OSHI☆KATSUのとある休日2

Ray

OSHI☆KATSU将軍の一推し:サバゲ―2


 諸事情によりサバゲー出禁となった一同は、再び召集をかけられた。


将軍:どうだい、見るがいい。俺様の大傑作をっ

セリーヌ:確かに凄いわ、これは

フミヲ:コテージにしてはデカいよな

もえ吉:本当ですね。こんな凄いの、作れるんだ

イヴァン:ここは、無人島なんだよねっ。こんなものが、作れるんだねっ!

将軍:はっはっはっ、恐れいったか皆の衆。まぁ私の手にかかれば、ちょろいもんだがな


 5人は空高くそびえる別荘と言う名の巨大なログハウスを眺めていた。両開きのドアを開放した有頂天の将軍は皆々を中へ招き入れる。


イヴァン:ああ、中も素敵だねぇ! 無人島なんだよねぇ、ここはっ

もえ吉:広いですねぇ

セリーヌ:こんな別荘持ってる人と結婚したい

フミヲ:フハハ、夢は大きい方がいいってな


 ザンッという音がした


フミヲ:おいっ、ハートがひとつ減ったじゃないかっ!

将軍:フフフ。この世界ではな、ハートは腹が満たされていないと回復しない仕様になっているのだよ。そんな君に素晴らしいものを用意してあるんだ


 ぴょんぴょん飛び跳ねながら地下に通じる階段を軽快に下りて行く将軍。それに追随すればアイテムボックスが無数に並べられた部屋が広がっていた。それぞれの箱には絵タグが付けられている。


将軍:牛のマークはビーフ、魚のマークは鮭といった具合に食料をふんだんに貯蔵しているのだよ

もえ吉:何だかサバイバルの王者といった感じですね

イヴァン:凄いねっ、ここは、無人島なんだよねっ

セリーヌ:フルーツもある、スイカとかリンゴとか

フミヲ:女みたいなことを言うなぁ。お前がどんなに背伸びをしようとたまぴよアイドルには到底及ばな……


 ザンッという音がした


フミヲ:おいっ、また減ったぞっ! 殺す気かっ!

将軍:さあそろそろ腹が減った頃じゃないか? みんな好きな食材を好きなだけ取って外へ出るのだ。パーティ会場はそこだからなっ

イヴァン:僕は鶏肉にするよっ。何てったってプロテインが豊富だからねぇ

もえ吉:イヴァンさんストイックですね。バーチャルの中までも

フミヲ:パーティつったら牛ステーキだろ普通

セリーヌ:私ダイエット中だから、魚と野菜にしよっと……


 二秒後にザンッという音がした


フミヲ:おいっ、まだ何も言っていないっ!

将軍:そうそう。みんな、外へ出る前にちょっとリビングへ来てみてくれたまえ


 言われるままリビングと言われる場所に集まると、将軍の前には茶色の箱らしきものがあり、それを押した。


イヴァン:音楽かい? 凄いねっ、ここは、無人島なのにねっ

セリーヌ:凄い、ミュージックボックス?

もえ吉:何だかもうサバイバルではなくリゾートですね

フミヲ:つまり前回とは雲泥の差ってことだな

 

 フッと脳裏に過る初回の惨劇……


将軍:わっはっはっ。そうだろうそうだろう。私の手にかかればサバイバルも立派なバカンスへと変えることができるのだっ。さぁそれでは、パーティを始めようじゃないかっ!


 意気揚々と外へ出る将軍の後に従い、皆は庭先のパーティ会場へ移動した。


セリーヌ:夢だなぁ、お庭でパーティだなんて

フミヲ:ほんと……


 ザンッ


フミヲ:おいっ、マジで死ぬからっ! もう半分くらい減ってるからっ!

将軍:さぁ皆の衆、そこに焚火が並べてあるだろう。そこへ持参の肉を投入するのだっ


 将軍は肉をぽいっと焚火へ放り投げて見せる。


フミヲ:おー、焼けてるぞっ!

セリーヌ:私もやろう


 終始感嘆の声を上げていたイヴァンが大人しいようだ。どうやら手こずっている様子。


もえ吉:イヴァンさん、できますか?


 イヴァンの前、焚火の周りには散布された鶏肉が、ぷかぷかと弾んでいた。


将軍:こうだよ、こう

イヴァン:こうかい?

将軍:この火の中にカーソルを合わせるんだよ、こうやって

イヴァン:こうかい?

将軍:お前まさかだけど、わざとやってるんじゃないだろうな……。

イヴァン:こうかい?

将軍:……。仕方ない、ではこうしてあげよう。


 将軍はイヴァン用焚火のスペースを拡大する。皆は思うままにバーベキューを楽しんだ

 そして……


もえ吉:あっ、暗くなってきましたよ

セリーヌ:ちょっと、またが出るんじゃないの?

フミヲ:やだよ、俺。セリーヌからの痛手がまだ回復し切れてないんだから

セリーヌ:弱った人間から襲えばいいのにね


 またザンッという音


フミヲ:やめろっ、貴様っ! 俺は生贄じゃないっ!

将軍:恐れるな皆の衆。ちゃんとモンスター対策はしてあるからここには入って来れないのさっ。――さぁ、暗くなったから始めようかなぁ、珠玉のメインエベントをっ。諸君、そこで待っていてくれたまえっ


 将軍はそう言い放つと、颯爽と別荘の中へ消えて行った。


セリーヌ:……何か将軍いないと心細いね

フミヲ:俺はむしろゾンビよりお前の方が……


 ザンッ


セリーヌ:次はソードでいくからね

フミヲ:お前、いつの間にそんな物をっ!


 剣を手にしたセリーヌ、フミヲはその刹那に走り出す。死の鬼ごっこがそして始まった。

 すると、ザンッザンッザンッという音が響く。


フミヲ:おいっ、マジやめろっ! マジ死ぬからっ!

セリーヌ:え、私じゃないけど……


 まさか、モンスター? と背筋をゾクッとさせた瞬間だった。「これは、どうすればいいんだい?」という声が聞こえた。

 振り向けば、イヴァンがいた。


もえ吉:イヴァンさん……燃えてるような……

フミヲ:お前、ハデスみたいだぞ

イヴァン:これは、どうすればいいんだい?

セリーヌ:……将軍なら、わかるんじゃない?


 イヴァンはそのままコテージへ向かった。もえ吉は何となく、何となくだが、嫌な予感がした。

 そして、案の定の惨劇が、始まった……


「貴様っ! 何をしているっ!」

と将軍の悲鳴が耳を劈く。


イヴァン:これは、どうすればいいんだい?

将軍:出て行けっ、早くっ、出て行けーっ!


 その怒号は、涙の音がした……


もえ吉:あっ、家が……

セリーヌ:わっ、何あれ?

フミヲ:……キャンプファイヤー?

 

 固唾を呑み見守る三人。

 そして引火した家から飛び出したのは、燃えたイヴァンと、引火した将軍だった……


将軍:湖だ、湖へ向かえーっ!


 水辺へ走る二人。だが時は既に遅かった――。

 水のきわ手前でイヴァンが、その後ぎり手前で将軍がパッと姿を消した。

 その亡骸に転がる無数の焼き鳥……


セリーヌ:これが……メインエベント?


 残された三人のアバターは燃え盛る家へ振り返り、首を上げ呆然とそれを見つめた。

 真っ暗な夜空に天高く上がった炎は、空を真っ赤に焦がしていた。



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OSHI☆KATSUのとある休日2 Ray @RayxNarumiya

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