岡田公明

出会いと別れと春模様

 春が訪れた、これで何度目の春だろうか。


 産まれてから訪れた春を実感することは少ないが、その実、年の数だけハルは当然訪れている

 そんなどうでもいいことを考えながら、ふと桜の蕾を付けた木を見た。


 蕾自体は若いが、その木、全体はずいぶんと長いように思える。

 ずっしりとした胴体に、数々の枝を生やし、それぞれが自立して、花を支えている。


 その様子に感動した。

 その理由は分からないけれど、何故か涙が出てきた。


 それが、今年の春との出会いだった。


 あの日、夢を語った友達は今一体何をしているのだろうか?


 考えても恐らく答えは出てこない。

 きっと今も彼らしくしているのだろう。


 学生時代共に眺めた仲間も今は、既に働いていて、なんだか定職につかない自分だけが

 どこか、取り残された感覚でとても、焦りを感じる。


 急ごうが、結論は何もかわらないというのに、それでも何か駆られてしまうのだ。


 全ての始まりは「どうせなら」の一言だった。

 それによって、あの日、あの時の彼女と身体を交えた。


 ふとこの木を見て思い出す。


 決して良いものではなかった。

 それは、お互いにとってそうであって、それでもいいという関係が続いていて


 だけれども、彼女はいつしか慌てだしたのか


 何故か分からないが、色々と迫るようになってきた。


 それは、恐らく自然の摂理だとかと同じで、仕方のない事象の一つだとは理解していて

 だけど、感情的な面はそれを封じることが出来なかった。


 それが、弱い理性だった。



 桜が風に煽られて舞う。

 それを見て、思い出す。


 出会いは、桜の下だった、長いスカートの履いた彼女は桜が舞うように、そのスカートもまた風によって舞った。


 それを向かいで見ることになったのが私だった。

 結局そこには、他に誰もいないせいで、気まずかった。


 そして、それが関わりに起因した。


 交わるまでには時間はかかった。

 どちらかといえば、私が心配だった。


 無責任になってしまわないか、そんなことが常に不安だった。

 だからこそ、先送りにした。


 結局、彼女と桜は2度しか一緒に見に行けなかった。


 その時、あの日と同じように、彼女は別れを告げた。

 それだけが、あの人は異なっていた。


 だからこそ、思い出すのだ。


 この桜を見ると。

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