでなのですが、ミコト様方と合流できましたら……。


我々だけで敵の本部を急襲してこようと思いまして。


どうかよろしく頼みます……。」と言うと……、「ミコト……、悪いけど……。私達をミコの家に送ってくれないかしら……。私は……。私達の家族を救うために行くわ……。ミコトとミコは、ミソラにいる久遠を救いに行ってあげてくれないかしら?私は……。久遠の本当の母親なんだもの……。だから、私は行きたいんだけど……私は久遠の双子の姉なの……。久遠の側にいないといけいないから……。」と言うと、ミコトが少し悩んでいると、


「久遠のことなんか忘れなさいよ。久遠に会えたとしても……久遠に何を言われるかわからないよ。私は……久遠のためなら何でも出来るけど……私は久遠と離れたくないの。それにね……。久遠はきっと……お姉ちゃんとミコトに会いたいはずよ。私とミチコとレイナがミコを頼る時は必ずお姉ちゃんがいたの。お兄さんは……、久遠と仲が悪いって聞いているけど……、久遠にとって大事な人だからね。」と言い……、


「お兄ちゃん……。ごめんなさい。お姉ちゃんを助けてくれる?私はね……。久遠をお姉ちゃんとミコトが連れてくるまで待つわ。だって……。二人は私の親友で……、私は……二人の妹だからさ……。」と言うと……。シイヴァは、「ミソラへの移動手段を確保しています。すぐに向かわれますか?それでは……転送しますよ。それとも……ここで待っていますか?」と言う。するとミトコの頭に突然ある映像が流れたのだ。それは……自分の家で眠っている自分の姿を見たミコは驚く事になる。そしてミコは、「すぐにでも向かって欲しいのよ。でもさぁー。なんで私の家に誰かがいるのかしら?」と言う。


「わかった!!じゃあー行くから!!」というとシシーヴが光りだし三人の姿が消えていくのだった。


第1部隊、副団長のアイカは……「久遠様……。私はあなたのことを信じておりますよ。私は久遠さまが……ミコト殿のそばについていた方が幸せだと思いましたので……。」そう言ってミコトと久遠を見つめる。「ミコ……ミチコちゃん……、ミコト……久遠……私はあなたたちの事が大切なのよ……。私はあなたたちをこの世界に呼んだのよ。あなたたちは私の友達だから……。そして……私の娘でもあるからね……。でも……私には……。何もできないかもしれない……。ミコトもミコトの子供達も、私の子供みたいなものだから……私に何かできることがあればいいのにね……。ねぇ……みんなは覚えているよね……。ミチコが私に言っていたことを……。『もしもミコトやミソギが私を裏切った時……。私だけは最後まで……二人に付き合うよ。』


あれを聞いた時の私はね……。正直……悲しかったんだ。ミチコがあんな事を考えていただなんて思わなかったから……。でもね……。私はね……。二人に何があっても……見捨てないから……。それがたとえ世界を滅ぼしてしまってもね……。でも……、今の久遠は違うの。久遠もミチコもね……。もう昔の久遠とミチコではないの……。久遠の魂と肉体が、完全に融合してしまっている状態なんだもんね……。


私が、あの二人の身体に憑依したのは、久遠の精神が、あの二人が死んだ時に消滅してしまうと思ったからなんだよね……。久遠が死ねば、久遠の記憶を持った久遠の精神が残るだけになる。そうすれば久遠の精神は消えることはないと思っていたから……。私はあの2人に死んで欲しくなかったんだ。私が作ったミコトや久遠が私の元に帰ってくることが私の望みなの。


でもね……。あの子達はきっと大丈夫だと思うの。あの子達はね……。強いのよ……。きっとね……。私はね……。あの2人をこの世界に連れてきて良かったと思っているの。


私はね……この世界の未来のためにあの2人を選んだんだ。」と久遠はミコトを見ながら話したのだった。


その頃……。ミコ達はまだ家の中にいるのだが、ミコトの頭の中である考えが生まれていた。「ねぇ……。久遠お姉ちゃんは、どうして、久遠くんに憑依しているの?」と久遠が言うと……。「えっ……。どういう事?」「うん……。久遠くんが久遠お姉ちゃんの子供なのはわかるの。でもね……。私達みたいに……、久遠君と久遠さんが双子とかだったわけじゃないんでしょ?」と言うと、「そうなんだよね。あの時は……、私の精神がミコトの身体に入り込んだの。私はね……。ミコトが……いや……、久遠が大好きだったの……。私の事を……私の家族を好きになってくれてありがとう……。」と久遠が微笑むと……。ミコは、なぜか涙が出てきた。そして、「久遠君は……今頃どうなっているの?」と久遠の服を握りしめながら聞いたのだ。


