第59話 二学期も終わって行く
途中から時間の流れが速くなります。
―――――
俺は学園祭の翌日、デパートのある駅の改札で鏡京子先輩を待った。一応三十分前に来た。
あの人目立ちすぎるからお決まりイベントが発生する確率が高い。
二十分程待った午前九時五十分に彼女は現れた。全くもって目立つ。エスカレータから降りてくる彼女を通行人ほぼ全員が見ている。
「明人、おはよ」
「おはようございます。京子さん」
すっと手を繋いで来た。
「ねえ明人って何センチあるの?」
「身長ですか。入学した時百七十六センチだったんですけどこの前の身体測定で百八十二センチでした」
「大きいわね」
「京子さんも女性の中では大きい方じゃないんですか?」
「私は百六十三センチだから普通かな」
「いや大きいですよ。姉ちゃん百五十八センチですから」
「ねえ、今日は買い物付き合って。それで食事したら。ねっ」
「はい」
もう仕方ないパターンだ。それに紗耶香と中途半端に終わってから二週間とちょっと。俺もしたい気分だ。
デパートで京子さんは秋冬物の洋服を買っていた。東京の方が一杯あると思うんだけど。その後食事をして、今ホテルにいる。
ふふっ、明人今日は積極的。どうしたのかな。私は嬉しいけど。
あっ、ちょっと激しいかも。ま、待って。
………………。
「明人、凄かったね。嬉しい」
彼の胸に顔を埋めながらちょっとあそこを触ってみた。えっ!
「京子さん変なとこ触らないで下さい」
ちょっ、ちょっと待って。え、え、えええーっ。
結局ホテルを出たのは午後七時。六時間半もしていたことになる。
「京子さん大丈夫ですか」
なんか歩き方が少しおかしい。
「だって明人が激しいんだもの」
「京子さんが悪いんです」
「でも嬉しいわ。また二週間後ね」
「はい、送って行きます」
「今はまだいいわ。家もここから近いし」
「分かりました」
別れ際にいきなり頬にキスされた。
家に帰るともう午後八時になっていた。
「ただいま」
「明人遅かったわね」
何故か、また姉ちゃんが玄関に出て来た。
「うんちょっとね」
「紗耶香ちゃんと会ってたの?」
「紗耶香は明日。今日はクラスの仲間」
「そう。ご飯出来てるわよ」
「分かった」
明人がダイニングに行った。今日も石鹸の匂いがしている。京子上手くやっているみたいね。
ふふっ、楽しみだわ。
翌日、俺は九時半少し前に紗耶香の家に行った。出て来たのは彼女のお母さんと紗耶香だ。
「おはようございます」
「おはよ明人」
「おはようございます水森君。上がって」
「失礼します」
玄関から彼女の部屋に上がろうと廊下を歩いていると
「紗耶香、お母さんもう仕事に出かけるから。水森君、紗耶香を宜しくね」
「はい」
なんか意味有り気の言葉だけど。
この子なら紗耶香を幸せにしてくれる。お願いね水森君。
「明人、私の部屋に行こ」
「うん。紗耶香は昨日何していたの?」
「家にずっといた。前の事も有るし。ここにいるのが一番だから」
「そうか、それは正しいな」
「ねえ、明人来たばかりだけど……。この前明人に悪い思いさせちゃったから」
「うん」
「明人、今日は大丈夫だから」
本当は怖い。もしもの事もあるけど。もう明人に委ねるしかない。
「うん」
………………。
良かった。やっぱり明人がいい。頭から足の先まで突き抜ける様なこの感じ。嬉しい。
やっぱり明人の胸に顔を乗せると安心する。
私はベッドの上にある時計をみるともう午後一時になっていた。彼も目が覚めている。
「明人、もう午後一時だよ。お腹空かない」
「空いた」
「ふふっ、なんか作ろうか」
「紗耶香、もう少し」
明人がまたしてくれている。嬉しい。もうあの事は体から消えている。全然明人のが良い。良かった。
俺達は午後三時のちょっと休憩を挟んで午後五時まで楽しんだ。
