第82話 十二月はみんな色々考える


 色々な人達の視点になります。今後主人公とヒロインに色々関わってきます。

 会話の時間は多少前後します。


―――――


 紗耶香と遠藤さんに学食で声を掛けて失敗した青山幸三と白鳥康夫の会話です。


「なあ白鳥、お前の言う通り一条さんと同じ授業に出ているけど、声掛けるチャンス無いんだけど」

「仕方ないじゃないか。遠藤さんと岩崎だっけ、あの男にガードされているし。夏休みも終わったのにいつまで追っかけているの?」


 十二月に入って、

「なあ、白鳥、岩崎が一条さんから遠のいたぜ。何か有ったのかな?」

「さあ、知るはずもないけど」

「何となく近づいてみるか。クリスマス位までには何とかしたい」

「はあ、まあな」

「じゃあ、早速今日から同じ列辺りに座るか」

「そうだな。じゃあ早速今日から。あっ来た。行こうぜ」

 俺達は何気なし風に一条さんと遠藤さんが座っている列の席に着いた。



…………。



岩崎孝雄視点


 あの一条さんの部屋の件以来、まったく口を聞けなくなってしまった。こんな事なら……。

でも俺やり方知らないし、仕方ないか。本当はクリスマス位までにもっと親しくなって二人とは言わないまでもクリパしたかったんだけどな。作戦立てないと。


 まだ十一月も中旬、もう一度丁寧に近づいてみるか。遠藤さんに協力して貰うかな。彼女俺に協力的に見えるし。


 俺は早速、遠藤さんにチャットメールした。

『遠藤さんお話が有るんですけど』

『何?珍しいわね』

『時間取れますか?』

『良いよ。じゃあこの後一コマ空いているけど?』

『お願いします』



…………。



 私遠藤幸子、岩崎君とは一ヶ月近く授業を一緒に受けていない。理由は一条さんが彼を拒否している所為だ。理由は分からなくでもない。まあどう見ても岩崎君が悪い。

会う場所は学内にある外部業者○○バックスが入っているテラス。


「どうしたの岩崎君?」

「実は…。遠藤さんから一条さんにまた一緒に授業や昼食を食べれる様に口聞いてくれませんか?」


「まあストレートに聞いてくるわね。自分で言ったら」

「自分で言えればお願いしません。あの時の事は本当に俺が悪いと思っています。でもここまで拒否られるとは思ってみなかった。何とかして貰えないでしょうか?」


「うーん、相当に難しいんじゃない。今彼女、彼からも拒絶されているみたいだし。原因はあなただから」

「えーっ、本当ですか。どうしよう」


「ねえ、どうしてそこまで一条さんに?」

「まあ、せっかく知合いになったし。俺友達作るの下手で。今でもまだ他に友達と呼べる人いないんです」


「なるほどねえ。しかしどうしたものか…。ちょっと考えさせて。それと彼女にそれとなく聞いてみる。ところでそこまで協力するなら、私へは何かないの?」

「えっ、それって、どういう意味ですか?」


「はあ、あんたねえ。人に頼み事して置いてお礼は無いの。私、君と親友でも幼馴染でもないんだけど」

「すみません。一条さんと前の様に話が出来る様になったら、遠藤さんのお願い一つ聞きます」

「なんでも?」

「出来る範囲で」

「じゃあ、交渉成立ね」


 ふふっ、なんとか一条さんには岩崎君と仲を戻して貰おうかな。お楽しみは後で。



…………。



 私、柏原桃子。

 今、私は水森君と一緒に学食で昼食を取っている。高橋さんは隣のテーブルだ。彼女も入学以来、随分、物理的な距離を詰めて来た。


 最初過敏に反応していた水森君も諦めたのか慣れたのか、最近は彼女の顔を見ても嫌がらない。無視しているという程でもない。まあ復活はあり得ないから特に気にする事も無いけど。


 私は、塾の帰り水森君が上がるのを待って、誘ったけど酷い拒否のされ方をした。流石に堪らなく大泣きしてしまったけど、おかげで彼はそれ以降、お茶や偶には夕飯も付き合ってくれる。


本当はそれより先まで行きたいけど、一条さんの事が有るのか、ガードが凄く固い。でも時間はある。一歩は進んでいるんだから。


「ねえ水森君。今日バイト入っているでしょ」

「入ってますけど」

「君も私も早く上がるよね。帰りちょっとお茶しない?もちろん無理とは言わないけど」


 俺は、バイト先の塾の帰りに、柏原さんに大泣きされて以来、無下に無視するのは止める事にした。


確かに彼女の言う通りだ。同じ学部で同じ授業を受け、同じ塾でバイトしている。その上、同じ高校出身。話も無視するというのは確かに人として失礼だ。


 だから、バイトの帰りのお茶位、偶に夕飯もだけど付き合う事にしている。友人の範囲内としては当たり前の範囲で。


「いいですよ」

「やったあ、じゃあ帰りに」

「分かりました」

 ふふっ、上手くいかないかな。まあゆっくりと。



…………。



 私高橋綾乃。

 この大学に入学してから半年が過ぎた。最初は明人から拒絶されていたけど、今は昼食も隣のテーブルで食べれるまでになっている。顔を合わせても嫌な顔もされなくなった。


 彼と目線が合った時、私が笑顔になっても彼は無関心。でもこれでいい。授業も同じ列の二つ席を空いた位の所で一緒に受ける事が出来ている。


 柏原さんと明人が同じ塾でバイトしているのが分かったのは、九月に入ってから。今日は、塾帰りにお茶をする様だ。でも明人は柏原さんには全く興味を持っていないのが良く分かる。


 だから二人で帰りに何処に寄ろうが気にしていない。それより彼の降りる駅、多分アパートが有る駅は、私が降りる駅の隣だという事が分かった。


 これだけでも凄い幸運だ。だけどそこには鏡さんも居るというのも分かった。彼女は強敵。明人を包む様な包容力がある。それに家はお金持ちのお嬢様。


 十一月に入ってから彼は、苦味虫を潰したよう顔になる時があった。何か考えている様な時だ。もしかしたら一条さんとの仲に変化が有ったのかもしれない。

 

 もう十二月入ったけど、その雰囲気は変わらない。苦味虫を潰したような変な顔はしなくなった。でも心の中に変化があるのが分かる。


 今がチャンスかもしれないが、時間はある。ゆっくりとで良い。取敢えず話ができるまでに持って行ければ。何かいいきっかけが有ればいいんだけど。


―――――

 

 皆さん、クリスマスに向けて努力中です。

 

次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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