【3】前篇

「貴様が何者かは知らんが……娘に危害を加えようというのならば容赦はしない!! 例え相手が神だろうと悪魔であろうと、私は戦わなければならないのだ!!……私は、もう……逃げないと決めたのだ!!……お前のような奴には分かるはずがないのだ!! もうこれ以上何も失わずに済む方法を!!……何も奪えない私に……戦う以外の選択肢はない!! 娘を取り戻すまでは……。私は止まらん!!……何人たりとも、邪魔などさせぬ!!……さあ、来い。かかってこい!!……私はもう逃げはせん!! お前を倒し、私は進む!!……私は久遠を守る父親だ!!……それが何だというのか……。そんなものは知ったことか!!……私は、久遠を愛し続ける。久遠のそばにいると、決めたのだからな……。」と言うと剣を構えたのである。…………久遠の父は凄まじい闘志でミホークを倒すと……「……すまない……。もう少し早く気付くべきだった。ミホークを操る者が近くにいるということに……」と言い、久遠を探すべく立ち去ったのだった……。


〜一方その頃、勇者サイドの方は……。〜 久遠ちゃんがいないなら用は無いとばかりに出ていこうとするミホノさん。それを聖哉くんは止めようとしています。そして……。


「おい。待て。……久遠のことは助けなくていい。俺の狙いはこの女じゃないからな。俺の目的はただ一つ。この女の持っている全てのスキル。それを手に入れる為に来ただけだ。だから……邪魔さえしなければ命を奪うこともしないと約束しよう。だからお前は黙って見ていろ。」と言うとミホークの方に向き直るのですが……、しかし……「……はあ?何勝手なこと言っているのかな?」と言ってくるのですが、ミホーグはその言葉を無視して、


「私は、この世界の管理者。お前達のように力だけで解決できると思うの?お前達のような野蛮人に私は屈服したりなんかしない……。」と言うと、指パッチンして、いきなりミホークを呼び出すと、何と合体してしまったではありませんか!?「さぁ行きなさい……。我が下僕達よ。私の指示に従うのなら……死なないようにしてあげましょう……。さぁどうする?」と言ってくるのですよ……。それに対して、聖哉くんは言います。「……久遠はどうなった?」と……。その問いかけに、


「……まだ無事だとは思うわ……。だけど時間の問題ね……。まあ、どうなるかは、このあとのお楽しみということで……」と言うのでした……。……久遠ちゃん、どうしちゃうんでしょう……。……あっ。ちなみにですけど……。勇太くんだから言えることですが、実はミホーグーが言っていた「私達の計画」とは、「世界を滅ぼしてから、私達で世界をやり直す計画」のことだと思いますよ? そして……今から行われる「戦い」で、久遠が勝てば、ミホちゃんが負けた時の「やり直し方」は発動されず、逆にミホコが勝った時は、「この世界の終わり」と同時に、「新しい世界で私達がやりなおせる未来が生まれる予定でしたから……」。


そして…… ついに始まった「世界の命運を決める最後の闘い(?)」は………… 一方その頃。


「はっ! こんなにあっさりと俺が倒されるのか?……ははっ……。ふざけんなっての……。俺が負ければ全て終わるって分かってんだよ。……何の為に俺が今まで頑張ってきたと思ってやがんだ? 全部、あの野郎のせいじゃねえかよ……。なのに、どうして俺が……負けるわけにいかねえんだ? はあ……くそっ。どうしてだよ……。」


そう言って、倒れ伏している俺に、トドメを刺そうと近づいてくる奴等。……俺はここで終わってしまうらしい。


だが、それでもいい……。


あいつらを殺れるのなら……。


俺は、あいつらを許すことができないから……。


俺に、復讐することだけしか頭にないから。


だから、これでよかった。


これが一番の方法だった。


俺の目の前に、大鎌が振りかざされた。


だが俺は避ける素ぶりすら見せずにいた。


すると……。俺に向かってくるはずだった攻撃が、別の方向に向かうことになる。


「はあ……やっぱり……そうするよね……。……君には無理だよ……。」と呟いた瞬間、奴らの動きが止まった。「……なっ!何が起きているんだ? 動けねぇ。それに、体が……焼けるように痛え……」「なんだこりゃあ……力が抜けるぜ……。ちくしょう……これでは……どうすることも……」「……まさか……やばいぞ。俺の力じゃどうにもできねえ……逃げるしか……うぅ……。」次々と仲間が倒れて行くのを見て……。そして、その光景を唖然と見ているだけの奴らに言う……。


「……ほれ。早く、とっとと、行けよ……。早く、俺に、とどめ、を……刺せっての……。俺を殺す為に、わざわざ……やってきたんだろう?……なあ? 早くしろよ。……なあ……早くしてくれよ……。頼むから……。お願いだからさ……。俺を、殺してくれ……。……ああ……そうだ……。それでいいんだ……。……やっと、終われる……。」


そして……遂に俺も倒れたのだが…… 薄れゆく意識の中、 誰かの声を聞いたような気がしたが、 それは俺の願望なのか…… 現実に聞こえた声なのかも分からない……。


「もうすぐ会えるよ。お兄ちゃん……」


という優しい女の子の声も、


「絶対に許さない……。絶対に生かしておくものですか……」


という憎悪に染まった男の怒声も、


「必ず殺す……。そして、また……私と久遠と一緒に……」


そして俺に向けられた殺意の言葉も……全てが幻聴であったかもしれない。


ただ、それだけは間違いないと……俺には分かった。


なぜなら、俺の目からは涙が零れ落ちているのだから……。……これは、何時だっただろうか?俺が幼き日の記憶……。


「……お父様!! 久遠を、私を置いて行かないでください……。私も連れて行ってください!!」……「すまない……。久遠……。久遠まで、連れて行くことは出来ない。」


「どうしてなの?……久遠のこといらないの?……久遠のこと愛していないの?」……


「違う。……久遠。久遠のことは大切に思っているよ。でもね、お前はまだ幼い。これから久遠には沢山の世界を見て欲しい。その為にはお前は必要ない。」


「……でも久遠はずっとお母様に言われていたのです。「お前が生まれたせいで……真奈が……」と……。だから、久遠のせいでお姉さまが死んだというのなら……私だって……。」


「何を言っているのかね。……私はそんなことを言った覚えはないのだ。久遠、久遠は生まれてくるべき存在だったのだ。……真也は久遠と真也の母親にそっくりだ……」


そして私は、父と母の会話を扉の向こうで聞いてしまった。


私は父の本当の子ではない……。……私は誰の子供なのだろう。……そして何故母は私を憎んでいるのだろう。


それから数年の月日が経ったある日。


「お父様。どうして私をここに残したのでしょうか?」私はそう尋ねる。


私が生まれてからすぐに亡くなってしまった母と、私を忌み嫌っていたはずの祖母は、何故か私が10歳の誕生日を迎える直前に「お前に大切な使命を与えた。だからこの手紙を読んで、旅に出て、その先でお前を待つ者達と合流してこい。いいか。決して、その先に行くまでは振り返るんじゃない。」と言われた。


しかし、私の手元に残った手紙には、「私はお前のことなど、どうでもいいと思っていた。しかし……お前だけは私の子供であり続けてくれ」と書かれており、私にこの手紙を託したのは私を信用してくれたということだと思うことにした。


それから更に月日は経ち、私宛の手紙が来なくなって数ヶ月程経った頃だったと思う。


私は「久遠は私に似て美人になったな……。きっとモテることだろう……」と言い出した祖父と父が口論を始めたのだ。その時に祖父の口から出たのが「やはり久遠を……」と私を引き取ろうという話が出たが、「私達が決めたことだ。」と言い張ると、祖父は引き下がったようだった。……だが父は違ったようだ。……「久遠を渡さんぞ。あの子はこの世界にとって必要ないのだ。あの子のことは私が守ってきたのだ!!誰にも渡さん。」と言ったのだ。そしてその日からというものの、「絶対に久遠を渡してなるものか!」と言い張りながら、私へのプレゼントを買ってきたりと過保護になっていった。……しかし、私はこの時、既に悟ってしまっていた。私を愛してくれたのは両親だけなのだと。そして両親が私に対して本心ではどう思っていようと、その事実だけで私にとっては十分だと。……だからこそ、久遠に真実を伝える必要があるのだと理解できたのだった。


久遠は泣きそうな顔をしている。だが…… 俺は、もう何も出来ないし、するつもりもない。


ただ……ただ……俺は……俺のしてきたことの結果がどんなものであれ……受け入れたかっただけだ。それが俺の償いだから。だから……「俺は、これでいいんだ。……だから久遠……。幸せになってくれよな……。そして俺の分まで……。」


その言葉に私は思わず、涙を流してしまうが、 私は、お兄ちゃんの顔に手を触れながら、最後の言葉を告げることにする。


本当はこんなこと言うつもりはなかったんだけど……。


だけど……もうどうなっても構わない。……私はそう思った。


だから……。


「……さよなら、……お兄ちゃん……。」


私は最後の力をふり絞るかのように、力なくそう告げるのであった。


その言葉を聞いた俺は目を見開く。


俺は、最期の瞬間に久遠が俺の名前を呼ぶものだと期待していた。だから「……サヨナラ?」その聞き間違いかと思う程の小さな声で呟かれたその言葉を頭の中で何度もリピートさせる。……「……お兄ちゃん……。さよなら……。ありがとう……。大好き……。本当に……ごめんなさい……。……こんなことになるなんて思わなかったんだ……。」と……。……なんで?なんで、こんなことになっちまったんだ?……どうしてこうなったんだ? こんなことになるなら……俺は……。


こんなはずじゃなかった。こんな結末が俺の望みだとは、俺自身が思っていないのに、俺の意思を無視して勝手に俺の身体が動いていく……。


まるで俺が二人いて、もう一人の俺が動かしているみたいに……。


すると突然、レイナが「……この世界に、ミホコを止める方法がないのならば、あの子に、あの子の魂の転生者に賭けましょう。」と口にすると、ミホコに向き合う。「久遠?……あなた何してるの? あの子をなんとかしないといけないのに……どうして?」とレイナは戸惑っているようでした。「久遠ちゃん!? やめなよ!危ないよ!あの子と話せば何かわかるかもしれないじゃん!……なのにどうして?」というシゲルの声が耳に届く。私はその声がとても懐かしく感じた。……「久遠ちゃん!久遠ちゃんってば!!聞こえてるの?」……うん……。やっぱりそうだ……。そういえばそうだったね。私もそうだったよ……。だから私は……「みんな……。私はお兄ちゃんに救われたんだよ。でもね、私には……やらなきゃいけないことがあるの……。お兄ちゃんの分も、私は生きていかないとダメなんだ。」と答えると、皆黙ってしまったが「そうか……。久遠……。久遠がそういう気持ちなのは分かっていたんだ……。だけど……。」「私もね。分かってた。お姉さまも私を止めようとしたんでしょ?……だからさ……。」とミホコは言い放つと、「私に任せて……。私が……私がやるから!!お願いします。やらせてください!!」と言い出すと私に近寄ってくるが、私はその手を取ることができない。……すると、「駄目だ!!……それは……。それは久遠がやっていいことじゃない……。だから……。」とお父さんの怒号のような大きな声で怒鳴られる。その言葉で私は我に返った気がする。そして、「私だって……。やりたくないよ……。怖いもん……。けどさ……。お姉ちゃんの……お姉ちゃんのためにも……。そしてお兄のためでもあるんだから……。私はね……この世界に来て良かったよ……。でもさ……それでもさ……怖かったんだ……。でもさ……やっと分かったんだよね……。私のやりたいことが……。だからね……もういいんだ……。お兄ちゃんのおかげだよ。私は……今を生きるよ……。」と言って笑うと「私達も行きます!」「そうね。」と声が聞こえてきたのだ。私はそれを見ると嬉しく思う反面、どこか安心してしまったような気もしたが……。そして私達は再び動き出したミホコに立ち向かうことにしたのである。


ミホコと対峙するのは初めてだが、やはり圧倒的なプレッシャーを感じる。


だが、私も負けていられないのだ。


「行くぞ……。……私達の戦いを始める!!」そう言うと私も戦闘に参加するべく駆け出そうとしたのだが……。


その時だった。……「久遠!!逃げろ!!」というレイナの言葉を聞き取ったが、既に遅かったようである。


「久遠ちゃん!!後ろ!! 久遠ちゃん!!」とレイナとミユキの声が届く。私は何が起きたのかよく分からないが、「えっ……何が起き……」と言う間に、目の前が赤くなっていくのを目にしたと思った途端、そのまま意識を失ってしまう。


久遠は……死んだのかな?……いや、大丈夫だな……。まだ心臓は動いている。でも……これはまずいな……。俺が思っていたよりも傷がひどいようだ。


このまま放っといても出血多量で死んでしまう可能性はあるだろう……。


それに、この傷だと致命傷だろう……。


俺ならともかく、今の俺には治すことは無理なはずだ。


だが……諦めたら終わりだ。俺が今まで頑張ってきて手に入れられたものがあるように、久遠にもこの先、手に入るはずのものも沢山あるはずなのだ。俺はそう自分に言い聞かせると、回復魔法を使う。……が……


「これは無理だな……」思わず独り言を口にするが、仕方ないだろう……。


これ程の傷となるとその傷自体を塞ぐことも出来ないのだ。そして俺が出来ることはここまでである。


後は……そう考えていると……「久遠を……頼む……。この世界ではお前にしかできないことだと思うから……。……俺の分も含めて……。だから……。」


そんな聞き覚えのある言葉が聞こえると共に、俺の手は、俺の身体は、レイナによって久遠の元へ連れて行かれるのだった。


私は、お姉様の手を掴もうとしたが、「やめて久遠!!あなたは行かないで……。」と、レイナは私の手を掴み必死に引き止めると、「久遠!!久遠は私の妹よ。そして私にとって大切な人よ……。だから死んじゃだめなのよ。」と泣きながら訴えると、ミユキは、「私達の家族になってくれた大切な仲間です……。久遠ちゃん……。」と涙を浮かべながらも、私を抱きしめてくれていたのであった。


そして、俺は久遠の元にたどり着いた。俺はその状況を見て驚くと、


「俺が久遠を助けるから、レイナとミユキは援護してくれ……。」と二人に伝えると、「真也くん!?無茶よ。」と心配そうにしていたが、


「ああ。任せてくれ。」と、俺は久遠の元へ向かうのだった。


すると、「久遠……。私とあなたの関係が、こんな結果になってごめんなさい……。でも私は……あなたのことを心の底から愛しています。それは嘘偽りのない事実で、本当ならこんな結末を迎えることはなかったはずなんです。だからね……これからはあなたが望むことだけじゃなくて……私の幸せを願って欲しいのよ……。だから……お願い。生きて欲しい。……それが、私にできる唯一のことなの……。お願い……久遠。私の最後のわがままを聞いて……。あなたに全てを託すわ……。……お願いだから……。」と言うと……ミホコも久遠の側に倒れ込む。……そして、その光景を見たレイナは……


「……久遠……私達がもっと早くにこのことに気がついていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。でもね……。久遠が、レイラとして生まれ変わる前から、レイナはずっとあなたに想いを寄せていた。だから、この運命を変える為に……。私達にチャンスを与えた神様が、レイラに転生させて、久遠の記憶を呼び起こしてくれたのよ……。だから……。きっと……私達も、あの子のように、この世界での未来を一緒に過ごすことができるのよ……。……でもね、私はまだ信じたいのよ……。久遠のことを……。久遠の願いを叶える為だけに生きる人生なんて嫌よ。……ねぇ……私に……希望を与えて……。」と悲痛な声で叫び、俺を見つめると……ミホコが倒れたことで力が抜けたのか、そのまま地面にへたり込んでしまう。俺はその様子を見るとすぐに久遠のもとに急ぐが…… 俺は、久遠を抱きかかえると……。「久遠?……しっかりしろ!久遠!!……駄目か……。」……と呟き…… そして、しばらく俺は……何もできなかった……。……どれくらい経った頃だろうか? 俺は、突然誰かに呼ばれたような気になり……辺りを見回すと……そこには誰もいなかった……。


久遠の顔に俺は触れようとしたが……俺は手を引っ込めると……。


俺は立ち上がり……「レイジ。俺がやれる事は……これだけなんだな?」と呟くと、突然俺の背後に気配を感じると、「真矢。君のおかげで、ミホコを救うことが出来た。本当に感謝している。ありがとう。それと久遠のことは頼んだよ。……久遠の事をよろしくね。ミホコと一緒に待ってるから。……また会おうね……。ミホコが待っているからそろそろ戻らないと……。僕達、久遠に嫌われちゃうかもしれないしね……。真矢、久遠のことを任せたよ……。」という声を聞く。……


「おい!どういうことだ!?俺が……お前らを助けられなかったのは悪いと思っている。だから俺に出来ることがあるなら何でもする!教えてくれ!!なぁ……!教えてくれよ!」と言いかけたところで、レイヤの姿は消えてしまったのだった。そして……レイナもその場に崩れ落ちてしまうと、ミユキがレイナの背中をさすり、何とか支えようとしているようだった。俺はそんな二人に声をかけることもできず、立ち尽くしたまま、暫くの間どうしたら良いのかわからず呆然としてしまった。そして、久遠を抱えて、久遠の家に運び込んだのだった。


「久遠!!久遠!!」と俺は叫ぶと、「ん?あれ?ここはどこ?私は一体何をしていたんだっけ?確かミホコと話をしてて……。それでそれから……えっと……」と考え込んでいると、「久遠ちゃん!!よかった……。生きてたんだね!!もう……。私達がどんな気持ちで見てたかわかる?いきなり久遠ちゃんが目の前で倒れて動かなくなって……私もレイナちゃんもどうしていいのか分からなくってさ。凄く怖かったんだから……。」と言ってくるので、「ごめん……。ちょっと頭がボーッとしちゃったみたい。心配かけてごめんね。もう平気だよ。」と言って私は微笑み返す。「そうだね。もう、私達と一緒だからね。絶対に離さないよ!」と嬉しそうにしている。すると、


