奇麗な花は見るだけなら害はない
『危険なビーナス』東野圭吾(講談社文庫)
性格が一番などと体裁の良いことを呟いたところで、いつの世も男は美人には弱い。おまけにスタイルも良く愛想も良いとなると、大抵の男は好意を抱いても然程不思議ではない。
たとえそれが弟の妻であってもだ。
獣医である手島伯朗のところへ突然電話が入る。内容は弟の失踪だという。相手は弟の明人の妻だと名乗ったが、弟が結婚していたことすら知らない伯朗は困惑する。父親違いの異父弟である明人とはそもそもずっと疎遠だったのも理由にあるが、妻だという楓と行動を共にするうちに、惚れっぽい性格の伯朗は徐々に彼女が気になりだす。
自分の恋人でもあるまいに。とツッコミを入れたくなるほど、その心配性ぶりは宛ら初恋の中学生で、とにかくやきもきぶりが時にじれったく、時に微笑ましくさせてくれる。いうなればこれも美女ならではのなせる業なのかもしれない。
言い方を変えれば特権だ。失踪の原因は明人が相続するはずの莫大の遺産なのか。それを探るべく弟の親族に接触するが、徐々におかしな謎が顔を擡げてくる。この辺りの謎の絡み合った展開はさすが東野圭吾と言うべきだろう。
読み手も右に左に振り回される。
それに貢献しているのは妻と名乗る楓ではあるが、もはや主役とも言えるキャラはとにかく行動的で、きっと伯朗と同じ立ち位置になれば彼同様にハラハラしてしまうに違いない。
気を付けた方が良い。
何人かの女性が彼女のことをそう言って釘を刺したが、本当に妻なのかと読み進めるほどに疑念が湧くのも確か。
むしろ謎の事件よりも彼女の正体の方が気になって仕方がなく、そこにまさかというオチが待っていた。
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