頭文字”F”―
gaction9969
一一一九九①①①⑨⑨⑨11
鉄火場。状況の説明はそれくらいでいいかしら。言葉とかが、特段必要な場じゃあ無いしね。
「ぶ、ふぉっふぉっふおおおおッ!! ロン一本場で12300……ですぞ!! いやいや、巷で噂の、というのはその美貌のことでしたかな? もしくはその振り込みっぷりかぁ」
南二局。対面で地黒い巨大な顔面を蠢かしたのは、ごましお角刈りの壮年であったけれど。早くも自分の勝ちを先走り悟ったかのような弛緩した表情してるけどねぇ、まだ早すぎんのよ。
「……」
卓に開いた暗い口の中に牌を押し込み落としていく。何気ない動作。でも私にとっては意味のある作業。全自動卓では積み込みは出来ないって? そうでもないんだなあ……
落とす場所、順番。他家が流し込んだものにも自分のを当てて調整する。いったんは私を「死」に至らしめた牌たち。次に積み上がる時には。
「……」
私を、灰の中から天高くまで飛翔させうる……翼となる。
「くくくく……『
上家でそんな丁寧にのたまってくれるのはまた別のタイプの壮年。もう描写は控える。
「『頭文字F』……その異名は最近よく聞くようになったが……フェニックスの頭文字は『P』ですぞ、お嬢さん、ふえっへっへっへ」
さらに下家まで、三人意識が繋がってんのかよくらいの負の阿吽の呼吸みたいな感じでまくしたててくるけど。うぅぅん……そんな中、漫然と切られた二萬。瞬間、そのやに下がったツラの眼前に突き付けてやる。
「ロン。1300は1900」
私の倒した安手にこりゃ驚いた、みたいな下手で大仰なリアクションをカマしてくれるけど。その嘲笑とかって最高の食前酒なんだよなぁ……
喰らう、前の。
「……」
そう、ここでアガるが最適。自分に親番を持ってくるためだけの、これは作業みたいなもんよ。そして、
「『
私の歌うような美声をかき消すように、わざとらしい金属質のダミ笑い声の三重奏が響く。まあ嘘だけど。でも「Phoenix」って書くなんて普通分からんでしょうよぅ……
「ふぁ、ふぁふぁふぁふぁッ、『
上家壮年。無理くり気の利いたこと言わなくてもいいってば。でも何か分からないけどナイス、そう言っておくわ、最後に。
オーラス。ドラは六萬。私の親。先の仕込みは……うん、
「……」
結実した。緩んだ空気の中で切られた対面の九筒をポン。
「ファッハ!! 随分と焦った仕掛けだぁ、いくら親でもそんな鳴きでは引き寄せられんと思えますぞぉッ!?」
計算のうちよ。ひとつ晒すことで、いやでも過小評価してくれんでしょう?
「……」
……てめえを骨の髄まで灼き尽くす、この炎の翼をよぉ。
案の定、三巡後。あっさり無警戒に出てきたわ。私に幸運を運ぶ鳥……緑色の、鳳凰が。
「ロン、48000」
今宵もまたハコ下から華麗にトップへ飛鳳乗雲。
対面の固まった脂顔を見てたら無性にぼんじりが食べたくなってきたけど。何でなん。
ま、買って帰るも良きかもねぇ。
(了)
頭文字”F”― gaction9969 @gaction9969
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