終演と共に葬り去りたかった胸の内

『沈黙のパレード』東野圭吾(文春文庫)


 思わずニヤッとしてしまう。


 ガリレオ先生こと湯川学が登場するや、安らぎのような安心感と、何かをやってくれる期待感が胸中を駆け巡る。


 シリーズを何作も読んでいるからか、刑事の草薙、そして、内海薫は私の中ではすっかりお馴染みの面々で、円熟味を増した文面と相まって、乾いた喉が欲す水のようにすんなりと文字が頭に入っていく。当然情景も浮かびやすい。小説においてこれは重要なポイントだと個人的には思っています。


 もう少し、もう少しという読み手に欲も出て来て、思いの外いつもよりも速いペースで読了しました。


 三年前に失踪した少女の遺体が発見され蓮沼寛一という男が逮捕された。


 実はこの蓮沼、二十三年前にも少女殺害で逮捕されたが無罪となっていた。そして今回も黙秘を続け証拠不十分で釈放される。そんな事態に落胆を隠せない遺族や我が子のように可愛がっていた人達は、蓮沼に鉄槌を下さんと密かに計画する。


 判決に信じられないのは私も同様でした。こんなことがあっていいものかと、苦い思いで読むと同時に、鉄槌のメンバーを無意識に後押しもしていたでしょうか。


 参加を持ちかけられたら迷うところですが、心情は大いに理解は出来る。そして鉄槌は下される。ここで謎を解きつつ犯人探しとなるのでしょうが、そうだったのかと思ったことが一転し、さらにまた一転と飽きさせない仕掛けが盛りだくさんで、思わずうなってしまうほどです。


 初期のシリーズではここまでの展開は見せていませんから、やはり書くほどに進化を続けているということなのでしょう。


 存分に楽しめ、同時に胸を締め付けられました。

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