第23話 二学期の前に
俺は紗耶香とプールに行って何か心の中がスッキリした気分になった。まさに気分転換って奴だ。
次の日急いで問題集を買いに行った。紗耶香は誘っていない。行って買って直ぐに帰るつもりだったから。
途中、綾乃と白石を見かけたが、もう何も気にならなくなっていた。関係ない事だ。
模試までもう一週間を切っている。朝起きて午前六時には勉強を始めた。七時半位に朝食を取った後、直ぐに勉強、食事を除いては午後十時まで集中的に勉強した。そして早く寝る。睡眠は重要だ。
食事中、母さんや父さんが無理しない様にと言ってくれているが、まだまだだ。
そして迎えた模試当日。俺には初めての事だ。模試の申し込みは学校のクラス担任南沢先生を通して学校申し込みで行っている。
一日みっちりの模試、三教科八科目目一杯だ。
そして模試が終わった。流石に疲れた。
家に帰ると
「ただいま。疲れた~」
「お帰り明人」
「取敢えず横になる」
自分の部屋で一時間程寝てしまったが集中して寝たらしく、だいぶ頭がスッキリしている。
食事をしてお風呂に入ってから紗耶香に電話した。
「紗耶香?」
「あっ、私。明人、模試終わったの?」
「うん」
「明日会わない?」
「うん良いけど」
夏休みも残り少ない。少し位ならいいかも。
「じゃあ、私の家の駅に午前十時でどうかな?」
「いいよ」
隣の駅だから午前十時なら結構寝てられる。
次の日、俺は午前九時五十分に駅の改札来た。もう紗耶香が待っている。ジーンズにTシャツとさっぱりしている。今度はもうすぐ早く来ないと。
「紗耶香ごめん、待った」
「ううん、私も今来た所」
本当は嬉しくて二十分前に来たんだけど。
「私の家に行かない?」
「えっ、いいの?」
「うん」
紗耶香の家に行きながら
「模試はどうだった?」
「量が多くて大変だったよ。でも全科目最後まで答えられたし、まあまあかな。全国の他の高二生の中でどの位の位置にいるか分かるからこれからの勉強方法に役立てる」
「はぁ、私には明人の頭の中が分からないから横でみているだけ」
「別にいいよ。趣味みたいなもんだから」
「勉強が趣味?凄すぎ。でも運動も少しやった方が良いよ。血流良くなるし」
「なるほど聞いておく」
「それって何もしませんって答えているのと同じだね」
「そっか」
紗耶香は手厳しいな。
彼女の家に着くと
「上がって、家族は誰もいないから」
「えっ、いいの?」
「いいの、いいの」
家の中に入るのは初めてだった。大きな玄関があり、まっすぐ廊下がある。少し歩くと階段が有った。
「ここ上がるの」
二階に上がり、左に折れるとドアが三つ有った。
「広いね」
「部屋数だけね」
紗耶香がドアを開けるとやはり女の子の匂いが。ちょっと色々な意味で堪られない。
「そこのローテーブルの辺りに座っていて。冷たい物持ってくるから」
タタタと階段を降りる音がした。
くるりと部屋の中を見ると机、本棚、ベッド、洋服ダンス。等身大の鏡、それに窓が有った。俺の部屋の二倍くらい有りそうだ。
紗耶香が一階から上がって来ると
「これで良いかな?」
冷たい炭酸ジュースだ。
「うん、嬉しいよ」
一飲みしていると
「ねえ、ビデオでも見る。ゲームとか無いし」
「いいよ」
「じゃあ、これどうかな」
選んだのは、若手俳優と女優の恋愛ものだ。あまり分からないけど
「いいよ」
「じゃあ、見よっか」
三十分位すると紗耶香が俺の側に寄って来た。
「ねえ、勉強ばかりだと……。だから」
えっ、ゆっくりと俺の手を掴んで来た。
「でも………」
「まだ忘れられないの?」
「そんな事ないけど」
「私が上書きしてあげる」
Tシャツを思い切って脱いだ。可愛い薄いピンクのブラが大きな胸を隠していた。
「お、おい」
「恥ずかしいよ。初めてだし。でも明人にあげる。明人ならいいよ」