「そうね。私もよ。」と笑顔を見せてくれた。


そして「うん……。」と私が小さく返事をした瞬間、ミユキが、真剣な表情をしながら口を開いた。


「あのさ……。二人とも……。話したいことが沢山あるんだ……。私達も色々考えてね……。やっぱりこのままじゃ良くないなって……。そう思ったんだけどさ……。二人は私達と一緒にいたいと思う……よね?だって私達には本当の両親がいる訳だし、それに久遠がいなくなったら寂しいもんね……。でも、私は今のままではダメだと思ったの。それに久遠のことが大好きだからこそ、今の中途半端な関係を終わらせたい。私は久遠の為なら全てを捨てられる。でもミユキも同じように思ってくれているはず……。だから聞いてほしい。私の気持ちを……。……でも、もしも、二人の答えが同じでなくても大丈夫よ。私達の関係が変わる訳ではないんだから。だから……もし良かったらのお話で…… ミユキが真剣な眼差しを向けてくるので、「私からもお話しがあるの……。私には両親がいる。……けど私達は……。私にはレイラの記憶が残っている……。」と言った瞬間、ミユキが抱きついてくると、泣き出してしまう。「ミユキ……。……ミユキ。私はね……。この世界に産まれ落ちて初めて、心の安らぎを与えてくれた人がいて……。その人はとても優しい人で……私が困っていた時には必ず助けてくれる……。そんな人なの……。ミユキにもわかってほしい。ミユキが大好きな人と同じくらい、ミユキを好きになってくれた人のことを……。……でも、今はそれ以上にミユキのことを考えたいの……。ミユキに悲しい思いばかりさせる私でいるより、一緒に笑ったり泣いたり怒ったりする私でありたい。ミユキの幸せそうな顔を一番側で見ていたの……。でもね……今の私では力不足だから……だから……。ごめんね。ミユキの言う通りなの。私達はこのままじゃいけないのよ……。だから私はね……。ミユキの幸せを願うのなら、ここで終わりにした方がいいと思ってる。」と言うと、ミユキは、


「嫌だ!!絶対嫌だ!!私は久遠がいなくなるなんて嫌だ!!久遠がいればそれで良い!!他のものは要らない!久遠と一緒じゃないなら私は死んでも良い!!もう離れるのは嫌だ!!ずっと側に居させて!!嫌だ!!久遠と離れたくない!!私はもう久遠しか愛せないよ!!私は久遠を愛してる!だから久遠も私だけを見て!!久遠は私の物なんだから……。お願い……もう……どこにも行かないで!!もう離さない!!久遠もずっと私の側にいて!!」と私に泣きつきながらも叫んでくれたのであった。そしてその日はそのまま寝てしまい、朝を迎えることになるのだが……結局私達は、お互いに納得できないままの状態で別れることになってしまうのであった。


翌日、私達は久しぶりに学校に登校すると、教室に入っていくと、ミユキはすぐにクラスの友達と話し始めると、私に近づいて来て「昨日ね。レイナに呼び出されてさ……。久遠は生きているから安心してくれ。って言われて、そして、私は、光の女神の魂と久遠が融合したことにより生まれてきたから……って……。意味がよくわからなくて混乱したんだけど、なんか私に謝ってきてね……。レイナが私のためにしたことは許せることじゃ無いけれど……私は、私の知らないところで何かが起きていたとしても、私の幸せが、これからも変わらないって思ってる。私はレイナを許してはいないし、嫌いなのは変わりはない。だけど……レイナは私の親友だから……。だから……レイナの望み通りにすることにしたわ。久遠がレイラだったのは驚きしかないわよ……。だって……。」と言うと、ミユコさんがやって来ていて、私の肩に手を置くと、


「おはよう。ミホコ、久遠ちゃん。久遠ちゃんは今日が初日だからね。これから仲良くしよう。……ねぇ。私とミホコもね……。レイナと約束していたのよ。だから……。だから……ね。これから一緒に頑張っていきましょうね。」と私に微笑みかけてくれたのである。すると、そこにレイヤが現れて、「久遠?体調の方はどうかしら?」と言うと、私達のところにやって来たのである。その様子に私達3人は驚いた表情をするが、ミユキだけは警戒するような視線を向けていると、


「ミユキ。あなたも久遠の事を気にかけてくれていたんでしょう?あなたに辛い思いをさせた事に関しては、本当に申し訳ないと思っているわ。でもね。ミホコ。あなたのことも親友だと思っているの。だから……。私を信じて……。」と真剣な顔つきになると、ミユキは渋々といった表情を見せるが、「わかった。あなたに免じて……。今回は何もしないであげる。」と言うのであった。その様子をレイヤも少しほっとしたような表情を見せた後、「ミホコ。ちょっと二人で話したい事があるの……。」と言い出すと、ミユキが、ミホコの耳元に口を近づける……。


レイヤの話を聞いてみると、「ミホコ。レイナの事を許す必要はないのよ。私達には、久遠という娘がいることを忘れてはダメよ。」と言われたのである。「うん。それは分かっているけど……。やっぱりちょっとまだレイナの事は許せそうにないかも。……でも、これからはレイナのことをミユキ達と一緒に応援しようと思うの。それに……。」と私が答えると、レイネが笑顔を浮かべると、


「それならよかった!きっとこれで三人は大丈夫だと思うのよ!だからさ。ミホコは、今度こそ、自分が望む道を選んでほしいの。今まで、私が色々とやってしまった所為でもあるから、これはミホコの為にもならないかもしれないって思うの。でもさ……。それでもやっぱり、私は……あなた達に自分の気持ちを曲げるような事をしてほしくは無いって思っているのよ……。」と言って、その場から立ち去って行くとレイヤも「じゃあ私は用事があるからまた今度ね!」と言って去ってしまうのだった。


それから数日経ったある日のこと。私達の前に、突如、レイナが現れたのだ。


私達の元にレイナが訪れた日の翌日。学校に行ってみると、私と、私の友人と話をしていたはずのミユキがなぜか私の横に座っていて、「久遠。話があるの……。」と言われるので、「なにかな?どうしたの?急に会いに来て。……私達もう終わったんだよね?どうしてここに来たの?」と問いかけてみると、


「うん……。久遠とはまだ終わっていないよ……。でも……。私も久遠と話したいって思ったの。」と言われてしまうので、「え?……どういうこと?私は……。私達は……終わりにしたんだよね?私は……。ミユキを幸せにしてあげたかっただけなのに……。」と言うとミユキが、


「久遠。あなたが何を心配しているのかわからないけど、あなたの考えは間違えているから安心してほしいわ。だってね。久遠がいなかったら、こんなに楽しい学園生活を送ることはできなかったと思うし。私達の関係はね……。私達が勝手に作ったものでしかないんだよ。久遠がいなきゃ……意味なんて無いもんね。だから……。今度も一緒に居てほしいの……。久遠がいない世界なんて想像できないもん。だからお願いだよ?私と一緒に居てくれるよね?それに……私には……あなたしかいないもの。私もね……。あなたが好き。私はあなたのことが大好きだよ!!だから久遠が良ければで良いから……。久遠の気持ちを教えてくれないかな?あなたの答え次第で……これからの行動も変わって来ると思うんだ。久遠は……今……幸せ……なのかな?」とミユキが真剣な眼差しでこちらを見つめてくると、「うーん……。よくわかんない。……でもね……。今は幸せな方だと自分では思っているよ。ミユキがいるおかげで……。私も……。ミユキと一緒にいたいって思えるようになってきたから……。」と言うと、ミユキは嬉しそうな顔をした後に、「そっかぁ……。じゃあさ。私は久遠にとって特別な存在になれているのね!良かった!でも……そうなってくると問題が出てくるの……。私にとっては久遠が全てだから……。もし……久遠がいなくなってしまったらと想像するだけで……。」と涙ぐむとミユキを抱き寄せると、私の頬にも温かい雫が落ちていくのを感じたのである。……すると、そこで突然レイラが現れると、


「久遠。私のことを受け入れてくれてありがとう。ミユキのことは任せておいて。私の力で守ってみせるから……。久遠は、久遠にしかできないことに集中して……。あなたがいなくなったら……私は耐えられない……。お願いだから……側に居させてよ……。ずっとずっと久遠が側にいるって約束したじゃん……。お願い……します。」と言うと私の目の前で涙を流しながら私に訴えかけてきたので、私はレイナに対して、私の中で、まだわだかまりはあるものの、レイラが側に居たいと思っていることを了承してしまうと、「うん……。わかったよ……。レイナ。レイラの事も大事だもんね……。レイナはもう私の大事な友達だから……。側にいて良いよ……。」と答えるのであった。


そして……その日の帰り際、私達は久しぶりに三人で帰宅することになったのだが、その時にミユコさんが、レイナに向かって、レイナの正体について尋ねると、レイナは、


「ミユキ。久遠。……二人には本当のことを言うね。私はね……。光の女神として、この世界を見守っています……。」と言うと私達3人は驚きのあまり声を出すことができない。そしてレイナは続けて、「私はこの世界で久遠を幸せにしたいからこの姿で現れました。ミユキと久遠と一緒ならこの世界でも生きられると思ったんです……。ミユキと一緒なら……。私はどんな時もあなたとずっと一緒よ。だからミユキが久遠に危害を加えようとしたりしなければ、私から何かをすることはないと思ってもらって構わないよ。もちろん、私以外の神様の力を使って悪さをしようものなら……話は別だけど……。」と言うと、レイナの姿は消えて行き、そして次の日になるわけだが……。レイナのおかげで、私達の関係性が変わることは無かった。


しかし……私が天宮 真央の力を受け継いでしまった事により……私の人生が大きく変わることになるのであった。


翌日。いつものように朝を迎えて起きると、何故か私はレイナと一体化している事に気がついて、「ふぅ。なんか昨日は凄い夢を見た感じだな……。なんか懐かしかったような……。でも何だろうね……。なんとも言えないような気持ちになったし……変な気分だなぁ……。なんか私に言いたいことでもあるのかな……?」と考えるが、とりあえず朝食を食べに行くために一階に降りようとするが、「あれ?何か体が重いんだけど……まさか!……もしかすると……太ったとか?って、体重計がない!って、もしかしてこれって……。あ、久遠の声聞こえる。って、久遠の感情が流れ込んできてる!?あ、久遠が起きたんだ!よかった!」と言うと、レイナが目覚めると同時に私の中に溶け込んでいたレイナの力が覚醒したことによってレイナが私の中から出てきたのである。その様子を見て驚くミユキと、心配そうに見つめているレイラ。そして、「レイナが……。」と驚いた表情を見せるミユキ。


そして私は、「久遠ちゃん。ごめんね。私が急に目覚めたせいで久遠ちゃんの体に影響が出ちゃったみたい……。私が目を覚ます前に……。私の中に久遠を取り込みすぎたからね……。本当に……本当に……ゴメンね。」と言って泣き出すレイネを見て慌てて抱き寄せてから、「レイネ。私はね……。今の生活は楽しいし……。あなた達が私と一緒に生活してくれていて嬉しいと思っているのよ?私はレイネに感謝してるの。だから……泣かないで……。私はあなたの笑顔が好きなんだから……。」と言うと、「久遠は優しいんだね。でも……。これからどうなるかわかんないけどさ。これからも宜しくお願いします!」と言われてしまうので「うん。こっちこそお願いするよ!」と言うと「じゃあ、今日の予定を言うけど、今日は学校に行こう!」と言われて学校に向かうことになった。……それから数日後のこと。学校で授業を受けている最中に突如現れた光の柱は学校全体を覆うように現れるが、その時……レイナの力は解放される前だったために学校にいた人々は誰も気づくことなくその場を後にすることになるが…… 私達は気が付くと不思議な場所に立っており、目の前では女神姿のミホコが立っていた。「ようこそおいでくださいました!勇者様方!」と言いながら笑顔を浮かべると、私は思わず驚いてしまうが、


「ミホコ!どうしてこんなところにいるの?」と私が聞くがミホコはこちらを見ると急に泣き出してしまい……。私は焦ってしまいどうしていいのか分からず立ち尽くしているとミホコから説明をしてくれた。「あの……ですね。今……私は……。とても心が不安定な状態でして……。このままですと私の精神が崩壊してしまいかねませんので一旦元の世界に戻してあげましょうと思います。でも安心してくださいね。また後でお会いしましょうね。私にはやるべきことがありますので、それを終えるまではこの世界に来ることは出来なくなりましたが……。久遠さんの願いはしっかりと叶えて差し上げますので……!」とだけ言ってミコト達と一緒に姿を消してしまうのだった。


それから私達は家に戻るとミユコとミユキと話をしていたのである。


ミユキから、「さっきのは一体どう言うことなのかしら?ミコト達も消えてしまったし……。」と言われると、「ミユキ。それは多分だけど……。私達を助けてくれたんだと思うよ。だって、私達全員に話しかけていたよね?」とミユキが話を切り返すと、「え?確かに言われてみると……そうなんだね……。久遠。助けてくれるって事は……まだ私達は必要だって事なのかな……?でも……。でも……。うーん……。わかんなくなってきたし……久遠は、もう大丈夫なの?」と言われ、「そうだね……。今は……特に不安は無いけどね……。ミユキ。レイラ。ミユキとレイラにもお願いがあるんだよ。私にはあなた達が必要なの……。だから……。だから……。私のことを見捨てずにずっと一緒に居てほしいんだよ。」と頭を下げるとミユは嬉しさを隠しきれないような表情をして、「久遠ちゃん!!当たり前だよ!私はね。絶対に久遠ちゃんから離れないし、ずっと一緒だからね。約束だよ?それと……。もう、私は……久遠の物だから……。」と抱きしめられると私は、「うん。約束だよ。ずっと一緒だよ……。」とだけ伝えて、レイナが言っていた言葉を思い出しながら、これから起こることを想像するのであった。すると……ミユキはレイラと目を合わせてお互いを見つめて何かを確認をした様子で、レイラはレイラでミユキに向かってうなずくとレイラは私の方を向いて微笑みかけると、私の頬に手を当てながら、「久遠。今からは私の力を使って……。あなたの体を成長させるから……。まずは私の手を握ってくれるかしら?」と言われたので、私は言われるがままに手を握ろうとすると、「あぁ。待ってね。今、服を脱ぐから……」と言ってレイネは自分の服装を魔法によって変更する。その姿は、先ほどまで来ていた制服ではなく……白を基調としたワンピース姿で……、


「久遠……。可愛いわよ。久遠の髪の色に良く合っているわね。そして……。久遠。あなたには少し眠っていてもらいますよ……。」とミユキから言われた私は、急激な眠気に勝てずにそのまま倒れこんでしまい意識を失ってしまうのである。……しばらくして目が覚めるとレイラの家のベットの上にいたのである。


するとレイナがこちらに向かってくると、私に近寄ってきて「レイナ。おはよう。あなたが起こしてくれたのかな?」と問いかけるとレイナは嬉しそうにしながら私を抱き寄せると頭を撫で始めてきて、私が照れくさそうにしているのを見ながらレイナが私に対して、「うん。おはよう。」と伝えるとレイナは私の額に触れる。


そして……私が寝る前にレイラとレイネとミユが私の部屋に入ってきたかと思ったが……次の瞬間に私の前に現れたのはミユキ達4人で……。そしてミユキ達に事情を説明すると、ミユキとレイラは「良かった……。私達は久遠から必要とされなくなったのかと思ったよ。久遠のことが嫌いになったんじゃないかと思って……。でも……。久遠。あなたには本当に申し訳ないことをしたわ。でもね。久遠が眠っている時に、ミホコからメッセージがあったからね。久遠に謝ってほしいって……私は、ミコトちゃんやレイラちゃんと違って何もできなかったの……。それに……。久遠。私は……あの時からずっとあなたを見ていた。ミホコの力を使って……。でも……やっぱり怖くて、久遠に近づけなかった。……ごめんなさい。久遠。」と泣き始めるのである。私は、「そんなことはないよ……。私はあなた達がそばにいてくれているだけで十分だから……。ありがとうね。」と伝えるとミユキが「久遠……。私も……。ごめんね……。私が……久遠の気持ちを考えていればよかったんだけどね……。ごめんね……。」と言って私に抱き着いて来るので私は、「ううん。私は大丈夫だよ……。私が弱いのが悪いんだし……。それよりも、レイラとミユキにはこれから迷惑を掛けちゃうかもだけど……よろしくね。私と一緒だと大変なことになっちゃうかもしれないけど……。」と話すと、ミケは「私は別に問題ないよ。でも……。久遠が危険な状態になるなら私は久遠から離れるけど……良いの?」と言うので「うん。私には……。みんなが必要としているから……。でも……無理だけはしないで欲しいな。あと……。もしもの話なんだけど……。もしレイナに会えたら、その……なんて言えばいいのかな……?」と考えるとレイナが「久遠は心配しなくていいのよ……。」と言いながら私と一体化してくると、 ミユキとレイラとミケが驚きながら、レイナを私の中から引き離そうとするが、ミユキは「どうして……!?」と言いながら抵抗するのだが……すぐに力が弱まっていってしまうのである。するとレイナが、「私は久遠に力を貰っているからね。」と笑顔を見せてくるが……、レイナの顔色が急に悪くなっていきレイナの姿も元に戻ってしまい……。ミユキが心配そうに「レイナ……。あなたは何をしたの!?」と言いながら、私に抱き着くと「大丈夫。私はただ、私の体の中で眠ってもらっているだけだから……。」と答えてくれたが、「でも……。何で?レイナ……!?」と言ってレイナを責め立てるように言い放つと、「ミチ……ヨ。落ち着いて……。レイナだって理由があるはずなんだから……きっと……。」と言うがミチヨはさらに、「久遠の体から出ていくのよ。久遠が苦しむことになるじゃない!」と怒りをぶつけるように叫ぶが、私は、


