人生とはそれ即ち一期一会の連続にすぎない。

月乃兎姫

第1話

 人生とは出会いと別れが織りなす一つの物語である……とは、よく言われている。また人それぞれ、違った物語が用意されているものだ。


 そして何かしら節目節目で、物事に対する考え方や生き方が変わる、あるいは変えなければいけないときが来る。人によってはそれが卒業や入学であり、就職や結婚などといったイベントでもある。だが私の場合には、それが自然災害というあまり好ましくない出来事であった。


 地震・洪水など、人生において1度でも遭えば災難と言い切れるものが、私の場合にはここ11年の間、実に6回以上の災害に遭ってしまった。つい先日も大地震により、家の一部が破損し、形あるものそのほとんどが壊れるなどの災難な目に遭った。


 食器やコップ、皿やテレビ、こうして執筆しているパソコンや映し出すモニター、プリンターやデジタルカメラ、炊飯器や電気ポットなどなど、それまで長年に渡り大切にしていたものでも、壊れてしまえば、跡に残るのは思い出くらいなもの。これらもまた一種の別れであり、新しく物を購入すれば出会いと成り得ることだろう。


 人は常に考える生き物であるが、果たしてそれまでの思い出や大切にしていた物を突如として失えば、どうなるのだろうか?

 空虚、無関心、無気力、無生産、そうした言葉で幾つもの繕えるものの、ただ今を生きるだけ――それしか残らないときもある。


 結局はこれを読んでいる人も所詮は他人事であると思われるだろうが、いざ自分がそうした目に遭って初めて、人はそのことを思い出すことができるのだろうと思う。

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