第3話 仲間との出会い 2
ウィルリーンは、旅を続けながら、常に師匠である老婆の占いに出てきた運命的な出会いについて考えていた。
運命的な出会いとなったら、自分の旦那様になる男性エルフだろうと思うことにしていた。
35歳のエルフは、見た目は人の14歳程度なので、思春期には少し早いが、師匠の占いから運命的な出会いがあるというなら、その可能性を考えてしまう事は、仕方が無いのかもしれない。
ウィルリーンは、自分の旦那様になる人は誰かと考えていたのだが、現れた相手は、ドワーフの少女だった事から、思っていた内容とは違うかもしれないと思うと、期待はずれ感が大きかった。
しかし、最初に出会った、このドワーフの少女には、何かを感じるものがあった。
ひょっとすると、これが運命の出会いの可能性があるとウィルリーンは思った。
しかし、ドワーフの少女は、ウィルリーンの様子を気にすることは無く自分の事を話し始めた。
「私も冒険者になって、お前を助ける。 斧なら、兄貴達と一緒に木を切っていたから使える。 きっと、役に立てるはずだ。 だから、一緒に連れて行ってくれないか」
ドワーフの少女は、自分の言いたいことだけを言った。
(木こりだったのね。 それと、少し図々しくないかしら)
ウィルリーンは、少しがっかりした様子をした。
これが、師匠である老婆の占いに出た運命の人なのかと思うと、少し、やるせなさが表情に出ていたが、ドワーフの少女は、そんなウィルリーンの様子を気にする気配は無かった。
大きく呼吸をすると、ドワーフの少女を見た。
「分かった。 首都まで、道案内、お願い」
ウィルリーンは、上手ではない、ドワーフ語で、少し残念そうに答えたのに、ドワーフの少女は、そんな事を気にする気配は無かった。
「その先は? この国に入ったのは何でだ? お前、エルフだから、この国には大した用事も無いのだろう」
ドワーフの少女は、ウィルリーンがエルフであることから、ドワーフの国で暮らすために来たとは思ってなかった。
村を出たエルフは、国に帰ることは無く、そして、ドワーフの国は、ドワーフ以外が住むには住みにくい国であって、交易商人以外は、ドワーフの国に住む人は少ない。
そんな事もあり、ドワーフの少女は、ウィルリーンが、この国を通過するために入ったのだろうと思い込んでいるように話したので、その事から、ウィルリーンは、自分の旅が、ある程度見透かされていると思った。
「わかった。 この国だと、あなたは、自由が無さそう。 私は、北の王国に行く。 あなたも、一緒に行く?」
すると、そのドワーフの少女は、便乗できると思ったのか、表情を綻ばせた。
その表情を見たウィルリーンは、マズイと思った。
「ただし!」
条件があると思うとドワーフの少女は、綻んだ表情が不安そうに変わった。
「北の王国まで、試用期間、その間、私が認めなければ、そこで、お別れ」
条件は、ウィルリーンが、冒険者として一緒に戦えると認めることだと少女は理解した。
そして、その事に全く迷いが無いという表情をした。
「ああ、かまわない。 それでいい。 だが、お前だって、冒険者として一人前とは言えないだろう。 私と同じ位の年頃だろうし、経験だって大して変わらないだろう」
ムッとした様子で、その話を聞くと、ウィルリーンは、右手を地面に掲げて呪文を唱えると、そこに光で描かれた魔法紋が現れた。
そして、魔物のコアが何個も山になって浮き上がるので、それを見たドワーフの少女は、びっくりして息を呑んだ。
「私が、修行中に集めた。 魔物のコア。 これ、ギルドに持っていく。 換金する」
ウィルリーンは、旅の途中で倒した魔物のコアを見せた。
そして、ドワーフの少女は、その量に驚いていたから、ウィルリーンは、イニシアチブを握れたと表情に余裕が生まれると、ウィルリーンは、ドワーフの少女の名前を聞いてない事に気が付いた。
「よろしく。 私は、ウィルリーン。 ウィルリーン・エルリン・ウィルラン」
魔物のコアを見ていた、ドワーフの少女は、ウィルリーンが名乗ったので、お互いに名乗ってなかったことに気がついた。
魔物のコアから、ウィルリーンに視線を向けた。
「ユーリカリア。 ユーリカリア・ソルボ・アメルリアンだ」
つられて、ユーリカリアも自己紹介した。
「わかったわ。 ユーリカリア、それじゃ、まず、首都に、……」
ウィルリーンは、ユーリカリアの服が、火事の影響でボロボロになっている事が気になった。
流石に、その格好で一緒に街道を歩いていくわけにはいかないと思うと、ユーリカリアの服を指差した。
「それより、着る物、調達」
それを聞いて、ユーリカリアは、困ったような表情をした。
「そうだが、私は、この身一つで逃げてきたから、お金も代価になるものも無いぞ」
すると、ウィルリーンは、ユーリカリアの言葉を遮るように片手を上げた。
「お金、私が、出す」
そして、ユーリカリアの顔を、真剣に見た。
「ドワーフの女。 分かると、まずい」
ウィルリーンは、現実味を帯びてきたようだ。
若い女性ドワーフが、単独で街道を歩いて行くのは、目立ち過ぎると思った。
「それなら、エルフになってもらおうかしら」
ウィルリーンは、エルフ語で呟いたので、ユーリカリアは、何を言ったか理解出来なかった。
疑問を投げかけるような表情をしたが、そんな事は気にする事なく、ウィルリーンは呪文を唱えた。
呪文が終わると、ユーリカリアの耳が、エルフの耳変わった。
「魔法で、エルフの耳にした。 これで、エルフが2人旅をしている。 そう思われる」
ユーリカリアは、言われて自分の耳を指を触った。
その感触が、今までの自分の耳とは違い、目の前に居るウィルリーンと同じような耳だと、その手触りから理解したようだ。
「おおー、ウィルリーンと同じ耳だ」
驚いたようだが、少し嬉しそうでもあった。
「これなら、エルフの女性で通せるな」
ユーリカリアは、満足そうに答えた。
「街道を歩いていても、ドワーフの女性だと思われない。 多分。 早く、服を買いに行こう」
そう言うと2人は、移動を始めた。
「ああ、お前のドワーフ語は、少しおかしいと思うぞ。 だから、首都に行くまで、もっと、話をしよう。 直ぐに慣れるだろうし、普通に話せる方が、都合がいいはずだ」
ウィルリーンは、ドワーフの国を通過するだけだとしても、言葉は必要だと感じていた。
「そうね。 お願い」
ウィルリーンは、慣れないドワーフ語をユーリカリアと話す事で、より良く話せるようにしようと思った。
そして、首都に向かって、話をしながら歩き出した。
ウィルリーンの別れと出会い パワードスーツ ガイファント外伝 〜女性だけのAランクパーティーのリーダー ユーリカリアとの出会い〜 逢明日いずな @meet_tomorrow
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