7.逆転
由紀の声がした。
「直人。あなた、私を騙したのね。私の論文を自分のものにするために・・私を騙したのね」
「そんな・・違うよ。僕は・・ただ・・」
すると、由紀が笑い出した。由紀のひきつった笑いがホテルの部屋に響いた。
「はははは。直人。私はね、こうなることは最初から分かってたのよ。私と出会ったら、直人が私を自分のものにして、そして論文も手に入れて、そうしたら別れ話を持ち出すってことは最初から私にはお見通しだったわ」
私は声もなかった。由紀を見つめた。
「だから、私は直人の教授室を訪ねる前から『あの論文を最初に書いたのは私だという証拠』を残しておいたのよ。私がこの証拠を世間に出したら、直人の学者生命はお
由紀の方が一枚も二枚も上だった。私は声もなく茫然と由紀を見ていた。私の耳に由紀の笑い声がいつまでも響いていた。
了
彼女はスリップを滑らせた 永嶋良一 @azuki-takuan
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