「二人とも喧嘩しないで……。私がお願いしたの。レイナは私を守ってくれて……。だから……。」と言うとミチが、「わかった……。それで……久遠は……大丈夫なの?もう……戻らないわけはないよね……?私達のことは覚えていてくれるよね……?」と言うので、私は「わからないの……。でも……多分大丈夫だと思うの。私がまた目覚めた時にはまたみんなと過ごせるようになっていると思うから……。信じてほしいな。」と私が言うとミユキ達はうなずき、ミケが、「久遠が信じるんだったらいいんじゃない?」と言うとミユキはうなずいて、


「分かった。私は……。私はね……。今度こそは……私だって役に立つんだからね……。」と言ったのであった。


そしてそれから数日後のこと、 私の家に突然、ミホコがやってくるとミホコは「こんにちは。お邪魔しても宜しいでしょうか?」と言って来たが私は「うん。入ってもいいけど……一体どうしたの……?何か話したいことでもあるの……?」と聞き返すとミホコは、悲しそうな表情をしながら、私とレイナのことをじっと見ていて……、私は「あのさ……どうすればミコトは幸せになることができるの?あなたはミコトの味方でしょ……?それだったら、私があなたにとって邪魔な存在だとしても……。私はあなたを倒すから……。」とだけ言って私は立ち去る。


そしてミコトの部屋に入るとそこにはミコトの気配を感じるが姿は無かった。だが、部屋の中にいたのはミコトの私物であり、ミホコは、ミコトの日記を手に取っており、それを読み進めていくと、そこにはミホコに対する感謝の言葉などが書いてあり……。そして、最後のページまで行くとミコトの字とは思えないほど字が大きく、


『お母さん!私のためにここまでしてくれて本当にありがとう!私のせいでこんなことになってしまったけど、私は絶対に死なないし、久遠も助けてみせるから……。だから……。私のことを信用して欲しいの……。』


と書かれた文章を読んだ後で、私の瞳からは大粒の涙が流れてくるとミコトの声が聞こえたような気がして、気がつくと私の後ろにミホコがいたのである。私が驚いて振り返るとミソギとシイバの二人が立っていたので私は、すぐにその二人に近づいていくと話し掛けることにすると二人は、涙を流していた。私は、二人に対して、


「二人も来てるって聞いたけど、久遠さんはどこにいるのかしら?」と思いながら質問するとシイばあが私を見て、


「お前様……。もうわかっているんじゃろ……。もう……あいつは……。」と話すので、


「……久遠の居場所がわかるんでしょう……。久遠はどこに……。」


私がそう答えると……、 ミホコが「あの子がいるのはね……久遠のお墓だよ……。私達があそこに久遠を埋葬したのよ……。久遠がいなくなったからって、あの場所にあのままだと、魔物が住みついてしまうかもしれないからね……。あそこを久遠のお墓にしたのよ……。あそこは……。久遠がずっと暮らしていた家なんだよ……。私も何度か遊びに行ったけどね……。久遠の家って言ったら久遠の家族しか知らない場所だから……誰にも見つかることもないだろうしね……。それに……、あそこはね……。あそこにあるお守りはね……私の母が父から贈られたものでね……。私の大切な人から貰う物らしいんだ……。でもね……私は、あの子に渡すつもりだったんだけどね……。まさか、あの子が久遠を連れて来るとは思わなかったよ……。あの時久遠をここに転移させなければよかったんだろうけど……。そうしたら、久遠はこの世界にいないままになっていただろうから……。」


と言ってきたので、


「でも、どうしてあなたは久遠を私に託したりなんか……したのよ……。あなたなら……あなたの母親ならどうにかなったかもしれないでしょうに……。久遠にはあなたが久遠のことを思ってしていることが何となくわかったのね……。でも、あなたは、あなた自身に何かがあった時に、私の力を借りたいと思っていたようね……。あなた達の一族は、私の一族の眷属なのよ。私と久遠の力は少し似ている部分もあるけど……。それでも久遠の力は強すぎる。あなたは、久遠の力を使って世界を救った。だから……私は、久遠があなたに救われるようにとあなたを久遠の元に向かわせたんだと思うの……。」


するとミホコは私に、「あの子の事よろしくお願いしますね……。私は久遠と一緒にいすぎたんです。私にはあの子を幸せにすることが出来ないんですよ。だから……。あなたならできると思います。私の愛娘の事を頼みます。それと……あなた達一族にも伝えておいてくださいね。私は……久遠をあなた達に会わせられて本当に良かったと思っているわ。あの子と出会ってからの時間は、本当に楽しかったわ。あの子は、本当に素敵な女性です。」


ミコトはそう言ってミホコは私を抱きしめてきて私は泣き始める。


「どうしてよ……なんであの人が……。私も……。私も……あの人と……同じなのに……!」と言うとミホコは、ミコトの手を引いて私から離れるが「さっき……久遠が言っていたんだけど……。この世界の人間は全ての種族が魔力を持っていないのはおかしいから久遠が調べている最中なのよ……。私達はね……。久遠に自分達の体を貸してるのよ。それは……、もう既に他の人でも、この世界に来れるように準備をしていて……。久遠がその力を貸すことを許可した者だけに限定してあるのよ……。


それで、久遠の意識が目覚めるのはまだまだ先だと思うから……それまでは久遠と会わないでほしいんだけど……。良いかしら……?」と言われ私は、「わかった。私もその方が嬉しいし……。そのかわり、私は久遠が目覚めたときに会いにくるけど……それでいいよね……?」とだけ言うと、 ミホコが「もちろんよ……。」と言う。私は「わかった。私は、しばらく……というか……しばらくはここに住むから、これから宜しくお願いします。久遠の事は任せて下さいね。久遠の事を大切に思う気持ちは私も同じなので……。」とミコトに告げる。するとミコトは「そうね……。私はあなたのことも久遠の事も大好きなんだから……久遠のことをお願いね……。」と言いながら微笑んでいたのであった。


俺達が『魔王の間』に戻ると……レイナ達は全員泣いていた。


そして…… 俺はレイナから久遠の魂のことについて聞こうとすると……。レイナは、


「真也は気づいていたみたいだけど、私達は……。あのね……。あの子は私の体に久遠の体を戻そうとしているんだと思うの……。そして……、私が、ミコトちゃんから久遠を助けてあげられないのは久遠の魂を救えないからなの。私は、久遠が生き返ることを望めなかったの。だって……。私のせいで……。私のために……。私が……。」


と言うとミユキが「久遠は……。」と言ってレイナのことを見るとミユキはレイナを抱き寄せていた。そして……。「もういいんだよ……。ごめんね。気づかなくて……気づいてあげられなくて……ごめんね。大丈夫だよ……。私達が必ず……久遠を救うから……。そして……また、みんなで暮らせるようにするから……。久遠を絶対に……。助けるから……。」と言って抱き合っていたのであった。その様子を見ていたミケは、


「ミユキ……。」と一言言うだけで……。その後のことは二人に任せることにしてその場を離れていくのである。そんな時……ミチが、「レイナとミユキって姉妹だったんだ……。初めて会ったときは全然似ていないと思ってたけど……、やっぱりそっくりだなぁ。ミケもそう思ったでしょ?」と言ってきたので俺は「そうだな……。二人は性格は全く違うのに似ているところは結構あるな……。ミチもそう思わないのか?」と聞くとミチは、


「まあ、私はそう思わなかったかな……?確かに雰囲気とか、喋っている内容もちょっと似ているかも?とは思ったけどね。でもさ……ミケがあんなことを言うなんてね。ミチ、ちょっと驚いたな……。」と俺に話すと俺はミソギに、


「ミソギはどう思っていた?」と質問をする。


「ワシは二人共美人じゃと思ったのう……。それにしてもあの二人がミユキの妹だったとはのう……。ミユキに聞いたがミケの両親とも血のつながりがないと言っていたしな。……それなのにミケとミチカは……よくミチを受け入れようと決意できたものじゃな……。ワシには正直わからない感覚かもしれん……。ただ、ミコト殿のこともミホコさんのこともあるからな……。それについてはミソギやミコトさんと色々と話し合ったんじゃがな……。それでも……。やはりミコト殿を救いたいという感情の方が強かったんじゃよ……。それに、ミホコさんも……。だから、今は……。後悔などはしていないし、するべきではないのかもしれないな。ミコトさんを助けることが出来れば……全てが解決出来るんじゃからな……。ミコト殿が目を覚ましたら全てを話すつもりじゃが……。今はミコト殿も疲れていることだろうから……明日になったら皆に伝えておくことにするよ。」と言うとミチコも話に参加してきた。


「そうですね……。ミコトちゃんはきっと疲れているはずですよ。ミコトさんが倒れてからミコトさんはすぐにミユキちゃんと二人でミコトさんに回復魔法をかけ続けていたから。」と言うとシイバが話に加わってきた。


「シイバはミソギ達の事を心配してついてきたんじゃないのか?」


「いえ……私達が心配なのは……久遠の方でしたからね。でもね……久遠にミユキとレイナの話をしたら……二人には言わずに見守っていてほしいと久遠に言われたのよ。それで私は久遠に頼まれていた通り二人を見ているだけにいたんだけどね……。」


するとミコトは久遠のお墓の前までいくと話し掛けた。


ミコ


「久遠様……お久しぶりです……。私はミコトと申します。覚えていますでしょうか……。私はあなたのことを見守るためにやってきたのです。私の力では……あなたを助けてあげることが出来ないかもしれない……。私に力を貸してくれませんか……?」と……ミコは久遠の墓の前で手を合わせて祈るような感じになると……しばらくしてから、「わかりました。ありがとうございます……。あなたのおかげで、私はこの世界に戻ってこられます……。ミコトさん……あなたに私の全てを預けます……。どうか私を助けてあげてください……。」と声が聞こえてくると、久遠の姿が現れ始めたのであった。


私達は……ミコと久遠の話を聞くことにした。私は久遠の姿を改めて見て驚くことになるとは思ってもいなかったのだ。久遠の姿を見てレイナもミユキも驚きの表情をしていたのだった。


久遠が現れたことに気付いたミコが、「ミコト……さん……。これは……どういう事なんですか!?どうして久遠がここにいるんですか……!」と言うと久遠が……、


「ミコト姉さま、初めまして……。私は……久遠と申します。この姿で現れるのは初めてになりますね……。そして、久遠と呼んでくだされば嬉しいです。私の名前は『ミホコ』と言います……。ミホ……と私は呼んでくれればいいので。よろしくお願いします……。」と言う。すると……レイナが……、「私は、久遠の姉にあたるレイナと申す者だ……。宜しく頼むぞ。そして……久遠は私の妹ということになる。だが、そのことは後で話すことにしよう……。それよりもまず、ミコが聞きたいことはなぜ……お前が私の妹の魂を持っているか……であろう……。」とミコに向かっていう。ミコは、黙ったままだったが、


「そうです……。教えて頂けますか……?」と答える。するとミホコさんが、「それは……私の口から説明させてください……。」と言うので、私は黙ることにする。ミコも何も言えなくなるのであった。


「そういえば……まだこの世界には……久遠ちゃんの魂があるのね……。でもどうして久遠ちゃんの魂だけがまだこの世界に残ってしまったの?……。」とレイカが不思議そうな顔をしていると、


「それは……、この世界での私……、久遠の魂だけがこの世界に残っていたからだと思いますよ。」と言う。私は疑問を感じたことがあったので再び聞いてみることにする。


「それなら……レイナが生きている間は久遠の肉体と久遠の魂を融合させることが出来たんじゃないのか……?それで良かったと思うんだが……」と聞くと久遠が、久遠の顔で私を見ながら話すと、


「私は……。私自身が望んだんです。このままの状態で私とミコト姉様に身体を与えてくれることを願いたかったから……。ミコト姉様と一緒にずっと居たいと願ったのです。私が、自分勝手で我ままをしてしまったことでこんな事態を招いてしまったので……謝らなければなりません……。本当にすみませんでした……」というので私が「そんなことはないんだ!だって、君がいたから……私は、救われた。君がいなかったら私は生きることすら辛かったと思う……。私にとっては久遠は……。恩人なんだよ……。そして、私は……、君のことが好きだからね。」というとミコトが私の手を両手で握りしめながら、「うん……。そうだね……。私にとっても……久遠がいてくれたから今の私がいることを忘れないようにしないとね……。私は、私達姉妹のことはいいのよ。久遠が幸せになることが大事なんだもんね……。だから……真也……。私はあなたに、ミコトとミコトの妹の久遠を助けて欲しい……。そして、私にも……協力して欲しい……。」と言ってくれるのである。私は……久遠の手を取りながら……、


「ああ……。俺にできることがあるのであれば何でもするよ……。だから安心してくれ……。俺はもう逃げないよ。」と約束をしたのだった。


「真也くんは……もう大丈夫みたいね……。そして真也君はミチとも仲良くしてくれたみたいだし……これからは私も協力するわ。レイナ……いいわよね?」


「もちろんだ……。ミコトの協力を断ることなどできんからな……。それに、私は……真也に命を救われてしまった……。あの時真也に出会ってなかったら……。私はすでに死んでいたからな……。そして今頃、レイナともこうして会話することもなかっただろう……。私には感謝してもしきれないくらいなんだ……。レイナが……真也のそばにいるのならば……私は真也に協力する。」と言ってレイナはレイナを抱き寄せるのである。


「ありがとう……。久遠が……私の妹が生きていたなんて思ってもみなくて……。久遠に……私の妹が生きていたんだよ……と言ってあげたいなぁ。レイナさんと一緒だとしたらきっと喜んでくれるよねぇ。早く会いに行きたいわ。私も会ってみたいなぁ。」とミチが言うのであった。


私達がそんなやり取りをしている時にシイバはミチコとミコトと話していた。


「二人は久遠が生き返ったらどうしたい?」


ミチが「そうね……。ミユキのことも、もっと知りたいけど、私は……。ミコトと久しぶりにゆっくり話して見たいわね……。色々と……。今までは出来なかったことだからね……。でも……一番気になるのは……ミコトが……。」と言うと、


「確かにね……。ミコトさんは……。ミコトさんのことだけはわからないことだらけだったのに……。突然現れて……。そしてミコトさんのお父さんが、ミコトさんを連れてきてくれと言った時は正直……不安に思っていたのよ……。私は……。でも……、ミコトと二人で話していた時の表情を見ていると……あの二人に何かあったんじゃないかと思ったのよ……。私は二人には言えないけど……。だから……私は二人を見守り続けたいと心から思っているわ。」と話すとミチコは、


「そうですよね……。久遠ちゃんだけじゃなくミコトも、ミコトちゃんも私達に何も言わずに姿を消したんですよ……。私も本当は問い詰めたい気持ちがあったんですが……。二人がいなくなってからというもの……。久遠も元気がないですし……。久遠もあんな感じに明るくなったから……。二人が戻ってきたときに驚かせてやりたいので、聞かなかっただけです……。私は……久遠が戻ってきたらまた、みんなで楽しく生活したいと思っているだけです。でも……。私は、二人の事を家族だと思っていますけどね。シイバさんも……同じじゃないんですか?」と言うのであった。


シイバは、「そうだな……。ミコに聞いた話だけでも信じられない出来事だったが……。久遠の話を信じるしかないのかな……と思っていたし……実際その通りだったわけだが……。久遠にはミコがいるし……。私としては久遠と二人で話したくはないからね……。二人と会う前に、少し時間をくれないかい?」とシイバが話すと、「それは仕方ありませんよね。では久遠ちゃんにはまだこの話は伝えないようにした方がいいかもしれません。久遠ちゃんが戻って来たときのために私達は久遠と話さないようにする。これが一番だと思いますよ。」


「そうですね。私もそれがいいと思う。ミコの気持ちもよくわかるので……そうしたほうが久遠も傷つかないと思うので、久遠ちゃんがこの世界に戻るまでは私達は三人と久遠の話で盛り上がっておくことにしよう。」と話し合っていた。そして……ミコトが……、「私達は……とりあえず今は……真也さん達について行ってもいいですか?」


「えっ!?どういう意味なんだい?私達の事を心配してくれているのは嬉しいが……久遠に会った方が久遠も喜ぶんじゃないのか?私は、久遠とは会えていないが……。それでも久遠は……きっと喜んでいると信じているが……久遠と最後に会ったお前なら……わかるのではないか?」と言うとミコトが、「それは……。そうなんだけどね……。久遠はね……私に会いたくないかもしれない……。私は……。あの子に嫌われたからね……。私は……。久遠のことを嫌いになってしまった……。」と言うとミコトは泣き崩れる。するとミコはミコトのそばに行くと、抱きしめてあげる。そして、「ミコト姉さん……。私は久遠と仲良くして欲しいとは思っていましたが……。ミコト姉さんを責めたりしないですよ。久遠は、ミコト姉さんの事が大好きだったんです。私と久遠とレイナとミコで遊んだり、お風呂に入っていたり、寝たりするのが私は大好きな時間だったのよ……。久遠は……。あなたに会うことを楽しみにしていて、そしてあなたと一緒に暮らしたいといつも口に出して私やレイナ姉さまに話すくらい……。なのにどうして久遠があなたを嫌うようになったかは分からないけど……。そんなことはどうでもいいです。だからミコも……ミコトの側に居てください……。私はもう、自分の力では立ち上がれなくなりました。私とミコト姉さんを支えてくれる人が必要だと思いませんか?私は……この世界で……この姿になった以上は一人で生きていかなければいけなくなってしまった。だから私はミコト姉さまの力が必要なのです。そして……私もレイカ姉さまの力が必要になってくるの。お願いします……。」


ミコトはミコトの顔を見ながら涙を流し、「ごめんなさい……。本当に……。私なんかを……。私なんかのことをミコとミコトが受け入れてくれたというのに……どうして私はこんな我ままばかり言ってしまうんだろうね……。ミコトも……。ミコにもミコトの辛い思いがあったことを知っているのに……。私だってね……。真也君とレイナ君のようにこの世界で過ごしたかったのよ……。」と言うとミコトは泣き出す。ミコは、レイナに抱きつくと、ミコトは、シイバに、ミコトとミコトのそばにいるよう伝える。


