第2話変身

「えっ、いいです…私、おばちゃんみたいに、美人ちゃうし…」


富貴は、苦笑いしながら、顔の前で右手をパタパタと左右に振った。


「何言ってんの!富貴ちゃん、べっぴんさんやで!そや!着物の前に富貴ちゃん

、この前、高校入ったらコンタクトレンズしよかな言うてたな。今から、コンタクトレンズ買いに行こ!おばちゃん買うたるさかいに!」


おばが満面の笑みで、富貴に近づく。


「あっ、いや…その…コンタクトは、もう少し考えてからに…今日は、お金も無いし…」


富貴は本当に、コンタクトの事はずっとずっと悩んでいてまだ決めかねていた。


「何言ってんの!もう少し…もう少しって考えてたら、おばちゃんみたいに何も出来んと、これはほんまにほんま、すぐ歳とるねんで。お金かて、そんなんおばちゃん出したるやん!あっ、心配しいな

。これは、入学祝いとは別やからな!」


「その…お祝いの事、心配してた訳や無くて…」


「ええから…ええから…なっ!行こ!」


戸惑う富貴を強引に連れ、おばは、呼んだタクシーに富貴を押し込んだ。


そして、京都駅の近く専門店で、コンタクトレンズを初めて試着し、購入した。


鏡で、視力の良い目で見る自分の顔は、まるで知らない人のようで


富貴は戸惑う。


その富貴を、おばは、さらに美容室へと連れて行った。


どうしたらいいのか分からないままでずっと適当に伸ばし後ろで括っていただけの髪が、


少しのトリートメントとカットとヘアアイロンで、見違えるようになり、


久々に髪を下ろし、肩下でサラサラ揺れた。


「わー!やっぱり、富貴ちゃん、めちゃくちゃべっぴんさんやん!べっぴんさんやで!」


喜びが加速したおばは、富貴を又タクシーに押し込んで、五条近くのある店に連れて行った。


そこは、京都によくある、いかにも老舗の入りづらい呉服店でなく、観光客などに着物を着付けレンタルする所。


京都に住んでいる人間が、仕事に関係している以外は決して出入りはしない所。


又おばに強引に手を引かれ、富貴は入店した。


富貴が、外観をぱっと見てのあくまでのその店のチャラいイメージでは、


安っぽい着物を、何も知らない外人や若い女性に適当に貸し出ししてるだけに感じたが…


中に入ると、そこは…


古来からの日本の物とは少し違う着物が所狭しと沢山あった。


それらは全て、


アール・ヌーヴォーやアール・デコ調の

、様々な西洋の花や植物の紋様や前衛的な直線の紋様が…


水着、ヨット、テニスラケット、

ワイングラスなど…


作られし大正時代頃の最先端の物が、しっとりとしたロマンチックな色や、ビビッドな斬新な色で描かれていた。

















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令和大正浪漫喫茶娘 みゃー @ms7777

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