第46話 嵐が吹き去った


 私は今、一条紗耶香と一緒に歩いている。方向は高校だ。彼女には単なる散歩と言っているので気にしていない様だ。


「一条さん、春休みはどうしていたんですか。私は先程までいた図書館で毎日勉強していました。今日も同じです」

「そうなの。私は明人と一緒に駅の反対側にある予備校で春期講習を受けていたわ」

 何でそんな事聞くの?


「そうなんですか。大学はどちらに行くの?」

「まあそれは高橋さんは関係ない事でしょ。言わないわ」

 少しカチンときた。


 学校の側に来た。

「一条さん、まだこの季節寒いわね。さっき行ったばかりなのだけど、学校のトイレ借りる」

「でも開いてないわよ」

「大丈夫です。裏門が開いてます。先生達もそこから出入りしている。ごめん早く行きたい」

「分かった。私も行こうかな」


 寒いと近くなる。さっき図書館で高橋さんと行っておけばよかった。仕方なく裏門から一番近い体育館のトイレに行く事にした。


 おトイレから出て来ると、あれっ高橋さん何処行ったの?まだ出て無いのかな?

ここで待っていよ。


「一条さん」

「えっ?白石さん。なんでここに」

「ちょっと来て貰えません?」

「なんですか。嫌です」


「時間は取られません。あんたが大人しくしていれば」

「えっ?」


 強引に腕を掴まれた。必死に腕を離そうと思ったが、力が違い過ぎる。あっという間に体育館の中の道具がある部屋に連れ込まれた。


「ど、どういう事。何するの?」


 私は一番悪い事を想像したが、


「一条さん。俺は別にあんたを襲うとかそんな事はしない。でも協力して欲しい」

「な、何を?」


「全部洋服脱いでくれ。寒くて悪いけど」

「何言っているの。馬鹿じゃないの。そんな事する訳ないでしょ。本当は私を襲うつもりなんでしょ」

「だからしないって」

「じゃあなんでそんな事させるの?」


「面倒臭いな。がたがた言うと全部引きちぎるぞ」

「ひっ!」

「早く脱げよ」


 白石の顔が冗談でない事を物語っている。


 仕方なく私がコートから脱ぎ始めた。なるべくゆっくり脱げば高橋さんが見つけてくれるかもしれない。


「ちなみに大声出しても誰も来ないぞ。諦めろ。早く脱げ」

「そんな事言ったって、冬は厚着だから」

「じゃあ、俺が脱がしてやろうか」

「……いいです」



 仕方なくシャツとスカートまでになった。ゆっくりとシャツに手を掛けると白石は興味ないように私を見ている。


 下着だけになった。寒い。

「寒いだろうけど早く全部脱げ」

「で、でも」

「いいから。俺に脱がせてもらいたいのか」


 涙が出て来た。なんでこんな事に。仕方なくブラを取った。隠せるのは腕だけ。でもまだパンティが残っている。

 なるべくかがみこむ様にしてパンティも取った。


「こっちを向け!」

 恐ろしい声で怒鳴られた。


「えっ!ど、どうして」

 白石が私の裸をビデオで取っている。

「止めて!」

「動くな。犯してやろうか」

「いや!」

「じゃあ、ちゃんと立て」


 白石が私の体の周りを撮る様に歩いている。それも色々な角度から。思い切り足は閉じているけど。


「それどうするんですか?」

「何もしない。お前が水森明人に近付かなければ」

「えっ、どういう事?」

「いいか今以降、水森と連絡をするな。学校に行っても話すな。あいつを無視しろ。いいなあいつが話しかけても嫌がる様に逃げろ。絶対だぞ。もし約束破ればこれをネットに流す。お前が陰であいつと会っても俺が学校にいるから騙せないぞ」

「そ、そんな」

「もう一度言う。水森が近づいて来ても断れ。絶対付き合うな。いいな」

「…………」


「もういい。服を着ろ。後ろ向いていいぞ。俺に見られたくないだろう」

 しかし、良い体だな。水森の野郎良い思いしやがって。


 私は後ろを向いてパンティを履こうとした時、いきなり後ろから羽交い絞めにされて壁に押し付けられた。


「きゃっ!」

「悪い、お前が悪い。こんなに凄い体我慢出来ねえ」

 

しっかりと腰を後ろから押さえら引かれた。


「止めてー!」


「駄目、駄目。止めて。お願いだから。止めてー!」


 明人以外の人に大切な所を。酷いよ。なんでこんな事に。

明人しか知らなかったのに。



「悪かったな。ちゃんと外には出したから大丈夫だ。水森もこんな良い体を抱いていたなんてな。羨ましいぜ。

 後な、今日はしてしまったけど。これから誘うなんてしないから安心しろ。頼まれただけだ。悪かったな。じゃあな。気を付けて帰れよ」


 頼まれただけ!どういう事?


 白石は勝手に出て行ってしまった。

 私は急いで服を着ると周りを見た。確かに床があいつのもので汚れている。本当に大丈夫だったんだろうか。ちょっと心配だ。


道具室から出ると



「あっ、一条さん。探したよなんでこんな所に。学校中探しちゃったよ。そう言えばいま、白石君が出て行ったけど。えっ、もしかして」


 高橋さんが私の顔を見た。私は我慢出来なくなってうずくまって大泣きをしてしまった。



 ごめんね。一条さん。あなたが悪いのよ。私の明人を取ろうとするから。




「一条さん、大丈夫?帰ろ」

「う、うん」

「今日の事は誰にも言わないから」

「…………」



 駅で別れた。高橋さんと私は反対方向だ。でも明人に会うな。なんてどういう事なの?

でもあんな写真ばらまかれたら、私はとても生きていけない。裸の姿を全て色々な角度から取られてしまった。どうすればいいの明人。


 私は急いで家に帰ると直ぐにお風呂で熱いシャワーを浴びた。あいつが触った所やあそこも一生懸命洗い流した。涙が止まらない。悔しい。


 自分の部屋にいるとスマホが震えた。明人からだ。でも出たら。あいつには分からないよね。


『明人!』

『紗耶香どうしたの?』

『会いたい、直ぐに会いたい』

『でも、もう遅いし』

『じゃあ、明日朝早く来て。お願い明人』

『分かった』



 翌日、俺は朝八時半には紗耶香の家に来ていた。


「紗耶香、じゃあお母さん出かけるね」

「はーい」


 一階からドアが閉まる音がすると

「明人、お願い一杯抱いて。思い切り一杯。お願い」

「どうしたんだ」

「お願い」


 これが最後かもしれない。


………………。


 午後四時までずっと明人と裸で触れあった。思いきり何回もして貰った。

そして駅の喫茶店で少し話して、家まで送って貰った。


 明人は明るく

「紗耶香、また明日。駅でね」

「うん、待っている」

 これが最後の言葉。


 明人が家から離れていく。我慢して笑顔作っていたけど、彼の姿が見えなくなった後、思い切り涙が出て来た。


さよなら明人。


―――――


 白石も許せないけど、綾乃今回は本当にいけません。


 さて、ここの話までが概ねあらすじに書いて有った流れです。次回以降は、まだ少しあらすじ部分は出て来ますが、新展開となります。 

 紗耶香、綾乃、鏡京子そして柏原さんとまだまだ明人を取り巻く人達は彼に接していきます。お楽しみに。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る