第26話 学園祭は楽しい人と寂しい人がいる
今日は学園祭、開始まで後二十分だ。
「明人どうかな?」
紗耶香がメイド服を俺に見せている。髪の毛をツインテールにして白いカチューシャ、膝まである服にエプロンをしたようなデザイン。
洋服と同じ黒の靴下を膝上まで上げている。とっても似合っている。気になるのは紗耶香の大きな胸が強調されている様な感じだ。
「うん、とっても可愛いよ」
「えへへ、そ、そうかな」
顔を赤くしながら微笑んでいる。めちゃくちゃ可愛い。他の女の子も同じような格好だ。
俺を含め男子は、白のシャツに黒の蝶ネクタイ。黒のスラックスに同じ色のソムリエエプロンを着ている。まあ、色気ないけど。
正則は担当時間が違う。今泉さんと見て回るようだ。
「さあ、みんな後開始まで五分だ。気合入れて楽しむぞー」
「「「おーっ」」」
学園祭のクラス担当委員が皆に気合を入れている。中々盛り上がっている感じ。
五分後、生徒会長の校内放送によって始まった。
今日は学校内の生徒達だけだ。まあ午前中組の俺達にはそんなに忙しくはないはず…………。なんで?
開始して三十分。もう受付に待ち行列が出来ている。圧倒的に男子が多い。まあ分かるけど。
新しいお客様(生徒)が来ると空いている人が注文を取りに行く。当然女の子目当てな訳で、男子が行くとあの人(女子)に注文したいと駄々をこねている奴もいた。分かるよその気持ち。
注文を受けては黒いカーテンで仕切られた厨房にその注文を言っていく。ちらりと紗耶香を見ると男子の視線が集まっている。
彼女のスタイルでは注目が集まるのは分かるが、俺の彼女なんだぞとつい心の中で怒鳴ってしまう気分になる。早く交代の時間になって欲しい。
十二時のチャイムが鳴った。午前中二時間。午後は二グループに分けてそれぞれ二時間ずつ担当する予定だ。
俺と紗耶香は1日目は午前の二時間、二日目は午後最初の二時間を担当する予定。それ以外は見ていられる。
紗耶香はまだ注文を取っている。厨房の方に戻って来ると
「紗耶香、上がれるか?」
「うん、今のお客様に注文の品を出したら終わり」
「そうか、待ってる」
「うん」
紗耶香が注文の品を届けた所で、俺達は着替えの教室に入った。
俺が着替え終わって廊下で待っていると紗耶香が出て来た。普通に夏の制服だ。つい胸に目が行ってしまった。
「どうしたの明人、私の胸を見て?」
「い、いや」
「ふふっ、いいよ。いつでも」
「……。ま、まあ今度」
「ほんと!」
これは不味い変な方向に話が言っている。
「そうだ。紗耶香お腹空かないか。模擬店に行こう」
「ふふふっ、そうだね」
明人とは夏休み明ける直前のあの時とそれから一回だけ。そろそろしたいんだけど。学園祭終わってからかな。
俺達は外に出ている模擬店を回ってたこ焼きや焼きそばを食べる事にした。
校舎を出ると直ぐに模擬店が並んでいる。
「明人、焼きそばやっている」
紗耶香が俺の手を引いて行く。周りの子達の視線が痛い。思い切り目立つ。
あっ、Bクラスの焼きそば店だ。まあいいか。
「焼きそば二つ下さい」
「はいーっ。二つ注文頂きました!」
中々元気のいい男子だ。みんな盛り上がってい………る。焼いている鉄板の後ろの台の向こうで綾乃が具材を切っていた。こっちは見ていない。
「はい、二つですね」
「ありがとう」
俺はお金を払ってから再度チラッと綾乃を見るとこっちは向いてなかった。良かった。こんな所で目を合せたくない。
焼きそばを買った後、自販機で水とジュースを一本ずつ買った俺達は、校舎を背にちょうど陽の当たるベンチが空いたのを見つけて座った。
「はいこれ。明人、高橋さん見てたでしょ。もう見ないで。明人の彼女は私だよ。もうあんな人忘れて」
「ごめん。つい」
「さっ食べよ」
「ああ」
焼きそばを食べながら
「明人、何処を見ようか?」
「そうだな、一年生の階から二年生、三年生と見ていくか。面白そうだったら入ればいいし」
「うん、そうしよう」
さっき、私の担当時間になって直ぐに明人が一条さんと焼きそばを買いに来た。本当は彼を見ていたかったけど、今それをやるとかえって嫌われるかもしれない。目を合せない様に具材を切るのに集中しよ。今は仕方ない。
「高橋さん、時間だ。もう上がっていいよ」
「はい」
今は二時ちょうど、食べていないから、自分のグループの焼きそばを貰うと自販機でジュースを買って空いているベンチに座った。全然楽しくない。去年は明人がいたから楽しかったのに。
焼きそばを一人で食べながら学園祭の催し物が決まった時の事を思い出してしまった。
グループ分けする事になり、私は机の並び順で決める程度に思っていたら学園祭のクラス担当委員が、好きな人達同士でグループ作っていいですよと言った。
えっと思って、私は直ぐに白石君に声を掛けたけど無視された。仕方なく前に一緒に話していた石原さん達にも声掛けたけど
「ごめんなさい高橋さん。もう六人、決まちゃって」
見ると石原さん、笠原さん、白石君、それに石原さん達と良く話していた女子一人と男子二人が私の方を見ている。少し軽蔑した様な目だ。
後の人達は私が普段話さない人達。ここで私の性格が出てしまった。知らない人に話せない。
あっという間にグループが決まってしまってどうしようかと自分の席にいると
「高橋さん、俺達のグループ一人足らないんだ。入ってよ」
顔を上げると名前の知らない男子が立っていた。
「あっ、はい」
その後、グループ内で役割を決めるのだけど、仕切り役みたいな女子武田さんが
「高橋さん、人前で焼いたり、受付や金銭の受け渡し苦手でしょ。具材切って。その位出来るよね」
本当は焼きそばを焼くくらいの事は出来るんだけど。
「はい、分かりました」
その後は、五人が楽しそうに誰が何の役をやるとか言って盛り上がっている。私は完全に蚊帳の外だ。何となく寂しくなった。周りを見ると皆楽しそうだ。
そんな事を思い出しながら
あーっ、明日もこれするのか。やだなー。午前中も少し見たけどもう少し見て回ろうかな。それとも教室で本でも読んでようかな。
その時だった。
「ねえ、君一人?ここに座っていいかな」
「あっ、良いですけど」
誰だろう。三年生の様な感じだけど。
「あのちょっと聞いて良いかな?」
私が警戒心剥き出しで相手の顔を見ると
「あっ、そんな顔しないで下さい。でもそれじゃ無理そうだね。俺も一人だから一緒に回れればと思ったんだけど」
「……済みません。友達と一緒に回る予定です」
「そっか、そうだよね。じゃあまた」
図書室で告白された子だって聞いて話しかけたけど、確かに結構可愛い。確か同じ学年の男子が彼氏だと聞いているが、何故今一人なんだ?
まあ、いいか明日もある。
―――――
綾乃に話しかけた人誰ですかね?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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