ひたすら追い続ける刑事の文才
『22年目の告白-私が殺人犯です-』浜口倫太郎(講談社文庫)
映画化されその映画も見ているからか読みながらも演じた役者の顔が浮かんで仕方がない。シリーズ化されたものならともかくとして、一本だけなのだから不思議にさえ思える。言い換えればそれほど強烈な印象を残したからとも言えるのではないだろうか。
もちろん原作となったこの小説もしかりだ。突拍子もないという言葉が似合うほどの展開が読み手を物語に引き込んでいく。読みやすいのは言うまでもないが、情景をしっかりと浮かばせてくれるので宛ら一遍の映画を見ているような錯覚にも陥る。
それぞれのキャラもしっかりとしていて人間にも感じさせる。ただし、内容はタイトルが示すように決して明るくなくどんよりと重い。時には不快にさえ思うのではないか。
出す本は下劣という出版社の帝談社で編集者を務める川北未南子の前に突如、美青年の曽根崎雅人が現れる。そんな彼から預かった原稿は時効になった連続殺人事件の犯行を告白したものだった。
読みながら戦慄を覚えた未南子だが、その目を瞠る文面に惹かれている自分にも気付く。迷った末に出版した本は瞬く間にベストセラーになり、当然のことながら遺族や世間からの反発を招く。
しかし、その美貌から女性ファンも急増し執筆した曾根崎雅人はまさに時の人となる。
実際こんなことが起こったらどうなるだろうか。有り得ないと思いつつも知らぬ間にそんな思いが隅へと追いやられていることにも気付かされる。騒ぎはどこまで大きくなるのか。不安と期待とが交錯する中、話は思わぬ方向へと進む。
特にそれまでの重さを払拭するかのエピローグは心地よくもある。
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