すると久遠は答えた。「それは……。言えないかな。あの子もね……。この世界が好きなの。


私は……この世界を守る為にここにきたんだけどね……。


あの子はね……。自分が犠牲になればみんなが救われるなら……といつも考えていたんだよね……。あの子ね……。本当はね……。みんなを助けたくて……。


この世界を終わらせたいと思っていてね……。あの子は……優しいからね……。この世界を救うために自分が消えるしかないと考えていると思う……。だから……あの子が消えないためにはね……。あの子を……助けないといけないんだよ。私はね……。あの子の本当のお姉ちゃんだから……。あの子にね……。会いに行きたいけどね……。私は……この世界に残りすぎたんだ……。私ね……。実は……、久遠と久那美の意識の片隅で生きてきたんだけどね……。あの子達って本当に仲が良い姉妹なのよ……。私はその二人の中にずっといたの……。久遠は、私が居なくても大丈夫だとは思っていたんだけどね……。私はね……。私なりに久遠を見守っていてあげたかったの。でもね……。ミコトに会えて……本当に嬉しかったの。


私はね……。ミコトにも感謝をしているんだ……。


私は……自分の事を神様だとは思ってはいないよ。


ただ……、私のせいでこの世界が壊れないようにする役目があっただけだもの……。


それにね……。私はこの世界を守るために存在しているから……。


だからね……。ミコト……久遠のことをお願いね。」と久遠は真剣に見つめたのだった。


ミコ達が家の中で話し合っている最中……ミソラの町の外れでは激しい戦闘が繰り広げられていた。ミコのお母さんはミコトを庇うようにして戦う。ミコのお兄さんは剣を抜き敵を切り伏せていく。ミコトと久遠はミコ達の様子を見守る。ミソラの町は、敵の大群により、壊滅しようとしていたのだ。その時……ミコトが叫んだ。「久遠お姉ちゃん……。私達を守ってくれない?ミコ達とシイバと……久遠お姉ちゃんを……。私は、久遠と一緒にミコ達のところに転移してきてほしいんだ。」「わかったわ。」と言うとミコ達はミコトの前から消えた。ミコ達はミコト達が来るまで持ちこたえる必要があると考えたのだ。ミコのお母さんは「久遠さん、あなたは……私の娘のようなものです。久遠さん、久遠ちゃんが私の娘だと言ったことは忘れていませんよ。でもね……。私にとって、ミコと久遠は娘であり、息子のような存在なのです。だから……久遠ちゃん、私はね……。ミコトと久遠ちゃんと久那美を……。守りたいのです。私に力を貸してください。私は……。ミコトの夫としてではなくて……。一人の父親としての気持ちが湧いているんです。ミコトは……久遠さんを守りますが……久遠さんに危害を加えた相手に対しては一切の情けをかけずに倒すでしょう……。私もね……。そんなミコトを愛せると思います。」とミコトを見つめると、


「はい。わかりました。」とミコトが返事をすると……。ミコの身体を光が包んだ。


『ミコト様!!久遠様!!ご無事ですか?リリア・リリスが参りました!!』


と叫ぶ声が聞こえてくると、ミコトと久遠の周りにリリシアやアイカが姿を現す。するとミコトは、リリカの方を見て、目で合図を送る。「久遠くん!!早く久那美を連れて逃げなさい。ここは危険よ!!」と言うと同時に、目の前にいた魔導士に攻撃を加えると、一瞬にして倒していく。ミコの兄は、「お前たちは俺の娘だ!!逃げるならお前たちも一緒だ!!」と言って剣で敵を斬りまくっていく。


