第18話 見てしまった事


 今日は日曜日、中間試験も終わり結果も良かったので、今日はのんびりしている。


リビングでゴロゴロしていると姉ちゃんが

「明人、最近綾乃ちゃんと会ってないの?」

「うん、綾乃日曜日は家の用事があるからって」

「そうなんだ。おかしいな」

「どうしたの姉ちゃん?」

「あっ、いや何でもない。私出かけてくるね。帰り夕方だから」

「了解」


 ふと時計を見るともう午後一時だ。仕方ない本屋でも行くか。


 俺は外着に着替えて家をでた。気に入った本屋がある駅は綾乃の家の向こう隣の駅。綾乃の家のある駅を通るとちょっと寂しかった。前までは毎週の様に会えたのに。


 隣駅に着いたので改札を出てデパートに行こうとした時、

えっ、綾乃。誰横にいる男。あっ、綾乃が男の腕に自分の腕を巻いて嬉しそうにしている。


気付かれない様に近付くと


「綾乃待った?」

「ううん、今来た所」

「行くか」

「うん」

「でも綾乃良いのか、水森って彼氏がいながら毎週日曜日だけじゃなく普段だって俺と会っていて」

「大丈夫、明人には家の用事だって言ってある。それに明人優しいから」

「なら良いんだが、行くか」


 なんて事を俺は聞いてしまったんだ。でもこれじゃ。俺は二人の後をつけた。途中からスマホを録画モードで二人を写している。


 えっ、ここって。あっ、綾乃が手を引く様に男をホテルの中に連れて行った。


 そんな………。なんで!


