第35話 紗耶香の心配事その二


 図書室も平穏?に閉めた帰り道


「ねえ、明人。さっき生徒会長から呼ばれた件なんだけど。明人を生徒会に入れたいけど、私からも勧めて欲しいって言われて」

「えっ、紗耶香にまでその事言っているの。頭に来た!」

 俺だけに言えば良い事を紗耶香まで巻き込むなんて。絶対に断ってやる。


「明人ちょっと冷静になろう。でも私も絶対いや。生徒会長の精神的な支援なんて。なんで明人がしなければいけないのか分からない」


「そうだな。なんで俺なのか、他の人だって良いはずだろう。確かに色々俺が良い理由を言っていたけど。なんか良く分からない」


「ねえ、明人この後私の家に来ない?」

「どうしたの?それに帰ったらご両親もいるし」

「いいの。何か不安な気持ちになってしまって」

「そうか。いいよ」



 私は、明人を自分の部屋に入れた。お母さんは帰って来ているけどお父さんはまだ帰ってきていない。


「明人ちょっとだけで良いからこうさせて」


 紗耶香が抱き着いて来た。俺の顔をじっと見ている。目を閉じると更に強く抱き絞めて来た。


 俺も紗耶香の背中に手を回した。もう一度目を開けてじっと俺の顔を見るとまた目を閉じた。仕方ないか。唇を合わせた。静かに合わせているだけ。


 明人に抱いて欲しい。でも一階にお母さんがいる。唇を合わせていると我慢出来なくなる。どうしよう。


 あっ、明人が離れた。

「紗耶香、ここまでにしよ。これ以上キスしていると我慢出来なくなる。それは今度にしよう」

「そうだよね。明後日土曜日だからいい?」

「ああ、そうしようか」



「ねえ、明人。生徒会の事なんだけど。……鏡生徒会長の言っている事って、どういう意味なのかな?本当に生徒の事を思っているのかな?」

「紗耶香、俺達には関係ないよ。生徒会には頑張って貰えばいいじゃなかな」

「そうだよね」


 私はもう一度明人に唇を合すと

「今日はありがとう。少し落ち着いた。明後日しよ」

「うん」




 翌日俺は鏡生徒会長に正式に断りを入れる為、一限目の後の中休みに柏原さんに昼休み生徒会長と会いたいと伝えて貰った。



 昼休み、紗耶香と昼食後、一人で生徒会室に行った。柏原さんが一緒に行くと言っていたが、もう三回目一人で行けると言ってエスコートを断ったらとても残念がっていたけど。




生徒会室のドアを一応ノックした後、ドアを開けた。

「失礼します。鏡生徒会長いますか?」


今日は生徒会長以外にも人がいた。お弁当食べていたり、何かPC触っている人もいる。


「あっ、水森君。良く来てくれたわ。そこに座って」

「いえ、簡単な事なので。俺会長の精神面での支援お断りします。それだけです。では」


「あっ、ちょっ、ちょっと待って。断るにしてもとにかく座ってよ」

「何でですか?」

「いいから」


 周りの人は全く俺を無視した様に自分の事をしている。流石生徒会。



 今日鏡生徒会長は俺の隣に座った。サッと離れる。


「ねえ、良く考えて。生徒会役員をやるってとても水森君にとってメリットあるわ」

「どんなですか?」


「例えば、大学を受ける時の内申点が大幅に向上する」

「関係ありません。今のままでいいです」


「生徒会が生徒の為により頑張れるわ」

「自分達だけで頑張って下さい」


「私達にとっても嬉しいわ」

「意味分かりません」


「ねえ、お願いだから。もう一度考えて、ねっ!」

「……何で俺な何ですか?」

「水森君だから」

「意味分かりません。帰ります」


「ちょっ、ちょっと待って。水森君生徒会入ってくれたら、私の事好きにしていいわ」

「はあ?益々意味分かりません」


「それほど私には生徒会が大切なの。この学校が大切なの。お願い!」

「……。もう一度聞きます。どうして俺なんですか?そこまで言うなら何か理由あるでしょう」

「水森君だから」


「はあ?」

「お願い!」


 何となくなし崩しになった。生徒会の仕事は何もしない。生徒会長が俺を必要とする時は紗耶香も一緒に居る事。

 図書室の作業を優先するなど好き勝手言ってやったけど、全部それでいいと言われて、本当に仕方なく引き受けた。でも何すればいいのか分からない。



その日の帰り道

「紗耶香、そういう訳で結局押し付けられた」

「えーっ、いやだよ。明人がそんな事するなんて」

「俺も。だから生徒会長と会う時は必ず紗耶香が一緒に居る事が条件。生徒会長と二人では絶対にしないから」

「……。分かった。絶対二人だけなんて駄目だからね」


「紗耶香、明日の土曜日も良いけど日曜日も会おうか。何かとても紗耶香と一緒に居たくなった」

「うん、そうしよう」




土曜日は直接紗耶香の家に来た。

「早く上がって」

「うん、ご両親は?」

「お母さんは六時まで帰ってこないから」

「分かった」



 明人に抱かれていると最近の不安が抜けていく。もっと……。


………………。



 明人が私の横で目を閉じている。ふふっ、嬉しい。誰にも渡さない。明人は私のもの。私は明人のもの。もう一度唇にキスをした。思い切り。


 またして貰っている。思い切り突き抜ける感じが堪らない。癖になりそう。

明日もして貰える。嬉しいな。



………………。



 ちょっと戻って金曜日の放課後、生徒会室にて


「京子、何とかなったわね」

「ふふっ、まだこれからよ。桃ちゃんも水森君の事好きみたいだけど、彼女はそこまで積極的には出ないわ。来年三月卒業するまで時間は一杯ある。それまでに私に振向かせればいいだけ」

「事を急いては仕損じるって事だけは忘れないでね。京子は積極的だから。まあ、陰ながら応援するわ」

「もちろん、ここまで来れば大丈夫よ。協力頼むわね」


「でもなんでそこまで水森君を?」

「ふふっ、私の将来計画の為よ」

「…………」


―――――


 将来計画?分からん。


次回をお楽しみに

 

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