久遠が、シイナとレイナを見るとシイナは、レイナを抱えて移動し始めている。


ミコの身体に異変が起こり始める。ミコは、自分と久遠のステータスを見る事ができるようになり、シイルからもらった指輪を左手の中指につける。そして、ミコトがくれた短刀を装備する。シイルの武器は、ミコトに全て渡していた。シイルは自分の意思があるかのようにミコの元に来て装備されている。シイルの能力の一つが発動される時……、装備者は一時的にシイルと同格の力を手に入れることができるようになる。シイロは、スキルの効果により自動的に発動されるように設定されているが、この能力はミコトの意思により起動する事が可能となっているのだ。ミコトはこの効果を使い、ミコトと久那美の身体と精神の保護をする為の魔法を使うのであった。


シイナは、レイナを抱えて走るものの、魔獣に襲われてしまう。その時、ミコトが現れ魔導砲を放つが、まだ残っていた。しかし、シイは矢を数本放ち魔獣を倒したのだ。


「あなたは?」とシイナが質問をすると、


「私はミコ様の眷属となった者だ!!あなた達を守る為に来ている。安心しろ。私の主が、あの町にいるはずだ。そこに行こうと思っている。私についてくるといい。あなたは妹か?」「はい。妹のレイラと言います。よろしくおねがいします。あなたの名前を聞いても良いでしょうか?」と言うと、「私の名前はミコだ。」と言うと二人は驚いた顔になった。


「あの……。ミコ……さま?あの……あの……ミコ……様が、こんな小さなお子様にお乗りになっているんですか?」


ミシロは答えるのだった。「あぁ。私の事は気にしなくていいよ。さぁ……急ごう。」そう言って走り出すと、シイ達は後を追うのである。その頃、ミコと久遠は、自分の母親と対峙していたのだった。そして……二人の身体からは眩しい光が発せられているのであった。


第15章:光の世界へ続く……。


【後書き】


久遠とミコトの戦いが始まります。ミコトは、久遠の精神に憑依している状態です。次回をお楽しみに! 久遠が憑依している状態のミコトに苦戦しながらも戦っている久遠とミコトの母親だったのだが、2人には傷一つつけられていない状態だった。久遠がミコトに乗り移ったことで、憑依状態になり、憑依する相手の潜在能力を最大限に発揮させることができるようになった。それにより2人は今の状態では、神に匹敵する力を持つに至っているのだ。


2人には傷をつけられない久那美だったが、その圧倒的な強さを見せつける2人に対し、久那美の感情が揺れ動く。そのことに気が付きながらも、戦い続けている2人だったのだが……ついに決着がつこうとしていた。2人の攻撃を捌くことができず、攻撃を受け続ける久那美だが、2人を倒すことができないでいた。その状況をみた久那美は、「ミコトちゃん……。お願い。久遠お姉ちゃんを止めてきて……。」というと、久那美の姿が変わっていき、身体を金色の輝きで包み込む久那美が姿を現す。


そして、その姿を現して久遠と戦いを始める。久那美が、久遠を追い詰めようとするのだが、久遠には全く通用していないようであった。それを見たミコトは、ミコトの身体の中に入り込み、「久那美……。ごめん……。」と言うのだった。ミコトと久那美の身体を光が覆うと……ミコトと久那美の瞳の色が赤く変化していった。久那美の攻撃を軽々と避けると久那美を弾き飛ばしていく久遠。


久那美は立ち上がると久遠に向かっていったのだけれど、全く相手にされていない。久遠の表情が変わる。「そろそろ……本気で潰してやるわ……。あなたを……私が倒す!!あなたみたいな人が……。私のお姉ちゃんなわけがないの!!久那美ちゃん!!覚悟は良いかな?」と言うと、 久遠の全身から赤い稲妻が飛び散ると、地面から雷が発生していくのである。「これは……。私には通じないわよ……。私をなめないでほしいわね……。」と余裕の態度を見せていると……。その雷撃を避けた瞬間に久那美の動きを拘束するように雷の柱が現れる。「これじゃ……。避けきれないわね……。久遠……私もね……。あなたとは仲良くしたいと思っていたの……。」と言い放つと、その雷撃に飲み込まれてしまったのである。そして、その雷撃が終わると、久那美はボロボロになっており立っていることもできないくらいに消耗しきっていた。


