門限。

「あのー、そろそろ私帰らないとやばいかも」

「門限何時?」

「…6時」

「あと30分⁉︎ 」

「ギリギリ間に合うか間に合わないか…」

「とりあえずバス乗ろっか」

「うん、ごめん。ほんと、巻き込んじゃって」

「別にいいよ、そんなやることあったわけじゃないし」

「そんな深刻そうな顔しないで」


と、二人は笑いかけてくれた。

「ほんと、ありがとう」

ほんとに。

でも、6時に間に合いそうになかった。



ガチャガチャッ

「……あ」

どうしよう…家のドアが開かない。電気はついてるし、確実に家の中に人はいる。

時刻は6時3分。部活でつけた体力で、バス停から猛ダッシュで家まで走ってきた。間に合ったと思ったのに…。


ガチャガチャガチャガチャッ


鍵がかかっている。家の中からは、お母さんと一人の弟が話す声が聞こえる。

締め出された。

「はぁ…………」


大きなため息が出た。前にもこんなことがあったのだ。門限を守らなくて、締め出されたことが。今回も、明らかに私が悪いが、締め出しまでするだろうか。


「帰ってくるのが遅くてごめんなさい!」


家に向かって叫んでみた。大声を出して、近所迷惑だからと、家に入れてくれると信じて。何度か叫んだが、失敗だった。一つも反応なし。

そろそろお父さんが帰ってくる…。それは本当にまずい。本当に。


けれど、私の願いは、残念ながら届かなかった。


「おい、何してるんだ」


「………」


「なぜ黙ってるんだ?」


「…ごめんなさい」


「何がだ」


「帰る時間を過ぎてしまいました」


「二度目じゃないのか?」


「…はい」


ガチャッ

お父さんが、自分が持っていた鍵でドアを開けた。「ほら、入れ」と言ってくれると期待したが、私には見向きもせずに家の中へ入って行った。


「どうしようかなー……」


ドアの前で、体育座りをした。1時間くらい、家に入れないだろう。もうこうなったら、楽しいことを無理矢理にでも考えるしかない…。

ああ、何故この家に生まれてきたのだろうか。よりによって、何故、ここなのだろうか。


だめだ。楽しいことなんて、考えられない。この家庭はおかしい。


でも、本当にそうなんだろうか。みんな、締め出しくらい受け止めれているのではないか。私が、今の時代に甘えているだけなのだろうか。


膝とお腹の隙間に、顔をうずめた。

1回目はこうして泣いたけれど、不思議に2回目は涙は出なかった。その代わり、疲れきったため息が漏れ出た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あかいうさぎは今日もあなたに #にっく622 @sumirenn123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