 その場で膝が折れた。下を向いてると地面に涙が零れ落ちて来た。


 後はどうやって家に帰ったかなんて覚えていない。ただ涙が止まっていなかった。




コンコン。


コンコン。


「明人ご飯よ」


「要らない」


 ガチャ。


「どうしたの明人」


「良いから出て行って!」


 俺は思い切り枕をドアに投げつけた。




 泣き疲れて眠ってしまったのか、もう朝になっていた。


コンコン。

ガチャ。


「明人入るわよ。どうしたの」


「姉ちゃん」


 俺はまた思い切り涙が出てきた。どの位経ったんだろうか、姉ちゃんが側にいてくれている。

「明人教えて。何が有ったの?」


 俺は姉ちゃんにスマホの録画を見せて、二年生になってからの事を話した。


「やっぱり。あの女許さない。私の大切な弟をこんな事にさせて!明人私に任せて!」

「姉ちゃん、何もしないで。俺が悪かったんだ。綾乃も俺なんかよりイケメンが良いんだよ」

「そんな事ない。明人はかっこいいよ。友達だっているじゃない」


「姉ちゃん、今日学校休む」

「分かった、学校には連絡入れて置く。こう見えても三年間生徒会やってたから先生達には信用あるのよ」

「ありがと姉ちゃん」



 それから俺はまたベッドの上で天井見ている内に寝てしまった。



 ガチャ。


「明人、もう午後六時よ。昨日から何も食べていないでしょ。下に来て夕飯食べなさい。母さんも心配している」

「分かった」


 鏡を見ると顔がボロボロだった。


 次の朝、俺はいつもより早く家を出た。綾乃に会いたくない。


 学校について教室に入ると


「えっ、水森くん大丈夫。凄い顔しているわよ」

 一年の時から一緒のクラスだけど名前は憶えていない女の子が声を掛けて来た。


「大丈夫です」

 鞄を自分の机に置くと直ぐに正則が来た。


「明人大丈夫か。昨日休んだから心配したんだ。どうしたんんだ。何が有ったんだ?」

「正則ちょっと良いか」


 俺は正則を人気のない校舎裏に呼び出すとスマホのビデオを見せた。そして姉ちゃんに言ったと同じ事を話した。


「やっぱりな」

「正則どういう意味?」


「実は………」

 正則は綾乃の事、他の人や正則自身が見た事を話してくれた。


「正則もっと早く話してくれれば」

「でもな、お前が高橋さんと話している姿見ると、言い出せなくて。それに高橋さん改心してくれるかもって期待も有ったんだ。

 でもこれじゃもう無理だな。でもおかしいな。学校中でお前と高橋さんが付き合っている事は知っているはず。

 何で噂にならないだろう。薫がBクラスだから中休み聞いてみる」



 正則は一限目の中休み今泉さんから話を聞いてくれた。そして昼休み

「正則」

「おう、すぐ行く」


 俺は綾乃が来る前に教室を出た。校舎裏の花壇のあるベンチで三人で食べている。

今泉さんは後から来た。


「薫話してくれ。俺が言うとまた聞きの内容になるから」

「分かったわ。水森君、辛いかもしれないけど聞いて。

 今、高橋さんと付き合っているのは白石克己って子。イケメンで結構人気が有る。女の子にすぐ手を出す事でも有名。

 教室の中では二人は凄く仲が良くてほとんどべったり。なぜ外に漏れないかと言うとこの学年じゃ女子カーストのトップにいる石原幸奈って子と笠原瑞樹って子が、口止めしているの。あのグループに睨まれたら、大変な事になるからみんな怖がって誰も教室の中の事は言わない。

 多分外でも学校の生徒に分からない様に会っているんだと思う」


「明人こんな所だ。お前が日曜日の午後見た事もその通りだ。会ったらすぐにホテルに入ってしまえば分からない」


「正則、ホテルってどういう事?」

正則は簡単に俺から聞いたことを話して俺のスマホの録画を見せた。


「酷い、酷過ぎる。高橋さん、誰のお陰でここまで来たの。理解出来ない!」

「今泉さん、そこまで言ってくれてありがとう。でも俺白石みたいにイケメンじゃないし、綾乃に飽きられたんだと思う」

「そんな事ないのに……」


 昼休みが終わって、教室に戻った。


 放課後、俺は図書室の鍵を担当の先生に借りて図書室まで言って鍵を開けていると


「あっ、いた。明人昨日休んだって聞いたから心配した。どうしたの?」

 よくそんな事聞けるな!


「ねえ、明人今日も頼んでいいかな。家の用事で……」

「もういい加減にしろ綾乃。白石と好きな事するんだろ。行けよ。もう俺の前に顔を見せるな」

「あ、明人何言っているの。私の彼は明人だけよ」

 手を伸ばして来たのでそれを叩いて


「汚い手で触るのは止めてくれ。俺はこの前の日曜日白石とお前がホテルに入って行くのを見たんだ。録画も取ってある。ばらさないからもう俺に構わないでくれ」

「えっ、あれは、あれは違うの」

「何が違うんだ。お前が白石の手を引いてホテルに入って行ったんだろう」


「誤解だってば」

「もう人が来た。帰ってくれ。もう二度と俺に近付くな!」

「明人………」

 そこまで聞くと綾乃は図書室に入らずに帰って行った。



 それから綾乃は図書室に来なくなった。六月に入って綾乃が図書委員を止めた事を俺は担当の先生から聞いた。


 先生は俺に一人では大変だから開けれる時だけで良いと言ってくれたけど、俺は毎日開けます大丈夫ですと言っておいた。

 図書室ないと俺嫌だから。



 それからというもの毎日図書室を開けてもほとんどが毎日常連ばかりだった。


 もう正則も他のクラスメイトも綾乃と俺の事を話す子はいなくなった。綾乃が今どうしているかなんて興味が無くなった。ほんとはちょっと寂しいけど。



 俺は放課後毎日図書室に行く。

借出し返却が少ないので毎日の様にカウンタを前にして勉強をしていると


「水森君。これ借りたい」

 直ぐに頭を上げて

「はい、あっ君は!」


―――――


 明人元気出して。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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