久那美を気絶させると、意識を失いかけていたミコトに話しかけると、ミコトと久那美の身体は光の粒子に包まれていったのである。そして、2人の身体が地面に落ちる寸前のところで、久遠がミコトをキャッチすると、久那美を抱き上げるのだった。久遠の身体を包んでいた光が徐々に消えていき……。ミコトが目を覚ましたのだ。


「ミコ……。」


ミコトはミコトの胸に飛び込んで行く。「お姉ちゃん!!」


久遠の瞳は青に戻っている。


ミコトが「お母さんは?お姉ちゃん……お姉ちゃん……死んじゃ嫌だよぉ!!」と言うと、久遠は、


「お母さんは、きっと無事よ……。今は気を失っているだけよ。だから、お母さんが起きる前に、お兄ちゃんを助けに行きましょう。ミコ……。お兄ちゃんはどこに居ると思う?」「久遠……久遠は、シイバがどこかわかる?」


「えぇ。ミコのお兄ちゃんなら大丈夫だと思うけど……。ちょっとまずいかも……。久那美さんを連れて早く助けに行かないと、お兄ちゃんは本当に死ぬかも知れないの……。」「うん。そうだね。早くシイバの元に向かわないと……大変な事になるかも……。」と言うと、ミコト達はシイバが居るであろう場所に向かっていくのであった。


シイロが、レイナ達を守って戦っていたが、ミコトの魔力によって、強化した魔導師達が次々と襲いかかってくると、防ぎきれなくなっており窮地に陥っていたのである。その時に、突然現れたシイロが、襲い来る敵の魔法を防ぎながら、「レイナ!!お前達を守れなかった俺だけど……。今度はお前たちを守るためにここに来たんだ。お前たちは、ここでじっとしていろ。ここは、あいつらが来るまで耐えれば何とかなるはずだ。それまで頑張れるか?」と問いかけてくると、「わかった!!でもシイはどうなったんだ?」と聞くと、「あっちはリディアに任せてきたから心配するな!!」と言うとシイが、「俺は……この子を守らないとならないんで、少し遅れてくるかもしれないが……。必ずくるから、安心しろ!!レイナはレイラのことを頼んだぞ!!」と、シイロはレイナとアイカに指示を出すと、「シイロ!!久遠たちが来てくれるはずなんだ。」と言うのだった。シイロはミコト達の事を思い出していたのであった。


その時に敵を倒しまくり、「ふぅ……。ようやく全部倒せたようだ。しかし……。数が多いし、俺の力だけでは……やはり厳しいな。早くこいつらをどうにかしないと……。ミコト様……。早く来て下さいよ……。」と言って剣を構えると……、魔道士の攻撃を全て防御し……「おい。シイル!!シイの所にこいつの相手をできるやつがいないのか?」と言い放つのだった。シイロは、「あーぁ。この人?この人ってさ……ミコト様や久遠様より強いんだよ。シイ君が弱いだけでしょ?僕なんかはもっと弱いもん。シイロは相変わらず口だけは達者だよね?そんなこと言ってる場合じゃないよ?ほらっ!!後ろ!!」


シイロの後ろに回り込んでいた魔導師がシイの目の前に現れる。シイが「シイル!頼む!」というとシイルが、矢を放ち魔導師の眉間に命中させる。そのタイミングでミコト達が到着する。その光景を見たミコトは「お姉ちゃん!!レイナは?」と言い放ち、「レイナ……。レイナなら私の隣に……。」と言いかけるが……


「レイラです……。ミコお嬢様……。私はミコお嬢様に助けられたんですよね?私はもう逃げないんです。」と言うのだった。それを聞いたミコトは、「あぁ……。私はレイラを守ると誓った。私は、あの男と約束をしているのだ。あの男の大切なものを全て守ると……。」というと、「ミコ……私の身体を返してくれるのですか?」と、言うと「ミコお姉ちゃん……。ミコ……。久遠お姉ちゃんと入れ替わってるよ……。」と久遠の口から声が出ると、ミコトが、


