第72話 GWはゆっくりと w/紗耶香バージョン
私一条紗耶香、今日から明人のアパートに三日泊ってその後は明人が私のアパートに二日泊まることになっている。
本当は三日泊って欲しかったけど、次の日彼は学校だからとアパートに帰る事になった。
でも六日間ずっと彼と居られる。心のわくわく感が止まらない。今明人のアパートのある最寄りの駅に向かっている。地下鉄でそんなに遠くない事が分かった。これなら普段でも来れそう。
駅に着いて明人に電話した。
『明人、私。今駅に着いたよ。改札にいるね』
『分かった。すぐ行くから待っていて』
『うん、待ってる』
十分もしない内に彼がやって来た。
「明人」
「紗耶香、荷物持つよ」
「ありがとう」
三泊するのでそれなりの荷物になっている。彼にバッグを渡すと手を握った。
「明人とても久しぶりな感じがする」
「そんなことないよ。一週間位じゃないか」
「でも私にとっては長いの」
「ねえ、明人コンビニ寄って行きたい。水を買いたい」
「水なら水道水を冷やしてあるけど」
「うん、ちょっと苦手。料理の時は良いんだけど。そのまま水を飲むのはちょっと」
「そうか。俺もまだ慣れて無いから分かるよ。買っていくか」
紗耶香の大きなバッグを持ちながらコンビニに寄って水を買った後、アパートに帰ろうとすると
「えっ?!」
「どうしたの?」
「今、鏡先輩に似た人が」
「どこ?」
彼女がキョロキョロしているけどそれらしい人はいない。京子さんは実家に少し帰ると言っていたからいるはずないけど。
「おかしいな、気の所為かな」
「どうして鏡先輩の事思い出したの?」
「何となくだけど」
「それより早く行こう。ちょっと重い」
俺に手には紗耶香の大きなバッグと一緒にコンビニで買った二リットルの水のペットボトルを持っている。
私鏡京子。今から実家に帰る為、駅の方に歩いていると明人が一条さんと手を繋いで歩いてくる。
流石にこの時点で私の存在を明かすのは可哀想と思い、通り過ぎるのを待った。二人がコンビニに入ったので直ぐに駅に向かった。
ちょっと見られたかな。でも分からないだろう。
「ここだよ。入って」
「お邪魔します」
私の所と比べると随分狭い感じがした。でも明人と一緒なら構わない。
「そう言えば明人、お昼どうする?」
「今から行くスカイツリーの辺りで食べようかと思っている」
「えーっ、勿体ないよ。冷蔵庫見ていい」
「いいけど」
実際水しか入っていない。
「何も入っていないじゃない。今からスーパーに買いも行かない。私がお昼作ってあげる」
「カップ麺じゃ駄目?」
「駄目!私が一緒に居る時は特に」
結局、それからスーパーに行って、今日の夜の分も買い込んだ。お財布は俺が持った。紗耶香の作ってくれたオムライスを食べた後、午後二時を過ぎてしまったけど、スカイツリーを見に行った。
二人で上を見ている。
「高いね」
「ああ、高いな」
「上に上がる料金高いからやめよ。周りのグッズ店見ようよ」
「そうするか」
流石に親から小遣いを貰っている身分では残念だけどちょっと手が出ない。
でも周りに付随しているビルの中を見て回った。お店だらけに驚いた。
「明人、凄いね。色々なものが売っている」
「うん、凄い」
のんびりと紗耶香と手を繋ぎながらしっかりと見て回った。途中の外のオープンテラスで喉を潤したけど、随分人がいる。
「紗耶香、そろそろ帰ろうか」
「うん」
もう午後六時を回っていた。しかし、紗耶香にプレゼントの一つも買ってあげられなかった。やっぱりバイトするかな。でも当ても無いし。
紗耶香の作ってくれた夕飯はとても美味しかった。
「紗耶香、お風呂の準備してくるからちょっと待っていて」
「うん」
何故か紗耶香が嬉しそうな顔をした。
俺が先に入った後、紗耶香が入った。横にいる彼女から柔らかい匂いがしてくる。
「明人」
彼女が唇を合わせて来た。
翌日は、昼過ぎまでずっとベッドの中にいた。閉じていた目を開けて彼女を見ると
「明人今日はこのままでいい」
「うん、紗耶香が良ければ」
「ふふっ、嬉しいな。じゃあ」
ふふっ、こうしていると安心する。明人と一緒。ずっとこうして居たい。
三日目は上野公園に行ってのんびりと散歩した。曇っていたけど雨は降らなそうだ。
四日目は紗耶香のアパートに移動。見た目しっかりとしたマンションだ。二人で渋谷や表参道を歩いた。
とにかく人が多い。流石に疲れた。
「明人、人が多いね。渋谷のスクランブル交差点って人にぶつからずに歩くの大変だったよ」
「そうだな。俺もちょっと苦手かも。でもGWだから混んでたんじゃないのかな?」
「うーん、どうだろ。分からない。ねえ、明日〇〇9で洋服買いたい。いい?」
「いいよ」
「じゃあ、早く寝ようか。でもちょっとだけ」
「うん」
今日は一回戦で終了した。
翌日は紗耶香の買い物を付き合って、午後三時頃彼女のアパートに戻った。
「ねえ、明人今日も泊まれない?」
「うん、帰るつもりだったから、明日の準備何も用意していない」
「じゃあ、今から取って来れば」
「でも時間がもったいない。その分紗耶香と一緒に居たい」
「ふふっ、そうだね。じゃあ夕飯まで一緒だね」
「うん」
紗耶香のアパートを出たのは午後十時。自分のアパートに戻ったのは午後十一時少し前だった。
風呂に入って寝るかと思っていたところにスマホが震えた。京子さんだ。
「明人、アパートに帰ったの?」
「はい、今から風呂に入ります」
「そう、私はもう入ったわ。入ったらこっちに来ない?」
「流石に勘弁して下さい。疲れてます」
「じゃあ、今からそっちに行くわ」
「いくら近いからって遅すぎますよ。駄目です」
「じゃあ来てよ。会いたいの。六日間も離れていたのよ。来ないなら行くわよ。それにお風呂ならこっちで入ればいいじゃない」
「…分かりました」
これ以上話してもこっちに来られたら終わりだ。行くしかない。全くこの人は!
ふふふっ、一条さんに会っていたのは良いけど最後は私で。
―――――
紗耶香ちゃん、六日間も明人と一緒で良かったね。
しかし京子さん強引ですね。明人どこかで形勢逆転しないと!無理かなあ。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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