第42話 バレンタインデーの後で
綾乃からバレンタインチョコを貰った俺は教室に入るなり紗耶香に声を掛けられた。
「明人遅かったじゃない。何それ?」
「…ああこれか、他のクラスの女の子に貰ったんだ」
嘘はついていない。
「誰?」
「うーん、昔会ったらしいんだけど、良く覚えてないんだ」
「何それ。それより……」
午後の授業の予鈴が鳴ってしまった。
「じゃあ、また後で」
仕方ない。紗耶香の家で正直に話すか。
放課後、家に帰りながら
「明人、私の家に寄るの覚えているわよね」
「もちろんだよ」
紗耶香の家に着くとまだ誰も居なかった。
「まだご両親帰ってないの?」
「うん、お母さんは後一時間位かな。早く私の部屋に行こう」
「うん」
二階にある紗耶香の部屋に行くといきなり抱き着かれた。思い切り俺の背中に手を回し
「ちょっ、ちょっとどうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもない!今日は酷いよ明人。みんなからチョコ貰って」
「で、でもあの状況じゃ断れないだろう」
「でもー。明人は私だけだよ。やだよー」
「分かった」
「どう分かったの?」
「どうって」
紗耶香がいきなり唇を合せて来た。少しの間そうしていると
「ねえ、私もストレス溜まったよ。一時間しかないよ」
参ったな。俺も嫌いじゃないけど。こんなにするのはちょっと。なんか紗耶香もこれ好きになったのかな。でも仕方ないか。
………………。
明人に抱かれていると心が穏やかになる。嬉しい。明人もっと。
「紗耶香、下で音がしたよ」
「えっ、私どうしたの?」
「どうしたのって」
「そ、そっか」
また俺に抱き着いて来た。紗耶香が俺の首に手を回して頬を俺の頬に着けてくる。お互い何も着けていない。
「明人、嫌だよ。私を捨てないでね」
「当たり前だろ。何言っているんだ」
ちょっと頭に来て強く言ってしまった。
「ごめん。でも不安なの。明人もてるし」
「俺は紗耶香しか見ていない。俺は紗耶香が俺を捨てないか心配しているのに」
「私は大丈夫だよ。明人にしかもてないから」
そう言って唇を塞いで来た。
「さっ、起きようか」
「…………全く」
「ふふふっ」
結局、その後、紗耶香が作ってくれたチョコを貰って食べて、三十分位して家に帰った。
「ただいま」
「お帰り明人」
何故か姉ちゃんが玄関に来た。
「あっ、やっぱり。チョコいっぱい持っているね。お姉ちゃんにも分けて」
なんだそれが目的か。
「良いけど、一応中見てから。贈ってくれた人に悪いから」
「もちろん」
一応部屋で全部開けた。何が書いて有るか分からないから。
柏原さんは、好きです。これからも宜しくねと書いて有った。まあ新生徒会長らしい。
鏡先輩は、大好きよ水森君。私の大学に来て一緒に楽しいキャンパスライフ過ごそう。良く分からん。
綾乃は、明人好きです。知合った時から今でもそしてこれからも。友達で良いからお話だけでも出来ると嬉しい。どうしようかな俺の心はまだ整理付いていない。
クラスの他の子からは、好きです。一条さんがいるけど私とも付き合って。それは無理。友達なら良いけど。
一応一個ずつ食べた。みんな美味しかった。綾乃のチョコは特に美味しかった。
その後はダイニングに持って行くと姉ちゃんがほとんど持って行った。大丈夫ダイエットしなくていいの?最近胸にしか栄養が行ってない気がするけど。だれか良い人いるのかな?
次の日には紗耶香はご機嫌が戻った様だ。朝駅のホームで会うとニコニコしていた。
「紗耶香、学年末テストまで後二週間。テスト対策がんばろうか」
「うん、あの人(高橋綾乃)に絶対負けたくない。もうすぐ三年生も卒業だね。いよいよ私達も三年生か」
「紗耶香、春休みになったら塾に申し込みに行くよ。入塾テストは問題ないだろうけど」
「えっ、塾入るのにテスト有るの?」
「当然」
「…………」
場面はBクラスです。
「ねえ、高橋さん。今度放課後に話でもしない?」
「石原さん、結構です。学年末テストも近いのでそんな余裕ありません」
「そんな事言わないでさあ」
珍しく、石原さんが高橋さんに絡んでいる、また何か考えているんだろうか。仕方ない。ここまで乗ったんだ。
「高橋さん。私も一緒にテスト勉強させてくれない」
「あっ武田さん。良いですね。一緒にやりましょうか」
助かった。
「えっ、武田さん。どうして?」
「別に、学年末テストだから少しは頑張らないとって思って。高橋さん頭いいし」
「あっ、武田さん一緒なら私も良いかな」
武田さんがいつも話している女の子が乗って来た。都合がいい。
「良いですよ。みんなでやりましょうか。まずは図書室で復習からしましょう」
「「はい」」
ちっ、不味いな。武田さんのグループはそれなりの力がある。この子にぶつかっても仕方ないか。他の方法にしよう。
石原さんが離れて行った。武田さんが小さくウィンクしている。私はニコッと返した。
図書室で皆で勉強した後、下駄箱で履き替えていると
「ねえ、高橋さん。ちょっといいかな。今日の勉強終わったんでしょ」
「いえ、これから家でもします」
「少しで良いからさ」
強引に腕を掴まれた。武田さん達はもういない。不味い。
「いやです」
「ちょっと人が下手に出ていれば、調子に乗らないでよ。ちょっと来て」
「いやです!」
あっ、明人だ。一条さんも居るけど。
図書室の鍵を返して紗耶香と下駄箱に向かうと高橋さんと石原さんが揉めていた。
何か有るのか。
「明人、助けて」
「えっ?!」
俺は一瞬紗耶香の顔を見ると頷いている。
「どうした高橋さん?」
「水森君。あんたには関係ないわ。あなたを裏切った元カノの事なんかどうでもいいでしょう」
「そうは行かないよ。高橋さんは俺の友達だ」
「「「えっ!」」」
明人どういう事?
「とにかく腕を離せよ。嫌がっているだろう」
「ふんっ」
石原さんが去って行った。
「あき、水森君ありがとう。一条さん誤解しないで。友達って言ってくれたのは私を助ける為だから。じゃあさよなら」
「…………」
綾乃が一人で出て行った。
「明人」
「大丈夫だ。高橋さんの言った通りだから」
「分かっているけど……」
二人が後ろを歩いているのが分かる。本当は一緒に歩きたかったけど。でも嬉しい。明人が友達と言ってくれた。あの時の都合だろうけど。ちょっと進んだかな。
でも…………。一条さんがいなければ。
―――――
今日もうーんとしか言えない。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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