「久遠か……。久遠なのか?」


ミコトが、「ミシロに……会いにきたんだけど……ここにいると思って……。」


「私……、久遠だよ。今さ……、身体がミシロさんの中にあるみたいなんだ……。今さ……ミシロさんの身体の中にミシロさんと一緒に入ってる状態みたい。でも、久遠とお話したいなって思ってたら、久遠に会えたよ。ありがとう。」


ミコトが、ミコトを睨みつけると、「お前……、久遠に何かしたのか……。何で……こんなことになってるかわからないが……、お前がやったことは許されない……。覚悟してもらうぞ。」とミコトに言い放ち、ミコは久那美と入れ替わるのだった。ミコトの瞳の色が金色に変わる。ミコトと久那美の2人は対峙すると……久那美が動き出した。その攻撃は凄まじく、目にも止まらぬスピードで攻撃を仕掛けるが、ミコトは軽々と避ける。久那美の拳を掌で受け流し、反撃の回し蹴りを放つと久那美の頬に当たるが……。久那美はダメージを気にすることなく殴り続ける。「久遠お姉ちゃん……。お姉ちゃん……、私も久遠お姉ちゃんの事が好きなの。大好きなの。だから……負けないよ!!」


ミコトが攻撃をすると……ミコトの攻撃を受け流していく久那美だったが、久那美の動きに迷いが出始めたのだ。久那美が、「くっ……、なんで!?」と攻撃を繰り出すが、ミコトがその攻撃を簡単に避けていく。そして、久那美に「ミコト……あなたは……。私を……。いえ……。」と言うが……。


久那美は、「そう言えば……ミコトお嬢様にも言ってなかったわね……。私の本当の名前。私があなたを憎むようになったのは、あなたの母親が原因なの……。私はね……。あなたの母親によって、ある村に連れていかれたときにね……村の男の子達にいじめられていたの……。それで、ある日ね私をいじめている男の子たちにお姉ちゃんがいることを知ったんだ……。お姉ちゃんはその男の子たちのリーダー的な存在の子に殺されちゃったの……。でもね……私が大人になってから知ったんだけど……お姉ちゃんを殺したその子たちも……その女の子によって殺されてしまったんだって。だから私ね……。お姉ちゃんを殺したその女の子を殺すために強くなったんだ。その女の人の名前……知ってますか?」と聞くと、ミコトが、


「知らない……。私の母さんか?」


「いいえ……。あなたの母親じゃありません。名前は……、美空(みそら)さんです。そして……ミコト……あなたの母親が殺してしまった子の名前が……美月なんです……。」と言うとミコトの動きが止まる。そして、久那美の攻撃を防御すると、「どうして美琴を!!美琴が一体あなたに何をしたっていうんだ!!」と言うと、


「ミコトは……知らなかったと思うけど……。美琴は……私を殺そうとしたの。それに、私のことを化け物だって言ったの!!でも、ミコトは優しいから許しちゃうかも知れないからね。私が殺してあげないといけなくて……。だからね……。」と話すが……。「黙れ……。私は……私はお前の事を許さない!!」と言うと、再び激しい戦いが始まる。しかし……久那美の方が圧倒的に有利になっていく。久那美の攻撃を受けてボロボロになったミコトに対して久那美は、「私は……もうミコトには用がないよ……。さよならね……。また会いたいなぁ……。でも、ミコトが私に会いにくるなんて思わないからな……。まぁいっか……。私はね……。ミシイルに殺された人達やミシイルやシイ君の両親を殺した犯人を知っているよ……。それはね……。」と、話し始めるが……。その時だった。久那美の後ろで、シイが「おい。久那美!!もうやめろよ。これ以上、俺の仲間に手を出すな!!俺は、お前の復讐を手伝ってやる。だが、仲間をいたぶるのはやめるんだ。お前は……俺が倒さなければいけないやつだ……。俺と戦え!!俺が相手だ!!」と、言うと久那美はシイに向かって歩いていくのだった。


