第57話 学園祭での出来事
午前中紗耶香と見て回った。午後から巡回という事で早めに生徒会室に二人で戻ると
「帰ってきました」
柏原さんが俺達を見て
「二人共そこのお弁当食べて。回るのは午後一時からだから時間はあるわ」
お弁当は豪華だった。松花堂弁当だ。生徒会ってお金あるんだな。そんな事を思いつつ、食べながら周りを見ると結構な数の人がお弁当食べたり話したりしている。部屋への出入りも多い。
「明人、美味しいね」
「ああ、それに豪華だよ」
「私じゃ出来ないな」
「そんなことないよ。紗耶香のお弁当はいつも美味しいよ」
「ふふっ、嬉しいな。そう言ってくれると」
「ちょっと、そこの二人。イチャイチャはここでは我慢してね」
「「…………」」
柏原さんに注意されてしまった。
午後一時になり
「水森君、一条さん。これ腕に着けて」
生徒会巡回の文字が入っている腕章だ。
「まずは一年生から行くわね」
柏原さんが、俺達の前に一人で歩いて、その後ろを二人でついて行く感じだ。
「柏原さん、何を見ればいいんですか?」
「学園祭開催規約に違反していないか確認するだけ。汚くしていたり、肉体的なサービスしていたり、写真撮影を勝手にしていたり、後暴力行為も止めさせないととか色々ね」
「に、肉体的サービス?何ですかそれ?」
「まあ、行けば分かるわ」
一年のクラスを見て回ったが、柏原さんが特に注意する事は無かった。二年の階に行こうとした時、
「ねえ、水森君、私の隣歩いてくれない。なんか可笑しな感じ。昔の家来を従えたお殿様って感じで嫌なんだけど」
「ええっ、でも」
「巡回だから。隣に来て」
手を引かれてしまった。紗耶香がちょっと不機嫌だ。まあ歩くだけだからいいか。
歩いているだけなんだが、変な視線を感じる。俺達が通り過ぎた後、
「ねえ、水森君って、柏原さんに乗り換えたの?」
「そうじゃない。だって後ろにいる人って。あれだよね」
「まあ、当然でしょ」
声が耳に入って来て後ろを振り向くと誰が話していたか分からない。
「水森君、行こう」
何となくもやもやしているが仕方ない。最初のクラスに入ろうとすると
「あっ、いた。一条さん」
俺達も一緒に振り返ると同じクラスの子がやって来た。
「ねえ、お願い。一人体調悪くて帰っちゃったの。それに二人抜けられているから人のやりくりが厳しくって。ねえ、手伝って。お願い」
「えっ、でも」
「一条さん、行ってあげて。こっちは二人で構わないから」
「えっ、でも」
「一条さんお願い。直ぐ来て」
「紗耶香仕方ないよ」
これは行くしかなさそうだ。
「分かった。明人がそう言うなら」
ふふっ、一条さんが行ったわ。これで水森君と二人。
「水森君、巡回続けましょう」
「これが入るんですか?」
「当然よ」
さっき入った二Cがやっているお化け屋敷だ。
中に入るといきなり柏原さんが俺の腕に自分の腕を巻き付けて来た。
「ど、どういうつもりですか?」
「うん、万が一怖かった時、巡回人が声出す訳に行かないでしょ。だからこうして我慢出来る様に」
「意味分からないんですけど」
「後ろが詰まっているわ。早く行きましょう」
確かに怖そうなやつが出て来た時は、俺の腕にギュッと彼女の柔らかい部分を付けて来た。柏原さん結構大きい。
やっとお化け屋敷から出て来たけどまだ柏原さんがしがみついている。
「柏原さん、もう終わりましたよ」
「うん、ちょっと怖さの余韻にひたっているの♡」
「早く離して下さい」
「もう仕方ないな」
その後は歩いている時も急に手を掴んできたり、体を寄せてきたりと散々な時間だった。
巡回も終わり生徒会室に戻ると
「もう良いですよね」
「うん、今日はありがとう。明日は午前中だから宜しくね」
ふふふっ、楽しかったな。しっかりとマーキング出来たかしら。
そして二日目。
朝学校のある駅を降りて、紗耶香と一緒に歩いていると
「ねえ、明人。今日午前中だけで良いから模擬店手伝って言われて。外部の人も来るから昨日より大変だからって。どうしよう」
「俺が代われればいいんだけどな」
「私じゃあ、柏原さんと一緒に回れない。明人今日も午後から巡回?」
「いや、午前中だけだ」
「じゃあ、午後からは二人きりになれるね」
「そうだな、午前中は我慢するか」
「うん」
午前中の巡回は外を回ることになった。柏原生徒会長の放送で学園祭が開始されると俺は生徒会室に行った。紗耶香は午前前半グループんの人達と外の模擬店へ行った。
昨日の様な事が無いだろうと思いながら生徒会室で柏原さんが放送室から戻って来るのを待っていると
「えっ?!」
生徒会室に現れたのはなんと
「みんな元気?」
「あっ、鏡先輩。お久しぶりです」
急に生徒会室が騒がしくなった。その後直ぐに柏原さんが入って来た。
「桃子、上手くやっている?」
「はい、今のところは。水森君も協力してくれています」
「そう、良かったわね」
しっかりと化粧して圧倒的な雰囲気を醸し出している。俺の方をチラッと見た後で
「水森君、元気そうね。後で少しお話でもしましょうか」
なんて人だ。この前スマホで話したばかりだ。今日来た目的は分かっている。
「鏡先輩、水森君は午前中私と巡回ですけど、午後は空いてますよ」
「あれ水森君、一条さんは?」
「彼女は自分のクラスの模擬店の手伝いをしています」
京子が俺の方を見て微笑んでいる。何考えているんだ。
「そう、じゃあ午前中は頑張ってね二人共。私はゆっくりさせてもらうわ」
「はい」
そう言うと鏡先輩は周りの生徒に声を掛け始めた。圧倒的な存在感で周りの子達が緊張している。男子は口を開けて彼女を見ている奴もいる。口閉じろ!
―――――
鏡さん、柏原さん。何考えているんですか。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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