「レイナ、久遠のことをよろしくね。それと……。真也君をしっかりサポートしてあげて下さい。」と言ってレイナに、ミコトが渡してくれたレイナそっくりの指輪を渡して「これを持って行ってくれ。久遠は私と同じ指輪をしていたはずなのだよ。これはレイナとお揃いのものでね。私がレイナに頼んで用意してもらったんだ。私からの最後のプレゼントだから受け取って欲しい。レイナと真也君の絆として持っておいて。久遠に渡せるかわからないから……。私はね……。もう……。レイナともミコトとも、レイナとミコトとも仲良くすることはできない……。私のせいでみんなが悲しんでしまうのが嫌だから……。だからね……。真也君とレイナ、そして……レイナと久遠、ミコトには仲良く過ごして欲しいからね……。私には出来なかったことを、真也君はレイナと協力して成し遂げられるはずだ。」と言うのである。


「わかったわ……。私は、レイナちゃんともミコトとも、ミコトともこれからずっと仲よくしたいから、私は絶対に離れないと約束する。それにね……レイナの気持ちを聞いているとね、ミコトと久遠の事で、真也さんは悩んでいたみたいなの……。だから……私は真也さんの支えになるつもりなの。そして……私自身も……。」


「ありがとう……。私には出来なかったことだから……、レイナがいてよかったよ。私も……レイナみたいに前向きになりたいと思っているけど……。なかなかうまくいかないのよね……。私はレイナのことを信じているわ。久遠のことも任せてちょうだい。ミコトは、久遠のことが嫌いなんじゃないわ。あの子だって……。」


ミコトは「レイナ……、私の代わりに……、久遠のそばにいてあげてほしいの。私の事は心配しないで。」と言いレイナが、うんとうなずくと、ミコトは微笑みながら、眠りにつく。シイバは、そのやり取りを見ていたが、「シイバ様……。すみませんでした……。私も久遠の事になるとついカッとなってしまうことがあるんです。許してもらえないのはわかっています。でも、私は久遠のためならどんなことでもするつもりなんです。どうか、シイバ様にお願いがあるんです。シイバ様は久遠のことを好きにならないように気をつけてください。私は久遠の事を誰よりも大切に想っているけど……久遠が望まぬ結婚を強いられるなんてことになれば……。私はすぐに久遠の元に行きますから。」と言うと、シイバが、「ミコト……私は……久遠の事をそんな風には思っていないよ。安心してくれ。久遠の事は、妹のような感覚だ。それに私はね……。レイナの事も……ミコトと同じように大切な存在だと思っているからね……。」と言うのである。


そして、「レイナは、まだ久遠の事をあきらめていないのかな?」


「諦めきれる訳がありませんよ。あの子は、私がいなくなったあとに私にとって代わり、そしてこの世界を救ってくれたんですから……。」


「ミコトさんとシイバさんには……申し訳ないのですが、私は……ミコト姉さまと、ミコトと、レイナと一緒にこの世界を救ったつもりです。あの時にね……、私達3人は一緒に戦った仲間だったんです。だから私も……、ミコト姉さまとミコトのために出来る限りの協力はしますからね。」と話す。


「ありがとう。レイナ。私も、ミコトの事が心配だから……。でもね……私達は……。もう二度と会うことはないかもしれないの。それは私も……覚悟していることなの。だから……。レイナはミコトに幸せになってもらいたいと思っているけど、無理はしなくていいの。久遠と……久遠と、久遠の好きな人が結ばれることが私達の願いだけど、久遠とミコトに幸せな生活を送ってもらえるのが一番だと思っているの。だから……ミコトはきっと大丈夫だと思う。」と話を終えたのだった。そしてシイバに、「私は……真也と久遠を会わせたい。真也には私がついている。だが……。ミコトには久遠しかついていないのだ。だからミコトの事は……久遠に頼むしかないと思っている。私達がミコトの事を助けることができない以上、ミコトのためにも、そして、真也の為にも久遠に任せるしかないだろう……。私達は久遠には敵わないが、それでも久遠のことは守っていくつもりだ。私もミコトが戻ってくるまで……ミコトのためにも頑張ることにする。レイナも……レイナと久遠のためにも、レイナ自身のためにも、レイナらしく生きていくんだよ……。いいね?」と声をかけると、「はい!私はミコトのために生きる。私はそう決めたの。私はもう……迷いません。私は久遠も大好きだし、レイナちゃんも大好き。もちろん真也さんも大好きです。


だから私は真也さんを支えるため、久遠を支えていきたいと思います。ミコトは、ミコトの思うがままに行動してほしいと思っています。だから、私も……久遠のことは大好きだから……私は久遠の支えになりたいと考えています。久遠と、ミコトには……また三人で会いましょうね。」と言うと、ミコトは泣き出し、「レイナちゃん。ごめんなさい……。私も、あなたが……、ミコトと、レイナちゃんが、そして、久遠とミコトが好き。だから私は……レイナちゃんとも仲良く過ごしたかったの……。」と言うのだった。するとレイナも、「私も同じだよ……。私も、久遠と同じくらいミコトが大好き。」と言うと、二人揃って泣き出す。シイバは二人の頭を撫でてあげ、


「ミコト……。私に謝る必要などどこにもないのだよ。久遠の側にいる以上は、ミコトの味方をするわけにはいかないのが……辛いところではあるんだがね……。でも、ミコトの思いも分かるつもりなんだ。だから……。私は……ミコトとは……。友達ではなくて……兄妹として過ごせればと考えているよ。久遠もきっと……私のように、この世界のミコトを受け入れて……本当の姉妹のように仲良くできると思う。久遠も、私と同じことを言っていたからね。私とミコトも……同じ境遇にあるんだ……。だからこそ、ミコトが久遠と仲良しにしてくれることが何よりもありがたいことなんだ……。だから私は、もうミコトと……仲良くすることを諦めているんだ。私は……これからは、レイナを……そして久遠を守ることを……一番優先にしていきたいんだ。私だって……本当はミコトやレイナと、ミコトとも、もっと仲良くしたいと思っていたのにね……。」


ミコトは涙を拭くと、シイバの手を両手に包み込み、「ありがとうございます。シイバさんは優しい人ですね。私は、ミコトの思いを尊重してあげたいの。だから……私は久遠の事を信じるし……、久遠の力になろうとしているのよ。久遠には……真也さんがいて、レイナがいるし、私だって……レイナと一緒に久遠と、ミコトの役に立てることを探していきたいって考えているのよ。私ね……。ミコトには……、シイバさんにも……久遠にも負けないぐらい、真也さんを愛している自信があるから……。」と言うと、二人は笑顔を浮かべてお互いの手を握った。そして……レイナがミコトとシイバを抱き寄せる。レイナは「お二方とも……久遠の事、お願いしますね。久遠はね……。私がこの世界にきてからずっと一緒に過ごしてきた大切な妹のような女の子なんです。久遠もミコトと同じでね……私の大好きな友達なんです。久遠の事は私が守ります。ミコトはシイバさんに任せればいいですよ。シイバさんの事は、私もよく知っていますからね。ミコトも、これからずっと仲良くして下さいね。久遠のこともよろしくお願いします。」と言うとミコトはうなずいたのである。シイバは、ミコトの頭の上に手を乗せると、「わかった。ミコト、レイナ……君たちのことも必ず守るよ。」と言うと、「私は……レイナに頼られる存在になりたいから……。」とミコトが言うのである。


俺は……久遠という女性と出会ったのだった。そして俺には、リリスという名前の女性が同行する。久遠という少女を守るためには仕方ないのだが、リリスが俺と一緒にいるということはつまり、この世界で目覚めてからの記憶は全てなくなるということになる。それはすなわち、この世界で起きたことや、その出来事を知っている人間がいなくなってしまうということにもなる。俺はそのことに一抹の寂しさを感じていた。久遠とミコトには幸せになってほしい……。ミコトと久遠の想いが実るように祈ってもいる。


「ミコトは……。シイバの事も好き。でも……シイバは……。私にとってのお兄様みたいな存在だから……。シイバが私を好きでいてくれるのは嬉しいけど……。」と言ってうつむいているミコト。


「シイバはね……、私にとっては弟みたいに見えるのよね……。私も……。本当は……レイナって呼んでくれるのは嬉しかった。シイバのこと……。私はシイバって呼ぶことにしたから……。シイバって呼びやすいし、シイバと話す時は素で接することができるようになったから……。」と恥ずかしそうに話していたのだ。シイバもミコトが可愛いからこそ……、ついからかってしまうらしいのだ。


そんなシイバを見て、リリスが「私は……。久遠ちゃんとミコトのことが……大好きだから……。二人を守ってみせるよ。私が久遠の……ミコトの姉になって、ミコトと久遠の事を見守っていくからね……。ミコト……。私が絶対にあなたを救えるようにする。ミコトは……何も考えずに待っていて……。久遠と一緒に、楽しく生きていってくださいね……。」と言い終わると……。


「うん!分かったわ。ミコトと、私は二人で仲良く、幸せに過ごす。久遠と……真也さんは任せて……。レイナも幸せになってくださいね。私もね……、もう自分のことは自分で決められる年齢になったの。私だって……強くなったのよ。レイナが私を助けてくれた時からね。」と言っていたのであった。シイバはその様子を見てうなずくと、二人に向かって、「私は……君達の力になれなくてすまないが……二人の事は、ミコトの事も久遠の事も守って見せる。安心してくれ……。私がついている……。」


するとリリアは俺の腕にしがみつくと俺の顔を見つめ、「真也、私は……。あなたに会えてよかったです。そして本当に感謝しています。ありがとうございますね……」と笑顔を見せてくるのだった。俺達はこの村の宿屋に部屋をとりそこで休むことになった。久遠とミコトはこの村に留まってくれるそうだ。久遠にはレイナとシイバ、そしてリリスがついていてくれるようだ。俺のほうも……。今はリレアだけなのだが……これから先もリディアと共に行動しなければならないことを考えたら……俺自身がどう動くべきかについて……真剣に考える必要がありそうだと思い始めていたのである。


俺も、今後の事を考える時間が必要だと考えていたら……この世界の久遠達には申し訳ない気持ちで一杯になっていたのだ。しかし、リシアが言うには……。


『気にする必要は無いぞ。久遠はミコトの事しか見えていないようだったが、久遠の心は今……ミコトと一緒だ。だが……。それは悪いことではないだろう? それにだ……。久遠にはミコトがついているし、お前もついているのだろう。なら、私達が余計なことを言う必要もない。ただ、もしもの事を考えながら行動していくしかないだろう……。』とのことだった。そして、『まあ、お前の実力であれば大抵の事があっても何とかできるとは思うがな……。それでも万が一の場合の事を考えたら、久遠の事も気にかけてやっておくべきだと思うがね……。それと……。久遠も……ミコトと同じように……強い思いを持って行動したから、こうなっていると思うんだよ。だから久遠の事をあまり責めたりしないようにな……。あの子のことは……。お前も分かっているだろうが、ミコトも久遠によく似ているところがあるんだよ。だから私は、ミコトのことは、これからもずっと見守るつもりなんだ……。だから久遠のことはミコトに任せてくれないか……。ミコトが久遠を支えてくれるのならそれでいいと思っているんだ……。


私とミコトはね……。もうお互い離れることなんて考えられないんだ。だから、久遠にはミコトを……。真也には、ミコトのことを頼みたいんだ。久遠には、ミコトが必要なんだ。久遠は……ミコトがいなければだめになってしまうような弱い人間ではないとは思っているけれどね……。久遠の事を一番理解してあげれる存在はミコトしかいないと思うんだ。そして……ミコトにも……。お前という心の支えがいてくれないとダメな存在だと思うからね……。ミコトも……私に遠慮しないでミコトと、もっと仲良くして欲しいと思ってくれているんだ。でもね……。私に気を遣ってくれて、ミコトの方から話しかけてくれることはほとんどないんだけどね……。だけど私は……。これからもずっと……ずっと……。ずっとミコトと仲良く暮らしていきたいと本気で願うようになっているんだ。真也……。私には分かるよ……。だからさ……。私からも久遠の事を頼めないかな……。』と……リディアが俺の肩に頭をおいて言ってきたのだ。俺は彼女の言葉を聞くと同時に、彼女が今、どんな表情をしているのかを確認しようと思ったのだが……リデアには俺の考えが分かっていたらしく……。「私の顔を見たって、何もないですよ。それにね……。ミコの笑顔が見たければ……まずは久遠から笑顔を奪ってやろうと考えている奴らを倒してからだと思いますよ……。ミコトはね……。私がミコトからもらった物の中で、一番大切にしているものがあるんですよ。だから……私としては、この世界では久遠ではなく、ミコトを守って欲しいんです。お願いしますね……。私も、ミコトを守るように頑張りますから。」と言う。


俺はリリスの言葉を聞いても……納得はしていないのだが……俺自身も考えていたことを告げたのだった。「久遠の事は確かに……ミコトが一番大事にしている人だし……守りたい相手だと俺は思ってはいる……。でもな……。俺は久遠にも笑っていてほしいし……。ミコトと一緒になって幸せになってほしいって考えているんだ……。」と言ってしまったのだ。そんな俺に対して……。「あら……。久遠はね……。あなたのおかげでこんなにも可愛い女の子になったんですよ。それってつまり、真也のおかげなんじゃないかなぁって思うんですよね。あなたは知らないかもしれないけど……。久遠もミコトと同じぐらいあなたが好きみたいなんですけどねぇ。久遠の笑顔が見たかったり……。幸せにしたかったりするんでしたら……。ミコトと一緒になることが一番じゃないですか?」と言われたので……。


「そうかもしれんが……。今の俺の状況はどうしようもならないだろう?だからせめて……。俺にできることがあれば協力させてもらうつもりでいたんだよ……。久遠もミコトも……。笑顔を絶やすことなく幸せになる方法を見つけ出せば、この状況だってどうにかできそうな気がしてるんだ。俺が……。ミコトの事を一番知っていると思っていたし……。ミコトと過ごした時間は長いし、一緒に旅をした仲でもあるからね……。だからこそ俺は、この世界でも一緒に過ごしていて楽しい仲間として接してくれる、ミコトの力になりたくってね……。」


「そうですか……。まあ。久遠は真也のことが好きみたいですからね……。あなたなら、私達も認めてもかまいませんし……。あなたも……。ミコトと久遠の両方に好意を持たれていたら、大変ですね……。あなたが私達に優しく接してくれたことは事実ですし……。そのお礼の意味も含めて私はあなたの力になることを誓おう。私はミコトに嫌われるのは嫌なのでね……。それに……。リリスが認めた男のことだから、私も力になりたいとは思っている。ミコトのことと、久遠とを両方を笑顔にしてみせるというのは難しいだろうが、やってみる価値はあると思うからな。それに……久遠は……。ミコトと出会っていなかったとしても、きっと……何かしらでこの世界に来ていたとは思えるしな。ミコトと久遠は……お互いに必要としている存在だから……。」と言ったのだ。


「ああ……。俺の願い通りにいけば、必ずみんなで笑顔になれるから大丈夫だ。俺の事を好きになってくれたミコトのためだけではなく……俺を信じてくれる人達のためにも、この世界を何とかしたいと思うよ。」俺も決意を固めたのである。リリアはそんな様子を見ると、「私の事は気にせずに、あなたも好きなようにするといいよ。あなたがこれから何をするつもりなのか分からないけれど……あなたもあなた自身のために行動するべきだと私は思うわ。あなたは自分のためじゃなくて他人のためを優先にする優しい人だからね……。」


俺とリリアが話し込んでいる時に、久遠がミコトとシイバに抱きかかえられて部屋に戻ってきたのだった。シイバが「私とミコトはしばらく……二人だけで話した方がいい。真也殿と久遠さんは私達の部屋に行ってください。」と言って部屋から出ていく。ミレアはシイバ達が出て行くのを見ると久遠に向かって言った。


『ミコト、シイバにいろいろとお世話になっているでしょうから、シイバと一緒にいてもいいよ?』


『私はミレアと一緒にいます!』とシイバに抱えられたまま言う。シイバは困った顔をしながら、「えっ?ミコト?私はリシア様の指示通り動いているだけだよ。ミコトの事は大切だと思っているからね。」と苦笑いを浮かべる。久遠はリリアの所に行き、「姉様。ミコトの事、お願いね!」とお願いをしていたのだ。そして俺がリレアに話しかけようとする前に……久遠は俺の隣に座ってきたのであった。そして俺の手を握るのであった。リリアも、俺の反対側に座ろうとするが……。ミリアに引っ張られる形で、久遠の前に連れ出されるとそのまま久遠に抱きしめられてしまい……リリアはその久遠の様子を眺めながら、「仕方が無い奴め……。だが……。少し羨ましいぞ。」と小声でつぶやくのであった。


リリスがリレアを連れてきて、レイナ達を元の場所に連れて行ってもらい……それからしばらくしてから、リシアとレイナは二人で話をしていた。リシアが俺の所に来ようとした時、リシアの身体がふらついて……それを見ていたレイナがリシアを支える。リシアが「すまないな。レイナは大丈夫だったかい?私はちょっと疲れてしまってな。もう年なのかも知れないな。」と冗談を言っていたので……俺は「いえ……。全然、元気なように見えましたよ。」と返したのだ。そしてリディアは、リディアのことを見つめている俺の表情を確認すると……俺達の側に近づいてくるのであった。


