第3話 竜宮城へ行きたいか~っ!
ヒメ王女のリクエストに応えて、ウンミガメ係官はまた映像を切り替える。
…浦島太郎は素朴な楽器を弾きながら海に向かって歌っていた。
演奏に沿って波の音がゆったりとリズムを補足する。
「浦島太郎は、普段は友達とつるんでるんスけど、1人の時にはこうして海に向かって歌ったりする奴なんスよ~ ! 意外な一面つ~か、まぁでも友達もクセの強い面々ばかりなんスけど」
ウンミガメ係官がそう言うと、ヒメ王女が応えた。
「…別に大して歌うまくないじゃん!」
「えっ !? 」
ヒメ王女の急に冷めた反応は係官を驚かせた。
「良いよもう面倒くせ~からサンプルこいつに決定!…サッサと捕獲してこっちに持って来て」
王女のファイナルアンサーに、地球の映像は消え、周囲はリューグ星王宮内会話室の現実空間に戻った。
という訳でこちらも映像ではなく現実の地球…。
「助けて頂きまことにありがとうございます、浦島太郎さま ! 」
ウンミガメ"初号機"が口を開いて感謝の言葉を発した。
「えっ !? …お前、人間の言葉が話せるの? 凄いじゃん、どこで覚えたんだよ!」
驚く浦島太郎。
「え~と、実は私、長いこと水族館に居て人間と接していたから、自然に…」
「な~るほどぉ ! ……まぁ人間も色々だから、さっきの子供たちみたいに恐い奴らばかりじゃないからな! 良い子もいるから!そう思って海へ戻りな !! 」
(何だこの男 !? …さっきのガキより頭天然か?…確かにプーチンにも誰にでも簡単に騙されるタイプじゃん ! )
…実はもちろんこの"初号機"、遠く離れたリューグ星のウンミガメ係官によってリモート操作されている。
言葉も全て実際は係官が喋っているのだ。
「せっかく釣った魚を放してまで私を助けて頂いたので、何かご恩返ししなければ私の気が収まりません!…どうか私の気持ちを汲んで頂き、何か浦島太郎さまがお喜びになることをさせて下さいませ!」
"初号機"が捕獲のためのまき餌を出して浦島太郎を誘う。
「えっ、マジで !? …じゃあさ、俺、一回で良いからキャバクラ行ってみたいんだよね~!友達に内緒で、あいつらすぐつるみたがるからさぁ、特にキ…赤い服の奴が時々うざいんだよなぁ実は ! 」
(何コイツ、簡単に引っ掛かってんじゃん ! …手応え無さすぎ~!)
「まっかして下さい!…キャバクラは超得意分野なんですよ、いえ前居た水族館の館長がそっち方面大好きだったので、港町のキャバクラ前まで館長を背中に乗せてよく運びました… ! 岸が近づくってぇと "霧笛が俺を呼んでるぜ…" なんつって館長が上着を片手で肩に乗っけてねぇ…それが接岸のポーズですよ ! …あの店もイカシてたなぁ、館長が、"よぉ、おいら来たぜ ! " なんてぇと、店の扉からお姉ちゃんたちがゾロゾロって出て来て、"海のおいちゃん、待ってたわよっ" って言ってお出迎えでさぁ ! …イカシてたなぁ、あの頃は、波止場を風がブルースのように吹いていたっけ…」
いつのどのデータで調べたのか、ウンミガメ係官が銀河系の僻地、太陽系の地球の中の僻地、日本ていうエリアの状況をもっともらしく"初号機"の口を通じて言ってみた時、浦島太郎はすでに素早く背中に跨がっていた。
「行こっ !! すぐ行こっ!」
(ホントに手応え無さすぎ~っ!)
半ば呆れながら"初号機"は背中の甲羅に浦島太郎を乗せて、海へと滑るように発進した。
…浜を離れ、少し沖に出ると、浦島太郎が急に思い出したように言った。
「そうだ!…その店ってどの辺? 遠いの? 何ていう店?」
(えっ !? …この段階で今頃その質問 !?…面倒くせ~ ! )
「穴場なんで、遠いです、水平線の向こう側です、店の名は…」
(やべ~ ! 店の名前まで考えてなかったじゃん ! )
「リューグ王宮内の城ってんで、あっ思い出した!"リューグ城"です」
「…竜宮城かぁ ! …高そうな店だなぁ」
「今回は私の奢りなんでご心配無く!思う存分楽しんで下さい!」
「ありがとう、海ガメくん ! …今度友達に紹介して、新しいキャラクターとして仲間にしてあげるよ」
「あ、そこまではどうかお気遣い無く!」
…というところまで会話が続いた時、甲羅後部の極小ハッチがチー!と開き、注射の針みたいなのがツー!と出て、浦島太郎の尻をプツンと刺した。
"初号機"が水上で速度を緩めると、浦島太郎は前にパタンと突っ伏した。
すると甲羅は真ん中から左右にツー!とスライドしてガルウィング状に端が上がり、浦島太郎は"初号機"の躯体内にポタッ!と落ちて収納された。
(はい捕獲完了~!)
甲羅は再度スライドして元の状態に戻り、"初号機"は頭と四肢、シッポを引っ込め、代わりにジェットブローファイヤーを吹き出すと、空中に浮遊した。
そしてブロー角度を変えて回転しながら上昇、さらに上空の大気圏を突き破り、宇宙空間へと消えて行った…。
ようやく著者ノッて来たので続く
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