鳥の王国で焼き鳥焼く

出っぱなし

巨大な焼き鳥?

 ニュージーランドは太平洋に浮かぶ孤島の島国だ。


 最も近いオーストラリア大陸ですら4000km以上離れているため、独自の真価を遂げた動植物が生息している。

 しかしながら、人間によって絶滅または絶滅に瀕している種も少なくない。


 巨鳥ジャイアントモアもまたそんな動物だった。


☆☆☆


 シダの生い茂る原生林、樹齢2000年にも及ぶ『森の父』巨木カウリが天高くそびえ立つ。

 一歩一歩踏みしめる度に、湿った腐葉土の香りが漂う。

 幻想的な深い森の中、巨大な影がうごめく。


 巨鳥ジャイアントモア、体長3.6m、体重230kgにも及ぶ。

 これほどの巨体である故の、草食の飛べない鳥だ。

 危険な哺乳類の居ないこの島では、我が世の春を謳歌していた。


 しかし、ある海岸に一隻のカヌーがたどり着いた時に一変した。

 マオリの到来だ。


 マオリは元々、ポリネシアからやってきた狩猟民族だ。

 何が起こるのか想像に難くない。


Ka mateカ マテka mateカ マテ!

 (私は死ぬ)、( 私は死ぬ)

 ka oraカ オラka oraカ オラ!

 (私は生きる)、( 私は生きる)」


 マオリたちは戦闘モードに入るためにHAKAを踊る。

 そして、士気が高揚し、狩りへと駆け出す。


『クェエエエエ!?』


 初めてマオリたちと遭遇したジャイアントモアの衝撃は如何ほどだったのだろうか?

 おそらく初めて見る生物に恐れ慄いたことだろう。


 わずか数百年の内に、ジャイアントモアは絶滅した。


☆☆☆


 僕は拙作ワインエッセイ『神の血に溺れる』第二部の直前、ニュージーランドでワイン醸造・栽培を学んでいた。

 その時に、ニュージーランド最大の都市オークランドに住む友人に会いに行き、日本食レストランで焼き鳥を食べた。


 焼き鳥をつまみながら、その当時に思いを馳せる。


 マオリたちはジャイアントモアをどのように食したのだろうか?

 肉を木の槍に刺して焚き火で焼き鳥をしたのだろうか?


 各部位を部族全体で焼き鳥にして楽しんでも面白そうだ。


 今の時代なら、タレもある。

 何百人前のボンジリが焼けるのだろうか?

 皮もすごい量になりそうだ。

 砂肝も巨大だろうから噛み切れるだろうか?

 ダチョウよりも首が長いから、せせりもすごそうだ。

 

 さぞかし食べごたえがあったことだろう。


 モアブリュワリーのビールとともに焼き鳥の竹串を重ねていく。

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