第22話 勉強とデート


 俺達は予定通り七月中に宿題を終わらせた。最後の日は正則の家だ。


「明人、今年はどうするうだ?」

「勉強かな」

「はっ?勉強。いやいくら何でも夏休みだぞ」

「うん、ちょっと勉強したくてさ」

「だって一条さんとは会わないのか」

「紗耶香とは合間に会うよ」

「「さ、紗耶香?!」」


「昨日バレちゃったみたいだから。二人の前では名前呼びしてって明人に頼んだの」

「そ、そうか。学校でもそうするのか?」

「ああ、二学期になったらな」

「そうか、お前がそう言うならいいか。まあ俺達は去年と同じだ。実家には薫も連れて行く予定だけど」

 なぜか今泉さんが顔を赤くしている。


「ふーん、そういう事か。まあいいんじゃないか」

「高校卒業するまでは黙っといてくれよ」

「分かってる」


「じゃあな明人。また二学期に」

「ああ、二学期に」


俺と紗耶香は正則の家を後にすると


「ねえ明人、中島君と今泉さんって」

「そういう事。あいつらは中学からの付き合いで両方の親公認だ。話も進んだんだろう」

「そっか。何か羨ましいね」

「そうか、俺はまだいいけど」

「そうなの?」

「…………」

 そうだよね。明人明るくなったけど、心の中の傷はそうそう癒えないしね。私が癒せればいいんだけど。




 夏休みの宿題も終わり、俺達は家に戻ろうとしていたが、

「明人、明日からどうする?」

「どうするって?」

「言ったじゃない。勉強の合間に会おうって」

「うん、そうだね。でも全統の準備もしたいし。一週間位はちょっと集中したい。あっでも明日問題集買いに来るから一緒に行く?」

「うん、行く」

「じゃあ、明日紗耶香んとこの駅に午前十時で良いかな?」

「うん」




 次の日、俺達はデパートのある駅に来ていた。今日は綾乃と白石はいない。見たくも無いし当たり前か。

 デパートの中にある大きな本屋で問題集を買ってから駅前にある〇ックに来ていた。


「凄いね明人。そんなに勉強して」

「うん、なんか気持ちが凄く中途半端なんだ。だから自分が納得いくまでやってみたい」

「私にはその気持ち分からないけど、頑張って。後もし……明人の気持ちの整理がついてら」


「うん、自分でも紗耶香には悪いと思っている。でも今はまだ怖いんだ。君に悪い所なんかない。俺にはもったいない位だよ。でも今の気持ちじゃ申し訳ない」

「明人。待っているから」


 明人の気持ちは分かる。流石に同じ経験はないけど、心が辛いんだなって事は。


 あれっ、高橋さんと白石だ。あっ、明人も見つけてしまった。

 凄い顔して見ている。


「明人!見ないで。見るなら私を見て」


「…………ありがとう。そうだな。君を見る様にする」

「さっ、明人帰ろう。勉強に集中して。もし私が必要ならいつでも声を掛けて」

「うん」



 それから俺は二週間、朝六時から夜十時まで集中して問題集を解いた。まだやり足りない。なんか心が渇いている。明日また問題集買ってこよう。


 午後十時半寝る前だった。スマホが震えた。紗耶香からだ。


「明人、私」

「一週間って言って二週間たったけど?」

 そう言えばそんな事言っていた。


「ごめん集中していて」

「ねえ、いきなりだけど」

「なに?」

「明日プールに行かない。外は思い切り暑いよ。この二週間エアコンの中だったんでしょ。脳もリフレッシュさせないと」

 確かに紗耶香の言う通りだ。


「良いよ」

「えっ、本当にいいの?」

「だって今紗耶香が誘ったでしょ」

 冗談で言ったつもりなのに。チャンス!


「じゃあ、明日私のところの駅に午前八時でどうかな?」

「分かった」



 いきなりのプールだ。どうせ問題集を買いに行こうと思っていたし、紗耶香の言う通りかもしれない。



 次の日

「あら、明人出かけるの?」

「うん、プールへ行って来る」

「中島君達と一緒?」

「紗耶香だけ」

「えっ、そうなの。まあ気を付けて行ってらっしゃい」

 前の子の事も有ったし大丈夫かしら。



 

 俺は、紗耶香の家の最寄り駅で待っていると改札の方に明るい花柄のワンピースに白のかかと付サンダルを履いて大きなバッグを持った紗耶香が早足で歩いて来た。


「はぁはぁ、間に合った」

「ははっ、大丈夫だよ。紗耶香来るまでずっと待っているから」

 

 彼女はにこっとすると

「行こっか」

「うん」




 遊園地のあるプールに来ている。紗耶香が更衣室から出て来た。

えっ、オレンジ色のビキニっぽい感じの水着だ。胸の大きさがはっきり分かる。ラッシュガードは手に持っている。


「えへへ、どうかな?」

「と、とっても似合っているよ」

「そうか、じゃあ行こう」



 はっきり言って思い切り目立つ。いつも洋服着ているから分からなかったけど、これほどスタイルが良いとは思わなかった。


「明人、そんなに見つめないで。恥ずかしいから」

「あっ、うん」

「でも、明人次第よ」

 どういう意味だろう。



 その後は、流れるプールで一緒に遊び、ウォータースライダーを四回もやってその度に彼女の大きな胸が俺の背中に押し当てられ、大きなトロピカルジュースを二人で飲んだ。



もう、陽が傾き始めた。

「紗耶香、帰ろうか」

「うん、もっと一緒に居たいけど仕方ないね」


 帰りの電車はずっと紗耶香が俺の肩に顔を寄せて眠っていた。疲れたのかな?


 ふふっ、明人にずっとくっ付いて居られる。今はこれでいいんだ。



紗耶香の家の有る駅に着くと

「明人、家まで送って」

「……良いけど」



 紗耶香の家は駅から五分位の場所に有った。俺の家より全然大きい。玄関に着くと

「明人、今日はいきなり我儘言ってごめんね。でもとても楽しかった」

「ううん、俺も滅茶楽しかったから」

「じゃあ、勉強頑張って。後、模試終わったら絶対電話して。その後会いたい」

「分かった」



 自分の家の前だというのにいきなり抱き着いて来た。大きな胸の圧迫感が凄い。

そのままにして置いてあげると

「今はこれで良いわ。じゃあまた。連絡待っている」


 そう言って家の中に入って行った。


―――――


 そうですか。なるほど。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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