第31話 約束事
体育祭翌日の放課後、
昨日よりは機嫌が良くなった紗耶香は、俺の手を握りながら
「明人、約束だよ。今日は私の家に来て」
「分かった」
何度も紗耶香を送って来たから駅からの道は覚えた。家の前に来ると
「紗耶香、両親は?」
「うん、いないよ。なぜ?」
「いや、良いのかなと思って」
「もう、いない時に来ているじゃない。さっ、入ろ」
玄関を上がり、二階の紗耶香の部屋に連れて行かれた。
「その辺に座っていて。着替えるから」
「えっ、ちょっ、ちょっと待った。俺一度部屋出るから」
「ふふっ、じゃあ、明人脱がせてくれる?」
「勘弁してくれ」
ドアを開けてさっと部屋の外に出た。まったく、紗耶香が制服を脱いでいる姿を見たら理性が持たないよ。
少しして
「制服脱いだから、入っていいよ」
なんか変な言い方だな。
「着ているよね?」
「もちろん」
大丈夫だと思いドアを開けると
「うっ!」
思い切り目を瞑った。水色の上下だ。
「着てないじゃないか」
「着てるでしょ。下着」
「いや、待て待て普通着るっていうのは…」
いきなり柔らかい物が俺の体にくっ付いて来た。
「明人、目を開けて」
「でも」
「開けて!昨日の明人が腕や体に感じた事、上書きしたい。でないと嫌だ!」
思い切り背中を抱き絞めて来た。
「いや、あれは…」
唇を塞がれた。
………………。
気持ちいい。私の体であの人から感じた事を全て消すんだ。
「明人、もっと」
「紗耶香、我慢できない」
「大丈夫、来て」
「はあ、はあ、はぁ。明人凄かったぁ」
「だって、紗耶香があんな格好するから」
「ふふふっ、でももう私だけになった?」
「うん、なった」
「良かった。じゃあもう一度」
今日でまだ四回目だけど、すっかり慣れてしまった。そんなものなのかな。明人はまだ寝ている。時間はまだ午後四時。両親が帰って来るのは午後六時過ぎ。まだ時間ある。
彼の胸の上に頬を乗せていると凄く安心する。ずっとこうして居たい。あっ、明人が目を開けた。
「紗耶香、寝ちゃった」
「ふふっ、頑張ったもんね」
「ああ、そうだな」
「ねえ、明人ずっと一緒に居たい。ずーっとずーっと」
「俺もだ」
「明人一緒の大学行こう。そしてその後も」
「うん、いいよ」
「じゃあ、私もっと勉強しないとね。宜しく」
「分かった」
唇を塞がれた。
「紗耶香、もう午後五時過ぎたよ。大丈夫?両親帰って来るんじゃない?」
「もうちょっといいよ」
「そうか」
結局、午後五時半まで紗耶香の家にいた。
「明人送って行く」
「いいよ、帰り暗くなるし」
「じゃあ、駅の側の喫茶店に行こう。それで私を送って来て」
「うーん、良く分からないけどいいよ」
俺は、紗耶香を家まで送って行った後、自宅に戻った。
「ただいま」
「お帰り明人。遅かったわね」
「うん、ちょっとね」
俺は部屋で部屋着に着替えるとダイニングにいる姉ちゃんに
「姉ちゃん、うちの学校の鏡京子って知っている?」
「ああ、京子ちゃん。良く知っているわよ。今あの子生徒会長でしょ」
「良く知っているね」
「まあね、ところで京子ちゃんがどうかしたの?」
「どんな人?」
「うーん、物事に積極的で、周りの面倒見が良くて、頭がいい。それに超が付くほどの美人かな」
「そうか」
「どうしたの?」
「いやなんでもない」
「そう言えば彼女、明人が私の弟だって知っているわよ。あんたが高校に入って来て一学期終わった位からかな、あんたの事聞いていた」
「えっ?」
「まあ、特に他意はないと思うけど」
そういう事か、だからあんな言葉を。ずっとこのままでもいいよ。でもなあ俺なんか、大体接点無いし。
そう言えば紗耶香の二つ目ってなんだ。今日ので二つで良かったのかな。あの後何も言っていなかったし。
翌日朝、いつもの様に紗耶香と駅で待合せ、一緒に電車に乗った。
「明人、来週から四日間中間だね。一緒に勉強しよ」
「いいよ」
「じゃあ、明人の家でいい」
「うーん、図書室開けるから、その後になる。遅くなるよ」
「じゃあ、私の家は?」
「悪いよ、それに両親いるし」
「でも一緒にやりたい。二つ目のお願い」
「えっ!」
これに使うの?
「分かった、じゃあ、俺の家で二時間。でも紗耶香、家に帰るの午後七時半位になるよ」
「いいの。友達の家で勉強するって言えば問題ない」
「分かった」
放課後、図書室を開けると常連さん以外に中間テストの為かいつもより人数が多い。綾乃も窓側のテーブルで勉強している。
綾乃の事何も知らなければ、可愛い女の子だ。彼女の周りには男子生徒が一杯いた。
下校の予鈴が鳴るとみんな図書室から出て行く。常連さんも出て行った後、綾乃が僕の顔をじっと見ながら出て行った。
あいつ俺を裏切って白石と付き合ったはずなのに最近一人で居る事が多い。別れたとは言っていたけど。どうでもいい。俺には関係ない事だ。
紗耶香と一緒に学校を出ると直接俺の家に来た。
「ただいま」
「お帰りなさい明人、いらっしゃい紗耶香ちゃん。明人の勉強見てやってね」
「いえいえ、私が明人君に教えて貰うんです」
「紗耶香ちゃんお世辞言わなくていいから。さっ上がって」
何か勘違いされている。
二学期中間テスト、範囲は広いが量が少ない。まずは復習から始める事にした。一日二教科片付ければ土日は対策に充てられる。
真面目に二時間行ったが、やっぱり量的にきつい。
「紗耶香、家に帰ったら残りの分もやっといて。分からない所有ったら連絡して良いから」
「うん、ありがとう。そうする」
俺は、紗耶香を家まで送った後、自分の家に戻って食事をした後、直ぐに自分の部屋に戻った。
俺自身は復習をさっと終わらせるとテストに出そうな所をピックアップした。土日に紗耶香と一緒にやる為だ。
こうして金曜までの勉強が終わり、土曜日の午後になった。
「明人、今日は私の家でやる?」
「でも」
なんかこの前みたいになりそうだし。
「大丈夫。中間終わって成績出たらでいいから」
「どういう意味?」
「そういう意味」
そういう事か。
そして中間テストが始まった。
―――――
紗耶香ちゃん結果出ると良いですね。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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