第16話 二年生が始まりました


四月六日、俺達にとって晴れて高校二年生の始業式だ。

いつもの様に学校ある駅の改札で綾乃と待合せる。ちょっとだけ緊張する。綾乃が改札を出て来た。


制服は折り目正しくピチッとしている。前髪をアップして肩までの髪の毛を耳の後ろにして顔の輪郭がはっきりしている。コンタクトをしているのか眼鏡はかけていない。めちゃくちゃ可愛い。


「おはよう明人」

「おはよう綾乃」

「クラスまた同じになると良いね」

「俺もそう思っている」


 自然と手を繋ぎ校門まで歩いた。下駄箱で履き替えて掲示板の所に行くと

っ!綾乃と違うクラスだ。俺はAクラス、綾乃はBクラスだ。


「明人違うクラスになったね。でも隣だから」

 私はBクラスの中に白石君がいるのを見て安心したけど顔に出すわけにはいかない。


「仕方ないよ。正則と今泉さんも別のクラスみたいだ」


「おはよ明人、また一緒で良かったけど俺もお前も薫と高橋さんとは別のクラスになったな」

「うん」

「行くか」

「ああ、綾乃また後で」

「うん、明人帰り一緒ね」

「分かった」

 俺中島正則は高橋さんの言葉から、耳に挟んでいる彼女の噂が嘘で有って欲しいと思った。



綾乃視点

 クラス編成表を見て明人と別のクラスになってしまった時、えっと思ったけど、同じBクラスに白石克己(しらいしかつみ)君がいるのを見て心の中では嬉しかった。


 彼とは去年のクリパ以来の友達。明人には悪いけど何回も会っている。イケメンだし明人に無い物をいっぱい持っている。私としては明人が一番好きだけど白石君みたいな友達がいるのも嬉しい。


 中島君の彼女の今泉薫さんがいるのがちょっと気になるけど気にしなければいい。私は二年生のBクラスの教室、二階のクラスに入った。


 男の子達が私に注目しているのが分かる。でももう慣れて来た。あっ、白石君だ。取敢えず出席番号順の席に着くと早速彼がきた。


「高橋さん、同じクラスになったね。嬉しいよ」

「私も白石君と同じクラスで嬉しい」



「ねえ、高橋さんてってAクラスの水森君の彼女だよね。なにあれ」

「さあ、分からない」


 他の女子の事なんか無視。今は白石君が友達(彼)だ。



明人視点


二年生のAクラスに入って取敢えず決められている席に着いた。綾乃がいないのがとても寂しいけど仕方ない。


綾乃一人で大丈夫かな。だいぶ他の人と話す事が出来ているみたいだけど。今泉さんも居るから上手くやってくれていると良いんだけど。まあ、お昼に会えるからいいか。

顔ぶれを見ると一年から知っている人も多いので安心する。



 先生が入って来た。男子が少しざわついている。

色白でショートカットの髪の毛、胸もお尻もそれなりにあるみたいだけど洋服が緩いせいか隠されている感じだ。


「はい、席に着いて。私は南沢美幸(みなみざわみゆき)一年間君達の担任になるから宜しくね。早速だけど廊下に出て体育館に行くよ。ではまた後で」

 

体育館に行くと綾乃が隣の女の子と話をしている。上手くやっているみたいで安心した。やがて校長先生の大切なお話や各種連絡が有った後、教室に戻って来た。


正則と話していると南沢先生が戻って来た。色々連絡や教科書の配布が終わった後、時計をちらりと見て

「早速だけどクラス委員決めて、自薦他薦どっちでもいいわ」

 

 最初皆静かにしていたけど、誰がやれ、お前やれと言っているうちに決まった様だ。俺には関係ない事。正則も逃れたようだ。


「クラス委員も決まったね。今日はここまで気を付けて帰ってね」


「明人帰るか」

「俺綾乃待っているから」

「そうか。じゃあ先にな」


 正則が帰った。少しして綾乃が教科書がいっぱい入ったスクールバックを持ってやって来た。

「明人帰ろう」

 何となく安心した。もしかして来なかったらと勝手な妄想を抱いていたから。


「うん帰ろうか」


二人で駅まで行くと

「明人今日は教科書有るからここまででいいよ」

「いや、全然構わないから」

「そう、ありがと。じゃあ行こうか」


 その日はそのまま、綾乃の家のある駅の改札まで送るといつもの様に彼女の姿が見えなくなるまで改札の内側で見ていた。


「さっ、俺も帰るか」

 何となく有った不安が消えて行った。





 あいつも幸せな奴だな。まあいい。俺は綾乃と付き合えればいい。電話するか。

『綾乃、水森が電車に乗ったぞ』

『分かった、すぐ駅に行く』


 駅に着くと

「教科書重いだろ。ロッカーに入れていこうぜ」

「うんそうしよ」




 俺は綾乃を送った後、家に着くと

「ただいま」

「お帰り明人」

 姉ちゃんが声を掛けて来てくれた。姉ちゃんは東京の大学と地元の国立を受けて両方受かったが、色々考えたらしく地元の国立大学を選んだ。入学式は明日らしい。


「クラス綾乃ちゃんと一緒だった?」

「違った。綾乃と今泉さんはBクラス、俺と正則はAクラス」

「残念だったわね。まああんたと綾乃ちゃんの間だったら問題ないと思うけど」

「どういう意味?」

「そりゃクラス変ればあんなに可愛い綾乃ちゃんだもの。あなたが側にいないから色々な男の子が声掛けるんじゃない」

「それは分からないけど、帰りは図書委員で一緒だから」

「そうか。じゃあ大丈夫か」


俺は自分の部屋に戻ると着替えて綾乃に電話した。直ぐに出た。


『綾乃?』

『明人うん私』

『今から会えない』

『えっ、今日はちょっと疲れちゃって。明日図書委員で会えるからそれでいいかな』

『そうか仕方ないね。今日はゆっくり休んで』

『ありがとう明人。じゃあね』

 いつもなら直ぐにでも会いたいって言うのに。本当に疲れたのかな。なんだろうこの不安感。



私は明人からの電話を切ると自分の隣にいる男の人を見た。もちろん自分の家じゃない。


「綾乃誰?」

「明人」

「ああ元カレか」

「ううん、今でも彼だよ」

「じゃあ俺は?」

「友達」

「そっか。こいよ」

「うん」


―――――


綾乃ちゃんどう見ても不味いのでは!


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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