顔を赤くしながら唇を合わせて来た。
……………………。
なにこの感覚。初めて……。
聞いていたけどやっぱり結構痛かった。でもその前にとても優しくしてくれた。そしてその後も。
少し眠ってしまった。明人が私の横で寝ている。前髪を少し上げると大きな目がしっかり閉じていた。
あげちゃった。随分悩んだ。良いのかなって。でもこの人は優しいし、友達思いで、人の悪口も言わない。頭が良すぎるのはおまけかな。
だから掛けてみようと思った。それに初恋じゃないから実るよね。多分………。
あっ、目を開けて来た。キスしちゃお。
「うん?あっ。ごめん」
「何がごめんなの?」
「だって、しちゃった」
「ふふっ、して貰ったの。いいんだよ明人」
明人の大きな胸に私の体を乗せて
「こうしていると落ち着くね。不思議」
「そうか」
「うん、それに筋肉隆々って好きじゃないし」
「あの紗耶香、した後なんだけど…。思い切り出しちゃて」
「ふふっ、今日は大丈夫な日。思い切りして」
明人が唇を合わせて来た。あっ、彼の手が…………。
またして貰ちゃった。でもさっきとはずいぶん違った感覚。これがそうなのか。
紗耶香が目を閉じている。してしまったけど本当に良かったのかな。大きな目、可愛い唇、大きな胸それに見合わない細い体。
綾乃とは全然違う。比較しちゃいけないよな。紗耶香に悪い。俺は紗耶香の顔の上から彼女をじっと見た。
裏切らないよね。紗耶香。
「あっ、明人」
「紗耶香、お腹空かない?」
「うん、少し空いた。何か作ろうか?」
「えっ、悪いよ」
「ふふっ、明人の胃袋も掴んじゃおうかな」
「えっ!」
その後作ってくれたオムライスはとても美味しかった。本当に胃袋掴まれそうだ。
「ねえ、明人明日も会ってくれる?」
「良いけど」
「じゃあ、遊園地行きたい」
「いいよ」
ダイニングに有った時計を見るともう午後三時だった。随分いたんだ。
「明人近くに公園が有る。まだ日差し強いけど散歩しようか?」
「大丈夫?さっきから歩きにくそうだけど」
「ちょっとだけだから大丈夫」
二人でゆっくり歩きながら公園にやって来た。まだ家族連れが多く居る。
「ここ座ろうか」
木造りのベンチが有った。
「明人、二学期からだけど。もうみんなの前で明人って呼んでいいよね」
「良いけど」
「実はちょっと気にしていたんだ。五月頃明人にあんな事が有って、まだ三ヶ月半位なのに私が明人に言い寄ったりしたら周りの人から変な風に見られないかなと思って」
「俺は気にしないよ。それに正則達だって知っているし。他のクラスメイトだって仲がいいし。変な事言う人いないよ」
「そうかな。でも明人がそう言ってくれるなら安心かな?」
「大丈夫だよ」
「ねえ、お昼お弁当作って行っていい?明人と一緒にお昼食べたい」
「うん、それは助かる。材料費出すよ」
「そんな事気にしないで。後…」
「えっ、まだあるの?」
「うん、私図書委員になろうかと思って。そうすれば公然と明人の側にいれるし、一緒に帰れる」
「うん良いけど。俺も嬉しい」
「やったー。後ね」
「へっ、まだあるの?」
「うん、これ最後。一緒に学校行きたい。私の所の駅のホームで待合わせしよ」
「…………分かった」
「私重い?」
「いや軽かったけど」
「そっちじゃない!」
「冗談、いいよ」
「もう」
ぷりぷりと顔を赤くして怒っているのがとても可愛い。
もう四時半になった。さっきまでいた家族もほとんどいない。
「帰ろうか」
「うん、明日の遊園地楽しみにしている」
―――――
良かったね紗耶香ちゃん。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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