第13話 今までに無かったこと


 二学期になって綾乃への告白が多くなった。彼女は全く無視しているが、このまま済むのか心配だ。


 今日も二人で放課後は図書室にいる。男子が本を返しに来た。この前終了間際に来たイケメンだ。


 その男子は本をカウンタに置くと

「本返却します。面白かったですよ。高橋さんも是非読んでみて下さい」


 また、綾乃がぽかんとしている。

「綾乃」

「あっ、はい分かりました」

「読んでくれるんですか。では読み終わったら感想聞かせて下さい。では」

 これできっかけ作れるかな。駄目だったらあいつに頼むか。


 えっ、綾乃約束した事になったよ。

「綾乃、大丈夫?」

「あっ、うん。大丈夫。すぐ返却処理するから」

「この本読むの?」

「なんで?」

「だってさっきの子が呼んだ感想聞かせてって言ったら、綾乃分かりましたって言ったよ」

「ああ、あれは違う。返却受け付けましたって事。今度来たら言っておくわ」

「そうなら良いけど」



 この日それ以降はいつもの様に静かに終わった。なんか胸騒ぎがするのは気の所為かな。正則が言っていた事本当かもしれない。



 それからは何も無かった様に過ぎて行った。朝一緒に登校し図書室担当して一緒に帰る。


 中休みの時は綾乃の周りに女の子がいつも数人いて話す様になっている。一年生なのにちょっとお化粧している感じ。

 偶に放課後誘われているようだけど図書室の担当が有るからと断っていた。大丈夫かな?


 今日も綾乃の側に女の子達がいる。

「ねえ、高橋さん。偶には私達と一緒に放課後遊びに行こうよ」

「そうだよ。図書室は水森君と交代で当番しているんでしょ。一日位いいじゃない」

「でも……」

「じゃあ、私が水森君に言ってあげる」


 変な話になっている。


「ねえ、水森君。今日高橋さんと私達放課後遊びに行きたいんだけど、図書室一人で担当してくれないかな。もともと一人でしょ。あれ」

「遊びって?」

「まあ、女の子達が一緒に行く所よ。図書室閉めて水森君も一緒に来る?」

「いや、行かないけど。でも綾乃が……」

「高橋さんは行きたいって言ってるわ。ねえ高橋さん」

「えっ!」


 綾乃が困った顔をしている。


「いや、今日は止めといてよ」

「じゃあいつがいいの」

「綾乃と相談する」

「なにそれ。まあいいわ。あんた達の仲は認めているから。明日返事聞かせて」

「明日?」

 また無理な事を。でもこれ断ると綾乃が心配だ。


「分かった。綾乃と相談する」


 授業開始のチャイムが鳴って先生が入って来た。




昼休み、綾乃と昼食を一緒に食べていると正則が俺の所に顔を向けて

「明人、不味いな。午前中高橋さんに絡んで来た子達面倒だ」

「どういう意味?」


「あの子達は女の子達の中でも勢力が強い。高橋さんは今まで静かで目立たなかったから相手にされていなかったのだろうけど、今は綺麗になっている。自分のグループに入れさせて自分達を少しでも目立たせるのが目的だ。どうする明人」


 綾乃を見た。少し不安そうな顔をしている。


「困ったな。でも全く無視するとどうなるんだ?」

「高橋さんがあの子達からいじめを受けるかもしれない。明人も」

「えっ、いじめ?!」


「今泉さん本当?」

 綾乃が聞いて来た。流石に心配になったんだろう。


「うーん、私はあまりあの子達には関わらないけど、あながち嘘じゃない」

「明人どうしよう」




 図書室も閉めた帰り道

「明人、私いじめられるの嫌だ。まして明人もなんて。だから一度あの子達に付き合ってみる。どうしても駄目だったら明人に相談する」

「綾乃……。分かった。でも遊びに行った後は必ず連絡して。心配だから」

「もちろんするよ」




 それから数日して綾乃はあの子達と一緒に放課後遊びに出かけた。俺は一人で図書室にいる。

 今日は常連さんしかいない。当たり前か。綾乃がいない事に不思議そうな顔をしている子もいたけど。



 その日の夜、食事が終わった頃やっと綾乃から連絡が有った。


「綾乃、大丈夫だった?」

「うん、ファミレスに行って皆で二時間位話して帰っただけ。何も変な事無かった」

「何話したの?」


「結構明人との事聞かれた。なれそめとか。でもあの事は話していないから」

「うん、絶対話しちゃだめだよ」

「分かっている。明人また誘われても三回に一回位にするから。明人の側にいたいし。後今度の土曜の午後明人の家に行きたい」

 意味は分かっている。


「うんいいよ」

「じゃあ、また明日ね」



 声が落着いていたので本当にファミレスでおしゃべりしたんだろう。でもこれからもそれで済むのかな。


 あの子達が変な事考えていないかな。知らいない男とか一緒に連れて来るとか。変な事になってしまうとか。


 駄目だ。妄想が激しくなる。どうしよう。



 次の日の放課後は一緒に図書室で二人で書棚の整理とか貸出管理をしていた。何も無いのが一番いい。


 あの子達は週に何度か綾乃を誘っている。でも俺との約束通り三回に一回程度で付き合っていた。


 帰って来ると必ず連絡をくれる。カラオケに行って来たという日も会った。俺とは一回も行っていないけど。


 気になるのは綾乃が少しお化粧し始めた事だ。変な影響を受けている様だ。更に綺麗になるのは俺にとってあまり気持ち良なくない。



 朝待ち合わせの改札で待っていると綾乃が改札を出て来た。周りの男子生徒だけじゃなく女子生徒も見ている。


「明人おはよ」

「おはよ綾乃」


 自然と手を繋ぐ。

「綾乃お化粧しているの?」

「う、うん。駄目かな?」

「俺あんまり好きじゃない。素顔の綾乃の方がいい」

「そっか。でもみんな綺麗って言ってくれるんだ」

「そうなのか」


 綾乃はあの子達と遊ぶようになって明らかに変わって来た。今更止めろとは言えないし。


―――――


綾乃ちゃん、もしかして。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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