「明人。もう、もうさすがに」
「うん、俺も」
「ふふっ、でも嬉しい。もう吹っ切れたよ」
「うん、良かった」
彼の唇をもう一度塞いだ。
それからはいつもの日常に戻った。九月末に八月初旬に受けた○○入試オープン。志望校の力試しだが、俺はA判定、紗耶香はB判定のままだった。
もっともあれから二ヶ月も経っている。次は十月末の第二回だ。そこでほぼ決まる。
俺と紗耶香は学校のイベントやテストをこなしながら塾で一生懸命入試対策の勉強した。
この時点では学校の勉強はお付き合い程度。いくら県下有数の進学校でもこの程度では合格は無理だ。
紗耶香が面白い事を言っていた。学校の先生って教科書しか教えないのねって。当たり前だけど。まあ余裕の言葉と受け取っておいた。
京子さんとの週に一回の連絡も二週間に一度のデートも何とかこなしながら十月末の第二回○○入試オープンも受けた。
後は、十二月下旬の結果を待つのみだ。これでほぼ分かる。
いつもの様に教室に入り朝の予鈴が鳴ってすぐに担任の黒岩先生がやって来た。朝の連絡事項を言った後、
「水森君、昼休み職員室に来て下さい」
「はい」
それだけ言うと出て行った。
一限目終わった中休み、俺のとこにやって来た紗耶香が
「明人、何かしたの?」
「分からん。心当たり無い」
「そう、心配だけど」
「まあ、食べ終わったら行ってみる」
昼食を紗耶香と食べた後、一人で職員室に行った。職員室に入ると
「あっ、水森君こっち」
先生が手招きしている。
「黒岩先生、何ですか?」
「水森君、帝都大受けるのよね」
「はい」
「学校推薦があるのよ。共通テストの結果にもよると思うけど君なら心配ないから。出願してみる?」
「学校推薦ですか」
「一般試験よりずっと楽よ。私もそれだから」
「……分かりました。お願いします」
頭から紗耶香と一緒に受験するつもりでいたので、学校推薦については考えていなかった。でもそっちで入れるならその分、紗耶香の勉強を応援できる。
俺は家に帰った後、両親にこの事を話したら驚いていたが、手続きをする事にした。
一次選考の結果は一か月後の十二月初旬に分かった。その二週間後に面接が有ったがこれもパスした。
黒岩先生が
「ふふっ、やっぱりね。流石だわ。後は共通テストでしっかり点数を取れば終わりよ。二月半ばには結果が分かるわ」
「ありがとうございます」
紗耶香にこの事を話すと、明人だけ狡いとまた腕を叩かれた。
塾の結果も出た。俺はA判定は変わらずだが、紗耶香が科目によってはA判定に近いけど総合でB判定だった。
「明人どうしよう」
「大丈夫。紗耶香大学一緒に行こう。まだ大丈夫だよ。これからは出来ている所は維持しながら得点の少ない苦手部分を克服するようにしよう」
「明人…………」
私は、分かっている。明人は基本的に地頭がいい。私は悪いそれだけだ。頑張っても届かないものがある。
頑張って誰でも何でも届くなら、秀才や天才なんて言葉はないはず。出来る人が出来るだけなんだ。もう明人は一次選抜と面接を通っている。明人を信じるしかない。
私柏原桃子。水森君の一次選抜と面接通過は流石だ。私のレベルでは出願すら出来ない。
彼は間違いなくあの大学で決まりだ。そして一条さんも狙っているはず。でも彼女はどうかな。私はA判定。早く受験日が来て欲しい位。
水森君とは学園祭の後、進展はあまりない。一条さん一筋だ。でも大学に行って私と水森君だけだったら……。まだ決着は着いていないわ。
―――――
女の人って怖いです。
ちなみに学校推薦と言っても結構大変です。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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