第7話 司祭ヴィジョット・マイヤーズの思惑
俺はヴィジョット・マイヤーズ。ソルディアのスベルタでしがないクリシソ教の司祭をしている。
はーあ。最近、どんどん人が死んでいって、忙しくてたまらん。
正直な内観として、こんなまじないをしたところで、
死んだあとなんて、どうせみんな行きつく場所は同じだろ。
クリシソ教に書いてある文なんて所詮、嘘ばっかり言って、人を騙した宗教。
俺もそれに便乗させてもうらぜ。稼げるものは稼がないとなぁ。
「ヴィジョット様こんにちは。」
「あぁ、こんにちは。」
名前の知らない少女が俺のことを知っている素振りで話しかけてくる。
どっかで見たことある気もするが、まぁ、そんなことはどうでもいいだろう。
「おじさまは何をされてるんですか?」
「えぁ、今、墓場に死体を埋めるところを見守ってきたところだよ。また新しい星が生まれてしまったな。。。」
俺がヒヒヒと笑みをこぼすと、
「そうですね。最近はどんどん人が死んでいっていますね。産まれる量よりも死ぬ量が多い気がします。今は戦争でもしている訳でもないのに。病気ってなんて怖いんでしょう。」
下を見ながらその少女は言った。
「産まれる量より死ぬ量が多いってことは、幸せな人よりも不幸な人が多いってことだよ。嬢ちゃんも覚えておきな。人は幸せだと勝手に増えていくけど、不幸な状態が続くと、段々と数を減らしていくんだよ。実は幸せなことに気づいてないだけの人も多い。昔は同じ畑からは、年に1回しか作物がとれなかったのに、最近では年に2回も作物が採れるようになってきた。それだけでも十分幸せだろ?」
と、俺が聞いてみた。
「うん。1+1=2でしょ。」
「いやいや、そこは1×2=2だな。」
と、俺が訂正すると、すかさず、
「どっちでも一緒じゃん。」と
少女は反論した。
「物事はな、結果よりも過程の方が大事な訳。お嬢ちゃん、たとえば、君に好きな男の子がいたとしよう。君から告白するのも、男の子から好きだと自白して、お付き合いに至るのも、どちらも、同じだろ?どっちでも良いのか?」
すかさず、少女はまたも
「いや!自分の男は自分で決めるの。気安く声をかける男なんて嫌なの。」
「ぇあるぁ。お嬢ちゃんはそっちの女の子だったんだね。」
と思いもよらなかった答えに慌てて対応する。
「そうなのよ。私は自分と同等か、それ以上の男じゃないと相手にはしたくないの。」
「ぇやーぁ。最近の若い子はしっかりしてるねぇ。」
本当にびっくりする話だった。
しばらく間をおいて、
「話は変わるけど、私はこの街を出ていくつもりなの。」
「ひやぁーあ。本当かい。どこに引っ越すの?」
「新天地。私と結婚する相手もそこで見つけるの。新たなる大地で新しい人と。」
「それはいつ行くんだい?」
「来週の日曜日。」
「じゃあ、おじさんもついていくよ。」
「いいの?仕事は?」
「……実はかわりの人を見つけてるから、大丈夫だよ。このことは出発する日まで秘密ね。」
「わかったわ。」
こうして、俺は今まで貯めたありったけの金で、
あたらしい村を乗っ取ろうと、今、ひらめいた。
世の中、愛だとか、願いだとか、夢だとか、希望だとか、色々言うが、
俺はやっぱり金だね。地獄の沙汰も金次第ってな訳。
実際のところ、俺も金によって、咎人を助けてやったりした訳だ。
しかし、金だけではこのコロリンの最中、生活することが難しくなってきた。
なにか楽して稼げる仕事を探していたところだ。
この一週間で、街中の一家全員死んだような家とかから、
持っていけそうな物はなんでももっていけるようにしておこう。
そのためには大量の牛舎が必要だなあ。
と、俺はキャラバン出発の一週間前に皮算用をしていた。
感染症の地元を脱出して新村形成 メグルハ @meguruha
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