「リデアがお前と話をしたがっていてな。私達は席を外すよ。それとだ……。久遠のことは私も、お前のことを信用することにするよ。リリアがお前に、久遠を託した理由も分かったからね。リデアも、お前が久遠とミコトとを引き離すことなんてしないと信頼しているようだから、心配はしていない。リデアの件については、リデアが私の元に戻ってくるまでの間はお前の味方になるつもりだ。まあ……あまり私と久遠のことを気にかけないでくれればいいさ。久遠と真也が幸せになれれば、私は満足なんだ。久遠は……私にとって娘のようなものだと思ってはいるが、久遠は真也と一緒になるのが一番だと思うんだ。」と言う。そして続けて……


「お前とミコトには……幸せになって欲しい。久遠の事も……私なりにできる事があれば助けてやれると思うんだ。ただ……リディアだけは許さないけどな。」と言う。俺には何のことかわからなかったのだが、どうやらリディアがリデアの妹ということには気が付いていないらしいので安心したのだった。リディアが、リデアのところに向かった後も……久遠はずっと俺の腕を握っていたが、急に真剣な表情をして俺に告げたのだ。


「私もね……。真也と一緒に、これから頑張っていくの。これから、大変なことがあるかもしれないけど……。一緒に乗り越えましょうね!真也は絶対に守ってあげるからね……。」と言っていたのだ。俺は「そうだな……。お互い頑張ろうぜ……。俺の方こそ頼らせてもらうからね……。それに……。今はゆっくりしておきたいだろうけど……。今日はいろいろあったわけだし……。これからもまだいろいろとあるかもしれないから休める時は休むことも忘れないでね……。久遠だって大切な俺の仲間の一人だし、ミコトだって、久遠にとっては家族みたいなものだろうからね……。」と言い返すと、久遠は嬉しそうな顔をしていたのである。俺はその後、久しぶりに会った仲間たちとも会話を交わしたりしながら過ごしたのであった。そんな風に過ごす中、リディアやシスターマリアとレイリアもやってきて、一緒に過ごしていたのである。


俺は今朝、いつものように朝食を取り終えると……皆に声をかけてから訓練をすることに決めた。俺はまず、この世界に来て初めて戦うという体験をすることになるのだが、俺はまだ武器を何も持っていなかったので、自分の身体能力を向上させることに決めていた。まず、自分がどのくらいの速度で走れるのか確認するために、走る練習を始めることにする。


最初は俺が一人で走り続けていた。途中で、俺の訓練風景を見ている人がいることに気が付き声をかけた。するとその人物はミレアであり、シスタ―マリアがこの場にいたのだ。ミレアは「私は真也に用があったから来たんです。それにシイバが……シイバが最近暇を持て余しているみたいだから……。真也が良ければだけど……訓練にシイバを連れて行ってくれないかなって思って、ここに来てみようかなと思ったんです。それで、ちょうどそこにいたシイバに、ここで私が真也と話してるから呼んできて欲しいってお願いしに来たんですよね……。」


シイバを呼びに行った後に……俺はミコトにも会うことになる。そしてミコトもシイナと一緒にこちらに来ることになっていたのだった。そんなことを考えていた時に、俺が訓練を行っている広場に現れた人物が一人居たのである。その人物は、俺がよく知っている人物であり、また会えることを楽しみにしていながら、もう会えないだろうと半ば諦めかけていた相手でもある人物であった。その人は、「やあ。真也君、元気に過ごしてくれているようで嬉しいよ。」と言い、笑顔を見せていたのである。俺がその人の顔を見ると同時に……。リリアも現れたのだ。リリスとミレアも現れて、シイバも現れる。リシアとミレア以外は……突然の事に驚いており……。俺は、その人の姿を見て思わず「お父さん……。本当に、父さんが生きていたのか?」と尋ねてしまったのである。


リアナは、「あなたは誰なの?私に、何かご用の様ですね。私のお兄様に何か用でしょうか?」と、俺の前に姿を現した男性に対して言う。その男は、「いやぁ。僕はね。この世界の住人ではないんだよ。だから……君の兄でもないし……。それに君の兄なら……すでに死んでいるはずじゃないかい?」と言ったのであった。


俺はこの男に見覚えがあるのだ。なぜならば、俺をこの世界に転生させた本人なのだから……俺はこの男が俺の前に現れたとき、思わず、「俺の身体を返してください。俺の身体に戻させてくれるならば、あなたの望みどおりの願いを聞いて差し上げますよ……。」と言ってしまったのである。だが、俺の言葉を聞いた目の前にいる男性の顔つきが変わると、すぐに俺の頬を平手打ちしてきたのである。


俺は、殴られたことに驚きを隠せず……。そしてなぜこんなことをされたのか理解できないでいた。俺は、目の前の男性が「ふざけるんじゃない。お前のような偽物が私の真也の姿を真似るだけでも腹立たしい。それにだ。貴様如きが私の息子の名前を語ろうなどと考えること自体が間違っているのだからな。」と怒りに満ちた声で言い放ち、「お前を始末するぞ!」と言うと……。


『マスターは……あなたの子供なんかではありません。私は……リシア様に作られた存在ですから……。私は、あなたからマスターを奪おうとは考えていませんから、私は……あなたの敵ではありますが、あなたの邪魔をしている訳じゃないのですよ。』とリディアが、リリアに話しかけたのだった。それを聞き、「リディアさん。あなたは何者なんですか?」と言う。すると……『私は、あなた方と同じような人間の姿を持っていますが……神の一種ですよ。そしてあなたにリリア様の事をお願いしようと思ったのですが……あなたは私を拒絶するでしょうからね。だからリリア様は、リリア様の好きなようにするべきだと思い、リリア様がしたい事に協力しようかと思っているんですよ。リリア様の身体を借りて……マスターの意識を回復させて、マスターに本当の名前を名乗ってもらいたかったのですよ。』と言ってきたのだった。


リディアの話を聞いたリリアはすぐに俺の側に近寄ってくると、「おい!どういうことだ。私はお前に名乗っただろう。お前はリディアという名前なのか?」と聞くと、リディアは、俺にだけ分かるように俺の頭に直接話しかけてくると、


『はい。私はリディアと言いまして……リリア・リリスと共にこの世界で、マスターと久遠ちゃんのサポートを行う予定になっているのでございます。リリアさんは、私の力の一部を使えても、リディアの力を完全に引き出すことは出来ていないのですからね。私は、あなたがこの世界のリリアと入れ替わっていることは知っていましたが、あなたには黙っていましたよ。リディアの力でもリディアの記憶を覗けないようになっていたのも理由の一つなんですけどね。私はリリアさんのこともリリアと呼ぶことにしたのですよ。だって、リシアと同じ呼び方をしたくないですし、私もあなたもリリアということになりますからね。』と答えたのであった。


俺はその会話を聞いていたため、思わずリディアを見ると、『私の名前はリディアとリシアとリレアとリリシアの四つの意味を持つんですよ。リリリと、リレアが入ってるんですよ。リシアの名前も、私の事を呼ぶときは、必ず「リディア」と付けて呼んでくれていますよ。私とマスターは同一人物みたいなものですしね。まあ、私がそう決めたんですけどね。ちなみにリディアの意味はリディアスのディアと言う文字を使い、私も「リディア」と名乗り、私とマスターも二人そろってリディアになりましたからね。まあ、あなたに教える必要はないかもしれませんが、私はマスターの味方なので、安心して下さい。あと、私と久遠ちゃんも、同じ様なものだからよろしくしてあげますよ。これからは私も久遠も、マスターの事をサポートするので覚悟していてくださいよ!』と言っていたのである。


その会話が終わり、俺は……『これからも頼むよ……。』と言っておいた。


その会話を横で聞いていたリレアが、「リデアはね、もう死んじゃっているのよね。あの人は本当にいい人なんだけど……この世界の管理人としての役目を全うできなかったからね。私は、あの人に頼まれてね……。それでここに来たんだ。この村の住民を助けてほしいって言われていてね。そのために、私とミコトは呼ばれたのよね。でも……。」と言うと……。俺の方を向いて話を続けたのである。


「ミコトは真也君の事が心配になってね。シイナもシイバも……そして……この子たちも真也君に会いたいと思っていたみたいでね。だから、一緒に来ることになったのよね。本当はシイナにも会いに行きたいんだけど……。シイバはともかくとして……この子のお母さんは……真也君のところに連れてくると、いろいろまずい事が起きると思うから連れてきていないわ……。それと、久遠は……久遠にはまだ真也君の正体を伝えていなくってね。真也君に久遠を任せる事にしたから……久遠と久遠の母を真也君に預けることにしたのよ。久遠のお姉さん的な存在にするつもりなんだからしっかり面倒見てあげてちょうだいよ。」と言い出したのである。


俺はそれを聞いて……「えっと……リリアとシスターマリア以外の皆を俺の家に避難させてもいいかな?ちょっと問題がありそうな気がしてきたんだよ。とりあえず避難させようか……。シイバやシイナはここにいても良いかな?それにリレアさんとミコトさんはこの場に残ってもらわないと駄目だと思う。だって……。俺の秘密を知ってる人たちに……この姿を見られてしまうからね……。さすがに……。この姿で俺の家に行くのはまずいような気がしてきたんだよ。俺に……何かがあったとき……シイバたちに任せられるのは君達しかいないからね。俺の家でなら大丈夫だと……思いたいからね。それにシイバの事も気になったから……俺が、今住んでいる家の方に行こうかと思ってる。そこでなら安全だからね。ミコトもミリアもリシアもミレアも……リレアと一緒に来てもらえるかな?」と言ってみた。


シイバたちは俺の提案を聞くと、素直に従ってくれたのである。そして俺は、リシアとミレネーをつれて自分の家に帰ることになった。その時に……俺は、「リディア、リレアと俺と一緒に来てもらってもいいかい?」と聞いてみると、リディアがすぐに現れてくれたのだ。


俺は……すぐにミレアとミレアに抱き着いているシイバをリリアの元に行かせると……。シイバの母はリディアが保護してくれるらしいので任せることにする。シイバに俺は、「俺はしばらく戻らないかもしれないけど、シイバに久遠を任せたから……俺の代わりに守ってほしいんだ……。」と言ったのである。


すると……「わかったぜ!俺は真也の言うとおりに……この世界のために頑張ってみるぜ!」と答えてくれていたのであった。そして、俺は俺とリリアとミリアを連れて……元俺が住んでいた家に戻ったのである。


リレアとミコは俺に、「ねぇ……。私達を家に連れて行く前に……私の家に行ってもいいかしら?」と聞いてきたので俺は、すぐに、「あぁ……構わないぞ。」と答えたのである。俺は……なぜか嫌な予感しかしなかったのだが……。


リレアの家から……俺の住んでいた家は目と鼻の先だったので……リリアと俺は、すぐに家に到着したのであった。そして……俺が先に玄関を開けようとしたときに、「あら?お客様なの?」と言って、一人の若い女性が現れたのだ。


「あぁ……ただいま……。母さん……ごめんなさい……。俺の知り合いを……連れてきた……。あと……。俺の昔の仲間が、まだ俺の家にいてるから……。」と俺は女性に言いながら、中に入っていった。そしてリディアに、「なあ……お前の事をリリアと呼んでたけど……この女性は誰なんだ?」と聞くと……リディアは、「私は……マスターの事を……リリアスと呼んでいた存在ですよ。まあ、リリアと言う名前もあるので、そちらで呼ばれることの方が多いですけどね。この人が私の本当のお母様になるんですよ。私の本体を作った人で、私の生みの親でもある方ですよ。私の事は……これからはリディア様とお呼びした方がいいかもしれませんね。この方が私に、リリアと言う名を与えてくれまして、その名前が気に入ったのもありまして、今はリディアと言う名を名乗っているのです。この方は私の育ての親であり、この世界を管理されている方なんですよ。この方の力によって、今の私が存在していると言ってもいいでしょうね。だから、私もあなたと同じ様にこの方と血を分けているのですから……あなたに敬語を使うつもりはないのですからね。私のことを気にせずに今まで通り接してくださいよ!まあ……あなたの力を使えば、私と対等に話ができるでしょうけどね。」と言ってきたのだった。


俺はその言葉を聞いて驚きながらも、目の前にいる人物を見る。確かに……この女性が……リディアに似ているのはわかるし、リディアは本当の母親のはずだけど……なんか納得できなく、微妙な気分でいた。俺のそんな様子を見て、ミレアが俺のことを見てきて……、俺の手を握ると……俺を引き寄せて耳元でささやく。


「真也さん、気持ちはわかりますが、受け入れないとだめですよ……。だって……その人は私の生みの母でもあり、あなたの妹に当たるんですからね……。あなたが私を受け入れてくれるように……私も受け入れる努力はしますから……。」と言ってくれた。


俺はその言葉を聞いて我に返ると……その女性が、微笑を浮かべたまま……俺のことを見つめていたことに恥ずかしくなり、すぐに謝ることにした。俺は……「すまない。俺は、君と会ったばかりだというのに……君と……いや、君たちを受け入れられなくて、本当に申し訳ないと思っている。でも……俺もどうしたらいいのかわからないんだ……。君と会えて……嬉しいと思う気持ちは本当なんだ……。でも、君とは初対面だと思っていて、君のことも知らないし、君もそう思ってて……俺と君の関係を何と説明すればいいのかわからなくなって……。つい混乱してしまって……。ごめん。もう少し……時間をくれるとありがたい……。」と言う。


そして……俺の言葉を聞いたその人は……。「あぁ……そういうことだったんですね。私達はあなたが生まれる前に会い、会話もしているはずなので、私がリリアと言う名前をもらったときに、あなたが生まれたという話を聞いたんです。なので……私が、あなたの母親であるのと同時に……私にとっての娘のような存在であるリリアは……今も元気でいるのでしょうか?それが気になります。できれば……会わせてもらえればと思います。その子がいれば……娘も一緒にいてくれたらいいなと思うので……。」と言ってきた。


俺は、この女性もリディアと同様に優しい人なのだと分かり……、俺はすぐに、レイナとリレア、リリアとシイバを俺の部屋に集めたのである。リディアには、シイバに付き添ってもらう事にして、俺はシイバに、「ちょっと待っててな……。今から君たちの大事な人たちを連れてくるからな……。君が本当に守りたいと願っている人たちだよ。絶対に守るんだ。君は一人じゃないんだからな……。君と、リシアにリリア……。この二人がいてこそ、君がいるんだから……。俺も協力するから……。君を信じるよ……。だから……必ず……戻ってくるんだ……。」と伝えて……シイバの手を握り、俺の力で……俺の家に移動させる。


俺はすぐに、俺がリリアに出会った場所に移動する。そこには俺が知っている姿のリリアが座っていたのである。リリアに俺のことはわかっていて、俺に抱き着くと、「ありがとう。真也君、シイナさんを助けてあげられなくてごめんなさい。私はもう、大丈夫ですから……。あの子にもちゃんと説明しましたから……。それにしてもシイナさんは相変わらず可愛いですね。」と言って、シイナとリレアを見て笑っていた。俺は、この人が俺達のお母さんだと知って複雑な気分になったが……それでも嬉しくもあった。


それから……俺達3人と……この世界を救うためにやってきたリデアにリリアを紹介し、この世界の現状を説明したのである。この世界に蔓延る病魔については……リリアは知っており、「私達が何とかできるかも……」と言って、この世界で起こっている事についていろいろ調べてくれているみたいだった。


シイバはこの場で、この世界の住人たちと触れ合うことでこの世界がいかに危険かを実感しており、「シイバは……俺の家族を守るんだ。」と言っていたのであった。俺はそんなシイバを見ていて……俺がやるべき事が見えてきていたのである。この世界で……この人達が笑顔で暮らせるために……。この世界を救い出すための旅に……。そしてこの世界で起こる悲劇を防ぐために俺は旅立とうと思ったのであった。俺とリリアとミリアとリリアで話をした結果……シイバたち5人をこの家に泊めてもらうことになったのである。リリアもミレアの事を可愛がり、シイバの事を心配していたのだ。そして俺は、自分の家に戻ると、すぐに久遠を起動させた。久遠はリディアの指示通りに動いてくれたのである。俺が……シイバ達と一緒にリシア達がいるであろう教会に向かう準備をしている間に、俺は久遠の機体の中で自分の装備のメンテナンスを行いながら……。シイバ達に渡せるように銃と剣を錬成していく。その時に、俺はリリアにあるお願いをしたのだ。


俺とリリアで話し合って決めたのだが……シイバとシイナは二人とも俺と同じように……銃を使う武器を使うようなので……シイナは俺が作った武器を渡すことにする。


そしてリリアがリヴァイアに頼み、二人の体に合う服を作ってもらい、リディアに頼んでシレア達と同じ様なローブを作ってもらったのである。そして俺の着ていたローブを2人にあげることにした。


シイバが俺に、「これは……父さんの大切な物じゃなかったの?」と言ってきたので……俺は「うん……。だからこそ……シイバたちに持っていてほしいんだ。俺はもうこの服を着るのは……俺だけじゃないと思うから……。これから戦う時は……きっと必要になると思うから……。シイナは、これを羽織っておいてくれないか?リリアも……。」と言って、俺はリリアの方を見る。


するとリディアは、「マスター、わかりました。私は、マスターの事をずっと見ておりますからね。それと……私はいつでもあなたのもとに駆けつけられますので……ご心配なく……。」と、リリスの方を見ながら言うと……。


リリアは「リリス……。真也君に何かあったときは助けてね。私にできることなら何でもするつもりだけど……あなたにしかできない事もあるから……。」と言い、俺に抱き着きながらリリアに言う。


俺はその様子を見ていて……、やっぱり姉妹なんだなと、改めて思っていた。それから……シイナは俺に、「父さん……。僕が母さんの事をしっかり守れるように、これからも一緒に頑張ってくれ。僕も強くなるからな。」と言ってきたので、俺もリリアに抱かれながらもうなっているリレアのことを抱きしめながら、「ああ……。俺の事は任せろ。シイナは俺の娘でもあるからな……。お前がどんな時でもそばにいるからな。だから安心しろ。」と言うとシイバは笑って……「父さんのそういうところ、好きだよ。僕はさっき、シイナと二人で父さんに言ったけど……今度は、みんなで言いたい。いいよね?母さん。」と言ってリリアの方を見ると、リリアはリディアの頭を撫でて、「そうね。みんなで言わないとね……。だって家族なんですものね。それじゃあ……まずは、あなたからどうぞ!」と言うと……。シイバは自分の手を握ってくれているシイナの方を見つめてから……口を開く。「僕は……強くなったんだ。まだ力もないし、頼りないけど……でも……。」


