引いた恋のくじは当たりだったのかハズレなのか
『セカンド・ラブ』乾くるみ 文春文庫
遠い昔に聴いた歌がふと頭に浮かんだ方も多いのではないだろうか。いろんなことを想像させるタイトルはとても洒落た響きを放っていて、読む前から興味をそそられる。内容はある意味予想通りで恋愛が主体だが、序章を読む限りではただの恋バナでないと眉を顰めるのではないか。
会社の先輩にスキーに誘われた正明は、そこで先輩の彼女から春香を紹介される。そして、ダブルデートよろしく正明は春香とその後付き合うようになる。こんな出会いを経験した者ならあの頃と言う時代を懐かしめるはずだ。
無論、現在の伴侶が全く別の相手であってもだが。女性経験のない正明のぎこちない恋の初めも良い雰囲気で描かれていて、忘れかけたトキメキと言う言葉を再び思い出させてもくれる。
しかし、ただの惚気話だけでは数ページも読めば飽きてしまうと、徐々にストーリーは謎めいた方向に向かって行く。それが春香と同じ顔をした女性の出現である。
そこから物語はミステリーの色が濃くなり読み手を時にハラハラ、時にイライラさせてくれる。春香とそっくりな女性はミナという源氏名で働いていることを知った正明は、興味本位からその店に出向くのだが、ここから彼の心の歯車が狂いだす。
並外れた美人の春香に寄せていた思いがぐらつき始めるのだ。本書の見せ場はいかにも単純そうな進行具合なのに徐々に難解と言う文字が浮かんでくるところにあるのではないか。
読了後も意味が分かったようでわからない。
それがもう一度読みたくなる大きな理由なのだろう。恋の楽しさ怖さを味わえる一冊と言えよう。
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