第43話 受けてはならない条件
私高橋綾乃は、明人、一条さんが、私とは別のホームに立って楽しそうに会話している姿を見ていた。
本当はあそこには私が居たはず。明人は私の願いを叶えてくれた。友達としてなら元に戻れるかもしれない。
私はあそこには立てない。でもあの人がいなければ。
うちのある駅に着いて改札を出た。
「高橋さん」
「えっ!石原さん。なんでここに?」
「そんな事は良いわ。話を聞いてくれない。ここではなんだから喫茶店でも入ろうよ」
駅で待ち伏せするなんてどうせ碌な話じゃない。
「お断りします。家に帰りたいので」
「ねえ、高橋さん。今回はお願いがあるだけなのよ。ここであなたをどうしようというつもりは無いの。話だけでも聞いてくれないかな?」
しつこいけど、ここは地元。あまりここで言い合いしても目立つだけだ。仕方ない。
「話を聞くだけですよ。あまり時間無いので」
「いいわ。そんなに時間かからないから」
ふっ、やっと話に乗ってくれた。後はあいつ任せだ。
喫茶店に入り、二人で紅茶を注文した。
「話って何ですか?」
「それは俺から言うよ。幸奈ここまででいい」
「白石!石原さんこれはどういう事?」
「ごめんなさいね高橋さん。話したいのは白石君なの」
私は白石にウィンクするとそのまま喫茶店を出た。
高橋さんが俺の顔を汚物でも見る様な目で見ている。
「高橋さん、お願いがある。実はある人に会って欲しいんだ」
「会って欲しい人?お断りします。私は帰ります」
「頼む」
テーブルに頭を付けてお辞儀をした。音で周りの人がこちらを見ている。
「止めて下さい。何ですかいきなり」
「頼む。その人に会ってくれたら何でも言う事を聞くから」
ここで引き下がる訳にはいかない。あんな事ばらされた俺は拘置所行きだ。
「何でも?」
「ああ何でも聞く」
私の心の底に潜んでいたものが鎌首を持ち上げた。
「じゃあ、…………」
「何!真面目にそんな事言っているのか?」
「何でも言う事を聞くって言ったよね」
「確かに言ったが」
「じゃあ、実行してくれたら、その人に会ってもいいわ」
何の話か知らないけど聞くぐらいなら良いだろう。
「分かった。いつ会ってくれる」
「そっちが実行した事を見届けたらよ。こっちだけ実行して、約束反故なんて嫌ですから」
「分かった。終わったらどうやって連絡すればいい?」
「私があなたに連絡するわ」
「……仕方ない」
白石は、話が終わった後喫茶店を出て帰った。外で石原さんが待っているのは分かっていた。
もうすぐ明人が私の側に戻って来てくれる。その為にも学年末テストは明人と同じかそれ以上でないと。あの人(一条紗耶香)の点数なんて気にしている暇はない。
三月最初の月曜から木曜までの四日間学年末テスト週間に入る。そして金曜日は卒業式。テストの結果は火曜日に分かる。
残り一週間と少し。全力でやるしかない
学年末テストが終わった当日
「明人、テスト終わったね。明日は卒業式だし。図書室開けないからデートしよう」
「うん良いよ」
「うん?」
なんだろう。誰かに見られている感じがする。後ろを見ても分からない。
「どうしたの?」
「ううん何でもない。誰かに見られている気がして」
「紗耶香は可愛いからな」
そんなんじゃない。なんだろう?
そして翌火曜日、学年末テストの成績順位表が張り出された。
「えっ!」
一位水森明人
高橋綾乃
三位一条紗耶香
高橋さんが満点で明人と同じ一位。あの人(高橋綾乃)だけには負けたくなかったのに。
「紗耶香。惜しかったな。後四点だよ」
「…………」
「紗耶香」
「あっ。ごめんなさい」
「高橋さんを気にしたのか。良いじゃないか。結果は結果だ。教室に戻ろう」
「うん」
ふふっ、あの人(一条紗耶香)に明人はこれ以上近づけさせない。
教室に戻ると
「高橋さん、凄いじゃない満点なんて。今度勉強教えてよ」
「あっ、武田さん。いいですよ喜んで」
武田さんには本当にお世話になっている。
「高橋さん、私にも教えて」
「はい」
少しクラスの人達の私を見る目が変わった。これも武田さんのお陰だ。
「紗耶香、機嫌直せ。結果だから仕方ないだろう」
「でも、悔しい」
「またがんばろう」
「明人、また満点かよ。やっぱりテスト勉強お前とすれば良かったよ」
「正則、お前は今泉さんとすればいいだろう。成績だった悪くないじゃないか」
「明人に言われてもな」
「ねえ、水森君、一条さんだけじゃなくて私達にも教えてよ」
「あっ、柏原さん。てか生徒会長さんか」
「そう、そう。私達にも教えて」
「いや、だからそういうのは苦手だから。ごめん」
「えーっ。一条さんだけずるいよ」
「そんな事言われても」
「ふふっ、またモテ男水森が女子にいい寄られているぜ」
「良いよな。頭いい奴は」
「お前も頭良くなれば?」
「そりゃ、無理だ」
「そこの男子。水森君を弄らないで」
「「そうよ、そうよ」」
「「スミマセン」」
そしてあっという間にホワイトデーがやって来た。
―――――
綾乃、悪魔の囁きが耳に届きましたか。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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