そう言って、深呼吸してから、シイナの方を見る。「シイナを……この子を必ず守るから……。この子と、シイナのお母さんの事も必ず守るから……だから……どうか、僕の傍にいてください。シイ……おねがいします。」と、そう言って……シイナの前に片膝をつき、手を出した。シイナはそんなシイバの様子に感動したのか、目に涙を浮かべて……。「はい……。あなたが、私と母のことを守ってくれる限り、私もあなたを守り続けます。ですから……私をよろしくお願いします。あなたに一生仕えさせてください……。私の旦那様……。」と言って、俺にしたように、その手を握った。


その瞬間に……リディアとリリティアはお互いの体を抱き合い、俺がこの世界にきて一番嬉しい瞬間になったのである。


俺は、そんな幸せそうな4人の姿を眺めていたが……、すぐにリヴァイアとシリスのほうを向いて、「それで……。リリィたちはどこにいるんだ?」と聞いた。すると二人は、「それは……。リリアさんに聞いてくださいな……。私は、シイちゃんとシイナちゃんと、真也君の妹ちゃんにこのローブをプレゼントするためにリヴァイアと、この子の服を作るためにこの子を連れて出かけたんですよ。その時にシイバちゃんから連絡がありましてね。リヴァイアが連れて帰ってきてくれるみたいなんですが……ちょっと遅れるみたいでしてね……。でも……もうすぐ着くはずです。」とリヴァが説明してくれていた。それから10分くらい経った時に……家の外が騒がしくなった。俺は何があったのか確認しようと外に出ると……。そこにはリレアに乗ったままのリリヴィアとシレア、そしてリリヴィアの頭の上に乗るようにして乗っていたのは……リリディアだったのである。俺はすぐにシレアに話しかける。


俺の言葉を聞いてすぐにシレアは、地面に降りると、シレアの手を握るとリレアはすぐに姿を消した。リリディアも同じようにリレアに乗って現れたのである。それからすぐに、シレアを呼んでからシイバたちを連れてくるように指示を出し、すぐに家に入る。だがそこにいたのはリヴァイアと、リリシアと……ミシアだけだったのだ。シイナはどこかに行く準備をして待っていたのだが……リリシアとミシアがいなかったのだ。


シイナが不思議に思い、「あれ?ミシアがいないよ?それにリリア姉さんもいないし……どこに行ったんだろう?」とつぶやくのを聞いた俺とリリアは……お互いに顔を合わせるとすぐにミシアを探し始めるのであった。


シイバ達は、ミレアが消えた後、リレアが突然現れ、ミレアが俺の事を話し始めたのですぐに理解していた。そして……俺とリリアがリリアとミザリアを探し始めて少し経った頃に、シイバ達も捜索を始め、しばらくしてからミレアとリリアが戻ってきたのだ。そしてリリアから俺の事について話を聞いたらしい。シイバが、「兄さんが……俺達のために……。俺達の事を守るために戦ってくれていたんだね……。俺は……そんな兄さんの背中を追い続けていた。いつか、兄さんに追いついて、肩を並べられるようになりたかった……。」と言い、「父さん……僕は父さんに憧れていました。母さんを助けてくれたあの時からずっと……。あの日……僕は父さんと出会って変わったと思います。父さんと母さんは僕の憧れの存在で、いつも僕の目標でした。父さんに認めてもらいたいと思って、努力を続けてきた。でも、父さんには追いつけなくて……。父さんの事が好きだけど、尊敬していても……。」と言って俺の方を見つめてくる。


俺は……そんなシイバに近づいて、「そんな事ないよ。俺なんかまだまだだよ。リヴァイアの師匠にも怒られてばかりだし……。」と言うと……。シイナが……「そんな事ありません!あなたはこの世界に……たくさんの命を救ったじゃないですか!!あなたはこの世界にとって必要な存在なんです。あなたがいるだけで救われている人がここにいます。あなたがいたから……今、こうして笑顔で生きていけています。私は……あなたに助けられてから毎日のように、心の中であなたのことを想って、助けてほしかったのかもしれません。私がこの村に来たのは……シイ君を救ってあげてほしかったんです。あなたがこの村の人達から慕われているのは分かっていましたが……私には何もできませんでしたから……。だから……私を……私とこの子の事を……助けていただきありがとうございます。私も精一杯生きます。この子が笑えるように……。」と言い、涙を流しながら俺に抱き着いて来た。俺も、シイバと同じように、リディアを救い出してから今まで……リリアを……リディアを救い出すために……そして、自分の妹達を救う為に旅を続けていた……。そんな日々の中で、自分を見失いそうになった時も何度もあったが、その時に……自分を慕う人々の顔を思い出し、俺がやっている事が無駄ではないと思い続けて頑張ってきたのだ。そしてその頑張りが認められた事に……俺は本当にうれしく感じていた。


俺はそんなリヴァイアの方を見て、「そうか……。よかったな……。」と言うとリヴァイアも、「そうですね。シイ君のお母さんが笑ってくれるようになって……嬉しいですわね。」と言った。シリスと、リリディアは嬉しそうに微笑みを浮かべていたが、リリアは複雑そうな顔をしていたが……。シイナが俺から離れると、シイバと手を握りながらシイナに向かって何かを言うような表情をするシイナ。


そのシイバとシイナを見た俺が、「リイちゃん……シイ君に何か言う事があるんじゃないかな?」と聞くと、「うん……。僕もずっと考えていたんだけど……。僕もシイナも……まだ子供だけれど……。」と言ってからしばらく考えた後に……。「父さん……。これからも僕は、この世界で色々と経験しながら、力をつけていこうと思う。その途中で……この世界の人を救うために力が必要になるかもしれないから……。だから僕はこれから……シイナと共に行動したいと思っている。いいかな?」と俺の方を見ながら言うので、俺は、「ああ。わかった。これからのお前の活躍を期待しているからな。ただ、無茶だけはするなよ。それからシイナの事も頼んだぞ。シイナの事も守ってくれるか?これからのお前の行動が大切なんだ。これからも、リヴァイアと、みんなと協力してこの世界を守れるといいな。俺も応援しているから……。」と言うと、リヴァイアは、「ふむ。そうだな。シイは……この国に必要な男だと思うぞ。私としても、リリア殿の夫でもあるそなたに鍛えてもらえるならば、この国はもっと強くなるじゃろうな……。それに……。妾としてはリリシアも、この子と同じじゃ……。妾がこの子を気に入ったと言うこともあるが……。妾がそちたちの娘になっても良いと思っておるからな。もちろん……この子ともじゃぞ?どうじゃ?」と笑いかけてきて、それを聞いた俺は驚いてしまう……。


すると、リヴァイアが、「まぁそれは冗談じゃ。リリアに睨まれたくないからのぅ。それに、この子を気に入っているのは事実じゃが……。妾はまだ結婚はするつもりがないのは確かだが……。そうさの……。もし妾にこの先愛する人ができたなら、その子にシイを任せることにしようではないか……。」と言って、楽しそうな笑みを浮かべたのである。それから、俺とシイナが結婚した際にも……このリヴァイアがこの国に残ってくれれば安心だとは思った。俺の考えていることが伝わったのかリヴァイアが……。


「ほう……。妾がこの国から去ってしまうと思ったのかね?残念だが……そんなことは考えてはおらぬ。妾もそなたの妻になる女だからな。この国の未来を考えてのことだよ。妾もこの国の王だからな。民が苦しんでいるというのに見過ごすわけにはいかぬよ。」と言って笑っていた。それからすぐに、リヴァイアとシリスとリリアが話を始めていて、その間にリヴァイアが俺の所に近寄ってきて、「そう言えばシイナはそなたを父と呼ぶのをためらったみたいだったのう……。なぜなのかわかるかい?」と聞いてきた。


俺は少しだけ悩んでから、その理由を話す。俺の事を父と呼んでくれた時のこと……。そして……シイバの母さんのことを思い、俺はリリアの両親も家族だと思い始めていると話すと、「はっはっは。なるほどのぅ……。それでか……。確かにの……。それは仕方ないかもしれんな……。リリアとこの子はよく似ている。この子がシイの事で悩んだ時に、シイの気持ちを考えたり、同じ目線で接して、励ましたりしていたようだからね……。」と言っていたので俺は…… シイは俺を父さんと呼んだ時、リリシアを見ていたから……リリアの事が好きなシイのことだ、もしかしたら自分の母であるリリアの事も好きになってくれるのではないかとリリアは思ってしまったのではないか……とリヴァイアに伝えたのである。


するとリヴァイアは、「リヴァイア様、私も同じことを考えていました。私も、シイ君はシイちゃんの事を好きでいて、きっとシイ君の心の中で、シイちゃんは特別な存在になっているだろうから、この世界に来てから、一緒にいることが多い私の事を……お父さんって呼ぶようになったんだと思ってました……。でも、もしかしたらそれだけじゃないのかもしれませんよね。」と言い、「シイナも、私と同じく、この世界でシイ君が幸せな生活を送れていれば、それで十分だと思ってると思います。でも……本当は、自分もシイちゃんのそばにいたいと思ってるのに……それを我慢してくれてるのかもしれませんね……。シイ君のためにも……シイナのためにも……私達は、今のままではダメなんでしょうね……。私は……リリアがいなくなった時も、今も変わらずに私達の事を心配してくれるリシアがいてくれているおかげで、何とか頑張ることができているのだと思っています。


私はこの子とシイナと一緒にシイ君とシイナの成長を見守っていきますね……。」とシイナの事を抱き寄せながら言ったのだ。


それから、しばらくしてから、俺達は再びリリディアの世界へ旅立つ準備をして、家の前で待機していたのだが……。ミレアの事を気にした俺はミレアの方を見るが、ミレアは寂しそうに俯いている。そんなミレアに俺は……ミレアの事を優しく抱き締めながら……。


「ごめん……。ミレア。また俺がいない間に大変な思いをさせてしまうかもしれない。それでも、絶対に助け出してみせる。約束するよ。だから、信じてほしい。俺が絶対帰ってくるってことを……。」と俺が言うと……。俺に抱きついてきた。そして……俺から離れると……


「わかりました。兄さん。どうか、無事に戻ってきて下さいね。私、ずっと待っていますから。」と泣きそうな顔をしているが必死に笑顔を浮かべて言ってくれるのだ。そんなミレアに、俺も笑顔を浮かべると、「大丈夫だよ。俺もみんなと頑張ってくるからな!」と言うと、「はい。頑張ってください!私はここで待ってますから。シイナや……姉さん達をお願いしますね。シイバさんのことも……。それと、必ず生きて帰ってきて下さい……。もう二度と……離れるのは嫌です……。だから……死なないでください。私はずっとここにいたいです。あなたに抱きしめてもらって、甘えていたい。だから、死ぬなんて言わないでほしいんです。お願い……。約束してください……。私を一人ぼっちにしないで……」と悲痛な声で俺に訴えてきたのであった。俺はそんな言葉をかけてきたミレアを今度は力強く抱き締めてから、「ああ。約束するよ。俺だって、もう一人にはなりたくない。ミレアがいなかったら今の俺はいないんだよ。だから心配かけて本当にすまない。俺はこの世界で、俺の事を父と呼んで慕ってくれた人達のためも……。それからリリアの友達や妹を助けるために頑張りたいと思っているんだ。それに、リリシアにも約束をしているからね。俺は絶対に死なないし戻ってくるよ。安心してほしい。それから、みんなの事を頼むな。」と頭を撫でた後に抱き上げた後、みんなを連れて空間の中に消えていったのである。そうして俺達はこの世界に別れを告げるのだった。


*******…………………………(シイナ)**


***


私が気がつくと、そこは見たこともない建物が立ち並ぶ場所にいるのを感じました。それから私の近くにいたシイナが私を見て嬉しそうにしているのに気がついたのです。そしてその横にいたシイも私を見てうれしそうな表情をしていました。それからシイが私に抱きついて、「リイちゃーん。会いたかった~!!」と言ってくれたことに驚きながら、私も嬉しくなって、シイをぎゅっとしました。しばらくそうした後にシイと離れてから……私はシイにどうしてここに来たのかを聞いてみると……「ああ。僕はリヴァイア様の力を使って、この場所まで来たんだ。ここは【神界】と呼ばれる場所で……この世界の神様がいる場所なんだって。それから僕はこれから、この世界を救いに行くつもりなんだけど……、シイナちゃんはどうする?僕についてきて欲しいんだけれど……。どうする?」と真剣な顔で言うので私は、すぐに「はい。もちろんお供させていただきます。それから……私の事は呼び捨てにしてもらっていいんですよ?あと、口調も普通にしてくれても……。私もシイ君の事を兄さんって呼ばせてもらってもいいですか?」と聞くと、シイは「ありがとう。僕の方も、今まで通り接して欲しいんだよね。うん。もちろんだよ。シイナもシイナらしくしてくれてかまわないからね。じゃあ……とりあえず、リヴァイア様に挨拶しておかないと。リヴァイア様が……呼んでくれているはずだから……行こうか?」とシイが言ってくるので私はうなずいて、リヴァイアさんがどこにいるのか聞いてみたところ、「多分だけど……シイナの家の地下だと思う。あの人はいつもそこの祭壇に寝ているみたいだから……。」と言っていたので、私たち二人はリヴァイアさんに挨拶に向かうのであった。


俺が空間移動をしてたどり着いた場所は、やはり……俺がこの前リリシアの世界に行った時に連れてこられた場所である神殿の地下にある祭壇であるようだ。そこには、リヴァイアと……リリアの姿があり、リヴァイアは、俺が近づいていくのを待っているようであり、リリアが……リヴァイアと話をしているのが聞こえてきていたが……なぜか、途中からリヴァイアの声だけがリヴァイアの方に響いていたように思う。そして、俺はリヴァイアに近づいて行き、リヴァイアに声をかけようとした時に、リヴァイアから俺に話しかけてきて……。


俺達が祭壇のある部屋に入って来るのを待っていたみたいだったのだ。リリシアも一緒だと思っていたのだが、彼女はここにはおらず、どこか別の場所にいるようである。そして俺は……なぜリリディアが俺を呼んだのかと聞いたのだったが……その理由は教えてもらえなかった……。


それから、リヴァイアから……俺はシイと二人で、リヴァイアとリリアにリリディアの現状を聞くことになったのである。


すると……俺は驚いた。まずリリディアだが……リリアとリリティアの話では、このリリディアの世界には、すでにかなりの数の邪神の使い魔が紛れ込んでしまっているようで、リリディアの民の殆どは邪教徒になっているということであった。さらにリリディアの王族達は既に全員が洗脳されているという事を聞かされたのである。


リリヴァはリリアとリリディアの現状を聞き終わると……。少しだけ考えてから……。


「わかった。そなたらには迷惑をかけた。妾の方でもできる限りのことをしていこうと思う。まず、リリシアだが……今そなたが向かってる世界にはまだ来ていない。おそらくまだ時間的に、そこまで余裕があるというわけでもないはずなので、リリシアは後回しでよいだろう。」


俺はそんな言葉に……ほっと胸をなでおろしながら、シイと二人してリヴァイアに感謝の言葉を伝えた。それから……俺はリヴァイアに……。


「ところで……シイに頼んでいた件は大丈夫なのか?もし何かしら問題が発生しているのなら……。俺がどうにかするつもりだぞ。シイもリリアナやリリィを助けに行きたいって言うだろうから……。」


と言うと……。


「ああ。そういえば……伝え忘れてたね。その点も大丈夫だ。そなたはリリアとシイが無事に合流できたことだけでも十分嬉しいのかもしれぬが……。もう少しだけ喜ぶといいよ。まぁ、そなたらにとって……悪いことではないがね……。さて……話を進めさせてもらうが……。


実は……妾が……この世界を救ってほしいと思っている人物がいるのだ……。その子の名は……『アイシャ』と言い、元々はリリアと同じ世界からやって来た人間だ……。」と衝撃的な事実が判明したのだ。そんな言葉を聞いた俺達は……シイも俺と同じく驚いていた。


リリヴァから聞かされた話は俺達の想像を超えるものだった。まさかリリヴィアの世界から人間がやってきていたという事がそもそも信じられなかったが……。リリアも知らなかったらしく……。その事にショックを受けていた。ただ、俺はそれよりも……リリアやリリアティの住んでいた世界でそんな事件が起きていたことのほうがよほど気になっていたのである。リリアはそんな話を聞いた後……しばらく放心していたが、すぐに気を取り直すと……


「リヴァ……。そんなことは……私も知らないわ。それに……シイ君がそんな人を連れてきたという話も聞いたことがない……。私はこの世界に来るときにこの子に出会ったし……。連れて来たりはしなかった。ましてや……。リヴァイアの力で召喚したりなんてしたこともない……。なのになんであなたが知っているの?」と冷静な口調ながらも、声色は明らかに怒りに満ちたような感じであったのだが、それに対して……。「それは簡単な話だ……。なぜならば……。妾はその子がこの世界に迷い込んだ際に助けたことがあるからな……。


それに、その子の力は……妾の力がなくても……いずれ開花していたことであろう……。その子は……この世界の力を持っているのだから……。その力を悪用した輩から保護するためにも、一度……会わせる必要があったからな。


