第14話 それからというもの


綾乃視点


 明人は中学三年の時、小学校の時からいつも一人で居た私に手を差し伸べてくれた。それからずっと一緒。


明人と二人で過ごしているだけでとても幸せだった。体を合せたのもしていると心の中がホッとする。この人は私の側にいてくれるんだって。



 それから中学時代から一緒の中島君や今泉さん達と一緒に勉強したり遊ぶようになって、明人以外の人とも話すことが出来る様になった。


 GWの時、眼鏡からコンタクトに変えた時、明人はとても喜んでくれた。自分の顔に全く自信が無かった私は、それだけで幸せだった。


 でもそれから色々な人が接しようとしてくるようになった。とても怖かった。同じ年の子達と話すなんて話題が付いていけない。何となく分かった様な雰囲気で相槌打っていたけど。


 夏休み中は中島君達と会った時以外はずっと明人と一緒だった。少しでも明人に私を見てほしくてコンタクトして鏡の前でどうすれば可愛く見えるか一生懸命髪の毛を触ったりした。


 シャンプーだって気にした。明人はとても喜んでくれた。あれした後だって髪の毛を触って素敵な匂いだねって言ってくれた。


 二学期になって学校に行くと女の子達が寄って来た。少し前までは色々な人がいたけど、段々同じ顔ぶれになった。少し化粧していて可愛かったけど好きじゃなかった。


 話をしている内に段々放課後の遊びに誘われる様になって、明人に色々相談した。結局三回に一回位は付き合う事になった。


 最初はファミレスで女の子達だけで話すだけだったので、これも良いかなと思っていたけど、カラオケにも誘われる様になった。


 最初女の子達だけだったけど、段々知らない男の子多分別のクラスの子が一緒に居る様になって来た。


 はっきり言って嫌だった。でも中にはとても優しくしてくれる子もいて。でも彼氏いるからと変な付き合いは一切断った。


 そんな事になるんだったら明人と二人でいた方がいい。もちろん、放課後の遊びに他のクラスの男の子がいるなんて明人には言えない。


 お化粧も女の子達から少し位すると明人が喜ぶからと言われたのが始まりだ。


 でも明人は好きじゃないみたい。私も化粧なんて止めたい。でも皆が綺麗だって言ってくれるから何となく続けてしまっている。


 でも本当は、…………。一人だけ気になる人がいる。白石君という子。Bクラスの子らしい。前に図書室で閉室ぎりぎりに来た子。


 とても優しくて話していると楽しい。とてもイケメンで明人とは違う。その人がお化粧すると素敵だねと言ってくれた。ちょっと迷っている。デートにも誘われたけど、明人がいるから断っている。





 今、明人は私の横を歩いている。


「明人、私がお化粧止めた方がいい?」

「うん、そもそも何でお化粧し始めたの。みんなって誰?」

「一緒に遊んでいる女の子達。明人だって喜ぶって言われたから」

「そうか、だったら出来れば止めて」

「分かった」


 この時はそう思っていた。




放課後、またこの子達とカラオケに来ている。あまり好きじゃない。

「あれ、高橋さん。お化粧していないの?」

「うん、明人が止めって言ったから」


「ふーん。高橋さん。彼って水森君だけ?」

「どういう意味ですか?」

「いやあ、彼が言った事を何でもやってしまうから。誰か他の子とも付き合ってみたら。水森君にバレなきゃいいじゃない」

「それは駄目です」


「幸奈(ゆきな)それは言い過ぎよ。高橋さんも困っているじゃない」

「そうか。瑞樹(みずき)なんか今の彼三人目だっけ?」

「まあね、一人だけ知っていてもつまんないし」

 この人達なんて事言っているんだろう。


「まあ、高橋さんもこれからね」



 私は、女の子達と別れた後、このままこの子達と付き合っていていいのかと。何かの拍子に変な事になるんじゃないかと。


 でもここまで来るとおいそれと明人に相談も出来ない。何ていえば良いのか分からない。



その夜

『明人、今度の土曜日明人の家に行っていい?』

『良いけど。綾乃なんか変だよ?』

『えっ?』

『何か迷っている事あるの。そんな声だけど』

 やっぱり明人は私の事良く分かってくれている。この人でないと。




そして土曜日、いつもの様に学校から手をつないで駅まで行くと

「綾乃一度家に帰ってから来る?」

「ううん、このまま行きたい」

「じゃあそうしようか」


 綾乃が俺の家に来たい理由は分かっていた。彼女は本当に好きみたいだ。これから大丈夫なのかな?

でも心の不安さを和らげられるなら。



…………………………。



 思い切りしてくれた。私もしてあげた。

 明人と体を合せるだけで本当に心が安らぐ。とても優しくしてくれるし。絶対にこの人を離さない。


 俺の家に来てからもう三時間だ。お昼も取らないで夢中になってしまった。


 綾乃が俺の隣で寝ている。とても激しく求めて来た。やはり何か有ったのか。


彼女がゆっくりと目を開けると

「あっ、明人。起きてたの」

「うん、なあ綾乃。どうしたんだ。いつもと違うよ。何かあるなら話して。一緒に考えよ」

「うん、ありがとう。でもこうして居ると心が落ち着くから。本当に困ったら相談する」

 本当に困った時じゃ遅いんだけど。


「もうすぐ姉ちゃんが帰って来るから起きようか」

「ねえ、お願いもう少しこのままにさせて」


 思い切り抱き着かれた。綾乃の体は小さくて柔らかい。仕方なくそのまま抱き締めてあげると綾乃はまた目を閉じた。



ガチャ。


「ただいま。あれ、これって綾乃ちゃんの靴だよね。来ているのかな?」




「綾乃起きて。姉ちゃんが帰って来た」

「えっ、ほんと」


 二人で急いで着替えた。いつもの順番はしていられない。ベッドを直して俺は机の椅子に綾乃はローテーブルの側に座った。


コンコン。


「なあに?」

「綾乃ちゃんいるの?」

「うん、今二人で勉強中」

「そうか、分かった」

 どう考えても嘘でしょう。まあいいわ。



 姉ちゃんが自分の部屋に入ると

「綾乃外に出よう。もう暗いし送って行くよ」

「うん」


 二人で立つといきなり抱き着いて来た。

「明人私を離さないで。しっかり捕まえておいて。自分が怖い」

「綾乃………」



 明人と会ったその夜、白石君から電話がかかって来た。デートの誘いだった。


―――――


うーん。綾乃ちゃん。今ならまだ。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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