第16話 マスタードはきつい
「おはよう〜」
教室を開けるとそこにはかなたくんがいた。
「おはようさん」
かなたくんはこちらを見向きもせず勉強に勤しんでいた。
「なんの勉強?」
「数学」
「ふーん」
会話終わりである。いつもとは反応が違うため少し寂しい私は、かなたくんの前の席に座り、勉強を眺めた。
「おもろいか?」
「数学は嫌いだから分かんなーい」
「嘘こけやお前元高専生のくせして」
多分きっとかなたくんは今勉強に行き詰まっているのだろう。
私に対する八つ当たりであり、限りなく悪意があるように聞こえた。
しかし、何か引っかかるようで私は突っ込まなかった。
「嘘じゃない、数学で赤点よ。」
「どうでもええわ。もういい休むわ。」
シャーペンを投げ、私の方に振り向くと、かなたくんは疲れた表情だった。
「八つ当たりするのは良いけどさ、お昼買いに行かん?」
私はかなたくんに助け舟を出した。
するとすんなり受け入れてくれて、近くのコンビニに行くことになった。
「何食べたい?」
「せやなー、とりあえずおにぎりは確定やな」
学生の身分だ、贅沢はできない。
「じゃあ2人でなんか食べようよ」
半分こしよう、という意味で言ったつもりが疲れているかなたくんには伝わらなかったようだった。
「お前アホちゃうか、間接キスやぞ、少しは意識せえ」
「違うよ〜半分こしようって意味!」
「それならええんや、安心や」
何が安心だ、女として見てないくせに。
心で悪態をつきながら、私はコンビニの商品を見ていた。
結局2人で選んだものはサンドイッチ。
いつも通り変わらない2人だった。
三角関数と君 澪凪 @rena-0410
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