第15話 三学期です


 二学期の学期末テストで綾乃一位俺は三位だった。俺には十分だ。これも綾乃のお陰。


 クリスマスイブは朝から二人で楽しく過ごした。学校の女の子達のクリパはイブの前に行われた。綾乃は行ったけど楽しくなかったと言っていた。


 初詣は去年と同じ二人で行った。おみくじは俺が小吉のままで綾乃は中吉。彼女の得意顔が可愛かった。

静かに正月を迎える事が出来た。もちろん二人で温め合った。二学期の事がまるで嘘の様に。




そして三学期が始まった。


「あけおめ明人」

「あけおめ正則」

 

 綾乃は俺の右斜め前だけどもう女の子達に囲まれている。大丈夫だろうか。正則が女の子達を見ている。


「うん、どうかしたのか正則?」

「なんでもないけど。ちょっといいか」

正則が廊下を指さした。


「明人、お前どこまで知っている?」

「えっ、何の話?」

「そうか何も知らないのか。じゃあ昼休み時間取れるか?」

「大丈夫だけど」




 昼休み、俺は綾乃と一緒に購買で買ったパンを食べた後、正則の後を付いて行った。

「ここなら誰もいないから」

 連れて来られたのは、図書室の入口だ。


「どうしたんだ?」

「明人、去年女の子達のクリパが有っただろう。その時他のクラスの連中も来ていたらしい」

「…………」


「普通いるだろう。問題はそこじゃない。そのクリパが終わった後、それぞれ帰ったらしいんだが、その時高橋さんが誰かと一緒に出て行ったというんだ。その後の事は分からないけど」

「えっ、そんな事綾乃何も言っていなかったけど。」

「まあ、普通は言わないよな。でも二学期の時の高橋さんの行動見ていても前と違う感じがする。一度高橋さんと良く話した方が良いんじゃないか。お節介かもしれないが」


「なんでそんな事正則が知っているんだ?」

「テニス部の仲間がそのクリパに参加していたからな。その情報だ」

 確かにクリパの後綾乃からの連絡は遅かった。でも綾乃は疲れて眠ってしまったから連絡が遅くなったって言っていたけど。


「…………ありがとう正則」



 それから二人で教室に戻ると綾乃はの女の子達と楽しそうに話をしていた。何話しているんだろう。




 放課後、いつもの様に図書室に二人で行った。今日は初日だからそんなに来ないだろうと思っていたけど常連さん以外にも何人か来ていた。



予鈴が鳴って図書室を閉める準備をし始めてから

「綾乃少し話したい事がある」

「何?いつも話しているよ」

「うんちょっと」



 もう外は寒い。二人で学校指定のコートを着て綾乃の片方の手は俺のコートの中に入っている。

「明人話ってなあに?」

 いきなり切り出すのは愚策と思いちょっと話をずらした。


「二学期の時、女の子達と会うの大変だったみたいだけど、これからも続くの?」

「うーん。偶には付き合わないといけない。でも毎回同じ子が一緒って訳でもないみたい。あの子達もいつも全員いるって訳じゃないし」

「そうか。そう言えばクリパってどうだったの?」

「えっ、……。どうしたの明人。何故そんな事聞くの?」


「うん、実は……言い辛いんだけど。クリパ終わった後、綾乃が男の子と一緒に出て行ったって聞いて?」

「どうしてそんな事聞くの。どうしてそんな事知っているの?」


「綾乃。やっぱり!どうしてそんな事知っているの?って言ったよね」

「っ!あれは、たまたま一緒にカラオケを出ただけ」


「俺カラオケなんて言っていないけど。あの時カラオケに行ったんだ。そんな事言ってなかったよね。俺ファミレスかどこかでやったと思っていたんだけど」

「それは……」




「綾乃。何が有ったの。教えて」

「あの時、クリパが終わってもう帰ろうと思ったら…白石君が一緒に帰ろうと言われて。聞いたら同じ電車の方向だって言うから」


「そうなんだ。白石君って言うんだ。誰その人?」

「明人なんでそんな事聞くの。私、私あなたが一番好きなのに。あなた以外誰も好きになんてならない。酷いよ。だったら明人一緒に来ればよかったじゃない」


 綾乃が目に涙を浮かべて俺の顔を見ている。


「ごめん、言い過ぎた。綾乃が心配だったんだ」

「ううん、いいの私がきちんと言わなかったから。もうあんな事絶対しないから」

 どういう意味なんだろう?



「明人今日はここでさよならしよ」

「えっ!…いいの?」

「うん」

 そう言って改札を入ると俺とは別のホームに行ってしまった。学校から駅まで一緒に帰った後、いつもなら綾乃の家の最寄りの駅まで一緒に行くのに。言い過ぎたのかな?


 私は家の有る駅に着いた。改札には出ていない。

「待った?」

「今来たとこだ」

「そう、行こうか」

「ああ」


 彼はいつも優しくしてくれる。明人とは違う安心感がある。でも私の彼は明人。この人じゃない。だからたまにしかしない。



 次の日からは何も無かった様に朝一緒に登校し、図書室を閉めると一緒に下校した。もちろん綾乃の家のある駅まで送って行った。


 女の子達との遊びも減った気がする。前は週一回位有ったのに最近は二週間に一回位だ。俺と週末会うのは変わっていない。



 そんな日が続いてもう前と同じように過ごしていた時、

「明人、今日友達と会うの。だから図書室お願い」


 すまなそうに言って来る綾乃に

「うん良いよ」

何も言わずに了解した。俺は女の子達と会うとばかり思っていた。




 放課後図書室を閉めて鍵を先生に返して帰ろうとした時、下駄箱でいつも綾乃にくっ付いている女の子達が話していた。

 俺は下駄箱に行く手前の階段の脇で足を止めると


「ねえ、高橋さんって凄いよね」

「うん、私もそう思う」

「水森君がいるのにね」

「ちょっと可愛いからって。今日も会っているんでしょ」

「ふふっ、いいことしているんじゃない」

「そうだね」


 何の話だろう。それに今日も会っているってどういう意味だろう。いつも一緒に帰っているのに。



 次の日の朝、改札で綾乃に会うと

「昨日連絡なかったね」

「ごめん、疲れちゃって」

「そうなんだ」

 いつもなら女の子達と会った日は必ず連絡くれるのに。


 それでも俺は綾乃が女の子達と会っているとこの時は思っていた。




 バレンタインデーの日、教室に着いたら

「明人これ。手作りだから」

 綺麗にラッピングされて個包装されている。

「うん、ありがとう。嬉しいよ」


 でも一限目が終わった中休み、綾乃は袋を持って教室を出て行った。何気なく後をつけると隣の教室に入って

「えっ!」


 前に一度図書室で本を借りたイケメンの男の子に嬉しそうにチョコを渡していた。何か話している。見たくない物を見た思いで急いで教室に戻ると綾乃が帰って来た。


「綾乃どこ行っていたの?」

「うん?ああ義理チョコ渡して来たの。隣のクラスの女の子に」

「そ、そっか」

「どうしたの。本命は明人だけだよ」


 いつもの女の子達が俺を見て笑っている感じがした。


 それから少しして学年末試験が有った。いつもの様に綾乃と勉強してテストの終わった日はして過ごした。

 結果も綾乃一位、俺は三位。とても良い結果だ。でも二位の名前が気になった。


 白石克己って誰?


―――――


綾乃ちゃん、おかしいですね。

次回から二人共二年生です。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る