それでだ……。問題は……。ここから先の話を聞いても、決してその子に対して失礼な態度を起こさないことを……お願いしたい。特にシイよ……。


お主はこの子の正体を知っても態度を変えないでいられるか?それが……とても大切なことなんだよ。


それさえわかれば……後は……そなたが決めればいいことだ。そしてこの子を助けると思って、一緒に戦って欲しい……。」と俺とシイに告げてきた。シイもその言葉に真剣な表情を浮かべると、リヴァイアに頭を下げてから、「わかりました。覚悟の上です。僕にもこの世界を救いたいと……思う気持ちがありますから。ですから僕は最後まで戦うと誓います。僕はこの世界を……この手で守り抜きたいんです。そして、僕の大切な人と一緒に……。ですので……。よろしくおねがいします。僕は……絶対にあきらめません。ですから、どうか僕にも手伝わせてください。僕は絶対に逃げも隠れもしないですから。僕は絶対に負けません。ですから……。リヴァイアさんも僕を信じて下さい!」とはっきりと言ったのである。


俺はこの会話が聞こえてくると、やっぱり……リヴァイアは信用できる存在だと思えていた。リリヴァイアの話を聞いていても、嘘をついている様子もなかったからだ。俺も、自分の目で見たことや聞いたことを疑ったりするつもりは全くないので、同じように……。


「リヴァイアの事は信じてるよ。だって……リリアの友達のはずだしな!だから安心してくれ!リリア!俺も同じ考えだよ!俺は……絶対にあきらめたくない!たとえどんな強敵が立ち塞がっても、俺達は絶対に乗り越えていくからさ!!だから、俺達にもう一度協力させてくれないかな?」と……。


するとリヴァイアは嬉しかったのか涙ぐむと、「本当にありがとう……。この恩はいつか必ず返させてもらうつもりだ。もちろん……妾にできる範囲でならば……何でも相談に乗るから、気軽に言ってきてくれて構わない。」と言ってくれたのである。そして、シイナと俺のほうを向いて……


「では……話を戻そう……。アイシャがなぜ邪教徒になっているかというと……。リリアに聞くところによると、おそらく……アイシャの持つ特別なスキルの影響ではないかと思われるのだ……。その特殊な力は、邪神が持っているものと似たような性質を持っていそうなのだが……。まだはっきりとはしていない……。


そしてだ……。その力のせいなのかわからないが……、その力のせいで……この世界に来た際の記憶を完全に失った状態になっていて……自分自身のことも覚えていないようだった……。


だから今は、妾の部下達に任せているが、今のところはうまく制御ができていなく……。暴走する寸前だったようだ……。だから……できれば、シイのその力でなんとかしてほしいのだ。」


俺達がそんな話をしている間もずっと黙っていたシイが口を開くと……


「わかりました。でも、アイシャのいるところにはどうやって向かったらいいのか教えてもらえませんか?」


すると……


「ああ……。それなら心配はいらないよ。妾が……この世界を救って欲しいと願っている子を召喚した場所がどこかと言うと……そなたたちの家の地下室だよ……。だから、そこにアイシャを向かわせているから、とりあえず家に向かえばいい。


あとは……そなたらの好きなようにするがよかろう。それと、妾の方からもいくつか情報を与えておく。この国の名前は『ミレニア帝国』だ。


この国を作った初代国王の名前がそのまま国の国名になったんだ。それから……。そなたらは知ってるかもしれないが、邪教組織がある。その名は『黒邪の牙(こくじゃのきば)』と呼ばれている……。そしてその幹部の名が、『ダークエルフ』と言うのだ。これは、昔この国に居座った『悪魔族』が、邪教徒たちに広めた名称なのだが……。


そのダークエルフの一人が今まさに、そなたたちの家に向かっている途中だと思われ……。今頃……シイの気配に気がついて襲撃にでも来ているところかもしれぬ……。


ちなみにだが……その者の名は……。その邪教団の中でも……最も恐れられている……最強のダークエルフ。名を……。アイシア。そやつは……かつてこの世界を恐怖に陥れた『魔王』の一人娘であり、その魔力と戦闘技術の高さは歴代最高の実力を持つと言われていて……。今では最強の一角とも言われている者でもあるのだ……。そやつを敵に回すとまず生きては帰れないとまで言われておる……。


その者が今まさにそなたらの家に近づいて来ているということだ……。妾としても何とかしたいと思うのだけれど……。妾でも……勝てるか正直微妙な相手で……。だからこそそなたに期待しているわけなんだ。


だから……。頼む。どうか……。シイよ。妾の頼みを引き受けてはくれぬだろうか?きっと……。そなたらの力が合わされば倒せるだろう。そなたが今までに戦った中で……。恐らく……一番強力な敵だろうが……。それでも……倒してくれると信じている……。妾からのお願いだよ。この通り……。お願いいたす。」と。


俺はその言葉を聞いてから……リヴァイアを見ると……俺の思っていたとおりの不安気な表情を浮かべていた。


リリアも俺と同じ事を考えていたのだろうが……、俺よりもさらに不安を感じているらしく……。シイに何かあったらどうしようと思いながら……。シイの手を強く握りしめていたのであった。


俺はリヴァイアがそんな事を考えているとは露知らず……。


シイとリリアと一緒に……アイシアの襲撃について話し合っていた。シイもリリアもこの話を聞くと、俺以上に焦り始め、すぐに助けに行くべきということになったのだが、シイはまだ行くべきか悩んでいたようで……「ごめんなさい。リヴァイアさんの頼みは受けたいんですけど……。今の僕は、リヴァイアさんのおかげでかなり強くなったと思います。でも、アイシアさんの強さがどれぐらいのもなのか……いまいち掴めていなくて……。それに、アイシアさんはどうしてこのタイミングで襲ってきたのか?それも謎ですしね。まぁ、僕達の家に急に現れて攻撃してこようとしたからだと思うんですが……。もし……アイナさんに被害が出てたら大変ですから……。それに……この世界での初めての友人であるシイさんを傷つけたくありません。だから……。アイシアって言う人が……僕達の家を襲撃しようとしているのであれば止めないといけないのでしょうが……。シイの力を測れるほどの人物ならば……。シイの力に怯えるようなことがあれば……。そこで僕達は負けてしまいます。ですからここは慎重に行動すべきだと思ったのです。」と言った。


すると……リディアがシイに近寄ると、「それならば私が……偵察をして来てあげますわ。私ならシイの力を見破れるほどの強い力を出せますもの。私はリディアティと言います。シイ君のことならよく存じておりますわ。私はシイ君に助けられてばかりでしたわ。だから……。今度は私がシイ君を助けます。どうか……。この私のわがままを聞き入れてください。私は、どうしても……。リヴァイア様の役に立ちたいと思っているのです。私は自分の身など顧みずにこの世界の為に戦っているリヴァイア様のことを……。尊敬しておりました。私はリヴァイア様に助けてもらってばかりいて……リヴァイア様の為になるようなことは何もできていない……。ですので、少しでもリヴァイア様にお力になれるようなことをさせてください。お願い致します。」とシイに対してお願いをした。


俺もリヴァイアもその言葉には心打たれていたようだった。そして俺とリヴァイアは、シイに判断を任せることにした。そしてシイはその言葉を受け止めてから……。リヴァイアに「分かりました。それではリヴァイアさんお願いします。僕はリヴァに言われたように、アイシアって人を止めに行きます。僕の事は気にしないでください。ただ僕は全力を出して戦うつもりです。ですので……。僕がもしも死んでしまった場合は、僕の力を全てあなたに託します。」


俺はその言葉を聞いたときシイの言葉の意味がわからず困惑していたが、その後すぐに理解できた。それは、自分が死んでもいい覚悟を決めた上での行動であるということ……。また、それだけアイシアって奴が強い可能性があるということを意味をしているんだと思い至ると、俺は改めてアイツがどれほど恐ろしい相手なのかを理解することができたのである。


すると……。そんな話をしていた俺たちの目の前に現れた人影が二つあり、そこには……黒いドレスを着た美少女が二人存在していた。そしてその一人が……俺達に語りかけて来たのだ。


「やっと見つけた。シイ……。ようやく……。この世界に転生してきた時に会った……。あの子を見つけることができました……。もう……。二度と会うことはできないと思っていたのに……。でも、嬉しい……。本当に嬉しい……。これで……ようやく……約束を果たすことができるのだから……。」と。


そしてもう一人の少女が……俺に問いかけてきた。


「あら?シイナと一緒のようですね……。それならば……安心しました。」


俺は突然の出来事とあまりにも現実離れしている状況と、二人の美しい女の子が現れたことと、俺の事を知ってる風な雰囲気を出してきてたことに戸惑ってしまっていて、何もできずに唖然としてしまったのである。


俺達はアイシアって女にいきなり家に押しかけられたが、アイシアと言う女性の目的はリヴァイアにあったようだ。そして……俺達がリヴァイアの使いであることを話すと……、アイシアは警戒心を少しだけ解いてくれた。それからしばらくしてアイシアはリヴァイアとの話し合いを始めたのだが、アイシアが俺のことを知っている理由を教えてくれることはなく……。リヴァイアがこの世界に来る前に俺と知り合いだったと言うことを、なぜか教えてくれないのだ。だが、俺はそのことに違和感を感じつつも、今はこの状況を脱することだけを必死に考えていたのだった。だが、シイは俺と違って落ち着いていたようだ。そのシイの様子に俺は頼もしさを感じたが……それと同時に心配になってしまったのだ。そんな時シイがこんな提案を持ち掛けてきた。それは、俺とシイの力で、アイシアを倒してほしいという話だったのだ。俺は最初は断ろうとしたが……その話をしている途中でふと疑問を感じて質問をする。するとアイシアも同じようにシイに対して、同じようなことを考えているらしく……。そのことで俺とアイシアの意見が一致したのである。俺はそんなに上手く事が運ぶはずがないと頭の中では分かっていたが、それしか方法はないと思ってしまい……それしかないか……と納得することにしたのであった。そしてその話が終わってから、シイは一人で出かけていったのである。そしてアイナは俺達の家に向かって来ているであろう敵を迎え撃つための準備をするために、この家にある地下に降りていくと言って姿を消した。俺も準備を整えようかとも思ったのだが……結局何をしたらいいのかがわからず……ただボーッとして時間が過ぎて行くのを待っている状態になってしまっていたのである。それからしばらくして……俺はシイが戻ってきた気配を感じると、急いでリビングに向かうのであった。するとそこにシイが姿を現したのだが……俺はその姿を見て驚いたのである。なぜならば、そこに現れたシイの姿がまるで……この世界に現れるはずのない勇者と呼ばれる人間そのものの姿をしていたからである。


俺がその姿に見とれていると、シイも俺の方を見つめていて目が合うと……。シイはすぐに視線を下げてしまったのだ。だが、俺と目を合わせた時に俺が見せた表情はとても嬉しそうにしていて、それでいて懐かしそうな顔をしながら……頬が緩んでいたのだ。


(なんだこれ……。この感情は……。胸のあたりが温かくなっていく……。)


そんな不思議な感覚に襲われていた俺だったが……そのあとすぐに……この世界の理を思い出してしまう。


この異世界において、召喚した対象と元の世界で親しかった人物と出会えることはまずないことであり……、たとえ出会ってしまうにしてもそれは偶然が重なり合って起きた結果であり、ほとんどあり得ないことなのであった。その確率は非常に低く、さらに、出会った人物がその対象と同じ能力を持っていたとしても……。その人がその人の血縁者であったりして……。さらに、血縁関係にない場合で言えば、その対象となる人はこの世界でも希少な存在のため……同じ場所に住み着くなんてことが普通であれば起こらない事なのだと思い出したのである。その事実から考えれば……。今の状況は極めて異常と言えるわけで……。俺の知っている人物が現れるなど……奇跡に近い事が起こったと考える方が妥当だと俺は思った。俺はそのことに疑問を抱きながらも、今はそれどころではないと気を取り直して……、これから起こりうる最悪の出来事について、今のうちに考えて対策をしておかなければならないと思ったのであった。


俺の予想では、アイシアって奴が襲ってくる理由はリヴァイアと俺達のどちらかの魂が欲しいからだと思ったのだが……その予測は大きく外れていたようである。アイシアという奴がリヴァイアではなく俺とシイの命を狙ってきた理由……。それを聞けば聞くほど俺は……アイシアという少女がリヴァイアにどんな気持ちを抱いているのか……想像することができたのだ。


その話を聞いたリヴァイアは、アイシアという少女のことを心底嫌いになったみたいだ。


そして俺は、シイの口から放たれたアイシアのことについての話を聞いて……そのことに対する不安からシイに対して、何かしてやれることはないのかと聞いた。しかし、俺の不安とは反対にシイから笑顔で、シイが自分でアイシアを倒すと宣言したのだ。シイは自分の実力なら大丈夫だからと……。それに……。シイには奥の手があるからとまで言い放ったのである。それなのに……。俺はそんなシイの顔を見ていられなくなってしまい……その場を離れてしまい……自分の部屋に戻るために二階に上がると階段で足を滑らせてしまい転んでしまう。その際に怪我をしそうになったのだが、その時シイの力が発動してくれて俺を助けてくれていたのだった。それのおかげで俺はなんとか無傷で済んだが……シイが傷つくところを想像しただけでも怖くなって震えが止まらなくなってしまった。


(シイ……。頼むから無事で帰ってきてくれ……。シイがいなくなれば……。リリアが悲しんでしまう……。)


そんな事を考えている間にも時間は刻一刻と迫っていた。


リヴァイアはそのシイの言葉を聞くと……。すぐに行動を開始する。


そして俺も……アイツを止める為の行動を起こす。それは、この世界に来ているはずのリディアを探すこと。


リディアならきっと力を貸してくれるに違いないと思っていた俺は、すぐに動き出そうとしたが……。その時にリヴァイアに呼び止められて、リヴァイアに頼まれごとをしたのだった。その内容は、シイと一緒にアイシアを止めに行ってほしいというもので……。


正直に言ってしまえば、シイとアイシアの戦闘に巻き込まれないためにはそれが最善の選択であると思った。俺はシイが死ぬことを覚悟で戦っているのならば……そのシイの意思を尊重するべきだと考えていたから、俺はリヴァイアの頼みを受け入れることに決める。すると……。すぐにシイはリヴァイアに連れられて外に出かけて行ったのである。


シイ達が家から居なくなったことで、家の中はとても静かになった気がした。俺はそれからしばらくの間は……ソファーに座ってぼーっとしていたのだが……どうしても落ち着かなかったのだ。そこで俺はリヴァイアと二人でこの家を守ってくれているシイナに挨拶してから出かけることにしたのである。シイが帰ってくるまでにできるだけの情報を集めるためだ。そして……この家に近づいてくる人影がないか確認する。


すると……すぐに一人の男がやってきたのだ。俺はその男の様子を見るために、その男に話しかけてみることにする。その男は、この家の方を見ながら「あの子がここにいたような気配がしたのですが……。」と言ってきたのだ。


俺はこの男と話がしたいと思ってしまったが、この男と話せばアイツの正体を探り出せるかもしれないと思い、その男に声をかけることにして、俺の家に入ってくるようにお願いした。するとその人物は「ありがとうございます!」と返事をしてから俺のいるリビングにやってきたのである。その人物はかなり整った顔をしていて背が高く、優しそうな感じの人物であった。


「あ、私はシイナさんの知り合いのユイと申します。あなたはシイナさんのお友達ですか?」と質問してきた。


俺もその言葉に対して質問をするべきだったかもしれないが、俺はシイナの名前に違和感を感じてしまって固まってしまっていた。


その反応を見たシイナは、不思議そうな顔をしながら、どうしたの?と俺に聞いて来たのだ。すると俺はその言葉を遮るようにして……


「俺はお前がシイナって名前であることを知っているけど……、なんとなく違うと思ってね。悪いけど名前をもう一度言ってくれねぇか?そしたらちゃんと信じてやるからさ。」と問いかける。


それを聞いたシイは少しだけ悩んだ後にこう答えた。


「わかりました。信じてもらえないのは悲しいですが……仕方ありませんよね。」と言って……シイと名乗る人物は俺に向かって「私は、リヴィアよ……。この世界を救えなかった愚かな人間……。」と言い放つのであった。


その声が耳に届いた時……なぜか懐かしくて安心できる声で……俺は涙が出そうになるのを堪えて、「久しぶり……。俺のこと……覚えてる?」と聞いた。すると……リヴァ……いや……彼女は俺のことを見るなり、突然俺のことを抱きしめて来て……。そのまま涙を流しながら…… 俺の名前を呼んでくれたのだ。


そう。目の前にいる女性は……かつて勇者と呼ばれる存在であり……、俺のことを好きになってしまった少女……リリアであるということを思い出したのである。それを知った瞬間に俺もなぜか泣いてしまっていた。すると俺が泣く姿を見て、彼女も俺の肩に頭を置いて泣き始めてしまう。それからしばらくして、俺は彼女になぜ俺のことを覚えていられたのか聞くことにした。すると……リヴァイアという女性が俺にかけた魔法が原因なのだということが分かったのである。それに加えて……この世界に現れた際にこの世界の情報を得ることが出来たらしい。そして……俺との思い出を忘れていなかったから……この世界に現れてからすぐにこの家を感知することができたのだと教えてくれた。だがそのことは、彼女の口から聞くことができたのに……。この世界の仕組みに関しては一切話すことはなかった。それは何故か……、それはこの世界に俺が来たのはこの世界の理に反する行為だからだという。そのためこの世界のルールをあまり広めるべきではなかったので、リヴァイアにそのことを秘密にしてほしいと言われたのだ。だから俺はそれを素直に従って……リディアのことも……、シイのことも、アイシアや、シイナのことについては一切話をしなかった。ただ、アイナとシイはシイナの知り合いということで事情を話したが、それ以外は俺がこの世界に来ていることを誰にも言わないという約束をさせたのだった。だが俺はその会話をする前に、リヴァ……いやリアにこの世界で何が起きているのかを聞いておく必要があると感じていた。


俺はまだ俺のことを勇者として召喚した張本人がいる可能性があると、そのことだけは伝えておくことにしたのだ。その理由としては……この世界で起きている異常の原因を突き止められる可能性が出てきたからである。俺はそのことも含めてリヴァ……リアに色々と説明をした。そしてそのあとに俺が今やろうとしていることを伝えると……、その方法しかないだろうという結論に至ったのである。


