第21話 それぞれの夏休み


 明日から夏休みだ。今日で一学期も終わり。色々有ったけど最近は少し吹っ切れて来た。正則や一条さんそれにクラスの仲間のお陰だ。


「明人、夏休みの宿題だけど」

「正則、今年は今泉さんとやれ」

「そんな事言うなよ。なっ、一緒にやろうぜ」

「でも」

「俺んちで全部やってもいいぞ」

「それは悪いよ」

「じゃあ、去年と同じに半分ずつ」

「分かった」

 正則には綾乃の件で世話になっている。無下に断る訳にはいかないな。あっ、一条さんがこっちを見ている。仕方ない。


俺は正則の耳に顔を近づけると

「正則、俺ともう一人いるんだが」

「はっ?」

「明日な。午前十時に俺の家のある駅で良いか」

「オーケー」

 誰だ明人ともう一人って?




 今日は図書室は開けない。授業が終わるとそのまま下駄箱に行った。一条さんが待っている。


俺が校舎を出ると

「水森君、帰ろうか」

「良いけど」

 夏休みは色々約束させられたけど、あまり目立ちたくない。何も話さずに駅に行く。



 私は下駄箱を出ると、あっ明人だ。直ぐに近づこうと思ったら、誰またあの子がいる。でも何も話していない。そこまで親しくないのかな。まだ大丈夫かも。


「綾乃、帰るぞ」

「あっ、克己。うん帰ろ」

 

 この女まだ水森とよりを戻せると思っているのか。とんだ奴だな。もうそろそろ時期かな。飽きて来たし。


「ねえ、克己。夏休みはどうするの。ずっと会ってくれるでしょ」

「ああ、いいよ。会う前に連絡くれ。一応色々都合あるから」

「そうだよね。克己忙しいからね」



「ねえ、行こう」

「今日はちょっと用事あるんだ」

「えーっ!それないよ」

「綾乃偶には真直ぐ帰れ。いつもじゃないか」

「だって、克己と……」

 はじめはこんな子だとは思わなかったけど、とんだビッチだな。顔と正反対だ。


「まあ、そういう訳だ。じゃあな」



克己、行っちゃった。どうしようかな。仕方ない家に帰ろう。こんな時あの子さえいなければ明人と一緒にいれたかもしれないのに。

そうだ夏休みの宿題どうするんだろう。でも連絡取れないか。




 ぞくっ。なんだこの背中走った悪寒は?

「どうしたの水森君?」

「いや、何でもない」

「ねえ、明日からの事だけど。さっき言ってたけど中島君達も一緒なの?」

「ああ、去年も一緒だった。あいつには色々世話になったし、一緒にやるしかない」

「じゃあ、場所は?」

「俺の所に前半五日、後半五日が正則の家だ。ちなみに正則の彼女の今泉さんも一緒」

「えっ、そうなの?」

「明日、午前十時に俺んとこの駅の改札待合せ。一条さんも来て」

「分かった」





 次の日、朝十時前に俺は改札でみんなを待った。


「おはよ水森君」

「おはよう一条さん。他の人は?」

「まだ来ていない」

 一瞬去年の事が過ったがぎりぎり十時に二人はやって来た。


「間に合ったな。明人おはよ。えっ?!一条さん?どういう事?」

「夏休みの宿題一緒にやる事になっているんだ」

「それはここにいるから分かるけど」

「まあいいじゃないか、早く俺んち行こうぜ」

「ああ」


「中島君、今泉さん、おはようございます」

「おはようございます。一条さん。でもまさかね。全く分からなかったわ」

「あの二人共誤解しないで。水森君とはまだ友達だから」

「「まだ?」」




「母さん。ただいま。連れて来たよ」


タタタタタ。


「いらっしゃい。中島君、今泉さん。今回は明人がお世話になってありがとうね」

「いえ、俺は何もしていないです」

「母さん、玄関で挨拶良いから」

「そうね、今年もリビング準備してあるわ」


 母さんが、キッチンに行った。

「なあ、明人。おばさん一条さんの事何も言わなかったけど」

「ああ、まあな。何回か遊びに来ている」

「「えーっ!」」

「いいから上がってくれ」


 母さんが飲み物を持って来てくれた後、宿題を始めた。

「はぁ、今年は宿題の量が多いな」

「正則、当たり前でしょう。二年生なんだから教科数も科目数も多くなるわ。それより早く手を動かしなさい」


 この二人を見ていると本当に羨ましく思う。でももし結婚なんかしたら絶対正則尻に敷かれるな。

「明人何笑っているんだ?」

「いや、お前達仲いいなと思ってさ」

「まあ、付き合って五年だからな」

「…………」


ポカッ。

「痛い!」

「正則、デリカシー無い」



 それから俺達は十二時半まで宿題をやった。午前中だから頭が動く。


「皆さん、もうお昼準備出来たけど?」

「あっ、母さん悪い。みんな、昼食にしよう」

「いつもすみません」

「いいのよ。明人も顔が明るくなったし。紗耶香ちゃんや中島君達のお陰ね」

「「紗耶香ちゃん?」」

「母さん良いから。紗耶香手伝って」

「えっ?!、あっ、うん」

 二人がキッチンに行った後、


「どゆこと?」

「さあ?」



キッチンでは

「ねえ、明人、私に名前呼びしたでしょ」

「えっ?そうだった」

「私も聞いたわよ明人」

「はあー。やっちまった」



当然、昼食を食べながら正則達から紗耶香との関係について質問された。仕方なく図書室からの事を話した。

 もちろん名前呼びしたのは最近だし、まだ学校では黙っていようという事にしている。



午後一時に宿題を再開したが例によって


スースー、スースー。


 今泉さんが正則の頭をシャーペンで小突いている。

 起きない。


「おい、正則起きろ」

 起きない。


バコン。結構強く叩いた。

「痛いっ!」

「こら正則。また寝て」

「だって昨日の夜、薫が……」

いきなり今泉さんが正則の口を塞いだ。


「ばか、何言っているの。ここ水森君の家だよ」

「あっ!」


 それを聞いた一条さんが下を向いて顔を赤くしている。


結局午後五時まで宿題をした後、駅で解散した。俺は一条さんを送って行く。


「明人、もう紗耶香って呼んで。あの二人にはバレたし。二学期になったら皆にも知って欲しい」

「分かった」


―――――


ふむっ、なるほど。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。




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