誰しも迎えるその時を和らげてくれる清涼剤
『老後の資金がありません』垣谷美雨(中公文庫)
老後に必要な金額はいくらなのか。そんな話題が取り上げられ、ため息が思わず漏れた方も多いのではないでしょうか。
使い道に困ってる富裕層は別として、年金だけではたして暮らしていけるのか。誰しも不安に思うのではないでしょうか。
生活を切り詰めて貯めたお金と夫の退職金。後藤篤子はこれで老後は安泰と思っていた。しかし、娘の派手婚と舅の葬式と次から次へと出費がかさむ。さらには篤子のみならず夫もリストラされ、おまけに退職金も無しとまさにお先は真っ暗状態。高度成長期なら他人事だと笑える話も、今では身近に迫る恐怖と言っても過言ではないでしょう。
地味婚に出来ないか。棺桶は安いのではダメなのか。同じことをやるにしても少しでも節約しようと知恵を絞るあたりは、思わず笑いながらも共感してしまいます。
もっとも笑えなかったらこの話は清涼剤どころか薄めた毒薬にも似た重いテーマです。それでも思わず次のページへと先を急がせるのは、対岸の火事ではなく、隣近所か、もしくは自宅での話題というくらいに身近であるからです。それだけ随所に考えさせる事柄があふれているのも本書の魅力の一つとも言えるでしょう。
時に唸ったり、あるいは笑ったりと、飽きさせるどころか文字を追いたくなる。もともとそれほど読むのは速い方ではない私が二日で読み終えたくらいですから。
読了して思ったのは十代二十代ならともかくとして、そんな言葉が脳裏に過りだした方は必読して欲しい一冊でしょう。
けっして無駄にはならないノウハウに心が少しだけ軽くなるはずです。
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