それから、俺はシイが無事に戻ってくることを祈りつつ……リヴァイアに家を守る為に結界を張ってくれるよう頼んだのであった。俺はその後すぐにリヴァイアにリヴァイアの住んでいる場所に送ってもらうことになった。その道すがら俺は、これからどうするべきか考えていたのである。俺はまず最初に……この世界が俺達の世界のように平和な国になるようにするために……。リリアがやったみたいにみんなのために行動しようと考えていたのだった。でもまずは……アイシアとアイネにこの異世界が俺達の知っているものと全く同じなのかを確認することから始めた方がいいと考えた俺は、リヴァイアにそのことをお願いしてみることにした。


俺の考えを伝えたところリヴァイアは快く了承してくれたので俺は心の中でホッとしていたのだが……そんな時にリヴァイアからこの世界に俺達以外に来た人間は今のところ存在しないと言われて驚いてしまった。そして……、もしかしたらリヴァイアやアイシスのような神と呼ばれる存在である者達の加護を持っている人間がこの世界に現れるかもしれないという話を聞く。その話を聞いた時はリヴァイアの事を疑いたくはなかったが……アイシアという少女の魂を取り込むことで力を増したアイシアという少女の存在を知ってしまったから……その考えを否定することはできなかったのである。それに加えて……俺はアイリスと会える日が来るのではないかと考える。それは……。俺が昔住んでいた村の人達の誰かが俺の本当の両親の事について何か知っていて……それを村ぐるみで隠しているという可能性も考えられたからだ。俺は……俺に関係していると思われる村に一度訪れてみたいと思っていた。そして俺がどうしてそのように思ったのかという理由も……。その理由というのも……。俺が暮らしていた村は山奥にあり……、村人以外の人間が入ってくるようなことがないのだ。だからこそ……俺はリヴァイアに頼んでその場所を教えてもらうことに決めるのだった。


それからリヴァイアにリヴァイアが管理してくれている場所の地図を見せてもらって……俺はそこに行きたいと頼む。すると、リヴァイアはその願いを聞き入れてくれて……。すぐに転移させてくれることになった。


そしてリヴァイアは俺が指定した場所に一瞬にして移動すると、そこには小さな湖があって俺は少しだけ感動してしまったのである。するとそんな様子の俺を見てリヴァイアは「そんなに私のことが信用できない?それならここで待ってていいのよ。」と言ってきて……その言葉を信じるか悩んでいた。だけど、もし俺の予想通りであれば……ここにあるはずなんだ。そう考えた俺は……。意を決して森の中に入って行くことにしたのである。


俺は森に入ると、その先に進んでいくと急に景色が変わってしまい、俺は焦っていた。すると……俺はどこかの屋敷の中にいたのである。


するとその時に背後から話しかけてくる人物が現れたのだ。その人物は俺のことを知っていたようで……いきなり襲いかかって来たのだ。俺は慌てて戦闘態勢に入ろうとしたのだが……。相手の動きがあまりにも速くて俺は対応が遅れてしまい攻撃を許してしまったのである。すると……俺は突然気を失ってしまって……その場に倒れ込んだ。


それからしばらく時間が経ち意識が戻ると……俺が寝ていたのは知らない部屋のベッドの上だったのだ。俺は一体何が起きたのか理解することが出来ずにいた。


「ようやく目が覚めたか?この大馬鹿者!何を勝手に抜け出してこんな危険なところに来ているのだ!?貴様は私がどれだけ心配したと思ってる!」


俺に話しかけてきたのは、銀色の長い髪に紫色の瞳をしている……かなり顔立ちの整った美少女だ。彼女は怒った表情をしながら、俺に対して怒鳴りつけて来たのである。


(この子の声にこの容姿……間違いない。俺の母さんだ。ということはここは……。やっぱりあの湖の近くにある屋敷の中なんだよな……。俺の記憶の中にある景色とそっくりだもんな……。それじゃあ……あの時のあの人はやっぱり母さんだったということだ。それなのに俺は母さんの事が分からないって……。本当に俺は……この世界に戻ってきたのかもしれないな……。そして……俺をあの場所から助け出してくれた人でもある……。それどころか、俺がこうして生きていることすらこの人のおかげであり……俺にとってこの人は命の恩人でもある……。)


「ごめん……。でも……俺だって好きで抜け出したわけじゃないよ……。」


俺は怒っている彼女の目を見つめながら自分の本音をぶつけた。


するとその言葉を聞いた母は驚いた顔をしていたのだけれど、しばらくして……優しい笑顔を見せながら…… 頭をポンっと叩いてくれた。


「わかっておるがのう。でも妾も悪かったのじゃぞ?そなたの事をよく知りもせずに、無茶苦茶なことをしてしまってのう。まぁそなたが無事に戻ってきてくれただけで嬉しいわい。それにしてもこの前あった時より背が伸びたかの?それと顔つきは大人っぽくなってはおるのに……。雰囲気とかはまだ子供のままかのう?そっちの方は成長しとるんじゃな。ふむ。そなたがここに戻ってくる前に……この世界の現状については説明しておいた方がよいかもしれぬな……。」


俺は母のその発言に驚かずにはいられなかった。俺がまだ子供の頃……、つまりこの世界に迷い込む前の話だからだ。だが、俺にはそれよりももっと重要なことがあったのである。


「それなんだけど……。この世界での俺はいったいどうなったのかな?」俺は真剣な眼差しで母の顔を見る。


すると、彼女は俺の目を見ながら……。


「それならば……。この世界のことは気にせずとも、そなたが今まで生きてきた時間と同じ時間を過ごすことが出来るからのう。そろそろ教えても良い時期かも知れんのう。そなたがこの世界に来るまでどんな生活を送ってきたのかも聞いておかないとならぬしのぅ。」


その言葉で俺はある可能性を思い浮かぶ。俺がこの世界に来た時にあった女性……リヴァイアの加護が、俺とアイネに受け継がれている可能性があった。それに加えて、この世界がリディアとシイが暮らしている世界と同じようなものだとすれば……。俺がこの世界に存在していることでこの世界に大きな影響を与えている可能性がある。


俺はこの世界で起きる異変の真実を知るために……。そしてリヴァイアの力を使って俺の知っている人間をこの世界に戻すという目的を達成するためには……。どうしても俺が存在していることによる影響がどのようになっているかを、調べなければならなかったのだ。そのために俺は……この世界のことに詳しいはずのこの人に教えてもらう必要があったのである。


だがこの人がこの世界の事をどこまで知っているのかわからない以上、慎重に質問しなければならないと思った。だが、その前に……、この人の言う通りに……この世界で俺の生きていた時間での時間を過ごしてみて、その結果を報告すればいいと思えた俺は……この人との対話を続けることに決めたのだった。


俺はリヴァ……いやリアがどういう状況になっているのかを確認することにした。俺の目の前に現れたリアは自分の娘が、俺の体に乗り移って俺の代わりにこの世界を守っているのだという。俺はそれを聞いて驚いていたが、リアの説明を聞いていてこの世界の状況を理解することができたのである。この世界で何が起きているのかを俺は詳しく説明された。俺はその話をリアの話を聞きながら整理していくことにした。まず最初にこの世界で起きている異変というのは、魔物の異常な数の増加が原因だということだ。それだけではなく、普通の獣ですら強くなっていて……。さらに魔族と呼ばれる強力な力を持った存在が現れているので対処が難しくなってきているらしい。それに加え……俺がリディアやシイの住んでいる村で暮らしていた時のように平和で安全な暮らしを送ることが出来ていないそうだ。それだけでなく、この国では勇者として召喚された者が次々に死んでいくという事件が起きていて……。国中はパニック状態になっていたのである。その話を聞いた俺は驚きながらも……。リヴァイアとこの世界で会えたことに心の底から感謝するのであった。


俺がリヴァイアに感謝の言葉を伝えた時にリヴァイアは、なぜか嬉しそうな表情をしていたような気がするが……。おそらく俺の考えすぎだと思うのである。なぜならば……リヴァイアとは先程出会ったばかりなのだ。しかも……、俺は彼女に自分の考えを伝えてはいない。それでも……俺はなんとなく感じ取れたのだ……、彼女が笑みを浮かべたのは自分が思っていた反応とは全く違っていたからである。


そんなことを考えていると……、リアが自分の胸を指差してきたのである。その行動を見て俺は少しだけ動揺した。なぜなら俺はこの子がリディアなのか……もしくはこの子の生まれ変わりではないかと思っているからだ。俺もリヴァイアと同じように……彼女達と初めて会った時から不思議な感覚を感じ取っていて……リヴァイアもリディアもこの少女の魂の波動に似ていると感じ取っていた。だからこそ……もしかしたら俺は……。そんな事を考えてしまうのである。そんなことを俺が考えていると……突然少女に俺のことを抱きしめられて困惑してしまう。


俺のことを抱き締めながら涙を流し始める少女に、俺はどうしてよいかわからずただ呆然としていたのである。するとリヴァイアが「その者を解放しろ!」と言って来た。その言葉を耳にすると俺は無意識のうちに……リヴァイアが命令口調になったことにムカついてしまったのだ。そしてそのせいで俺も少女も睨み合ってしまうことになったのである。その様子に気づいたリヴァイアは慌てて謝ってきたが……、正直……今のやりとりを見ただけでもリヴァイアよりは……この娘の方が信頼に値すると判断したので俺は特に何も言わなかった。そして……この場にずっと居るわけにもいかないと考えた俺は……とりあえずリヴァイアの屋敷に連れて行ってもらう事にしたのである。それから俺は、この世界がなぜこうなったのかを改めて聞くことになったのだ。


この世界に何が起きたのか……リヴァイアが話し始めた内容は衝撃的なものばかりだった。この世界で今何が起こっているのかを説明するために……リヴァイアはこの世界での出来事について語ってくれたのである。まず初めに……この世界に俺とリヴァイア以外の人間がいなかったことから話す必要があるのだが……。俺とリヴァイアが住んでいたあの場所は、俺の生まれ育った世界とは別の空間に存在していたのだそうだ。あの場所で俺とリアが初めて出会ったときに、俺の事をこの世界に送り届けてくれた女性が言っていた……「別の世界の者達に私の世界を好き勝手されて困っている。あなたが私達の願いを叶えてくれるなら、この世界で生きることができるように力を貸す。」という言葉が意味することがこのことだったようだ。そしてあの場所には……。俺の住んでいた村の人達の祖先が作り出した特殊な結界が張られていたらしいのだ。


それだけではなく、あそこには……元々、この世界の人間が存在していたらしく……それを祖先が別の場所に移して、そこで暮らすことを許したという歴史があるのだとか。だがその人物たちは子孫が残すことが出来なかったらしい。それからその子孫が代々あそこに移り住み続けてきて、子孫が作ることが出来た最後の人物が初代村長だったということだ。ちなみにその人物は、この世界に転移する際にリヴァイアに協力して貰って一緒に来てくれた女性だ。


それでその女性の協力もあり、先祖の時代から守り続けてきた特別な結界は機能し続けることが出来て……俺とリヴァイア以外の人間は入れないということになっていた。だが、それが今回の異変のせいで崩れ去ってしまって……。本来なら、俺のような別世界の住人が来るはずがなかった場所なのに……この世界と繋げられてしまうという事態が起きたのである。それにより、リヴァイアの世界の人間が、あちら側から来れなくなってしまったのである。その結果……こちら側の世界の住民が、あちらに行けない状況に陥り……。そして魔物が増え始めてしまい……あそこは混乱を極めていたらしい。そんな中で現れた俺のことは、救世主として認識してくれたそうなのだ。


それに加えて……俺がいた世界の人間の遺伝子情報を利用して作られた生命体であるアイネスがあの場所に迷い込んでしまい……。俺は、リヴァイアの加護によって俺が元いた世界へと戻ることが可能になったのだそうだ。リヴァイアとアイネスのお陰で……リヴァイアの娘のアイネスも、アイネと同じような体質を持っているため、この世界に来ることができたようである。俺はその事実を知ってアイネにこの話をしてあげたいと本気で思ったのだった。アイネもきっと喜んでくれるに違いないと思っていた。


リヴァイアの話が終わると、今度はこの世界でリヴァイアと出会っていない俺の仲間達がこの世界にやって来てどうなっていたのかを詳しく教えてもらったのである。俺の仲間たちは皆、俺と同じ様な経験をしていて……それぞれ違う時間軸を生きていたのだということがわかった。だが俺の体の中にいるこの子とは違い、仲間は全員リヴァイアの力を受け継ぐことなく過ごしていたようで……。この世界にやって来ることは無かったみたいだ。それならば何故この世界にリディアとシイが存在しているのかと不思議でならなかった。そのことを質問したら、どうやらこの二人はリヴァイアの力でこの世界に連れてきてもらい、この世界で暮らしてもらうことになってたようであった。それを聞いて納得してしまった俺なのである。なぜならば、俺はリヴァとアイネスから、この世界に来るための条件として、俺が死んだ後この世界に来て欲しいと言われたからである。


その話を聞いた俺はこの世界に来る前、俺は死んでしまっていたのかと驚きを隠せなかったのである。俺はこの世界に来た時には、自分の肉体が無くなっているのを感じていた。それに自分の意識もハッキリしている。だからこそ、俺の体は死んだのではないかと予想できていた。それに加えて、リヴァイアから……リディアとシイがこの世界で生き続けるためには、俺の肉体が必要だと言われていて……それを聞いた時はこの世界で生きて行くことが出来るかもしれないと思い喜んでいたのだった。だから……俺は……、リディアとシイにこの世界で生きていてほしいと思ったからこそ……リヴァイアの提案を受け入れたのである。


俺はリヴァイアとリディア、そしてリヴァイアの娘であるアイネが俺の仲間だったという話を聞きながら、俺は心の中で、もしかしたら俺の体が死を迎えているのではないかと考えていたのだった。そのことで俺の体に何が起きてもおかしくないと思えるくらいの状況だったので、俺の体の中には既に魂が存在しない可能性を考えていたのである。もし俺の体に魂が宿っていなかった場合は、リヴァイアやリアの力を借りて、俺をもう一度この世界に転生させてもらう必要があった。そのためには……。まずこの世界での問題を解決する必要があったのだ。


それだけでなく俺は……自分の体のことが心配だったため……、一刻も早くこの世界の状況を確認する必要があった。だが……俺に残されている時間はあまりにも少ない状況なのだとわかっていた。リディアとシイを無事に元の世界に返すことができたとしても……、俺はすぐに自分の肉体に戻るつもりなのだ。リディア達と一緒に過ごしたかった気持ちはあるが、俺はもう十分にリディア達との日々を楽しむことができたと思っている。これ以上、リディア達をこの世界で不自由な思いをさせるわけにもいかないだろうと考えたのである。


だからこそ俺は、一刻でも早くこの世界での問題を片付ける必要があると考え始めたのである。俺がそんなことを考えていると、この世界での現状についてリヴァイアから話を聞いていたのである。最初はこの国の国王の話から話を聞くことにした。


その国王の話というのはこんな感じである。俺の体にいるリディアの母親は元々貴族令嬢だったのだが、ある日その父親が殺されてしまうことになる。それが原因でこの少女が国王に対して強い憎しみを抱いてしまった結果……その父親を殺害した国王の息子を殺してしまったのだという。そして少女は罪人として捕まり死刑の判決が下されるのだが……。国王は自分の命を守るためなのかわからないが……自分の娘の罪を隠蔽した上に、自分の身を守るために彼女を牢獄の中に入れることしかしなかった。その結果……。少女はその牢獄の中でも絶望してしまい自殺してしまう。だが……、その時……彼女の死体はなぜか消えることになり、代わりに一人の男の遺体が発見されることになった。だがその男は身元不明のため、王都に住まう人々に知らされることはなかったらしい。その後……この国の王子であるリディアの父親は、自分の息子に王位を継承させたいと画策し始めたのだ。その時に自分が殺されることを恐れてなのか、リディアの母親が殺された原因を作った人物を探し出そうとしていたらしい。だが、その時にすでに母親は病死しており、母親殺しの真犯人は未だに見つからないままだという事を聞かされたのである。


その話を聞いた俺は……リヴァイアに、なぜこの少女が俺にリヴァイアの名を与えてくれた少女に似ているのか尋ねてみた。


すると、リヴァイアの話によれば、その少女はリリアという名前の少女であり、その人物の魂は今、目の前で話してくれているリディアの母、リデアの中にあると言う事を教えてくれたのである。


俺がその話を聞き終えた後に、俺の体内にいるリディアのことを、俺はリヴァイアに頼んで外に出すことにする。リリアの生まれ変わりが俺の中にいることを伝えようとしたのだが……俺はその言葉を飲み込んだのである。なぜならリリアの事は秘密にしておく方がいいと判断したからだ。俺の口から伝えた事で俺の正体がバレると、俺の仲間達に危害が及ぶ可能性があると危惧したのである。特に、勇者のパーティーメンバーの誰かがこの世界の人間に知られてしまった場合には大変な事態になってしまうのは確実だと感じたのだ。


俺がリヴァイアの体内にあるリディアの肉体の主導権を奪い取った直後、リヴァイアが俺に謝りだしたのである。それは……この世界でリディアと俺の子供を産み育ててくれていたことに感謝する内容と、俺の事をこの世界に戻すために、この子の体を使ってほしいと頼まれたのだ。もちろん俺に拒否するという選択肢は無かった。この世界で俺の子供を育てるために頑張ってくれたことだけでも感謝しかなかった。


俺は、リディアにこの世界での生活を続けてほしいと思う気持ちがあったため、俺は俺の代わりにこの世界で生きることを望むリディアを、俺はこの世界に残すことにした。リヴァイアとアイネスのお陰で、リヴァイアの世界にいた時の俺とリヴァイアのように……

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