第5話 王女と王妃の聞き捨てならない会話

 タイやヒラメの舞い踊り隊のショーが始まると、オト・ヒメは艶然と笑みを浮かべて浦島太郎の隣に座った。

「リューグ城へようこそ浦島太郎さん!…でも、私もっと浦島太郎さんとお近づきになりたいな ! …だからもっとフランクに太郎ちゃんって呼んで良い?」

「えっ !? …別に良いけど、でも俺がいつもつるんでる仲間も、みんな太郎って付く名前なんだよなぁ…」

 浦島太郎はちょっとドギマギしながら応えた。

「…じゃあ、ウラシマから中を取って、ラッシーって呼ぶわ!ねっ、ラッシー !! 」

「う~ん…ま、良いけど、何か犬みたいな名前だなぁ ! …まぁ俺イヌ年だから良いけど…」

「じゃあ私のことはオト・ヒメ様って呼んでね!」

「う~ん…ま、良いけど、何かそれだと飼い犬と飼い主みたいな感じだなぁ、まぁご馳走食って舞い踊り見てる身だからモンク言えないけど…」

「じゃあ決定!…お利口ね、ラッシー !! 」

 …という訳で会話もはずみ、ショーが終わるとお姉ちゃんたちが今度は代わる代わる「ラッシー」とじゃれあって楽しい夜は更けて行った。


 そして「リューグ城」は看板の時刻となり、お店の外装を飾るイルミネーションも消えた。

「ラッシー!…明日もまた来てね、待ってるからねっ !! 」

 オト・ヒメやお姉ちゃんたちにそう言われてお店を出た浦島太郎だったが、自分のネグラははるか海の向こう (実際にははるか宇宙の向こう) である。

 …仕方なく、その晩は波音を聞きながら防波堤の上で寝た。

 しかし、硬い地面の上ながら、さっきまで綺麗なお姉ちゃんたちに囲まれていた至福の余韻に包まれながら安らかな眠りに落ちて行った。


 …翌朝は、またまた船の汽笛の音で目を覚ました。

 目の前の海は、ぼんやりとまだ薄霧がかかっていて、沖行く船影や水平線を見ることは出来ない。


 浦島太郎は岸壁から竿を出して魚釣りをはじめた。

「ふふ…帰ったら友だちみんなに竜宮城での至福の出来事を自慢しよっと!…キ、赤い服のあいつはきっと羨ましがるだろうなぁ」

 ニヤつきながら呟く浦島太郎の竿にはしかし、いくら待ってもアタリは無かった。…なぜならここは超リアル3D仮想映像空間の中なのだから、海も港も実はみなマボロシなのである。


 そしてまた夜が来て、浦島太郎はまた「リューグ城」の前に立った。

「よぉ!…浦島太郎が来たぜ !! 」

 そう叫ぶと、店の扉が開き、お姉ちゃんたちがゾロゾロ出て来て迎えてくれた。

「あら~、ラッシー !! …今夜も来てくれたのね!」

 そして昨晩同様、店内にみんなでなだれ込むように入った。

 浦島太郎は昨晩同様、まずはビールを飲み、「舞い踊り隊」は舞い踊り、そして今日もまた客は「ラッシー」ただ1人の貸し切りのまま、お姉ちゃんたちが入れ替わり立ち替わりのおもてなし。

 もちろん前のテーブルにはオト・ヒメ様のご馳走が並んでいる。

 …しかし、店には当のオト・ヒメの姿が無かった。

「あれ !? …今日はオト・ヒメ様はお休み?」

 浦島太郎がお姉ちゃんたちに質問する。

「…あぁ、オト・ヒメ様は今夜はキャバクラ組合のオーナー会議に出席してるの!…遅くなってから来ると思うわ」

 隣の席でエビちゃんが答えた。

「あっ、そうなんだぁ…経営者ってのも大変なんだねぇ」

 浦島太郎はもっともらしく言った。


 …しかし、実際にはヒメ王女は王妃に呼ばれて、王宮内の王妃の部屋に来ていたのである。

「…他の星に別荘つくる件がチャラになったって、どういうこと?」

 ヒメ王女が叫ぶ。

「だから~、私もさぁ、実際宇宙船酔いが酷いじゃん ! …苦しんでゲロ吐いてまでそんな僻地の訳分かんない星に行きたくないのよね、だから王様にさ、アナタともっとイチャイチャしたいからぁ、遠い別荘より豪華なベッドが身近に欲しいな~ ! って言ったら、王様がぁ、よし分かった!別荘やめてベッド買ったる !! って応えてくれたの~!…だから別荘の話はポイッ !! 」

 王妃の答えに、王女がブーたれる。

「ザーけんなよ~!…こっちゃあ苦労して調査したのによ~、第一地球から持って来たサンプルど~すんだよ~ !! 」

「苦労したったって、あんたどうせ係官に役目丸投げでしょうよ!…サンプル要らないならポイすれば?」

 こともなげに王妃は言った。


 浦島太郎の運命やいかに !? …



 う~ん、クライマックスどうしよ?と筆者悩みながら…続く





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