第36話 二学期末テスト


「明人、これ教えて」

「どれ。ああこれは設問を先に読んでから文章読んだ方がいいよ」


「明人、これは?」

「方程式が決まっている。それに数値を当てはめれば解ける」


 今俺達は俺の部屋で来週月曜から始まる二学期末テスト対策をしていた。この時点で俺は二年生の教科書全て予習を終わっている。復習は前から三回、後ろから二回している。


 後は先生の好みを考えれば大体テスト内容は見えてくる。紗耶香は流石にそこまでは行かないが予習と復習は図書室と家で出来るので、テスト自体は問題ないと思っている。


 今、二人でやっているのは、先生毎に想定している問題だ。十一教科あるのでそれなりの量はある。


ふと机の上にある時計を見るともう十二時半を過ぎていた。

「紗耶香、もうお昼だ。ご飯にしようか。今日は母さんが作ってくれている」

「えーっ、また作ってくれたの。何か明人のお母さんに申し訳ないな。偶には私が作らないといけないんだけど」

「紗耶香は勉強に来ているから良いんだよ。ちょっと待っててね」


 彼が一階に行った後直ぐに戻って来た。

「もう出来ているって。行こう。お腹空いた」


「済みません。明人のお母様。本当は私が作らないといけない位ですけど」

「気にしないで紗耶香ちゃん。それに私を呼ぶ時はお母さんでいいわ。もう家族みたいなものでしょ」

「えっ!」

 紗耶香が何故か顔を赤くして下を向いている。


「家も隣駅だし、毎日来てもいいのよ」

「母さん、余計な事言わない。紗耶香が困っているじゃないか」

「明人、困ってないよ私」

 更に耳まで赤くしてこっちを見ている。


「まあ、まあ。さて私は買い物行って来るから。食べたらキッチンに下げておけばいいわ」

「分かった。じゃあ食べようか」

「うん」


 今日の昼食は消化を気にしてか小エビと野菜のチャーハンと野菜スープだ。

「お母さんのご飯いつも美味しいね。私もこんなにおいしく出来る様になるかな」

「紗耶香の作ってくれるお弁当はとっても美味しいから。充分だよ」

「そう言ってくれると嬉しい」


 

食事後、母さんに甘えて食器はキッチンのシンクの中入れて水に浸しておいた。

暖かい紅茶をティーバッグで入れて二階の俺の部屋に行くと

「明人、今回は十位以内に入りたい。出来れば五位以内」

「大丈夫だよ。紗耶香の今の学力なら」



 それから俺達は午後三時半の休憩を挟んで午後六時までみっちり勉強した。


「紗耶香、送る」

「うん」


「母さん、紗耶香送って来るね」

「分かったわ。紗耶香ちゃん明日も来るんでしょ」

「いえ、明日は我が家で勉強します。毎回ご迷惑ばかりで申し訳ないので」

「そんな事ないわよ。遠慮しないでね」

「ありがとうございます」



 駅に行く道すがら

「明人のお母さん優しいな」

「紗耶香のお母さんだって優しいじゃないか」

「まあ、そうだけど。なんか親近感が湧くって言うか」 

「まあ、うちの母さんはあの通りだから」

「だから羨ましい。私のお母さんも優しい。でもちょっと違う。だから羨ましい」

「紗耶香、それって無い物ねだりだろ」

「そっかな。そうかもね」


あっという間に最寄りの駅に着いた。紗耶香の家のある駅は隣。近いと少しでも長く一緒にいれるから嬉しい。


 紗耶香の家の側まで行く。周りはもうこの季節だと真っ暗だ。

「明人」

 俺の背中に手を回して目を閉じた。

 少しの間、唇を合わせていると


ガチャ。あっ!


ガチャ。

玄関のドアがまた閉じた。


「見られちゃったよ。紗耶香のお母さんに」

「いいわよ。もう明人との仲知っているし。何か聞かれたら、そうよぐらいに言っておく」

「でも明日来た時辛い」

「いいの、いいの。じゃあね明人。明日はここに午前十時ね」

「分かった」



 紗耶香のお母さんにしっかりとキスしている所を見られてしまった。参ったなあ。明日どんな顔して行けばいいんだ。



 翌日、紗耶香の家に行ったが、玄関に出て来たお母さんがやたらニコニコしているのがかえって怖かったけど。



 月曜から始まった二学期末テスト。金曜まで実施される。その日終わったらすぐに次の日のテスト対策だ。この時点で答え合わせは意味が無い。


そして翌週半ばに成績順位表が張り出された。


一位水森明人 

二位高橋綾乃

三位一条紗耶香


 なんてことだ。俺は満点だったが、綾乃が五点差とは。紗耶香は俺から七点差だ。

「明人、満点だよ。やったね」

「紗耶香も七点差だ。次は二人で満点取ろう」

「うん」


 悔しい。今度は明人を抜いて見たかったのに。満点なんて。それに何あの子。あんなに明人にべったりして。


「高橋さん、凄いじゃない。戻って来たね」

「あっ、武田さん。まだまだです」

「ふふっ、でも良いんじゃない。急がない事よ」


 俺達の後ろで忘れる事の無い声がしているが、無視をした。もう俺には全く関係ない人だ。でも二位か。油断できないな。



教室に戻りながら

「明人次は絶対頑張る。あの人(高橋さん)には負けないわ」

「紗耶香、関係ない事だよ」

「でも…………」



 教室に戻ると

「明人凄いな。満点かよ。テスト対策やっぱりお前とやれば良かった」

「正則、お前は今泉さんとやれ」

「だから、二人一緒で」

「まったく」



ちょっと柏原桃子視点。

 水森君凄いわ。満点なんて。私も頑張ったけど、十位以下。比較にならない。何とかして彼の近くに行きたい。

 今は、一条さんがべったりだけど、いつまでもそうはさせないわ。


………………。


ちょっと鏡京子視点

 私は二年生の二学期末テストの成績順位表が張り出されている掲示板に来ている。周りの子は二年生。少し遠くで見ていた。

 凄いわ。満点なんて。私だって取った事ない。最高だわ。テスト終わったし、そろそろね。

 でもあの一条紗耶香という子、ほんと水森君にべったりね。考えないと。



―――――


次期生徒会長二年生柏原桃子、現生徒会長三年生鏡京子。なにやら不穏な言葉が。



次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。




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