6.発表

 私は自分一人の名前で『S大学東側丘陵について(観音山の古墳形状の考察)』を学会に発表した。もちろん、私が毎日観音山に登っていたのは・・散歩のようにふるまっていたが、実は古墳かどうか調査していたのだという話を付け加えた。


 『S大学東側丘陵について(観音山の古墳形状の考察)』は評判を呼んだ。何と言っても、身近にある丘が実は古墳だったという意外性が世間の興味を引いた。学会の中でも早くも『今年のベスト論文』に推す声が出てきた。世間に古墳ブームが起こり、マスコミは『あなたの隣にある古墳』探しに躍起になった。


 私は多忙を極めた。


 そんなある日、私は由紀と会った。いつものホテルだった。由紀を抱いた後で、私は由紀に言った。


 「由紀。『出会いと別れ』って言葉を知ってる?」


 由紀は驚いた様子だった。


 「ええ、意味は分かるわよ」


 「僕たちもね、出会って・・そして別れる時期が来たように思うんだ」


 「別れるですって・・」


 由紀が絶句した。眼が吊り上がっていた。


 「そうだよ。どんな出会いも必ず別れがあるんだ。僕たちも美しく別れようじゃないか」


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