小さい種がよもやこんなことを引き起こすなんて
『夢幻花』東野圭吾PHP文芸文庫
花は好きかと尋ねられれば大抵の人は好きと答えるのではないでしょうか。私も庭を少しでも華やかにしようとあれこれ買って来て植えたりします。しかし、手入れが悪いのかなかなか奇麗に育てるのは難しく、時には枯らしてしまうことも。
もちろん種を取るなどと言った本格的なことは出来ないため、一年草ならばホームセンターに並ぶ花を買うのが関の山。従ってその花がどんな種なのかすら知らないのが現状です。
秋山周治は花を愛でながら余生を送っていた。様々な花で彩られた庭はちょっとした植物園のようだった。そんな彼が孫娘に見せた鮮やかな黄色い花の写真は見たことのないもので、名前すらわからないのだという。
ネットに揚げれば知ってる人から情報が来るかもしれないと孫娘の梨乃は言ったが、周治は頑なにそれを拒否した。その周治がやがて遺体で発見され、謎の花が咲いたとされる鉢植えが消えていた。
プロローグは二つあり、まったく別の話と戸惑いさえしますが、これがやがて徐々に繋がっていく。その花の名前は誰もが知ってるもので、一度くらいは観察用として育てた記憶もあるのではないでしょうか。
そんな花が縁で知り合った梨乃と大学院生の蒼太は真相解明に乗り出すが、蒼太の兄も密かにこの花の秘密を追っていた。そして刑事の早瀬も。
一見、かみ合わない話が読み進めるうちに徐々に蔓のごとく絡み合っていく。エピローグまで目が離せない展開に自然とページを捲るペースも早くなっていきます。
多くの人間を引き寄せる小さい花の種の秘密を一緒に探してみてはいかがでしょうか。
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