「シイロ……。シイロならあいつに勝てるよな?」とシイが言うと、「無理だよ……。僕が全力出して戦えば倒せると思うけど……そうしたらシイ君は死んじゃうかも。それに僕はシイロであって、シイロではないんだ。だから、シイロって呼ぶのはやめてくれないかな?」と言うと、「そっか……。シイは俺にとって……シイロなんだ。悪いな……。俺が弱すぎて、迷惑かけてばかりだな。」「そんなこと無いよ!!僕はシイロって名前が気に入ってるんだ。君が、シイロと呼んでくれるのを嬉しいって感じている。だけど、シイロって呼んでほしい時は、そう言ってほしいな……。」とシイロが答えると、「シイロ……お前はいいやつだな……。俺よりもよっぽど……。お前ならミコトお嬢様を守れる。頼む!!お姉ちゃんのことを……お願いしたい……。」と言い放つのだった。「わかった。僕の命をかけてシイロ君を守る。安心してほしい。久那美さんのことも任せてよ。僕に任せてほしい……。」


ミコトは……「待て!!久那美!!」と言って止めようとしたが……。久那美に、「久遠お姉ちゃんがミコに成りすましていることは分かってたんだよ!!私は騙されないよ!!だから久遠お姉ちゃんの魂を解放してもらうよ。ミコトの体を使ってね!!」と言い放つと……「久遠お姉ちゃんが私の中に入っている?嘘だよね?」と言うと、久那美は、「残念ながら本当よ。久遠ちゃんは私の力の一部になっている。でもね……、ミコトは私の大切な友達で家族だよ!!久遠ちゃんになんかさせない!!」と言い放つと久那美はシイロに向かい、殴りかかろうとするとシイロの身体に久那美が触れようとした瞬間、シイルの攻撃がシイルに直撃する。「あーぁ。シイルが邪魔しないでよ!!あとちょっとだったのにさ……。シイルも久遠お姉ちゃんと同じようにしてあげるから、動かないでくれますか?それとさ、シイルの本体はどこですか?私はね……。本体ごと壊すこともできるんですよ。」と言うと、シイは、自分の胸を指して、「ここが……心臓です。私は死ぬでしょう。ですから……ミコトさんを助けてください……。ミコ様をよろしくお願いします……」と言い残し消えていったのだ。それを見たミコトが、「シイルー!!!!」と叫ぶと、「久遠ちゃんはミコお姉ちゃんが助ければいいじゃないですか?」と言った。「うるさい。久遠!お前だけは……許さない!!」というと、久那美の動きを止めるために攻撃をするが久那美には効かないのであった。久那美は、「久遠はミシロに操られている。ミシロを倒して、ミシロの中にあったミコトの魂を解放するよ。でもさ……まずは……、久那美を消そうかな……っと」と言うと、久那美が消えるのだった。その様子を見ながら、ミコトは自分の無力を嘆くのだった。


ミコトが「久那美!」と言うと、そこにリリスがやってくる。そして……


「ミコトさん……。久那美は、私達の大切な仲間の1人だったのよ……。」とミコトに声をかけるのだった。


俺は、ミコの中にいるミコトに、「お母さま……。」と聞くが、ミコが答えてくれるわけもない……。そこで……俺は久那美さんが言っていた言葉を思い出していた。『あの女……、シイロの母親で、私を殺した奴……。』そして、『シイロを殺した犯人を知っている……。それはね……。美空(みそら)なの。それでね……。シイ君の両親はシイ君を守ろうとしたんだけど……、2人とも殺されたわ……。でもね……。ミコト……。シイ君のお父さんを殺した犯人が美空だとしたら……、シイロは……、シイロは……あなたのお母さんが……殺したのかもしれないわ……。そして……美空の夫であり……あなたの実の父親である……。ミソギの事を美空が知っているとは思えない……。だから……。あなた達を産み出した本当の元凶……は……。あなた達が一番恨んでいる存在よ。だから……早く……その人を見つけ出しなさい……。』と言っていたことを……。そして……。ミコトとミコトは会話をしていた時にも……。「お母さまが私を産んだ時と同じで、私も何かが原因でこうなっているんですかね……。お父様も……そしてお母さま

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異世界転生したら国の英雄として称えられて俺TUEEEEEEEEEEEだった件 あずま悠紀 @berute00

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